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ヒット商品を生み出すプロダクトマネジメントブースター / Product Management Booster

moriyuya
January 08, 2021

ヒット商品を生み出すプロダクトマネジメントブースター / Product Management Booster

Regional Scrum Gathering Tokyo 2021( #RSGT2021 )で発表した内容です。

顧客に愛されるヒット商品を作るための、ソフトウェア開発以外の重要なポイントを一気に抑えてしまうセッションです。次のような悩みに効きます。

プロダクトが良くなってきたもののライバルに負ける。
「ユーザーが増えた! サービスが成長した! ところが大手企業が丸パクリしてきて、資本力で顧客を奪ってく!!」

お客さんに下手に出てお願いしないと買ってもらえない。
「いいプロダクトだねー! でも、高いなー、もう少し安かったら買うかも」

「不確実性への適応」というテーマがよく話されています。

不確実性とは、一般的には「直接コントロールできないが、目標達成に重大な影響を与える要素」とされています。経営組織論では「組織が活動するために必要な情報と、実際に組織がすでに入手している情報との差」と表現されることもあります。つまり十分に分かっていたら確実性が高い行動がとれるわけですね。

たとえば、いつ大地震がやってくるのか、大雪がいつ降るのかは私たちにはコントロールできません。ところが物流や公共交通機関に仕事として関わる人たちに大きな影響を与えます。

同じように、お客様の考え、市場の不特定多数のユーザーの考えを直接マインドコントロールのように操作できませんが、私たちの仕事の前途に大きな影響を与えます。これらは不確実といえるでしょう。

もし直接コントロールできたり完全な情報を知れたら有利にプロダクト開発ができるでしょう。ですから、私たちは不確実性に適応していくために様々な取り組みをしています。不確実への適応は重要なはずです。

しかし、私たちが感じている不確実なさまざまな事柄は、本当に不確実なのでしょうか。
実は不確実ではないものまで不確実だと思い込んでいないでしょうか。

私は新規事業やヒット商品を20代はじめから関わってきました。そこで分かったのは『不確実性が重要な領域は実は限られている。しらない、できない、興味ないという態度のほうが影響が大きい。つまり積極的な無知、無能、無関心が大きな障害となっている』ということです。

これはプロダクト開発の隠れた真実だと思います。

不確実とは言い換えれば「十分な知識や経験を持つ専門家でも判断に迷う、分からない」と言い換えれます。つまり、乱暴ですが、専門家でも分からなかったら不確実といえるでしょう。ちょっと専門家が調べれば分かる事柄は不確実ではないということです。

私たちは本当は不確実ではないものまで、不確実に押し込んでしまっていないでしょうか。例えば私たちの仕事を乱すチーム外の人たちからの関わり…役員の依頼だったり、他の部署の人たちの行動があったりします。

「営業が無茶な案件を押しつけてくる」
「上司が前例がないからと許可してくれない」
「社長が変なことを言い出した」

企業の外側でもいろいろなことが起きます。

「お客様が突然契約キャンセルしてきた」「お客様に価格を下げるよう強く主張された」
「大企業が、自社製品にそっくりなプロダクトをリリースしてきた」

自分達のプロダクト開発でも様々なことが起きます。
「プロダクトを紹介するwebページどうしよう。競合との機能比較表がよくあるけれど、これでいいのかな」

これらは全てが不確実というよりも、「しらない、できない、興味ない」によるところが多く、うまく対応できるところも多いはずです。これに真っ向から立ち向かうのがプロダクトマネジメントです。

プロダクトマネジメントとは製品開発、組織開発、財務、マーケティング、流通、セールス、保守、顧客サポート、業務提携、企業間競争といった諸活動を通じて、現在から未来にかけて顧客の要望をこれまでにない高い水準で満たすことにより、業界内で独走状態を築くことを目標にしたマネジメントと私は考えます。

プロダクトを成功させるためには必要な様々な専門領域があり、うまく協力することで経済活動として成り立ちます。このセッションでは、これらの「スクラムが直接扱わないがスクラムを通してプロダクトの成功に不可欠な領域」についてポイントを抑えてお話ししたいと思います。

ヒット商品作りの隠れた真実
・不確実性と、無知・無力・無関心

moriyuya

January 08, 2021
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Transcript

  1. B 同期化しない 同期化する 制 御 化 す る 制 御

    化 し な い 例:能力の同期化 スキルトランスファー 研修やメンタリング 例:能力の制御化 研究、勉強 例:情報の同期化 社内:合意形成 社外:顧客開発 非問題解決 見過ごし やり過ごし
  2. B 同期化しない 同期化する 制 御 化 す る 制 御

    化 し な い 無知・無能・無関心 (分業の功罪) 言語はコミュニケー ション性能が低い フレームワークは 役に立たない 行き当たりばったり な仮説検証 例:能力の同期化 スキルトランスファー 研修やメンタリング 例:能力の制御化 研究、勉強 例:情報の同期化 社内:合意形成 社外:顧客開発 非問題解決 見過ごし やり過ごし これで何とかしようとしている
  3. B 同期化しない 同期化する 制 御 化 す る 制 御

    化 し な い 無知・無能・無関心 (分業の功罪) 言語はコミュニケー ション性能が低い フレームワークは 役に立たない 行き当たりばったり な仮説検証 例:能力の同期化 スキルトランスファー 研修やメンタリング 例:能力の制御化 研究、勉強 例:情報の同期化 社内:合意形成 社外:顧客開発 非問題解決 見過ごし やり過ごし こっちで解決
  4. 1.軸を考える B 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい
  5. 1.製品/サービスを考える 年数 市 場 浸 透 率 点線内か B 初期市場

    市 場 浸 透 率 低 い 高 い 収益が停滞 収益が成長 B 他の人に売る 他店舗展開 ダウンセル 同じ人に もっと売る アップセル/クロス セル 川上統合/川下統合 製 品 を 垂 直 展 開 し や す い 製品を水平展開しやすい 1.1a プロダクトライフサイクルを考える 1.1b 市場の状況を考える 1.4 製品展開力を考える B 顧 客 は 見 た だ け で 価 値 を 理 解 で き る 顧客は製品を使いこなす自分をイメージできる 1.3 製品の受け入れやすさを考える 顧客は見た だけで他人 に使い方を 説明できる 直感的に 理解できる B 顧客はしな ければなら ないと考え ている 顧客は自ら 望んでいて 日常的に考 えている 顧 客 は 製 品 へ の 必 要 性 が 高 い 顧客は製品への欲求が強い 1.2 製品の購入動機を考える 成長前期 成長後期 成熟市場
  6. 2.顧客を考える(1/2) B 必 要 性 が 高 い 顧 客

    セ グ メ ン ト 欲求が強い顧客セグメント B 見 込 み 客 と 接 点 を 持 ち や す い 製品価格に対する集客費用が少ない B 顧 客 よ り も 顧 客 の 悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい 2.1 大切にしたい重要顧客を考える 2.2 重要顧客に優先順位をつける 2.3 適正な見込み客獲得コストを考える 2.4 顧客をどれくらい理解しているか B 顧 客 は 悩 み が ハ ッ キ リ し て い る 顧客は解決された結果が明確にイメージできる 2.5 顧客の悩みを考える B 付 き 合 い た い 顧 客 断 り た い 顧 客 個別の特徴 共通の特徴 付き合いたい 特定顧客や 顧客の特徴 断りたい 特定顧客や 顧客の特徴 断りたい 顧客の 共通の特徴 付き合いた い顧客の 共通の特徴 B 手 間 や 時 間 が か か っ て 不 満 悩みが十分に解決されず不満 2.6 悩みが解消されない理由を考える しなければ ならないと 考えている 顧客 自ら望んで いて日常的 に考えてい る顧客 明確な 問題意識 明確な 理想状態 悩みに精通 解決策に 精通
  7. 2.顧客を考える(2/2) B パ ー ト ナ ー と し て

    提 携 で き る 顧客に影響力を持つ人や企業が明らか B 顧 客 へ の 販 売 機 会 を 簡 単 に 作 れ る 製品価格に対する成約営業費用が少ない 2.8 顧客に影響を与える人を特定する 2.9 適正な販売/商談コストを考える B リ ピ ー ト 購 入 や 別 商 品 の 販 売 機 会 が あ る 製品価格に対する顧客関係維持コストが少ない 2.10 適正な顧客維持コストを考える B 顧 客 か ら 洞 察 を 得 や す い 製品価格に対する顧客学習コストが低い 2.7 適正な顧客学習コストを考える
  8. 3. 競争を考える B 競合が 家業 競合が プロ経営 市 場 や

    セ グ メ ン ト が 未 成 熟 顧客の製品切り替えが容易 B 市 場 で 広 告 が 少 な い 顧客への教育効果が高い B 見積もり 顧 客 か ら 見 て 価 格 が 明 瞭 で あ る 値付に納得 顧客から見て価格が妥当である 3.1 市場の未成熟を捉える 3.2 宣伝効果の高さを考える 3.5 顧客に提示する価格を考える Webに掲載 B 競 合 と 比 べ て 優 位 性 が 高 い 優位性を簡潔に伝えられる 3.4 顧客からみた優位性を確立する 低差別化 市場 高い集客 コスト 低い集客 コスト 問題解決能力 の低い市場 B 競 合 よ り 製 品 価 値 が 高 い 参入を抑止する価格 高い収益率の価格 3.6 目的別の価格構成を考える プレミア 価格 標準価格 市場浸透価格 参入抑止価格 競合に奪わ れる可能性 が高い価格 B 参 入 が 困 難 で あ る 撤退が簡単である 3.3 参入・撤退障壁を明確にする 過剰競争 共倒れ環境 長期独占の 可能性がある 品質不良 市場 保守的環境 競合から シェアを獲得 競合にシェア を奪われる
  9. 4.収益を考える B 粗利率 50%以上 粗 利 率 ・ 粗 利

    額 が 高 い リピート数や購入頻度が高い B 短期間で 販促に 再投資 販 売 後 キ ャ ッ シ ュ イ ン が 短 い 顧客獲得コストが低い B イベント 季節商品 販 売 頻 度 が 多 い 購買タイミングが把握しやすい B 顧 客 に と っ て 緊 急 性 が 高 い 顧客にとって今までで最も欲求している 4.1 顧客生涯価値を最大化する 4.2顧客獲得の投資回転数を考える 4.3 販売機会を考える 4.4 成約までの最短距離を考える 毎週/毎月 購入する 習慣、定期購 入、サブスク リプション 顧客は自ら条 件を緩めて成 約する 条件を度外視 して成約する 顧客は条件さ え合えば成約 する B 販 売 ま で の 労 力 の 少 な さ 販売後の労力の少なさ 4.5 販売にかかる労力の少なさを考える キャッシュ フロー安定 キャッシュ 不安定 利益安定
  10. 5.セールスを考える(1/2) B 顧 客 に と っ て 重 大

    な 状 況 が 明 ら か 問題がストーリー化されている 5.2 顧客の問題を考える B 問 題 の 解 決 状 態 が 明 ら か 理想状態がストーリー化されている 5.4 顧客の理想状態を考える B 関係者 全員の危機 問題に関する 担当者の 当事者意識 問題に関する 利害関係者の 当事者意識 現 状 維 持 が 顧 客 担 当 者 に 危 機 を も た ら す 現状維持が顧客の利害関係者に危機をもたらす 5.3 現状維持の重大危機化を考える B 関係者 全員の好機 担当者の 好機 利害関係者の 好機 問 題 解 決 の 結 果 が 顧 客 担 当 者 に 不 可 欠 問題解決の結果が顧客の利害関係者に不可欠 5.5 変化の不可欠さを考える B 私 に 会 う だ け で 有 意 義 で あ る 私に会うことにためらいがない 5.1 魅力的な打ち合わせを考える B 顧 客 の 悩 み を 解 決 す る 短時間で実現する 中核 時と場合 に応じて レポートなど 周辺的 偽 5.6 短時間でアウトカムを提供する 顧客にとって 困ったときの 駆け込み寺 顧客が聞いた ら、すぐに打 ち合わせが設 けられる
  11. 5.セールスを考える(2/2) B 障害を 引き取る 安心 お得 使い放題 行 動 に

    対 す る 障 害 を 乗 り 越 え ら れ る 行動前の正当化がしやすい B 副作用を 引き取る 効果が なかったら 全額返金 行 動 後 の 副 作 用 が 抑 制 で き る 行動後の正当化がしやすい 5.7 購入までの摩擦を取り除く 5.8 行動後の不安を取り除く
  12. B 収 益 性 が 高 い 企業規模が大きい B 収

    益 性 が 高 い 独自の技術力が高い B ユーザーが少 なくても高い 収益 ユーザーが 増えても 低い収益 収 益 性 が 高 い ネットワーク効果が高い B 独占資源がなく ても高い収益 独占資源が収 益をもたらさ ない 収 益 性 が 高 い 独占資源の優位性が高い B 収 益 性 が 高 い 企業への信頼性・崇拝性が高い 6.1 企業規模と収益性の関係を考える 6.2 独自の技術力と収益性の関係を考える 6.3 ネットワーク効果と収益性の関係を考える 6.4 独占資源と収益性の関係を考える 6.5 信頼と収益性の関係を考える B 収 益 性 が 高 い 公共性が高い 6.6 公共性と収益性の関係を考える ユーザーが増 えるほど収益 が著しく高く なる 企業は信頼されて いるが収益をもた らさない 無名でも高い 収益 公共性がある が低い収益 (純粋寡占) 公共性はない が高い収益 公共性が高く収 益が著しく高い 特殊知識、特許な ど知的財産、資格 免許、不動産、ス ター人材などの独 占資源からの収益 性が著しく高い ファン顧客か らの収益が著 しく高い 独占技術がなく ても高い収益 独占技術がある が収益に結びつ かない 独占技術が著し く高い収益をも たらす 企業規模の大き さに収益に結び つかない 企業規模が小さ くても高い収益 企業規模が大き いほど高い収益 6.独占を考える 自社収益 競合収益
  13. 2.プロダクトの位置に点を打つ B 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい
  14. 2.プロダクトの位置に点を打つ B 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい 製品/サービスA 製品/サービスB 製品/サービスC 点を打つなら 口下手でもできる。
  15. 3.競合の点を打つ B 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい 製品/サービスA 製品/サービスB 製品/サービスC 競合の製品/サービス 競合の製品/サービス
  16. 4.競合を上回るアイデアを考える B 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい 製品/サービスA 製品/サービスB 製品/サービスC 競合の製品/サービス 競合の製品/サービス
  17. B 業界内でよくある分布 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい
  18. B 業界内で苦しい立場の企業 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい
  19. B 業界内でダントツ企業 顧 客 よ り も 顧 客 の

    悩 み に 詳 し い 顧客よりも顧客の解決策に詳しい