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生産システムの運用を支える人と機械(計算機)の知的協働

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December 13, 2020

 生産システムの運用を支える人と機械(計算機)の知的協働

「システム学を考える会・境界と関係性を視座とするシステムズアプローチ調査研究会 合同講演会」で話題提供した際のスライドの抜粋です.

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December 13, 2020
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Transcript

  1. (広義の)⽣産システムとその運⽤ • ⽣産システムとは, – 原材料,部品,製品などの対象物に, – 加⼯機,搬送機,作業者などの資源によって, – 加⼯,組⽴,運搬などの作業を施し, •

    対象物の形状,位置などの属性を順次変化させていくことで,価値 を⽣み出すシステムである. • 同じ構成のシステムであっても,その性能(⽣産率,コスト,納期 遵守率など)は,運⽤の巧拙に⼤きく依存する. • ⽣産システムの運⽤とは,いつどの資源でどの対象物にどの作業を 実施するかについての意思決定である(作業開始のトリガーとなる 作業指⽰,その前提となる作業スケジューリングなど). 2 Hajime Mizuyama
  2. ⼈と機械(計算機)の知的協働 • 運⽤の意思決定を,数理的な最適化問題として定式化し,計算機で 処理できるようにする試みは,従来から広く⾏われてきた. • 完全に計算機任せにはせず,対話的にパラメータを調整しながら求 解を繰り返したり,得られた解を⼈⼿で調整することも多い. • 現場での実際の作業指⽰は,職⻑さんや作業者の⽅⾃⾝の判断に委 ねられていることも多い.

    • その場合でも,計算機によって加⼯・編集された情報の提⽰など, 何らかの意思決定⽀援機能が提供されていることもある. • シンプルなディスパッチングルールやカンバンなどの,機械的な ルールやロジックによって運⽤されている現場も多い. • その場合でも,状況に応じて,パラメータの調整やルールの⾒直し が必要になる. 3 Hajime Mizuyama
  3. 運⽤の意思決定における機械と⼈の対⽐ 機械の意思決定 • 数理的な最適化アルゴリズム を利⽤することができる • 明確に定式化された問題以外 は扱いづらい • 必要な情報を事前に明⽰し,

    収集しておく必要がある • 外部との境界条件はハードな 制約条件として扱われる ⼈の意思決定 • 暗黙的なルールやヒューリス ティックに頼ることが多い • 曖昧な問題や主観的な問題も そのまま扱えることがある • どのような情報でもその場で 拾い上げて利⽤できる • 境界条件を交渉可能なソフト な制約条件として扱える 4 双⽅に⻑所と短所があり,優劣を⽐較することよりも,状況に応じて 適材適所で組み合わせて活⽤することを考えるべきである.
  4. 問題の設定と解決としての理解 運⽤の意思決定とは, – 解くべき問題のクラスを設定し, – 状況に応じてその問題のインスタンスを構成し, – ある解法を適⽤してその問題を解決することである,と考える. ⼈の貢献の源泉は, –

    ある種の難しい問題に対してある程度有効に機能する暗黙的な ヒューリスティック解法 – センサが設置されていない情報の五感による取得 – ブラックボックス関数によるインスタンスの補完 – 解くべき問題のクラス⾃体が未定義あるいはブラックボックス であるような状況への対処 5 Hajime Mizuyama
  5. ⼈の貢献の2重構造 6 Hajime Mizuyama 与えられた 問題インスタンスの (近似的な)解決 問題のクラスやフレームワークの設定 意思決定サイクルやホライズンの調整, 対象モデルの粒度やスコープの調整,

    ⽬的関数や制約条件の調整, 解空間の創造的拡張,など 問題のインスタンスの構成 現場状況の実時間五感センシング, コミュニケーションによる情報獲得, 暗黙的な知識や主観的な情報の反映, インフォーマルな予測の利⽤,など
  6. Industry 4.0 で何が変わるか? • IOT:実時間でセンシング可能(したがって,計算機アルゴリズム に取り込むことが容易)な情報が広がる. • CPS:IOTでセンシングしたデータを統合することでシステム全体の 状況をより詳細な粒度で把握できるようになる. •

    Big Data:⼤量に蓄積されていく上記のデータの履歴に基づいて 様々な予測モデルが得られるようになる. • 機械(計算機)で処理可能な運⽤の意思決定が増える. • 機械(計算機)で処理可能な意思決定問題のスコープが広がる. • ⼈の役割はどうなるの?(ex. 完全⾃動化・無⼈化を⽬指すべきな のか,⼈の意思決定⽀援のあり⽅の⾼度化を⽬指すべきなのか?) 7 Hajime Mizuyama
  7. 単純な2層フレームワーク 9 Hajime Mizuyama 作業指⽰に基づき各作業を開始 遅れ,不良,故障などの 不確定事象が確率的に発⽣ ⽣産システムへの 作業指⽰(ex. 差⽴て)

    システム状態の 観測(ex. 進捗情報) 担当者は観測したシステム 状態に応じて次の作業指⽰ の内容やタイミングを決定 ⽣産システム運⽤の意思決定を捉える層 ⽣産システム内の物理資源や対象物 ⽣産システム運⽤の担当者 ⽣産システムの物理的な挙動を捉える層
  8. システム状態の時間発展 ⽣産システムは,作業指⽰が与えられると,それに応じて(確率的 に)その状態を変化させていく. 10 システ ム状態 s0 観測 システ ム状態

    s1 作業指⽰ システ ム状態 s2 システ ム状態 s3 システ ム状態 s4 マルコフ決定過程(MDP) システムの状態を観測し,それに応じて作業指⽰を作り出すエージェントと, その作業指⽰に応じて確率的に状態を推移させていくシステム 観測 作業指⽰
  9. MDPを基盤とした認知フレームのモデル #2 12 Hajime Mizuyama 対象シス テムのダ イナミク スを表す 物理的な

    MDP 担当者 エージェ ントが認 識する主 観的な決 定過程 状態のス コープや 粒度,系 列⻑,⾏ 動集合, タイミン グなど 縮約された 状態の系列 を⾏動に マッピング する政策 学習 ⾏動 認知フレーム 観測 縮約 縮約され た状態 介⼊
  10. 2層フレームワークの⼀般化 13 Hajime Mizuyama 作業指⽰に基づき各作業を開始 遅れ,不良,故障などの 不確定事象が確率的に発⽣ ⽣産システムへの 作業指⽰(ex. 差⽴て)

    システム状態の 観測(ex. 進捗情報) 複数の計算機アルゴリズム (機械)と担当者(⼈)の 知的協働 作業指⽰だけでなく,計画 やスケジュールなどの情報 資源も⽣成される. ⽣産システム運⽤の意思決定を捉える層 ⽣産システムの物理的な挙動を捉える層
  11. 計算モジュールのネットワーク? 14 Hajime Mizuyama 作業指⽰に基づき各作業を開始 遅れ,不良,故障などの 不確定事象が確率的に発⽣ ⽣産システムへの 作業指⽰(ex. 差⽴て)

    システム状態の 観測(ex. 進捗情報) 複数の計算機アルゴリズム (機械)と担当者(⼈)の 知的協働 作業指⽰だけでなく,計画 やスケジュールなどの情報 資源も⽣成される. ⽣産システム運⽤の意思決定を捉える層 ⽣産システムの物理的な挙動を捉える層 ?
  12. 認知フレームを基礎づける要因 世界をどのように認識して • 状況認識のスコープや粒度, 状況変化の予測モデルなど • 可能な介⼊の⼿続き的知識や その効果の予測モデルなど 各担当者の意思決定に有⽤な知 識・スキルの本質は何か?

    知識・スキルの習得や実適⽤を効 果的に⽀援する⽅法は? どう変えようとするのか • 状況についての選好,効⽤関 数,達成したい⽬標など • 他者モデル,他者の反応を考 慮した戦略など 担当者間に⽣じ得るゲーム的状況 とはどのようなものか? 有効な協⼒・協調を引き出すため にはどうすればよいか? 21
  13. Research Questions の4象限 22 知識・スキルの 習得や実適⽤の⽀援 協⼒・強調を引き出す メカニズムデザイン 知識・スキルや その習得過程の解明

    ゲーム的状況の 理解と帰結の予測 ⽣産システム の運⽤ 科学的視点 Scientific analysis ⼯学的視点 Engineering design 各エージェントの 知識・スキル Micro -> Macro システム全体の 環境・制度 Macro -> Micro
  14. ⾏動科学と計算科学の相互補完アプローチ ⾏動科学的アプローチ • 担当者が意思決定を⾏う現実 の状況の本質をシリアスゲー ムの中で再現する. • そのシリアスゲームを⼈にプ レイしてもらい,そこでの⾏ 動データを収集する.

    • 得られた⾏動データを分析す ることによって,担当者の意 思決定を基礎づける規範につ いての仮説を得る. 計算科学的アプローチ • 担当者の意思決定を基礎づけ るある種の規範をアルゴリズ ムで表現する. • それを計算機上で駆動させ, どのような振る舞いが⽴ち現 れてくるかを観測する. • 得られた振る舞いを現実と対 ⽐することなどで,当該意思 決定を基礎づける規範につい ての考察を深める. 24 Hajime Mizuyama
  15. 相互相補アプローチの全体像 25 (a) 対象システムのエージェントベースモデルを作成 (d) 上のゲームのプレイ ログを収集し分析 (e) シミュレーション実 験とその結果の分析

    (f) 上の(d)と(e)の結果を⽐較・検討することによる知⾒の導出 (b) 上のモデルに基づく シリアスゲームの開発 (c) 上のモデルに基づく シミュレータの開発 知⾒(f)に基づきモデル(a) を改善し,分析を繰返す 知⾒(f)の実際への活⽤
  16. 加熱炉前スラブヤードの単純化モデル 31 機械 装⼊バッファ クレーン 中間バッファ 中間バッファ ⼊⼝ バッファ 待ち⾏列

    ⾊がジョブのタイプを表す. 数値が納期までの残り時間を表す. ジョブが ランダム に到着 加⼯時間は⼀定, 段取時間はジョブのタイプ 順に⼤きく依存 納期遅れにはペナルティ
  17. 担当者エージェントの強化学習モデル 32 ⽣産システムの物理層 (離散事象シミュレータ) 経験に基づいて 学習していく 状態価値関数: () 担当者エージェント 利得:

    状態変数ベク トル: 事後状態価値を最⼤ にする⾏動を選択: ( ) 認知フレームのパラメータ 状態変数ベクトルの構成要素や粒度,状態価値関数で考慮する状態系列⻑, 利得の捉え⽅,考慮する事後状態の時間ステップや予測モデル,など
  18. 36 本社 顧客 下⼯程 ⼯場 上⼯程 ⼯場 素材 発注 素材

    納⼊ 製品 発注 製品 納⼊ 商品 発注 商品 納⼊ 拠点間のコミュニケーション(情報共有) を変化させて,地震などの⾮定常的な変動 に直⾯した際のパフォーマンスを⽐較する. 製鉄企業の社内サプライチェーンの事例
  19. まとめ • (広義の)⽣産システムの運⽤は,⼈と機械(計算機)の知的協働 によってなされていると考えることができる. • 今後さらに進んでいくデジタル化・スマート化の流れを受けて,こ の知的協働のフレームワークはいやおうなしに変化していくだろう. • Industry 4.0

    時代の新しい知的協働のあるべき姿を追求していくため に,まずこの協働のメカニズムについての理解を深めていきたい. • 今回は,そのためのモデル化の試みとアプローチの概要を提⽰した 上で,具体的な研究事例を少し紹介した. 41 Hajime Mizuyama
  20. 42