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【授業スライド】Well-beingとカルトの関係

 【授業スライド】Well-beingとカルトの関係

授業『人間科学セミナー』のスライド

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  1. Well-beingとカルトの関係
    人間科学セミナー 第3班

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  2. 2
    ü 背景
    − 組織に属するという点で,Well-beingとカルトには一定の関係性が存在
    − 日本では数多くの新興宗教信者が存在 / 宗教相談事例も多い
    ü Well-beingとカルトの関係
    − Lofland-Stark modelや『フランスのセクト』から信者のWell-being的側面を読み解く
    − 当事者であった「飯星さん」のインタビューからWell-beingとの関係を見る
    ü 問いかけ
    − 「Well-being的観点から見て,カルト入信を防ぐためにはどうすればよいか」
    概要

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  3. 3
    • カルト: 過激な新興宗教集団.特定の人物への狂信的な崇拝を伴うことが多い (≒ セクト)
    − 安倍晋三銃撃射殺事件により,改めて日本におけるカルトの問題が顕在化
    − 組織に属するという点で,Well-beingとカルトには一定の連関が存在
    • 日本における著名なカルト
    − オウム真理教
    • 地下鉄サリン事件は記憶に新しい
    − 旧統一協会
    • 岸田内閣の河野太郎消費者担当相が「旧統一教会はカルトに該当する」と発言
    • 日本における新興宗教 (カルト?新興宗教?→一般に区別は難しい)
    − 幸福の科学・創価学会 (フランスでは一時期セクト認定されていた)
    カルトの定義

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  4. 4
    • 一般にカルトと宗教の区別は難しい
    • 報告書『フランスのセクト』: セクト現象を識別するための10の基準を設定
    1. 精神的不安定化
    2. 法外な金銭要求
    3. 元の生活からの意図的な引き離し
    4. 身体の完全性への加害
    5. 児童の加入強要
    6. 何らかの反社会的な言質
    7. 公序への侵害
    8. 多大な司法的闘争
    9. 通常の経済流通経路からの逸脱
    10. 公権力への浸透の企て
    カルトと宗教の違い
    カルトに属することによる
    Well-beingへの影響
    (中島 宏「フランス公法と反セクト法」より)
    https://doi.org/10.15057/8799

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  5. 5
    日本におけるカルト信者数
    • 統一協会
    − 公称60万人 (2015)
    • 幸福の科学
    − 公称1100万人 (2020)
    • 創価学会
    − 公称827万世帯
    日本におけるカルト信者・新興宗教の問題
    最近は旧統一協会の相談が多い
    新興宗教 / カルトの
    問題は未だ存在 2022/9/5 〜 2023/2/13
    日弁連フリーダイヤル等に寄せられた相談
    (全1416件)
    https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/human/consumer/reikanreport2.pdf

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  6. 6
    Lofland-Stark conversion process model [Lofland & Stark, 1965]
    1. 持続的かつ激しいtensionを経験したことがある
    2. その問題を宗教的なperspectiveにより解釈しようとする傾向があること
    3. その試行錯誤の過程で自らを宗教的な探求者と位置づけて行動すること
    4. 人生の転機(turning point)で入会する宗教と出会い
    5. その集団内の一人以上の信者と感情的な絆が形成され(もしくは前もって存在し)信者
    との絆が以前からあったか、絆が新たにあった。
    6. その宗教以外の人たちとの愛着は存在しないか弱まり家族や友人との関係性が希薄と
    なっている。
    7. 正真正銘の信者となるためには、メンバーと集中的に相互交流する必要がある
    信者は何を求め,どういう背景で入信するのか

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    Lofland-Stark conversion process model [Lofland & Stark, 1965]
    1. 持続的かつ激しいtensionを経験したことがある
    2. その問題を宗教的なperspectiveにより解釈しようとする傾向があること
    3. その試行錯誤の過程で自らを宗教的な探求者と位置づけて行動すること
    4. 人生の転機(turning point)で入会する宗教と出会い
    5. その集団内の一人以上の信者と感情的な絆が形成され(もしくは前もって存在し)信者
    との絆が以前からあったか、絆が新たにあった。
    6. その宗教以外の人たちとの愛着は存在しないか弱まり家族や友人との関係性が希薄と
    なっている。
    7. 正真正銘の信者となるためには、メンバーと集中的に相互交流する必要がある
    信者は何を求め,どういう背景で入信するのか
    なんらかの精神的苦痛を和らげ,
    より豊かなWell-beingを得ようと入信

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  8. 8
    Lofland-Stark conversion process model [Lofland & Stark, 1965]
    1. 持続的かつ激しいtensionを経験したことがある
    2. その問題を宗教的なperspectiveにより解釈しようとする傾向があること
    3. その試行錯誤の過程で自らを宗教的な探求者と位置づけて行動すること
    4. 人生の転機(turning point)で入会する宗教と出会い
    5. その集団内の一人以上の信者と感情的な絆が形成され(もしくは前もって存在し)信者
    との絆が以前からあったか、絆が新たにあった。
    6. その宗教以外の人たちとの愛着は存在しないか弱まり家族や友人との関係性が希薄と
    なっている。
    7. 正真正銘の信者となるためには、メンバーと集中的に相互交流する必要がある
    信者は何を求め,どういう背景で入信するのか
    組織に所属することによる
    連帯感や充足感

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  9. 9
    • 一般的な宗教においても幸福感が失われることがある [清水, 2020]
    − 神への不信・対人関係の鬱陶しさ・信仰への疑念といった変数と,
    心理的ストレス に有意な結びつき [Ellison & Lee, 2010]
    • (再掲) 報告書『フランスのセクト』
    1. 精神的不安定化
    2. 法外な金銭要求
    3. 元の生活からの意図的な引き離し
    4. 身体の完全性への加害
    5. 児童の加入強要
    6. 何らかの反社会的な言質
    7. 公序への侵害
    8. 多大な司法的闘争
    9. 通常の経済流通経路からの逸脱
    10. 公権力への浸透の企て
    カルトにより損なわれるWell-being
    ・生活の質や物質的な生活条件
    の低下
    ・エウダイモニアの歪み
    → 社会的通念に反する行動
    カルトによってのみ損なわれうるWell-being

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  10. 10
    飯星さん
    1992年に旧統一教会に入信し,
    その後脱会したタレント・飯星景子さん
    当事者の声: 飯星さんの例 (旧統一協会)
    元信者・飯星景子さんが銃撃事件後初証言
    「統一教会は宗教だと思っていません」
    【報道の日2022】
    入信のきっかけは「悩み・不安」
    「長い間お仕事でつきあってきたスタイリ
    ストさんが入り口でした。..(中略)..女同士だ
    からその時々の悩みも話したりするじゃな
    いですか、そういう悩み事を話してるうち
    にこういう団体があるんだけれどと言って、
    アジア平和女性連合の仕事を頂くのをきっ
    かけに..(中略)..誘われました。」

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  11. 11
    飯星さん「(窓口となる)人のことをすごく信頼していましたし、やっぱり共感みたいなもの
    が欲しかったんだと思いますね。それに世の中って人の心も移り変わるし、常識も
    法律も変わる、何もかも変化していくじゃないですか?言わばグレーゾーンの方が
    大きいわけですよね、(教団では)そこに判断基準が与えられる。世の中1から10まで
    全部決まるんですよ。本当に楽、この楽さが気持ちよかったんだろうなって思いま
    すし、だからその楽さに皆惹かれるのだと思うんです。でも、人との繋がりを遮断
    し、家族にも会わせない、色んな価値観を全部白か黒に決める、これがカルトの世
    界なんですよ。」
    飯星さんの例: 入会理由
    悩みや不安
    人との共感・つながり
    変化する不安定な時代
    に正解を与えてくれる
    「楽さ」
    が心地よい
    (「元信者・飯星景子さんが銃撃事件後初証言」より)

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  12. 12
    飯星さんの例: 入会と損なわれるWell-being
    飯星さん「でも、人との繋がりを遮断し、家族にも会わせない、色んな価値観を全部白
    か黒に決める、これがカルトの世界なんですよ。」
    「そうですね・・・お風呂に入ってると思って下さい。そこにスポイトで一滴ずつ赤い染料を落と
    します。今日一滴入れただけでは色は変わりません。では1か月後はどうですか?少しピンク
    かもしれない。でも毎日入っているうちにピンクが普通だと思うようになるんですよ。それが
    いつの間にか真っ赤なお風呂になっていて、でも本人はもうそれがお風呂の色だと思うように
    なってしまっている、そういう感じです。」
    「私は全然聞く耳もたないで、”あなたと私は違う人間”ってみたいに繰り返して」
    人との共感・つながり
    を排除
    エウダイモニア
    の歪み
    (「元信者・飯星景子さんが銃撃事件後初証言」より)

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    飯星さん「ある日、父が私にドライブしないかって言ったんですよ。すごくバレバレな嘘なんですよ。
    ドライブしないかなんて言われたことなかったですし。それで後から「私に嘘をついた」って
    なじるつもりで、ドライブについていったんです。目的地に着くと父がカウンセリングの先生
    に会ってもらいたくて私に下を向いたまま「会ってもらいたい人がいるんだ」って言ったんで
    すね。その時の顔があまりに弱々しく10歳も20歳も年老いたお爺さんに見えて、その顔を見た
    時に「あぁ私のせいでこんなに苦しんでいる」っていうのが身にしみて分かったんですね。
    今まで見たことがない父の姿を見た時に、私を覆っていたものがほどけたんだと思います。」
    飯星さんの例: 脱退理由
    「今まで見たことの
    ない父の姿」
    歪んだWell-being
    が正しい方向に
    (「元信者・飯星景子さんが銃撃事件後初証言」より)

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  14. 14
    ü まとめ
    − 組織に属するという点で,Well-beingとカルトには一定の関係性が存在
    − 日本では数多くの新興宗教信者が存在 / 宗教相談事例も多い
    ü 問いかけ
    Q. Well-being的観点から見て,カルト入信を防ぐためにはどうすればよいか
    キーワード
    − 精神的苦痛の緩衝・正解を与えてくれる「楽さ」
    − 所属による連帯感・充足感
    − 入らせないためには・抜けさせるためには
    まとめ・問いかけ

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