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保育士チームが実践している連続的な観察と多面的な観察を共有するための振り返り / Reflec...

保育士チームが実践している連続的な観察と多面的な観察を共有するための振り返り / Reflection to share “continuous and multifaceted observations” as practiced by a team of childcare professionals

RSGT2025で登壇した際の資料です。
保育士は保育の現場で「連続的な観察」と「多面的な観察」を駆使して子どもたちを観察しており、なおかつそれらの観察をチームで振り返りながら行っています。
保育士チームには共通のゴールがあり、子どもひとりひとりの発達にあった成長を実現するために、チームで協力しながら日々の観察や意思決定を行っています。

Satoshi Harada

January 09, 2025
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Transcript

  1. 自己紹介 保育士 / 幼稚園教諭 ピタゴラまなっち 保育園で働く保育士。保育歴は10年以上。 大学の人文学部で教育学と発達心理学を専攻。 幼稚園でも働いた経験があり、保育園では、 社員やパートとして様々な立場で保育を実践。 現在、クラス担任のリーダーを担当。

    アジャイルコーチ Satoshi Harada 遊び心でアジャイルを旅する旅人。 ソフトウェア開発者。2015年にアジャイルと出 会う。現在はメーカーのアジャイルコーチとし て活動中。焼肉レトロスペクティブ、 保育ふりかえり、メカアジャイルなどを発表。 (夫婦で共同登壇発表)
  2. お話しすること 1. なぜ保育?なぜ観察? 2. 保育士が現場で実践している 観察から学ぼう 3. 観察を共有するための振り返り 4. 私たちもやってみよう!

    ※振り返りとふりかえり※ この発表では、保育の”振り返り”と アジャイルな”ふりかえり”を 区別して記述しています
  3. なぜ保育? • 守破離の離(Advanced) • スクラムのベーシック、ではない話 • 保育士はチームで観察スキルを駆使している ◦ 私たちの仕事でも参考になりそう! ▪

    スクラムマスターなら、チームの観察 ▪ プロダクトオーナーなら、ユーザーの観察 ▪ 開発者なら、メンバーどうしの観察
  4. なぜ観察? Scrum Theory Scrum is founded on empiricism and lean

    thinking. Empiricism asserts that knowledge comes from experience and making decisions based on what is observed. Lean thinking reduces waste and focuses on the essentials. スクラムの理論 スクラムは「経験主義」と 「リーン思考」に基づいている。 経験主義では、知識は経験 から⽣まれ、意思決定は観察 に基づく。 リーン思考では、ムダを省き、 本質に集中する。 https://scrumguides.org/scrum-guide.html https://scrumguides.org/docs/scrumguide /v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
  5. 事例:靴を履こうとしない子① • Hくん(2歳児) • 身支度を自分でしようとしない • 「自分でやってみよう」と促すと、 「ママがいい」「できない」と泣く ◦ 自分でできない?

    ◦ 自分でやる意欲が無い? どっち? • Hくんの発達に合った成長を 促していくために、あなたは どのような観察と意思決定をする? Hくん
  6. 子どもとの物理的距離 2.いざとなったら 飛びつける距離 3.失敗すると心配! が感じられる距離 4.傍観・応援してくれて いると感じられる距離 1.子どもの 心理的テリトリー 参考:

    「観察」と「振り返り」で 子どもの物語を支える 2021年・冬の保育アカデミー 汐見 稔幸 https://tebura-touen.com /column/archives/3273 信頼 関係 観察によって 1日の中でも 物理的距離は 随時変化する 常に1.や2.の距離にいる のは良いことではない (子どもを保育者に依存 させている可能性がある) Hくん Yちゃん Rちゃん チームの自己組織化や チームメンバーの自主性 を育てたいと考えるスク ラムマスターにとっても この物理的距離の考え方 は参考になる
  7. 保育士チームが実践している 連続的な観察・多面的な観察 • 保育士が行った連続的な観察 ◦ Hくんのこれまでの経緯を踏まえて、仮説を立てて観察 ▪ 靴が履けない?靴を履こうという意欲がまだ無い? ◦ 物事をありのままに把握し真理を見極め、次の意思決定に繋げる

    ▪ ありのままに把握するために、子どもとの物理的距離に工夫あり • 保育士が行った多面的な観察 ◦ ひとりの視点に偏らないように、複数の視点で観察 ▪ (Hくんが自分で靴を履けるように)見守りと声かけに 留めていることをその場で保育者どうしで共有 ◦ 保育者どうしの振り返りで、次の意思決定に繋げる
  8. 楽しく語り合う • 観察と省察を組み合わせる • 省察は振り返りで行う • 振り返りは、保育士が エピソードを楽しく語り合う • 子どもっておもしろいなあと

    思ったこと、子どもから教え られたことを中心に語り合う 汐見稔幸 先生 東京大学名誉教授 白梅学園大学名誉学長 全国保育士養成協議会会長 日本保育学会理事(前会長) 出典:「観察」と「振り返り」で子どもの物語を支える 2021年・冬の保育アカデミー 汐見 稔幸 https://tebura-touen.com/column/archives/3273 せいさつ
  9. 私たちもやってみよう! • 観察で真理を見極め、意思決定の質を高める • 観察のプロである保育士から観察を学ぶ ◦ 連続的な観察と多面的な観察 ◦ 観察の物理的距離 ◦

    チームで共通のゴールを持つ ◦ チームで観察と振り返りを行い、ゴールに向けて調整し続ける ◦ エピソードを楽しく語り合う ◦ 「おもしろいなあ、教えられたなあ」