Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
仮説設定における思考過程とその評価に関する基礎的研究
Search
Daiki Nakamura
August 06, 2016
Education
0
160
仮説設定における思考過程とその評価に関する基礎的研究
日本理科教育学会第66回全国大会信州大会 2016年8月6日
Daiki Nakamura
August 06, 2016
Tweet
Share
More Decks by Daiki Nakamura
See All by Daiki Nakamura
適切な回帰推定量の使用が学力調査の推定精度を向上させる効果の検討
arumakan
0
14
Developing a Diverse Interests Scale for STEM Learners: Based on the ROSES Survey in Japan
arumakan
0
10
条件制御能力を測定するコンピュータ適応型テストの開発
arumakan
0
160
科学教育の読書会を中心とした新しい研究活動の展開
arumakan
0
170
The Value of Science Education in an Age of Misinformation
arumakan
1
170
教育研究における研究倫理問題の論点整理
arumakan
0
530
TIMSS 2019 環境認識尺度に関する日本人学習者の特徴
arumakan
0
190
統計勉強会2023春@岡山大学
arumakan
0
900
Materials for ReproducibiliTea session on Pownall et al. 2022
arumakan
0
170
Other Decks in Education
See All in Education
技術を楽しもう/enjoy_engineering
studio_graph
1
420
TP5_-_UV.pdf
bernhardsvt
0
100
Os pápeis do UX Design
wagnerbeethoven
0
370
Evaluation Methods - Lecture 6 - Human-Computer Interaction (1023841ANR)
signer
PRO
0
700
Master of Applied Science & Engineering: Computer Science & Master of Science in Applied Informatics
signer
PRO
0
430
RSJ2024学術ランチョンセミナー「若手・中堅による国際化リーダーシップに向けて」資料 (河原塚)
haraduka
0
220
PSYC-560 R and R Studio Setup
jdbedics
0
520
老人会? いえ、技術継承です @ builderscon 2024 LT
s3i7h
0
110
"数学" をプログラミングしてもらう際に気をつけていること / Key Considerations When Programming "Mathematics"
guvalif
0
560
Flip-videochat
matleenalaakso
0
14k
SQL初級中級_トレーニング【株式会社ニジボックス】
nbkouhou
0
20k
Beispiel einer Fortbildung für "Soziales Lernen"
gsgoethe
0
120
Featured
See All Featured
Designing Experiences People Love
moore
138
23k
Building Your Own Lightsaber
phodgson
103
6.1k
XXLCSS - How to scale CSS and keep your sanity
sugarenia
246
1.3M
What’s in a name? Adding method to the madness
productmarketing
PRO
22
3.1k
It's Worth the Effort
3n
183
27k
How To Stay Up To Date on Web Technology
chriscoyier
788
250k
Six Lessons from altMBA
skipperchong
27
3.5k
Writing Fast Ruby
sferik
627
61k
The Power of CSS Pseudo Elements
geoffreycrofte
73
5.3k
Building an army of robots
kneath
302
43k
BBQ
matthewcrist
85
9.3k
Exploring the Power of Turbo Streams & Action Cable | RailsConf2023
kevinliebholz
27
4.3k
Transcript
仮説設定における思考過程と その評価に関する基礎的研究 広島大学大学院 ◦中村 大輝 広島大学大学院教育学研究科 松浦 拓也 理科教育学会 2016-8-6
全26枚+補
仮説設定 研究概要 研究の目的 仮説設定の評価について検討した上で、学習者が 説明仮説を立てる際の思考過程を明らかにする 2 実験方法の考案 ? 説明仮説の形成 問題の把握
⚫ 何を評価するか ⚫ どのように評価するか ⚫ どのように考えているのか ⚫ 個人差の要因は何か
仮説設定 研究概要 研究の目的 仮説設定の評価について検討した上で、学習者が 説明仮説を立てる際の思考過程を明らかにする 3 実験方法の考案 ? 説明仮説の形成 問題の把握
✓ 仮説設定における評価方法 ✓ 仮説設定の思考過程 ✓ 思考傾向との関連
研究の背景|PISA2015の枠組み 4 科学的リテラシー S c i e n t i
f i c L i t e r a c y ② 科学的な調査のデザインと評価の力 ③ データと証拠を科学的に解釈する力 ① 現象を科学的に説明する力 →仮説設定能力の育成は重要な目標の1つ (OECD,2016)
研究の背景|先行研究の課題 5 ⚫ 仮説設定に関する研究の課題 1. 何をどのように評価するべきかの研究が不足 2. どのように考えて仮説を立てているのかが 明らかになっていない 3.
何が個人差に繋がっているのかが不明
研究の方法 6 * 評価の方法 Ⅰ.仮説設定の評価に関する理論的検討 * 思考傾向との関連 Ⅲ.思考傾向の個人差と思考過程の合理性の関連 * 思考過程
Ⅱ.仮説設定における大学生の思考過程の実態調査
Ⅰ.理論的検討|歴史的経緯 Popper (1968) 仮説設定の過程は、 ただの推測や自由な発想、 詩的直感の結果に過ぎず、 論理的分析は必要無い Peirce(1955) ,Hanson(1961) 仮説設定のプロセスは心理
的要因を含む、論理的・ 合理的なプロセスである 7 ⚫ 多くの科学教育、科学哲学の研究者は、 仮説設定のプロセスに関心を示してこなかった(Park,2006) →思考過程の合理性という観点から評価を行うべき 現代的科学観
Ⅰ.理論的検討|評価の先行研究 8 評価の先行研究 文献 評価方法 石井ら(2011) 客観的な根拠を挙げられているか 川崎ら(2015) ①問題を説明するものになっているか /②根拠があるか/③検証可能か
直感的な思考の産物という批判を解決できていない 結果としての 仮説を評価 →結果ではなく、思考過程の合理性を評価するべき 思考過程の合理性という観点からの評価を 行った研究は見られない
Ⅰ.理論的検討|評価の先行研究 9 評価の先行研究 文献 評価方法 山田・小林 (2014) 仮説設定能力を「変数の同定」と 「因果関係の認識」に分けて、 それぞれの調査問題により評価
この枠組を採用し、それぞれの過程の合理性を評価 仮説設定のプロセスを意識した研究
Ⅰ.理論的検討|評価対象の具体 10 因果関係の認識 変数の同定 仮説設定能力 山田・小林(2014) 思考過程における2つの要素の 合理性を0~2点で得点化 2点 2点
計4点 仮説設定の 合理性 変数の同定過程 の合理性 因果関係の認識過 の合理性 合理性評価の枠組み
Ⅰ.理論的検討|合理性の得点化基準 11 変数の同定 因果関係の認識 2点 根拠を持って変数を選択・ 消去している 示されたすべての変数につ いて検討している 変数間の因果関係を論理的に
説明できている 1点 根拠なく変数を選択・消去 している 一部の変数しか検討してい ない 変数間の因果関係の説明に 飛躍や破綻がある 0点 変数を意識できていない 変数間の因果関係を説明して いない 合理性の得点化基準
研究の方法 12 * 評価の方法 Ⅰ.仮説設定の評価に関する理論的検討 *思考傾向との関連 Ⅲ.思考傾向の個人差と思考過程の合理性の関連 * 思考過程 Ⅱ.仮説設定における大学生の思考過程の実態調査
Ⅱ.思考過程の実態調査|方法 13 仮説設定問題の提示 発話思考法を用いな がら、仮説を立てる ことを求める 思考過程 面接の流れ 半構造化面接の実施 合理性得点
合理性の得点化 2つの要素について 合理性を得点化する n=16 認知欲求の調査 全6問
Ⅱ.思考過程の実態調査|調査問題6 14 (問題状況の要約) そのまま水に入れる 粉にして水に入れる 軽石 浮く 沈む 割り箸 浮く
沈む 軽石も割り箸も1つのかたまりのときは浮くのに、削ると 沈むという同じような性質を示すのはなぜでしょうか? 仮説を立ててください。
Ⅱ.思考過程の実態調査|合理性得点 15 知識に依存していない n.s. n.s. n.s.
Ⅱ.思考過程の実態調査|合理性が高い思考過程の特徴 16 自身の思考に間違いがないか振り返る思考場面 が相対的に多く見られる <例> • そんな限定的ではないのではないか? • 白亜紀後期が新第三紀より後だとしたらどうだろう か?
Ⅱ.思考過程の実態調査|方法 17 仮説設定問題の提示 発話思考法を用いな がら、仮説を立てる ことを求める 思考過程 面接の流れ 半構造化面接の実施 コーディング
思考過程の分析 思考過程の構成要素を 整理する n=16 認知欲求の調査 →計6個のプロセスを抽出 全6問
Ⅱ.思考過程の実態調査|仮説設定の思考過程 18 ① 問題状況の理解 ② 変数の同定 ③ 因果関係・規則性の認識 ④ 仮説の表現
⑤ 目標・方向性の確認 ⑥ 仮説の批判的検討 思考過程の構成要素
Q1の思考過程(例) 19 問題状況 の理解 目標・方向性 の確認 変数の同定 因果関係・ 規則性の認識 仮説の
批判的検討 仮説の表現 3 5 5 23 6 3 5 3 5 15 (出現回数) →出現頻度の高い経路を整理
Ⅱ.思考過程の実態調査|仮説設定の思考過程 20 問題状況 の理解 目標・方向性 の確認 変数の同定 因果関係・ 規則性の認識 仮説の批判的検討
仮説の表現
研究の方法 21 * 評価の方法 Ⅰ.仮説設定の評価に関する理論的検討 *思考傾向との関連 Ⅲ.思考傾向の個人差と思考過程の合理性の関連 * 思考過程 Ⅱ.仮説設定における大学生の思考過程の実態調査
Ⅲ.合理性の個人差 22 認知欲求と合理性の関連 Stanovich(2009) 思考傾向の個人差 →合理性の個人差に影響 認知欲求 (Manktelow, 2012) 努力を要する認知活動に従事したり、
それを楽しむ内発的な傾向 (Cacioppo & Petty, 1982) 認知欲求と仮説設定における 合理性との関係性に着目
Ⅲ.合理性の個人差|認知欲求質問紙の構成 23 神山(1991) 日本語版認知欲求尺度15項目 Cacioppo & Petty(1982) 因子負荷量が.4以上の10項目 表記の修正・項目の再検討 2015年12月24日
理系大学生109名 因子構成の確認 面接調査での利用
Ⅲ.合理性の個人差|相関分析 24 Spearmanの順位相関(ノンパラメトリック) 認知欲求 合理性得点 相関係数 .520* 有意確率 (両側) .039
N 16 →有意な正の相関が見られた 日頃から疑問を見出して考えることを楽しむ思考傾向は、 変数や因果関係を見出す能力と関係がある
今後の課題 25 ◆明らかになった仮説設定の思考過程や個人差の 要因をもとに、実際の授業場面における指導法 を検討する ◆面接以外で思考過程の合理性を評価する方法に ついて検討する
研究概要 仮説設定の評価について検討した上で、学習者が 説明仮説を立てる際の思考過程を明らかにする 26 * 評価の方法 思考過程における<変数の同定>と<因果関係の認識>の合理性を評価 * 思考傾向との関連 自身の思考に間違いがないか振り返る過程が重要
認知欲求(普段から問題を考えたり、楽しもうとする動機)と合理性の相関 * 思考過程 問題状況の把握 → 変数の同定 ⇄ 因果関係・規則性の認識 → 仮説の表現 +目標・方向性の確認 +批判的検討 研究全体の目的