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電子国家エストニアの現状について

 電子国家エストニアの現状について

電子国家で有名なエストニアは1991年の独立からIT技術を活用することで、国家の基盤を築くとともに、Skypeを始めIT分野で多くのユニコーン企業を生み出しています。

このエストニアの電子国家を支える情報連携基盤「X-Road」などの技術とその活用や、新たなユニコーン企業を生み出すエストニア企業、インキュベーション施設、大学の取り組みなどについて、2019年10月に現地訪問で得た情報や体験を中心にご紹介します。

OSSAJ ミニセミナー(2020年度第2回)登壇資料
https://www.ossaj.org/archives/995

Yukihito Kataoka

January 22, 2021
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Transcript

  1. エストニアまでの経路  高知空港(10月4日16:30発)  羽田空港(10月4日17:30着)  成田空港(10月4日泊、10月5日09:50発)  フィンラン ドヘルシンキ空港(10月5日13:50着、16:25発)

     エストニア タリン空港(10月5日17:00着) フランクフルト経由、モスクワ経由で来られた方もいました トルコやヨーロッパのハブ空港からタリン空港までの便も飛んでいます
  2. 自己紹介 片岡 幸人(Yukihitio Kataoka) 高知在住のリモートワーカ兼マルチワーカ(複業者) マルチコミュニティ 株式会社ダンクソフト 高知スマートオフィス チーフディレクター 株式会社ソフトビレッジ

    代表取締役 高知県佐川町役場 総務課ICTアドバイザー マルチワーカー JAWS-UG 高知(運営メンバー) kintone café 高知(運営メンバー) SORACOM-UG 四国(運営メンバー) Community for AI in 459(運営メンバー) など FacebookID:yukihito.kataoka
  3. エストニア行きの経緯  2014年頃にe-Resiendcyのニュースでエストニアに興味を持つ  2017年頃にエストニアの電子政府に関する著書を購入、現地に一度行っ てみたいと考え始める  2018年4月高知県佐川町ICTアドバイザーの複業開始  2019年2月佐川町副町長が東京の皆さんとエストニア電子政府話で盛り

    上がる  2019年5月副町長よりエストニア行きのお誘いを頂き、エストニア行き のFacebookチャットグループに参加  2019年8月チケット購入(旅費、宿泊費、食費、現地ガイド他含めて50 万円超)  2019年10月エストニア訪問
  4. エストニアの概要  国名: エストニア共和国  独立: 1918年2月24日(回復は1991年8月20日)  人口: 約132万人(沖縄より約10万人少ない)

     面積: 九州+沖縄と同程度  通貨: ユーロ(EU加盟)  名目GDP: 303億ドル(高知県24,295億円)  公用語: エストニア語(英語はだいたい通じる)  首都: タリン(人口約42万人)  時差: 日本から-7時間(UTC+2)  その他: 国の情報システム維持費 年間1億3500万ユーロ
  5. エストニアの生活をとりまく環境  冬は寒い(トップシーズンは夏)  食事は美味しい(特に肉は安くて美味)  観光とITが重要な産業(タリン旧市街は世界遺産)  ネット環境は良い(ホテルwifiやスマホ4Gは快適) 

    物価は日本より安い(1,2割程度の感覚だが)  支払はカード精算(QRやスマホNFC利用は見かけなかった)  交通機関は信頼ベースの精算(違反金は高い)  歴史的背景から危機感が強い(旧ソビエト支配) 首都タリンは店舗も多く公共交通も充実、冬を除けば暮らしやすそう 生活様式と文化に逆らわず、ICT活用に違和感がない
  6. 電子国家エストニアの現状  政府のICT活用が先端 ✓ X-Roadを活用した分散DBで重複データを防止 ✓ ブロックチェーンで公文書改ざん防止 ✓ IDを活用し利便性が高くセキュアな国民ファーストのシステム 

    ビジネス重視 ✓ 政府と企業との良好で密な協力関係(国民の信頼が背景) ✓ 世界に開かれたビジネス環境(e-Residencyと電子居住権) ✓ 積極的な起業育成(国とユニコーンが支援し民間で運営)  その他(e-estonia toolkit 資料の記載にない) ✓ 情報システムを維持する予算の問題 ✓ 順調ばかりでないユニコーンを目指す次世代起業
  7. X-Road + オープンソースのデータ交換レイヤー + 分散型のネットワーク + 年間300万時間の労働時間の短縮 + 3000種以上のサービス +

    年間9億件を超える取引 + 技術はフィンランド、アイスランド、フェロー諸島、 ウクライナ、ナミビアなどに輸出されています 2001年からを導入された 最もトラフィックの多いハイウェイ 引用先:e-estonia toolkit presentation slideshow 2021年資料
  8. X-RoadがつなぐDB(RIK) • 472 の機関と企業が接続 • 150 の公的機関が接続 • X-Road サービスの間接ユーザーが

    約 52,000 組織 • 1232 のインターフェイスを持つ情報システム • 258台のセキュリティサーバーを準備 • 2018年に約9.86億件の問い合わせを処理 • 2018年に1407人年の作業工数節約
  9. X-RoadがつなぐDB  オープンソース Git HUBで公開中 ✓ https://github.com/nordic-institute/X-Road ✓ 主にJava(JDK8)で開発 ✓

    実行環境OSはLinux(UbuntuまたはRHEL) ✓ Dockerコンテナでの運用も可能 ✓ Ansibleでデプロイ 仕組みをオープンにすることで、データ改ざんなどの不正ができない ことを証明し、国民に対して政府の信頼性を証明
  10. ブロックチェーン  KSI(Keyless Signatures‘ Infrastructure)ブロックチェーン https://guardtime.com/timestamping ✓ エストニアで設計されたブロックチェーンテクノロジー ✓ 100%のデータプライバシーを維持(ネットワーク、システム、およびデータを

    安全に維持) ✓ ヨーロッパeIDAS規則に準拠( eIDASは流通するデータを一定の信頼レベルに 保つための規則) ✓ キュメントの一意性を証明する「署名」台帳(ブロックチェーン上のデータを 変更できない) ✓ エストニア政府のネットワークに導入(電子データの信頼性を数学的に証明) データの改ざんや不正閲覧を困難なものにして、政府の国に対する信 頼性を守り、政府と企業の共同事業の正当性を保証する
  11. エストニアは、 政府のレジストリと データの整合性検証に ブロックチェーン技術を使用 しています。 データはブロックチェーンに 保存されません。 ブロックチェーン の先駆者 2012年に導入

    Blockchain ≠ Bitcoin + ブロックチェーンを導入した世界初の国家です + データプライバシー100% + 履歴は誰にも書き換えられることはできません 引用先:e-estonia toolkit presentation slideshow
  12. KSI Blockchain protects database records and audit logs(引用先 Ivo Lõhmus,

    Guardtime) ブロックチェーン ・入力ドキュメントは、ハッシュ値に変換 ・ハッシュ値、時刻、および署名エンティティをKSIブロックチェーンに書き込み ・書き込んだデータは一意性を証明する「署名」 となる ・ドキュメントにアクセスしなくても、ドキュメントの「署名」を個別に確認できる ・保存したドキュメントデータの機密性を確保し、データ変更の追跡を可能にする
  13. 電子IDとその活用  見られてもやばくない、セキュアな電子IDカード ✓ エストニアeIDカード https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82 %A2eID%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89 ✓ e-Residencyライフをより便利に!エストニアのデジタルIDアプリ・Smart-ID の利用方法を徹底解説

    https://estonia-holic.com/how_to_activate_smart-id/ ✓ エストニア生まれのデジタルIDアプリ「xID」日本で期待される役割は https://media.dglab.com/2020/03/22-eid-01/ ✓ PKI DAY 2016 エストニアIDカードPKIマニアック解析 https://www.jnsa.org/seminar/pki-day/2016/data/2-1_miyachi.pdf ✓ エストニアeResidencyカードIDでイーサリアム取引に署名 https://github.com/LogvinovLeon/estid-sig
  14. 電子ID 2002年から導入された最も強力なID。 © copyright + 全国民の電子IDの所有義務 + 電子IDの定期的使用率70% + モバイルID利用率

    17% + スマートID利用率 34% + e-レジデンシー登録者数70000+人以上 引用先:e-estonia toolkit presentation slideshow
  15. 政府と連携するエストニア企業  Cybernetica ✓ X-Roadの開発 ✓ 税関システム・デジタルアイデンティティ・インターネット投票 ✓ 次世代の相互運用性プラットフォーム UXP(Unified

    eXchange Platform)基盤開発 UXPとは エンドユーザーのモバイルデバイスを安全な認証 デバイスに変え、オンラインサービスプロバイ ダーに信頼性の高い安全なエンドユーザーアクセ ス管理ツールを提供するプラットフォーム。エン ドユーザーは欧州連合の規制(eIDAS指令)に 従ってドキュメントにデジタル署名することもで きる。 https://cyber.ee/products/secure-data- exchange/
  16. 政府と連携するエストニア企業  RIK(Centre of Registers and Infomation System ) ✓

    法務省管轄下で ICT に焦点を当てた国の仲介機関 ✓ RlK が司法分野全体の ICT を集中化 ✓ 国の省庁やその他の法的機関は人員を持たず、すべてを RIK に外注 ✓ 250人以上の専門家を配置し、効率的な電子政府を目指す ✓ 200を超えるさまざまなサービスを提供 (法務省、検察庁、裁判所、刑務所、その他国家機関、 省庁ワークデスクサービス、首相府、EU理事会他) 司法、ビジネス、不動産などの電子政府を実現するコアなシステムの 運用を一手に担っている
  17. 政府と連携するエストニア企業  国民から監視されているエストニアの公務員 ✓ 日本の「公務員のぞき見天国」、エストニアの「公務員のぞき見地獄」 • 公務員が業務システムにログインするのに国民IDカードが必要 • 公務員は、業務内容に応じて、その都度電子認証や電子署名を行なう •

    国民は自分のデータに「誰が」何のためにアクセスしたのかを確認できる • 国民は不正な閲覧の疑いがあれば、即時に通報できる • 公務員は(業務上必要のない)不正なデータ閲覧が発覚すると解雇される 引用先:日本の「公務員のぞき見天国」、エストニアの「公務員のぞき見地獄」 https://www.manaboo.com/wordpress/?p=1988
  18. 日本での動き  千葉県市川市 ✓ 「DX先進都市」を目指す市川市、エストニア電子政府のデータ連携技術「X-Road」を 採用(Planetway Japanの協力を得て、市の既存・新規システムに段階的に実装) https://it.impress.co.jp/articles/-/18058  ニチガス

    ✓ 日本初!X-Roadとブロックチェーンを商用実装した、コールセンター向けワンストップ サービスを開発・運用開始! https://www.zaikei.co.jp/releases/840758/  三井住友信託銀行 ✓ 三井住友信託銀行・NECなど、情報共有技術「UXP」を活用した信託プラットフォーム 構築共同検討を開始 https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP510343_T20C19A5000000/  石川県加賀市 ✓ 加賀市、エストニア発GovTechスタートアップと提携(スマホアプリに公的な身分証と 同等の「デジタル身分証」機能) https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/122401396/
  19. ユニコーンを輩出する起業文化(LIFT99)  エストニアが生み出したユニコーン ✓ P2P通話システムの Skype (2003年創業) ✓ 配車サービスの Bolt

    (2013年創業) ✓ カジノゲームの Playtech (1999年創業) ✓ 送金サービスの TransferWise (2011年創業) ✓ 移動型銀行預金口座アプリの Monese (2014 年創業) ✓ 顧客管理システム(CRM)の pipedrive (2010年創業?)
  20. ユニコーンを輩出する起業文化(LIFT99) エストニアの企業支援 ✓ Startup Visa • エストニアのエコシステムに直接アク セスするため長期(状況に応じて1年、 5年など)にわたる入国ビザを取得 •

    80か国以上からの利用者が1500以上の アプリケーションを提供し、35%の成 功率 ✓ e-Residency • 電子国民としてエストニアのエコシス テムへの仮想アクセスし、簡単にリ モートでビジネス • 銀行口座開設だけエストニアで手続き すれば、リモートで起業(銀行口座な しでも会社登記は可能)
  21. ユニコーンを輩出する起業文化(LIFT99)  エストニアのスタートアップコミュニティ ✓ Start up week tarin や Startup

    Day などのコミュニティ • Startup Estonia is supercharging the Estonian startup ecosystem https://startupestonia.ee/ • sTARTUp Day 2021 https://www.startupday.ee/ • Startup Estonia https://www.facebook.com/startup estonia/ https://twitter.com/startupestonia
  22. ユニコーンを輩出する起業文化 米国、エストニア、日本に拠 点を持つ起業 Planetway https://planetway.com/ ✓ 本社は米国サンノゼ、開発拠点は エストニアのタリン、ビジネス開 発とバックオフィス機能が東京 ✓

    ICT先進国エストニアで生まれた情 報連携基盤を民間向けに応用開発 ✓ サービス品質の高い日本で実証し、 米国本社を起点として世界展開を 目指す
  23. 最後に(まとめ)  国家のICT活用が最先端 ✓ X-Road(分散DB)、ブロックチェーン(証明)、電子ID(認証) ✓ あらゆる日常生活のサービスをIT化(省力化) ✓ IT技術最先端というより、ICT活用が最先端(無論技術力も高いが) 

    ICTのビジネス重視 ✓ 国家システムを海外へ展開(国家と企業がタッグ) ✓ 世界に開かれたビジネス環境(e-Residencyや電子居住権など) ✓ 国家とユニコーンが次の起業を支える(海外からの投資)  ロシアの脅威 ✓ グローバルな情報国家運営(サーバはルクセンブルク)
  24. 最後に(お勧め著書)  ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つま らなくない未来 https://www.amazon.co.jp/dp/4478106207/  e-エストニア デジタル・ガバナンスの最前線 https://www.amazon.co.jp/dp/4822289672/

     未来型国家エストニアの挑戦【新版】 電子政府がひらく世界 https://www.amazon.co.jp/dp/4844397508/  TRANSIT(トランジット)47号 バルトの光を探して https://www.amazon.co.jp/dp/4065191181/