Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

中央教育審議会 教育課程企画特別部会 情報・技術ワーキンググループに向けた提言 ー次期学習指導...

中央教育審議会 教育課程企画特別部会 情報・技術ワーキンググループに向けた提言 ー次期学習指導要領での情報活用能力の抜本的向上に向けてー

特定非営利活動法人みんなのコードは、「中央教育審議会 教育課程企画特別部会 情報・技術ワーキンググループに向けた提言 ー次期学習指導要領での情報活用能力の抜本的向上に向けてー」を発表します。

本提言は、次期学習指導要領の議論に資するものとして、子どもたちが「本当につくりたいものづくり」を実現できる情報教育の姿を示しています。

Avatar for みんなのコード

みんなのコード

September 24, 2025
Tweet

More Decks by みんなのコード

Other Decks in Education

Transcript

  1. 2 はじめに ー 情報・技術ワーキンググループ(WG)の議論に向けて ー 2024年12月、文部科学大臣は中央教育審議会に「初等中等教育における 教育課程の基準等の在り方について」を諮問し、小中高等学校を通じた 情報活用能力の抜本的向上を図る方策が検討事項となった。 2025年9月に教育課程企画特別部会が公表した「論点整理(案)」では 小学校

    情報の領域(仮称)、中学校 情報・技術科(仮称)の新設などが 示され、今後、情報・技術WGで詳細な検討がされることとなっている。 みんなのコードは、各地域・学校との実証研究や「小・中・高等学校に おける情報教育の体系的な学習を目指したカリキュラムモデル案」の 公表など、2030年代の情報教育の充実に向けて様々な取組を行ってきた。 これらの知見に基づく視点は情報・技術WGの議論でも有効と考え、本提言 を公表する。
  2. 4 「子どもが本当につくりたいものづくり」が必ずしも実現できていない 「大人がつくらせたいものづくり」から「子どもが本当につくりたいものづくり」への転換が、「情報・ 技術は自分の道具で、今後新しい技術が出てきても活用できる」という信念を育み、情報技術の発展によ る「多様な個人の思いや願い、意志を具現化し得るチャンス」(諮問文)を掴む基盤となる。 • 技術進展が早いトピックは、学校で学んだ知識が陳腐化するとの指摘もある • しかし、情報技術を用いた表現・課題解決等の経験は「今後、新しい技術が 現れたとて、自身で活用できる」という信念の涵養につながる

    • 上記育成には、課題解決等の前に、情報技術を用いて「自身がつくりたいも のをつくる」経験を通じ、つくる喜びを味わうことが重要ではないか • 興味関心・好きと結びついたものづくりを、実現するための議論を ◦ 教師等が題材・方策など、ものづくりを主導しすぎない ◦ 学びに向かう力・人間性等(特に、初発の思考や行動を起こす力・好 奇心との関連で)に「つくり出す喜びを味わう」ことの明記を検討 ◦ 必要な例示の在り方、環境整備等も合わせて検討 1. AI時代の情報・技術教育の意義の確認 2. 「子どもがつくりたいもの」をつくれる教育の実現 ▲ 宮城教育大学附属小学校 「小学校情報科」の様子
  3. 5 • 生成AIが社会に与える影響を考慮し、情報活用能力の中で位置付けるのみなら ず、必要なAIリテラシーについて、基本的な考え方を整理 ◦ 特に生成AIの特性の理解等の取扱を、各学校段階でどのように扱うかを 検討 ◦ リスクのみならず、有効な活用のために必要な観点も十分に議論・記載 •

    先進校のみならず、全ての学校に普及するための方策もあわせて議論 • 生成AI等の新技術については、解説だけでなく情報・技術領域の学習指導要 領も、よりタイムリーな改訂を検討 生成AIなど、新技術への対応 個の興味関心に応じたものづくりの実現のために、生成AIなどの活用は不可避。 リスクだけでなく、有効な活用のために必要なAIリテラシーなどの議論が必要ではないか。 1. 2030年代のAIリテラシーの定義 2. 学習指導要領のタイムリーな改訂 ▲ 印西市立原山小学校 生成AIを扱う授業の様子
  4. 6 多様性包摂・DE&Iの観点 携わる全員が多様性包摂・DE&Iの視点をもって議論することで「全ての子供が多様で豊かな可能性 を開花」(諮問文)につながるのではないか。その際、ジェンダーバランスを女性委員だけが検討す るなど、一部の参加者のみに多様性の課題を託すことがないよう期待したい。 • 多様な背景をもつ児童生徒にとって魅力的か検討し、別例の検討や、例示数 を増やす等の工夫を • その際、以下のような視点での確認も

    ◦ 女子も、苦手意識をもたず、興味関心をもって取り組める事例か ◦ 海外につながる、様々な特性のある、特異な才能のある児童生徒な ど、多様な子どもの姿を想定しているか • 研修参加者が男性に偏る、1の観点が教科書/教材から落ちるなど検討 ◦ (教科書の)作成過程にその教科の専門以外の人も関わることで、 その教科が苦手な人にとってもわかりやすくできると良いという 当事者の声も参照* • 教育関連事業者等に対するメッセージの発出等にも期待 * 教育課程部会 教育課程企画特別部会(第7回) 【参考資料3ー2】学びの在り方等に関する子供への意見聴取(報告資料)より 1. 活動を例示する際の工夫 2. 改訂後も多様性包摂・DE&Iの観点が重視されるよう初期段階から検討 ▲ 日本女子大学附属中学校 技術分野の様子 ▲ 筑波大学附属聴覚特別支援学校 技術分野の様子
  5. 7 体系的な情報教育を、学校現場が確実に実践できるような「分かりやすく、使いやすい学習指導 要領」を実現するため、以下のような観点を踏まえるのが良いのではないか。 • 単なる活動の例示に止まらないように留意を(特に小学校段階) • 「探究に資する」観点というのみで検討せず、情報・技術に固有の中核的な 概念・方略等を、以下のような情報教育の特性を踏まえて議論 ◦ 入力意図と出力結果の差異を、コンピュータと対話を通じて考えるこ

    とで、唯一の正解ではなく、より良い状態を目指した試行錯誤が可能 ◦ 結果として、増大的知能観の育成に資する • 例えば、小学校で不足している、情報技術の「特性の理解」について、 授業実践が行われるために必要な観点を、検討いただきたい ◦ どのような活動例の提示が適切か ◦ 活動を実践するにあたり、必要な環境の整備等は何か • そのために、既存の実践校へ、ヒアリング等を実施していただきたい 小中高を通じた、体系的な情報教育の実現 1. 卒業時に身につけたい資質・能力の議論 2. 新たに加える内容等が実践につながるための工夫の議論 ▲ 宮城教育大学附属小学校「小学校情報科」 6年生「卒業制作」の様子
  6. 9 児童生徒の興味関心・好きなことと結びついたものづくりが実現するためには、子どもが「好き」を発 揮できるような授業デザインが必要。  子どもがつくりたいものをつくっている姿 情報技術を用いた インタラクティブアートに挑戦 児童の創造性と情報技術を組み合わせ、 問題解決の意欲を高めることなどをねらった STEAM学習の実践 身近な課題解決に

    情報技術を活用 家庭や学校での困りごとを解決したり、 より楽しくするためにプログラミングなどを 活用する実践 Vibeコーディングで好きな ゲームなどをつくる 生成AIを日常的に活用している生徒たちが、 自分の興味関心をもとに、つくりながら学ぶ プログラミング教育の可能性を探究 小学校 情報 中学校 技術 高校 情報
  7. 12 卒業時に身につけたい資質・能力を育む例 ー宮城教育大学附属小学校の実践ー これまでの取り組み 小学校情報で目指す姿 2020年 CS科の研究開始 • 各学年10時間(20年)→ 20時間(21,22年) •

    K-12 Computer Science Frameworkを参考にした カリキュラム 2023年 研究開発学校の指定を受け、小学校情報科の 研究開始 • 各学年20〜35時間 • コンピュータを活用した問題解決・情報技術の仕組み・情報 社会とのかかわりの3内容領域 仕組みを理解した上で情報技術を活用し、自ら問題を 発見・解決する姿 ▲ 情報科単元と内容項目の関連表(令和7年4月段階のもの) 情報手段の効果的な活用は高学年では薄く、情報社会とのかかわりは高学年に向け厚くす るなど、発達段階に応じた体系的なカリキュラムを構成 児童の姿 6年生 「卒業制作」の様子 ▲ 解決したい課題について仕様書 にまとめ解決の見通しをもつ ▲ 6年間の経験を生かしながら問題解決の ための作品を考え、試行錯誤を繰り返す 情報の科学的理解に着目しながら、体系的な「小学校情報科」カリキュラム開発に取り組む。 卒業時には6年間の経験を生かし、情報技術を用いた日常の課題解決が可能になっている。 ▲ 児童の作品例