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JSAI 2022チュートリアル講演 AI哲学マップ / JSAI 2022 Tutorial...

JSAI 2022チュートリアル講演 AI哲学マップ / JSAI 2022 Tutorial "AI Philosophy Map"

「AI哲学マップ -人工知能と哲学の対話から新しい研究地図を作る-」

人工知能学会誌 レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」では,2021年から毎号,人工知能研究者と哲学者をお呼びして対話を収録してきた.その目的は,人工知能分野全体の形を,人工知能を包む哲学から見つめ直し,人工知能のこれからの可能性を描き出すことにある.また,第二次AIブーム期の人工知能と哲学の対話がその後に影響を残したように,第三次AIブームと言われるこの期間に,人工知能と哲学の対話を次の時代に向けて託すためでもある.人工知能学会「AIマップβ」は,AI分野全体を描き出す大きな仕事であり,「AI哲学マップ」はそこに哲学の層を加えることで,「AIマップβ」上にあるそれぞれの研究分野に,これまで思いもかけなかった角度,見過ごされてきた2つの分野の架け橋,新しい研究領野の発見を目指す.それによって人工知能研究者に新しい気付きや驚きを与えることをミッションとする.本プロジェクトは現在も継続中であり,これまで得た知見から構成した「AI哲学マップ」の全体像を提示する.

Kiyota Yoji, Ph.D.

June 15, 2022
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Transcript

  1. AI哲学マップ – 人工知能と哲学 対話から新しい研究地図を作る - JSAI 2022チュートリアル講演5 2022年6月15日 国立京都国際会館 清田

     陽司 (人工知能学会編集委員長, 株式会社LIFULL) 三宅 陽一郎 (人工知能学会シニア編集委員, 株式会社スクウェア・エニックス)
  2. 学会誌「人工知能」レクチャーシリーズ 2001-2002 認知科学(全7回) 2002-2003 哲学とAIにおける対象世界モデリング (全7回) 2003-2004 AI研究者が学ぶ言語学 新展開(全 6回)

    2005-2007 脳科学(全9回) 2007-2009 知能コンピューティングとそ 周辺(全 11回) 2009-2010 知能ソフトウェア工学(全5回) 2010-2011 サービスイノベーションとAIと教育(全 6回) 2011-2012 コンピュータ将棋 技術(全 7回) 2013-2015 人工知能と (全11回) 2015-2017 つながりが創発するイノベーション(全 12回) 2017-2018 シンギュラリティとAI(全7回) 2019-2020 人工知能と今(全11回) 2021-2022 AI哲学マップ(全11回を予定)
  3. レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」企画 きっかけ • コロナ禍にあたって、学会・編集委員会として何ができるだ ろうか? • AIマップβ 新たな発展を図りたい ◦ 本日、15:20-17:20に企画セッション「AIマップ

    活用とβ3.0へ 展 開」(L会場) • 故 長尾真先生「情報学 哲学 最前線」(2019) 清田 陽司, 三宅 陽一郎: アーティクル: レクチャーシリーズ「AI 哲学マップ」開始 にあたって
 人工知能 2021年1月号, p. 74-78 

  4. レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」企画 きっかけ • コロナ禍にあたって、学会・編集委員会として何ができるだ ろうか? • AIマップβ 新たな発展を図りたい ◦ 本日、15:20-17:00に企画セッション「AIマップ

    活用とβ3.0へ 展 開」(L会場) • 故 長尾真先生「情報学 哲学 最前線」(2019) 清田 陽司, 三宅 陽一郎: アーティクル: レクチャーシリーズ「AI 哲学マップ」開始 にあたって
 人工知能 2021年1月号, p. 74-78 

  5. 「情報学 哲学 最前線」(2019) 工学博士(京都大学) 京都市名誉市民(2019)、文化勲章(2018)、文化功労者 (2008) 京都大学総長、情報通信研究機構理事長、国立国会図書 館長、国際高等研究所長、京都府公立大学法人理事長を 歴任 機械翻訳国際連盟、言語処理学会

    設立者 電子情報通信学会会長、情報処理学会会長などを歴任 (2021年5月23日 ご逝去 享年84歳) 長尾 真 先生 長尾 真: 情報学 哲学 最前線, 
 LRG : library resource guide, 
 Vol. 27, pp. 10-76 (2019) 
 http://hdl.handle.net/2433/244172 

  6. 互恵と寛容 世界へ 21世紀 心 時代である。 科学技術や生命科学 急速な発展にもかかわらず、 人 心 満たされず、人類

    ますますいがみあう方向に行きつつある。 これを宗教や科学技術が受け止め、 どうすれ よいかについて考えることが期待されている。 長尾 真 互恵と寛容 世界を構築するプロジェクト 長尾真・村上陽一郎基金 https://nagaomurakami.org/
  7. AI分野 特異性 • 各々 科学分野にあるべき「中心的な基礎理論」が存在しない ◦ 「知能」 本質について コンセンサス まだ得られていない

    ◦ 「知能」 捉え方 複数存在する ▪ AIマップβ 技術マップだけで 5種類ある • 方法論として 「構成論的アプローチ」 みが共有されている ◦ 「知的なシステムを作って実際に動かす」ことで、知能 本質に迫ろうとしている • 中空 中心を「哲学」で埋めてきた?
  8. 異分野 人どうしが対話する意義 • お互い 分野 枠を超えて、新たなフロンティアを切り開ける可能性がある • 異分野 人と 対話から得た視点を持ち帰り、自ら

    コミュニティに投げかけること で、コミュニティ 発展につなげられる可能性がある • cf. 対話研究会(2021年9月号 長尾先生追悼記事集を参照)
  9. 第2次AIブームまで AIと哲学 • 学際研究活動「サイバネティクス」 ◦ 数学者ノーバート・ウィーナーを中心に推進( 1940年代) ◦ 脳と アナロジーにより知能を計算機で実現するアプローチを探求

    ◦ フォン・ノイマン、アラン・チューリングにも影響を与えた? • 第1次AIブーム収束時 動き ◦ ALPACレポートによる基礎研究 必要性 指摘 [ALPAC 66] ◦ フレーム問題 定義 [McCarthey 69] • 第2次AIブームが喚起した哲学 議論 ◦ 中国語 部屋 [Searle 80] ◦ 一般化フレーム問題 [松原 90] ◦ シンボルグラウンディング問題 [Harnard 90] ◦ 記号主義とコネクショニズム [Russel 02]
  10. 片桐恭弘先生 回想 …しかし、「現代思想」 議論 全くかみ合わなかった。哲学側 「コンピュータで人間 知能が説明でき るなどあり得ない、そもそもそんなことを考える が不遜だ」という論調。 AI側

    「できるかどうか やって みなけれ わからない、コンピュータを使う 研究 方法論であって、方法論を頭ごなしに否定する 理解できない」という論調。なんでこんな議論になる だろうと不思議に思った記憶がある。こ 座談会 が掲載された「現代思想」が出版されてすぐに著名な経済学者に新聞紙上で「頭 固い計算機学者」 よ うに評されてしまった。 もっともAIと哲学 「感情的」すれ違い 日本だけ 現象で ないようだ。 John McCarthyとともにフレー ム問題を提唱したPat Hayes フレーム問題に関する論文を集めた本 中で哲学者がフレーム問題を全 く違う問題にすり替えてしまったと「怒って」いる。 斉藤 康己, 中島 秀之, 片桐 恭弘, 松原 仁 : アーティクル : AIUEO じまりからお わりまで, 人工知能, Vol. 35, No. 5, pp. 257-261 (2020), doi:10.11517/jjsai.35.2_257
  11. 本レクチャーシリーズ 挑戦 • 現代社会が直面する諸課題に向き合い、哲学者とAI研究者 建設的な対話 場 をつくる • 人間と世界に関して細分化を重 た学問

    諸課題を、AI研究というテーブル 上 で再構築する • 第4次AIブーム、さらにそ 先で参照され得る議論をアーカイブとして残す
  12. 「AI哲学マップ」 対談ゲストとテーマ 回数 哲学ゲスト AIゲスト テーマ 第1回 堤富士雄 中島秀之 人工知能と哲学の“これまで”

    と“これから” 第2回 田口 茂 谷  淳 哲学者の眼差しと科学者の目が交差する,新たな場所へ 第3回 第4回 平井靖史 谷口忠大 ベルクソン的「時間スケール」を軸に新たな知能と意識の構成 可能性を探る[前編][後編] 第5回 杉本 舞 松原 仁 コンピューティング史の流れに見る「人工知能」という研究分 野 第6回 伊藤亜紗 西田豊明 人とAI のコミュニケーション 第7回 日比野愛子 江間有沙 「社会の中の AI」という視点 第8回 村上陽一郎 金田伊代 辻井潤一 変容する社会と科学、そして技術 第9回 石田英敬 坂本真樹 (2022年7月号 刊行予定)
  13. AIに関わるひとりひとりができること • 現代社会 さまざまな危機へ 関わり方 ◦ 社会から さまざまな要請に、受け身でなく主体的に「あるべき姿」を語る • 異分野

    人々と 対話を積極的に行う ◦ 哲学 すべて 学問 基盤であり、異分野 人々と 対話を促す ◦ 対話によって得られた視座を持ち帰り、新たな分野を切り開く糧とする