Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
ソフトウェアエンジニアとしてモナドを完全に理解する / make-perfect-sense-...
Search
Jun Tomioka
December 13, 2019
Technology
14
7.7k
ソフトウェアエンジニアとしてモナドを完全に理解する / make-perfect-sense-of-monad
モナドを完全に理解する
Jun Tomioka
December 13, 2019
Tweet
Share
More Decks by Jun Tomioka
See All by Jun Tomioka
Dotty で軽量な DI ライブラリをかいてみた
jooohn
1
340
ScalaのコンパイラにFizzBuzzを解いてもらう(Dottyもあるよ)
jooohn
1
1k
Write stack safe non-tailrec recursive functions
jooohn
4
940
Introduction to Clean Architecture
jooohn
1
560
人類には早すぎる、謎の計算ロジックに立ち向かう / Strugle with the most complicated logic ever
jooohn
1
1.7k
Work at M3 USA
jooohn
0
1.3k
クラウド電子カルテを支えるテクノロジーの光と闇
jooohn
0
1.3k
怖くないCats
jooohn
0
830
Scalaの型クラスを完全に理解する
jooohn
5
1.9k
Other Decks in Technology
See All in Technology
専門分化が進む分業下でもユーザーが本当に欲しかったものを追求するプロダクトマネジメント/Focus on real user needs despite deep specialization and division of labor
moriyuya
0
920
家族の思い出を形にする 〜 1秒動画の生成を支えるインフラアーキテクチャ
ojima_h
1
150
ロールが細分化された組織でSREと協働するインフラエンジニアは何をするか? / SRE Lounge #18
kossykinto
0
100
AIエージェントを現場で使う / 2025.08.07 著者陣に聞く!現場で活用するためのAIエージェント実践入門(Findyランチセッション)
smiyawaki0820
5
360
解消したはずが…技術と人間のエラーが交錯する恐怖体験
lamaglama39
0
180
生成AI時代におけるAI・機械学習技術を用いたプロダクト開発の深化と進化 #BetAIDay
layerx
PRO
1
1k
大規模イベントに向けた ABEMA アーキテクチャの遍歴 ~ Platform Strategy 詳細解説 ~
nagapad
0
180
【CEDEC2025】現場を理解して実現!ゲーム開発を効率化するWebサービスの開発と、利用促進のための継続的な改善
cygames
PRO
0
720
Strands Agents & Bedrock AgentCoreを1分でおさらい
minorun365
PRO
6
220
AI時代の経営、Bet AI Vision #BetAIDay
layerx
PRO
1
1.7k
Claude Codeから我々が学ぶべきこと
s4yuba
6
1.6k
Vision Language Modelと自動運転AIの最前線_20250730
yuyamaguchi
3
1.1k
Featured
See All Featured
CSS Pre-Processors: Stylus, Less & Sass
bermonpainter
357
30k
Into the Great Unknown - MozCon
thekraken
40
2k
The Power of CSS Pseudo Elements
geoffreycrofte
77
5.9k
What's in a price? How to price your products and services
michaelherold
246
12k
Stop Working from a Prison Cell
hatefulcrawdad
271
21k
Creating an realtime collaboration tool: Agile Flush - .NET Oxford
marcduiker
30
2.2k
Fight the Zombie Pattern Library - RWD Summit 2016
marcelosomers
234
17k
Automating Front-end Workflow
addyosmani
1370
200k
How to Ace a Technical Interview
jacobian
278
23k
Optimising Largest Contentful Paint
csswizardry
37
3.4k
Thoughts on Productivity
jonyablonski
69
4.8k
Practical Tips for Bootstrapping Information Extraction Pipelines
honnibal
PRO
21
1.4k
Transcript
ソフトウェアエンジニアとして モナドを完全に理解する @jooohn1234
Jun Tomioka @jooohn1234 Software Engineer at M3, Inc. 2歳になったつむぎ
子育て世代の エンジニア あるある
パパ
モナド って なに?
パパ モナドって なに?
ソフトウェアエンジニアとして モナドを完全に理解する • モナドはおおざっぱにいうと何者なのか • モナドは本当は何者なのか • モナドはなぜ愛されるのか
ソフトウェアエンジニアとして モナドを完全に理解する • モナドはおおざっぱにいうと何者なのか • モナドは本当は何者なのか • モナドはなぜ愛されるのか
モナドの初見のイメージ やせいの モナド が あらわれた!▼
モナドをちょっとググったとき モナドを理解する - 迷える者への手引き モナドはポケモン。 モナドのすべて モナドはメタファーではない モナドは、計算を表現する構造である。 絶対に理解出来ないモナドチュートリアル 「モナドは単なる自己関手の圏におけるモノ
イド対象だよ。何か問題でも?」 圏論 アプリカティブファンクタ
モナドをちょっとググった感想 なんかわかんな いけどすごい
おおざっぱに いうと
ソフトウェア エンジニア にとって
モナドとは
いい感じに flatMap できるやつ
モナドは いい感じに flatMap できるやつ
いい感じにflatMapできるやつの例
例の flatMap に共通したシグネチャ F[A] => (A => F[B]) => F[B]
ここでいうFは何者なのか • 型パラメータを1つとる任意の高カインド型 ◦ いわゆる「ジェネリックな型」 • ここでいうFの例 ◦ List, Option
◦ Either[Error, ?] ▪ LeftがErrorに固定されており、Right1つだけの型パラメータを取る • ここでいうFではない例 ◦ 型パラメータを取らない ▪ Int, String, List[Int] ◦ 型パラメータを取りすぎ ▪ Either[?, ?]
あらためて flatMap のシグネチャを確認 Option[String] => (String => Option[Int]) => Option[Int]
Array[number] => (number => Array[string]) => Array[string]
おおざっぱにいうとモナドは いい感じにflatMapできるやつ おおざっぱに 理解した
ソフトウェアエンジニアとして モナドを完全に理解する • モナドはおおざっぱにいうと何者なのか • モナドは本当は何者なのか • モナドはなぜ愛されるのか
flatMapできるといっても、 F[A] => (A => F[B]) => F[B] の シグネチャであれば
なんでもいいの?
ちゃんというと、モナドは3点セット • モナド3点セット (関数名はなんでもよい) ◦ 高カインド型F ◦ 関数その1 (flatMap): F[A]
=> (A => F[B]) => F[B] ◦ 関数その2 (pure): A => F[A] • さらにこの3点セットが、ある法則を満たすとき、こ れらはモナドである! ◦ この法則をモナド則という
モナド則 (Monad Laws) • 以下を満たす (ただし、a: A, f: A =>
F[B], fa: F[A], g: B => F[C]) ◦ Left Identity ▪ pure(a).flatMap(f) == f(a) ◦ Righty Identity ▪ fa.flatMap(pure) == fa ◦ Associativity ▪ fa.flatMap(f).flatMap(g) == f.flatMap(x => f(x).flatMap(g)) • このへんがいい感じの部分 (ここではflatMapはメソッドの形で用いている。 )
Optionモナドの例 • Optionモナドの3点セット ◦ 高カインド型F ▪ Option ◦ flatMap: (fa:
F[A]) => (f: (A => F[B])) => F[B] ▪ fa match { Some(a) => f(a) None => None } ◦ pure: (a: A) => F[A] ▪ a => Some(a) • モナド則を満たすか確かめてみよう! きがむいたらやろう
ちゃんというと、モナドは モナド則を 満たす 3点セット
モナド 完全に理解した
ソフトウェアエンジニアとして モナドを完全に理解する • モナドはおおざっぱにいうと何者なのか • モナドは本当は何者なのか • モナドはなぜ愛されるのか
モナドがなんなのかは わかったけど、 それで何が嬉しいの?
モナドは
便利
モナドは 便利
モナドはネストをフラットにできる • ネストしたnullable ◦ 見るに堪えない
モナドはネストをフラットにできる • flatMapを用いてフラットにしたもの ◦ F[A]の Aに対してネストした操作が綺麗にできる
モナドは合成できる • 別々のF[A], F[B]を合成して F[(A, B)]を作ることが できる ◦ map は
flatMap + pure で定義できる
モナドは合成できる • モナドの合成を意識したsyntax sugar ◦ for (Scala), do (Haskell) ◦
チェインのような形ではなく、合成する際は特にこのsyntax sugarが便利
JSの非同期処理の進化との比較 JS非同期処理 Scalaの例 コールバック地獄 Promise.thenによる flatなチェイン async / await
モナド(っぽいなにか) を扱う syntax sugar JS Scala 非同期処理のネスト async / await
for 式 Optionalな値のネスト Optional chaining (合成、中身を別の関数の引数として渡す といった用途では使えない) for 式 • モナドを意識したsyntax sugarを用意している言語では、各モ ナド (っぽいなにか) に対して一貫した記述ができる。 • このシンプルさもモナドを愛される理由の1つ シンプルではある
実用上は Optional chaining や async / awaitがあればそれ で十分なような気がするけど
便利なモナドって 他にたくさんあるの?
便利なモナドを一部紹介 • Either[A, B] ◦ 慣習的にRightにハッピーなケースを入れることが多く、 Either[Error, ?]の形でLeftを固定して使うことが多い。 ◦ エラーハンドリングに便利。
これは 使いそう
• State[S, A] ◦ S => (S, A) のラッパー ▪
Sを置き換えながらAを返す。 ◦ パーサを書いたりするときに便利 ▪ List[Token]を受け取り、処理後のList[Token]とparse結果Aを返す 便利なモナドを一部紹介 ふーん
便利なモナドを一部紹介 • モナドトランスフォーマー ◦ 一部のモナドは別のモナドと組み合わせて別のモナドを構 成することができる。 ▪ Transformer から、Tをsuffixとして、EitherT などとよぶことが多い
▪ EitherT + State で 読み取り失敗する可能性のあるParser など ◦ 名前にロマンがある
使うかしらんけど 便利っぽい
その他モナドが愛される理由(個人の感想) • 数学・圏論由来の抽象化である安心感 ◦ 正しい抽象化は思いの外むずかしい ◦ “prefer duplication over the
wrong abstraction” ▪ https://www.sandimetz.com/blog/2016/1/20/the-wrong-abstraction ?duplication • 困ったときに会話を煙にまくことができる ◦ 「あっごめん、モナドのこと考えてた」 ▪ 話を聞いてなかったときに ◦ 「でもそれってモナド則満たしてるの?」 ▪ 相手の主張がモナド則満たしてないなと思ったときに
まとめ • モナドを完全に理解した ◦ モナドはモナド則を満たす3点セット • モナドはモナドを愛する人に愛されている ◦ モナドを意識した言語は美しいし便利だと思う人もいるし、 そんなの別にいらんという人もいる。
モナド完全に理解した