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JSAI 2023企画セッション「AI哲学マップ」企画の振り返り / JSAI 2023 Reflections on the AI Philosophy Map lecture series project

JSAI 2023企画セッション「AI哲学マップ」企画の振り返り / JSAI 2023 Reflections on the AI Philosophy Map lecture series project

学会誌『人工知能』で2021年1月号から2023年5月号まで全15回に渡ってレクチャーシリーズとして実施されて来た「AI哲学マップ」の目的は、新しい人工知能研究の領野を指し示すことにあった。学会誌上で11組の人工地の意研究者と哲学者の対話を記録し、AIと哲学の交差するポイントを収集してきた。本セッションは、その対話の記録を整理し、AIと哲学の間を橋渡しするAI哲学全体マップを提示することで、AI研究と哲学研究が交錯する全体像を提供することにある。また本内容は人工知能学会誌2023年1号から3号に渡って掲載された「AI哲学マップ総論」をレクチャーするものであり、広くレクチャーシリーズの成果を会員および参加者の皆さまに還元するものである。またAI哲学マップの最終的な結果を初めてに公開し解説する。

kiyota-yoji

June 06, 2023
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Transcript

  1. 「AI哲学マップ」企画の振り返り
    JSAI 2023 企画セッションKS-23「AI哲学マップ・総括セッション」
    2023年6月6日 熊本城ホール
    清田 陽司 (人工知能学会 前編集委員長, 株式会社LIFULL)

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  2. 学会誌「人工知能」レクチャーシリーズ
    2001-2002 認知科学(全7回)
    2002-2003 哲学とAIにおける対象世界モデリング
    (全7回)
    2003-2004 AI研究者が学ぶ言語学の新展開(全
    6回)
    2005-2007 脳科学(全9回)
    2007-2009 知能コンピューティングとその周辺(全
    11回)
    2009-2010 知能ソフトウェア工学(全5回)
    2010-2011 サービスイノベーションとAIと教育(全
    6回)
    2011-2012 コンピュータ将棋の技術(全
    7回)
    2013-2015 人工知能とは(全11回)
    2015-2017 つながりが創発するイノベーション(全
    12回)
    2017-2018 シンギュラリティとAI(全7回)
    2019-2020 人工知能と今(全11回)
    2021-2022 AI哲学マップ(全11回)
    2023-2024 AI と社会と人間〜ぶつかる・なじむ・と
    けこむ〜

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  3. レクチャーシリーズ「AI哲学マップ」企画のきっかけ
    ● コロナ禍という人類社会の危機に直面して、学会・編集委員
    会として何ができるだろうか?
    ● AIマップβの新たな発展を図りたい
    ○ 6/13(金)14:00-15:40 企画セッションKS-13「コミュニケーションツール
    としてのAIマップ」(D会場)
    ● 故 長尾真先生「情報学は哲学の最前線」(2019)
    清田 陽司, 三宅 陽一郎: アーティクル:
    レクチャーシリーズ「AI 哲学マップ」開始
    にあたって

    人工知能 2021年1月号, p. 74-78

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  4. なぜ「AIと哲学」なのか?

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  5. AIマップβ マップD「AI研究は多様、フロンティアは広大」

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  6. AI分野の特異性
    ● 各々の科学分野にあるべき「中心的な基礎理論」が存在しない
    ○ 「知能」の本質についてのコンセンサスはまだ得られていない
    ○ 「知能」の捉え方は複数存在する
    ■ AIマップβの技術マップだけで 5種類ある
    ● 方法論としての「構成論的アプローチ」のみが共有されている
    ○ 「知的なシステムを作って実際に動かす」ことで、知能の本質に迫ろうとしている
    ● 中空の中心を「哲学」で埋めてきた?

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  7. 異分野の人どうしが対話する意義
    ● お互いの分野の枠を超えて、新たなフロンティアを切り開ける可能性
    ● 異分野の人との対話から得た視点を持ち帰り、自らのコミュニティに投げかけること
    で、コミュニティの発展につなげられる可能性
    ● cf. 対話研究会(2021年9月号 長尾先生追悼記事集を参照)

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  8. 第2次AIブームまでのAIと哲学
    ● 学際研究活動「サイバネティクス」
    ○ 数学者ノーバート・ウィーナーを中心に推進( 1940年代)
    ○ 脳とのアナロジーにより知能を計算機で実現するアプローチを探求
    ○ フォン・ノイマン、アラン・チューリングにも影響を与えた?
    ● 第1次AIブーム収束時の動き
    ○ ALPACレポートによる基礎研究の必要性の指摘 [ALPAC 66]
    ○ フレーム問題の定義 [McCarthey 69]
    ● 第2次AIブームが喚起した哲学の議論
    ○ 中国語の部屋 [Searle 80]
    ○ 一般化フレーム問題 [松原 90]
    ○ シンボルグラウンディング問題 [Harnard 90]
    ○ 記号主義とコネクショニズム [Russel 02]

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  9. 片桐恭弘先生の回想
    …しかし、「現代思想」の議論は全くかみ合わなかった。哲学側は「コンピュータで人間の知能が説明でき
    るなどあり得ない、そもそもそんなことを考えるのが不遜だ」という論調。
    AI側は「できるかどうかはやって
    みなければわからない、コンピュータを使うのは研究の方法論であって、方法論を頭ごなしに否定するの
    は理解できない」という論調。なんでこんな議論になるのだろうと不思議に思った記憶がある。この座談会
    が掲載された「現代思想」が出版されてすぐに著名な経済学者に新聞紙上で「頭の固い計算機学者」のよ
    うに評されてしまった。
    もっともAIと哲学の「感情的」すれ違いは日本だけの現象ではないようだ。
    John McCarthyとともにフレー
    ム問題を提唱したPat Hayesはフレーム問題に関する論文を集めた本の中で哲学者がフレーム問題を全
    く違う問題にすり替えてしまったと「怒って」いる。
    斉藤 康己, 中島 秀之, 片桐 恭弘, 松原 仁 : アーティクル : AIUEOのはじまりからお
    わりまで, 人工知能, Vol. 35, No. 5, pp. 257-261 (2020),
    doi:10.11517/jjsai.35.2_257

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  10. 本レクチャーシリーズの挑戦
    ● 現代社会が直面する諸課題に向き合い、哲学者とAI研究者の建設的な対話の場をつくる
    ● 人間と世界に関して細分化を重ねた学問の諸課題を、
    AI研究というテーブルの上で再構築
    する
    ● 第4次AIブーム、さらにその先で参照され得る議論をアーカイブとして残す

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  11. 「AI哲学マップ」 対談ゲストとテーマ

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  12. 本レクチャーシリーズからの発展
    ● 総括記事(学会誌38巻1号〜3号)
    ○ 前編: 哲学から人工知能へ 15 の批判
    ○ 中編: 人工知能—哲学対応マップ
    ○ 後編: 七つの哲学—人工知能コラボレーション
    ● 表紙企画「人工知能歴史絵巻」
    ○ 対談で登場いただいた杉本先生、松原先生、谷口先生による監修
    ● 出版企画

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  14. 第4次AIブーム(?)にどう向き合うか?
    ● 社会からのさまざまな要請に、受け身でなく主体的に「あるべき姿」を語る
    ○ 生成AI、大規模言語モデルがもたらす正負双方のインパクトを直視する
    ● 異分野の人々との対話・協働を積極的に行う
    ○ 哲学はすべての学問の基盤であり、異分野の人々との対話を促す
    ○ 予測できない未知の課題には、分野を超えた協働なしには向き合えない

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