「持続可能な社会づくり」に資する地図力／GIS技能の育成：村山祐司（日本学術会議連携会員、筑波大学生命環境系教授）

「持続可能な社会づくり」に資する地図力／GIS技能の育成：村山祐司（日本学術会議連携会員、筑波大学生命環境系教授）
---
持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実
－SDGs実現における教育の役割－
日本学術会議公開シンポジウム(2017Nov04)開催報告

http://www.iknowshachu.org/scj/

Transcript

1. 「持続可能な社会づくり」に資する 地図力/GIS技能の育成 村山 祐司（日本学術会議連携会員・筑波大学） Division of Spatial Information Science 日本学術会議公開シンポジウム（2017年11月4日） 「持続可能な社会づくりに向けた地理教育の充実－SDGs実現における教育の役割－」
2. 地図とは • 地図は，地理（学）の言語といわれ，社会生 活を営むうえで読み・書き・そろばんに匹敵す る重要なコミュニケーション・ツール！ • 日常生活において，私たちは頭の中に地図 を描き，最適な空間行動を選択し意思決定 2
3. 社会に浸透するさまざまなデジタル地図 3 • 変形地図（カルトグラム） • 3次元地図 • 鳥瞰図 • 動く地図（動画），アニメーション • 音の出る地図 • エゴセントリック地図 • 触地図 etc． → デジタル地図をハンドリングする技術がGIS!
4. 4 地図/GISを巡るパラダイムシフト • 印刷革命（15世紀中葉） 紙地図を印刷し，配布 • 情報革命（20世紀末） デジタル地図を瞬時に不特定多数に配信 • GIS革命（今日） Web上でデジタル地図を加工・分析し，発信・共有 → 地図は与えられたものではなく，みずから作成して リアルタイムで利用するものへと進化
5. 「持続可能な社会づくり」の教育で 育みたい能力 • 問題や現象の背景の理解 • 多面的かつ総合的なものの見方を重視した体系的な 思考力 • 批判力を重視した代替案の思考力 • データや情報を分析する能力 • コミュニケーション能力 出典：我が国における国連ESDの１０年実施計画（中山，2011） → 地図/GISの寄与は多大であり，「理解・知識習得 学習」， 「課題解決学習」に効果を発揮！ 5
6. 理解・知識習得学習を支援する GISの事例紹介 日本列島200年の地域変貌を読み解く ーデジタル伊能図を用いてー 6
7. 7 変動地形 江戸時代 衰退産業 流路変更 国土計画 人口変化 鉱山開発 都市構造 国土政策 地名 山体崩壊 環境変化 昔の景観 自然災害 集落の発達 200年の国土変化を示すキーワード例
8. 8 出典：伊能忠敬研究会 河出書房新社刊 大縮尺の伊能図(1/36,000)
9. 9 出典:デジタル伊能図ユーザガイド
10. 10 さまざまな地図との重ね合わせ 出典:デジタル伊能図ユーザガイド
11. 11 地名の検索 出典:デジタル伊能図ユーザガイド
12. 12 宿泊地と測量日記 出典:デジタル伊能図ユーザガイド
13. 13 石狩川周辺の200年前と現代
14. 14 1888年に磐梯山が噴 火し，檜原湖が誕生 福島県檜原地域 出典:デジタル伊能図
15. 15 鹿児島県桜島
16. 16 碓氷峠の地形 碓氷峠ルートの 地形断面図 国道18号沿いの 地形断面図
17. 課題解決学習を支援する GISの事例紹介 学生協働によるエコ・フレンドリーな キャンパス作り ー 筑波大学環境美化運動 ー 17
18. 目的 • 学生・周辺住民と連携して，筑波大学の学内 および隣接地域における景観や騒音，居住 環境の問題点・改善点を探り，快適で過ごし やすいキャンパスライフをめざし，環境整備 の具体策を提示する．
19. 調査項目の例 • AEDの設置場所 • 駐輪場，駐車場の配置 • 自販機，ゴミ箱，ベンチ，街灯柱，看板の分布 • 落書き，危険箇所の把握 • 違法駐車・駐輪の実態調査 • 交通事故や盗難場所の分析 • 緑景観（樹木や芝生など）の可視化，ほか
20. 問題解決を図る！ • ベンチや街灯柱，AEDの配置は適切か • 来訪者用の看板は親切か • 自転車置き場は足りているか • 避難場所は適切に設定されているか • どうしたら車通勤/通学を減らせるのか • どうしたらゴミや落書きを減らせるのか → 学生とともに考え，提言へ！
21. 21 キャンパスGISの概要
22. 22 データと表示・解析機能
23. キャンパスにおける交通事故の分布 23
24. 地表面傾斜との重ね合わせ 24
25. 25 街灯と照射範囲（バッファ）の 重ね合わせ 放射線量の分布 違反駐輪の時間帯分布 （自転車とバイク）
26. 26 騒音の建物別分布（ 時間帯別） 携帯電話の 受信速度 道路ダメージの例
27. 27 迅速図や空中写真との重ね合わせ
28. 28 気温の分布（9月） 気温の分布（11月） 緑度の分布（春） 緑度の分布（秋） 衛星画像ﾃﾞｰﾀの活用
29. 持続可能な開発目標（SDGs)と 地図力/GIS技能 29
30. 持続可能な開発目標（SDGs) 30 1貧困、2飢餓、3健康・保健、4教育、5ジェンダー、6水・衛生、7エネルギー、8経済成 長と雇用、9インフラ・産業化・イノベーション、10不平等、11持続可能な都市、12持続 可能な消費と生産、13気候変動、14海洋資源、15陸上資源、16平和、17実施手段 地球全体が対象 ユニバーサリティ 2030年が到達目標 モニタリング
31. 地図/GISは SDGs実現の強力な支援ツール 生態的思考 (Ecological Thinking) ＋ 空間的思考 (Spatial Thinking) 31 フォアキャスティング (Forecasting) ＋ バックキャスティング (Backcasting) 実態把握 問題解決
32. 地図/GISの貢献 32 デジタル 地球 地理空間情報 の取得と蓄積 地理空間情報 の分析と可視化 分析結果の発 信と共有 空間的モニタ リング 空間的シミュ レーション/ シナリオ分析 １７の目標，１６９のターゲット，２３０のモニタリング指標 将来予測と政策 /計画支援
33. 33 目 標 ・タ ー ゲ ッ ト ・指 標 を 分 析 し 、 空 間 可 視 化 世界銀行 の試み SDGsの アトラス
34. 34 SDGsの目標３ 『健康・保健』に関するマッピング 出典：Atlas of Sustainable Development Goals マラリア死 亡リスク 自殺率 非感染性疾 患死亡率 アルコール 消費量
35. SDGs教育に資する地図力とGIS技能 • 地球をスケーラブル（可変的）に俯瞰 • 国や地域を地球全体のなかに位置づけ，相 対思考を醸成 • 諸事象を空間的に可視化して，それらが地域 的に連関していることを理解 35
36. SDGs実現をめざしてどんな地図力/GIS技能 を養えばよいのか？ ◇ 地域の情報を取得・蓄積し，発信できる能力 ◇ 地域的な差違や同質性を理解し，それらをも たらす要因を解明・説示できる能力 ◇ 地域変化のトレンドを把握し，その要因を解明・ 説示できる能力 ◇ 過去から現在までの地理的プロセスを把握して， 将来の姿を見通す能力 ◇ シナリオ分析やモデルの構築を通して， 問題解決に寄与できる能力 36
37. SDGs実現に向けての地図/GIS 教育のあり方 37
38. ご清聴ありがとうございました 村山 祐司 （mura@geoenv.tsukubai.ac.jp） Division of Spatial Information Science