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高校生が学ぶ、東日本大震災からの復興

防災地理部
September 20, 2023

 高校生が学ぶ、東日本大震災からの復興

2023年7月25日から3泊4日で愛媛県の宇和海沿岸の高校生が東日本大震災の被災地を訪れました。その事前学習として、震災復興を5つの要素 (地形と土地利用、海との関係、各まちの拠点、産業の再生、まちの歴史)からまとめました。

防災地理部

September 20, 2023
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  1. ポイント:地形のちがい 1. 地形の特徴と⼟地利⽤ 6 2023/7/25 津波の流速 速いまま 内陸に向かって減衰 居住地として 利⽤できる⾼台

    リアス部 平野部 あり なし → 浸⽔域の家は流出の危険 → 浸⽔域を⾮居住とするのは難 2011年津波と同等の津波により 浸⽔しない⾼台に居住地を配置 嵩上げや防御施設で浸⽔深2m 以下にすれば居住を許可 宮城県の例)
  2. リアス部の例 – ⾼台移転,職住分離 1. 地形の特徴と⼟地利⽤ 7 2023/7/25 住宅エリア 公共施設 道路・鉄道

    ⼯場 商業施設 農地 • ⼥川,気仙沼,南三陸,陸前⾼⽥ 2011年津波と同等の津波により 浸⽔しない⾼台に居住地を配置
  3. 平野部の例 – 多重防御 1. 地形の特徴と⼟地利⽤ 9 2023/7/25 防災緑地 農地 道路

    鉄道 商業 減衰 減衰 • 荒浜,⽯巻市街地 嵩上げや防御施設で浸⽔深2m 以下にすれば居住を許可 構造物で津波の勢いを減衰
  4. 平野部の例 – 多重防御 • 仙台東部道路 • 7m-10mの盛り⼟構造 • 住⺠の避難先,市街地への津波や⽡礫の流⼊防⽌の機能 1.

    地形の特徴と⼟地利⽤ 10 2023/7/25 東⽇本⼤震災メモリアル https://infra-archive311.jp/sp_sign/infra.html 仙台市HP 仙台東部道路の避難階段を使った津波訓練の様⼦ https://www.city.sendai.jp/shiminkoho/shise/daishinsai/zenkoku/photoarchive/fukko/059.html
  5. シーパルピア⼥川 JR⼥川駅から海の⽅へ向けて緩やかに下がっていくプロムナード レンガみちの商業施設「シーパルピア⼥川」 町に分散⽴地した商店を思い切って集約し,集客効果で賑わいを⽣み出す ポイント • 町⺠に優先的に⼊ってもらい,外部の⼈にも声をかける ▷新しい⾵を • 町が⼟地を所有・施設整備し,テナントとして⼊ってもらう

    ▷後継者不⾜等による廃業→シャッター街となることを防ぐ 統⼀的なデザインと,上記の仕組みで,復興後のまちの 商業の維持と発展も考えられた計画 3. 各まちの拠点 23 2023/7/25 (2018 グッドデザイン賞 ⼥川町震災復興事業より)
  6. アバッセたかた 地元のことばで「⼀緒に⾏きましょう」を意味する「あばっせ」 地域に密着したタウンセンター「アバッセたかた」 被災当時は海側のバイパス沿いに位置していた,全壊したショッピングセンターを市街地に移転 市⺠の⽇常的な⽣活を⽀える商業各施設を早期に整備し,まちづくりを先導する役割を担う ポイント • 市⽴図書館との⼀体的な整備 • スーパー,ドラッグストア,⼤型⾐料品店

    の集客⼒で被災事業者の事業持続⼒に繋げる • その他のまちなか利⽤者も利⽤できる 市営の⼤型駐⾞場をアバッセ前に整備 ▷被災前は,バイパス沿いにロードサイド店の出店が進み, 市街地の⾞での利便性の低さが衰退の⼀因でもあった 3. 各まちの拠点 24 2023/7/25 (Web東海新報より) https://tohkaishimpo.com/2018/05/09/204360/ 図書館 商業エリア 市営駐⾞場
  7. 東⽇本⼤震災の産業への影響 4. 産業の再⽣ 28 2023/7/25 • 地域間格差の存在 • 事業所・従業者数が半減 以下の⾃治体も存在

    • 2012年と2009年の事業所・従業者数の増減 どのようにして,働く場所を 回復し,住み続けられるまち をつくるか 復興庁 被災地域の 経済・産業の現状と 復旧・復興の取組 https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-19/261201_fukkyufukkou.pdf
  8. 地域の基幹産業の早期復旧・復興 • ⽇本製紙⽯巻⼯場 • 従業員は3000⼈に上り,地域経済の根幹を担う地域のシンボル • 被災15⽇後の3⽉26⽇には,「⽯巻⼯場を必ず復興させる」と宣⾔ → 市⺠の復興の励みに •

    1年半後には完全復興を果たす 4. 産業の再⽣ 30 2023/7/25 ⽇本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC176MP0X10C22A2000000/ 基幹産業の復興が精神的な ⽀えになる
  9. 東北と津波の歴史 5. まちの歴史 32 2023/7/25     明治三陸津波

    国⼟地理院 https://www.gsi.go.jp/johofukyu/kani_ortho_1.html Google Earth 2010 1977 東⽇本⼤震災の浸⽔範囲 昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災 陸前⾼⽥市 東⽇本⼤震災以前,都市は災害に備えられていたか
  10. 陸前⾼⽥市と津波① 5. まちの歴史 33 2023/7/25 今昔マップ on the webより 

       明治三陸津波 昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  まちの始まり • 陸前⾼⽥市の原初の集落は, ⼭裾の街道沿いにある,⾼⽥ と今泉の両集落であった.
  11. 陸前⾼⽥市と津波② 5. まちの歴史 34 2023/7/25 今昔マップ on the webより 

       明治三陸津波 昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  駅の開業 • 1933年に陸前⾼⽥駅が開業 • 低地部に置かれた ← 政治的な理由 将来の発展の余地を残すため • 1952年時点では,建物は⼭裾の 集落に密集
  12. 陸前⾼⽥市と津波③ 5. まちの歴史 35 2023/7/25 今昔マップ on the webより 

       明治三陸津波 昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  • チリ地震津波後,陸前⾼⽥駅前 で⼟地区画整理事業 (1961 – 1981) → 低地部の駅に向けて市街地 が発展 ※⼟地区画整理事業…公共施設整備や宅地 開発を⽬的に,⼟地の区画を変更・新設す る制度(市街地開発) 駅前の⼟地の 区画整理事業
  13. 陸前⾼⽥市と津波④ 5. まちの歴史 36 2023/7/25 今昔マップ on the webより 

       明治三陸津波 昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  低地を通るバイパス ⾼台の開発 • 1983年 国道45号バイパスが低 地部に開通 → 低地部の市街地が更に拡⼤ • ⾼台の住宅団地の開発 → 東⽇本⼤震災直前には,⾼ 台の⼈⼝増
  14. ⼤船渡と津波① 5. まちの歴史 37 2023/7/25     明治三陸津波

    昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  • 内陸の盛町(商業・⾏政)と,湾⻄側の⼤船渡 村(漁業)を中⼼に発展 まちの始まり
  15. ⼤船渡と津波② 5. まちの歴史 38 2023/7/25     明治三陸津波

    昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  駅の開業 • 1934, 35年 盛駅・⼤船渡駅が開業 • 低地部を通る国道45号 旧国道45号
  16. ⼤船渡と津波③ 5. まちの歴史 39 2023/7/25     明治三陸津波

    昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  • チリ地震津波の甚⼤な被害を経て,防災都市を 建設 1. 低地部は⼯業⽤地として利⽤(減災的⼟ 地利⽤) 2. 低地を通る国道45号の⾼台への付け替え (丘陵部の道路の重要性) 国道の⾼台 への付け替え 低地部の⼯業利⽤
  17. ⼤船渡と津波④ 5. まちの歴史 40 2023/7/25     明治三陸津波

    昭和三陸津波 チリ地震津波 東⽇本⼤震災  • 東⽇本⼤震災前には,国道沿いの丘陵部や内 陸で⼈⼝が増加していた
  18. ⼤事にしたこと・気をつけたこと・教訓など • 災害発⽣後、どういう町にしたいのか。 • 浸⽔後、どのような⼟地利⽤がされる? • ⼈に住んでほしいのか、居住はなくなる前提なのか? • 元々あった施設はどうする?移転?現地再建? •

    ⽣業や町の産業は? • 産業がない町は、財源もなくなり、衰退してしまう • 元の仕事に戻れるのか?いつ、戻れるのか? • 過去の復興や他事例の参照 • いい例も悪い例もある。 • 違う⼟地にそのまま転⽤できるわけでもない。 • 予算制約も変わるだろう。 6.⼤学での事前復興演習や避難研究の取り組み 53 2023/7/25
  19. 参考⽂献 *図はスライドに記⼊したため省略 全体 • 伊藤滋編著. 都市計画家・伊藤滋がみた東北復興縦断2011-2021.有限会社万来舎, 2023年5⽉. ⼥川 • ⼟屋信⾏.

    「防潮堤のない町 ⼥川復興物語」 2021年3⽉https://www.sankei.com/article/20210310- YQP4Q3JLRZOVTCRRE3SPGVLWZ4/ (最終閲覧⽇: 2023年7⽉16⽇) 陸前⾼⽥ • 中井検裕, ⻑坂泰之, 阿部勝, 永⼭悟編著.復興・陸前⾼⽥ゼロからのまちづくり.⿅島出版会, 2022年3⽉. 花露辺・舞根 • 菅沼栄⼀郎. 「震災10年『防潮堤に頼らない』を選んだ⼆つの街 被災前の砂浜を取り戻した地域も」2021年2⽉14 https://dot.asahi.com/aera/2021020900071.html (最終閲覧⽇: 2023年7⽉17⽇) 南三陸さんさん商店街 • ⼩島まき⼦. 「南三陸さんさん商店街の今までとこれから。移転先でもおもてなしを!」 2016年8⽉1⽇ https://m- now.net/2016/08/sansan-3.html (最終閲覧⽇: 2023年7⽉17⽇) • 経済産業省. 「南三陸さんさん商店街(南三陸志津川福興名店街運営組合)」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monozukuri300sha/shoutengai30/2014/S03.pdf (最終閲覧⽇: 2023年7⽉17⽇) 防災地理部 避難と復興まちづくりを学ぶ東北視察事前レクチャー(仮) 54 2023/7/25
  20. 参考⽂献 *図はスライドに記⼊したため省略 復興まちづくり • 宮城県, 復興まちづくり計画の概要, https://www.pref.miyagi.jp/documents/35873/03_1syou.pdf, (最終閲覧⽇2023年7⽉25⽇) • 宮城県⼟⽊部,災害に強いまちづくり

    宮城モデルの構築, https://www.pref.miyagi.jp/documents/9134/725618.pdf (最終閲覧 ⽇2023年7⽉25⽇) 産業の復興 • 復興庁, 2014年12⽉, https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-19/261201_fukkyufukkou.pdf (最終閲覧⽇2023 年7⽉25⽇) • 農林⽔産省, 特集 東⽇本⼤震災の発⽣から10年、 現在の姿と残された課題 , https://www.maff.go.jp/tohoku/seisaku/zyousei/file/attach/pdf/19_zyousei-79.pdf (最終閲覧⽇2023年7⽉25⽇) • ⽇本製紙グループCSR報告書2012, https://www.nipponpapergroup.com/contents/200140746.pdf(最終閲覧⽇2023年7⽉25⽇) まちの歴史 • ⼩関 玲奈, ⼭本 正太郎, ⽻藤 英⼆, 津波・⽔害常襲地域における都市形成と災害後の都市計画的対応に関する⽐較分析, ⼟ ⽊学会論⽂集D2(⼟⽊史), 2022, 78 巻, 1 号, p. 47-58, 防災地理部 避難と復興まちづくりを学ぶ東北視察事前レクチャー(仮) 55 2023/7/25