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マーケティング指標におけるデータサイエンス入門

うとしん
November 20, 2022

 マーケティング指標におけるデータサイエンス入門

Panasonic様の有志団体の勉強会でお話させていただいた登壇資料です(資料は一部変更しています)

ビジネス領域で効果検証(因果推論)をしていく上で必要なマーケティング指標へのアプローチやデータサイエンス手法の応用例についてまとめています。

参考リンク(マイメディア)

- A/Bテスト(RCT)におけるノンコンプライアンスと操作変数法の応用, https://qiita.com/s1ok69oo/items/d9f3a3860388f3b9911d
- 介入とランダム化比較試
https://zenn.dev/s1ok69oo/articles/5df8b27e0ebfb9
- 回帰不連続デザイン(RDD)を用いた効果検証
https://zenn.dev/s1ok69oo/articles/f40ca93fe31a8d
- 回帰分析を用いた効果検証
https://zenn.dev/s1ok69oo/articles/f0b91f19da2812
- 差分の差分法(DID)による効果検証
https://zenn.dev/s1ok69oo/articles/e786bd6ee2d1f0
- 相関関係と因果関係と疑似相関
https://zenn.dev/s1ok69oo/articles/3d748c399da774
- 反実仮想と因果効果
https://zenn.dev/s1ok69oo/articles/c3404a184d2203
- マーケティング施策における効果検証入門
https://speakerdeck.com/s1ok69oo/maketeingushi-ce-nookeruxiao-guo-jian-zheng-ru-men
- マーケティング施策の効果検証における回帰不連続デザインの応用
https://qiita.com/s1ok69oo/items/6e9dffd2d4341072ecc4

うとしん

November 20, 2022
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Transcript

  1. マーケティング指標における
    データサイエンス入門

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  2. 前提
    - 聴き手のレベル感の想定
    データサイエンス初学者or簡単な書籍を読んだことがあるくらいの
    方々(ゴリゴリに専門書を読んでます的なレベルは想定していないで
    す)
    ▶ あえて厳密な表現をしていないところがあります

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  3. アジェンダ
    - 前回のおさらい
    - マーケティング指標の紹介
    - データサイエンスの概要
    - データサイエンスのマーケティング領域への応用

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  4. 前回のおさらい

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  5. 相関関係と因果関係
    相関関係の例
    相関関係は必ずしも因果関係を表しているわけではない
    因果関係の例
    ビールの売上が大きいと
    アイスの売上も大きい傾向
    学習時間を増やすと
    試験の成績が上がる

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  6. 因果関係の重要性
    ビジネスシーンでは因果関係を知りたい(ことが多い)
    キャンペーン施策は利益につながったの?
    ➢ 因果関係が分からないと
    いつまで経っても意思決定を評価できない
    広告を売ってるけど費用対効果はどうなの?

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  7. 因果関係の難しいところ
    これって本当の効果?
    広告の例:広告を見たグループと広告を見てないグループの売上を比較
    売上
    広告を見た 広告を見てない
    現代の広告の多くは、売上に繋がりやすい人を
    ターゲティングして配信されている
    ➢ 広告を見ていなくても売上が高い
    「すべてが広告の効果」
    というわけではない

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  8. バイアス(セレクション・バイアス)
    バイアスを取り除いたものが本当の効果
    広告の例:バイアス=広告を見ていなくても生じていたであろう売上の差
    売上
    広告を見た 広告を見てない
    広告の効果(本当の効果)
    広告を見ていなくても
    生じていたであろう売上の差
    (セレクション・バイアス)

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  9. バイアスを除いた効果を推定するアプローチ(実験or非実験)
    効果検証とは?
    前回、紹介した手法
    実験
    - RCT(A/Bテスト)
    非実験
    - DID(差分の差分法)
    - RDD(回帰不連続デザイン)

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  10. 前回、議論していない点
    効果検証の流れ
    1. 効果を定義する 2. (広義の)”データサイエンス”

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  11. 今回、焦点を当てたい点
    指標へのアプローチ
    どんな指標を見るべきか
    “データサイエンス”の具体例
    どのように応用されているのか
    〇〇アルゴリズム
    〇〇分析

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  12. 前回のおさらい(まとめ)
    - 相関関係と因果関係は混同してはいけない
    - 本当の効果って意外と分からない(バイアスだらけ)
    - 効果検証とは、バイアスを取り除いて本当の効果を推定するア
    プローチ
    - 今回は、効果を定義するための指標や評価するための”データ
    サイエンス”の応用例についてお話させていただきます。

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  13. マーケティング指標の紹介

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  14. マーケティング指標の紹介(前提)
    この章は、みなさんが知らないような「新しい指標を紹介する」と
    いうような内容ではありません。
    (たぶん、私より詳しい人はたくさんいると思います(笑))
    では、何を紹介する章なのか??
    ➢ 「指標へのアプローチ」を紹介します!!

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  15. いきなりですが、、、
    みなさん、ダイエットをしたことはありますか?

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  16. ダイエットあるある
    やみくもにダイエットを試みたものの、、、
    運動 食事制限
    気合十分 挫折
    ➢ 「ダイエットに必要な指標を定量的に終えていない」ことが原因

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  17. ダイエットで追うべき指標
    ダイエットって実は非常にシンプル
    ※脂肪1kgを燃やすのに必要なカロリーは、約7,200キロカロリー
    消費カロリーと摂取カロリーの指標を追えばよい
    ➢ 追うべき指標が分かると、解像度がグッと上がる!!
    1日の消費カロリー 1日の摂取カロリー

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  18. マーケティング指標の話に戻ります
    書籍「データ・ドリブン・マーケティング」で紹介されている指標
    をベースにお話します
    書籍の概要(Amazonの紹介文を一部抜粋)
    フォーチュン500社の業績上位20%の企業に共通する成功のカギは、データ解析にも
    とづくマーケティング(データドリブン・マーケティング)の意思決定であることがわ
    かっている。しかし日本では、各種メディアで「ビッグデータ」という言葉を目にし
    ない日はないほどだが、実際にはほとんどの企業がそれを売上・パフォーマンスの向
    上に転換できていないのが現状である。その最大の理由は、そもそもどのような指標
    が有効なのかを知らないことにある。
    著者が提言する15の指標による意思決定は、大規模なシステムや人的投資を必ずしも
    必要とするものではない。内容を正しく理解した担当者が一人いればできることがほ
    とんどであるため、対象となる読者層の裾野は極めて広い。また、事例も豊富であ
    り、机上の理論に終わらず、実務家が明日から使える示唆・ノウハウに富んでいる。

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  19. マーケティング活動の予算配分(平均値)
    需要喚起が約5割を占める
    ※書籍「データ・ドリブン・マーケティング」の図表1.5を一部改変
    マーケティング活動を5項目に分類
    1. ブランディング
    2. 市場形成
    3. CRM
    4. ITインフラおよび組織能力
    5. 需要喚起

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  20. マーケティング活動の予算配分(業績別)
    業績上位企業と業績下位企業で予算配分の割合は異なる
    ※書籍「データ・ドリブン・マーケティング」の図表1.6を改変
    上が業績上位企業、下が業績下位企業の予算配分
    業績上位企業の方が、業績下位企業より
    も中長期的な(需要喚起以外)マーケ
    ティング活動に予算を配分している割合
    が高い

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  21. ついつい、需要喚起関連の活動に重きを置いてしまう、、、
    マーケティング活動あるある
    ➢ マーケティング活動の目的に合った評価指標を選択する必要
    需要喚起
    短期的な売上UP等などの繋がりや
    すく、効果や重要性を説明・理解
    しやすい
    それ以外の活動
    短期的には売上UP等に繋がらない
    ものが多く、効果や重要性を説明
    ・理解しづらい

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  22. マーケティング活動に合った評価指標
    あくまでも参考
    マーケティング活動 目的・カテゴリ 評価指標の例
    ブランディング 認知向上 ブランド認知率
    市場形成 比較検討・評価 試乗(お試し)回数
    CRM 顧客満足度 解約率、NPS
    ITインフラ等 運用効率 オファー承諾率
    需要喚起 トライアル 売上高、財務系指標全般

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  23. マーケティング活動に合った評価指標(補足)
    赤枠部分は短期的な利益に繋がりにくいからこそ指標選定が鍵
    マーケティング活動 目的・カテゴリ 評価指標の例
    ブランディング 認知向上 ブランド認知率
    市場形成 比較検討・評価 試乗(お試し)回数
    CRM 顧客満足度 解約率、NPS
    ITインフラ等 運用効率 オファー承諾率
    需要喚起 トライアル 売上高、財務系指標全般

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  24. マーケティングのバランス・スコアカード
    マーケティング施策を設計する際に3つの観点で考える必要がある
    指標 概要 具体例
    過去指標 具体的なキャンペーンや戦
    術の効果を測る指標
    売上高
    リード・コンバージョン
    将来指標 先行指標となる測定値 ブランド認知率
    LTV
    内部プロセス管理指標 施策実行の効率性を測る指

    オファー承諾率
    費用対効果

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  25. 指標に基づくマーケティング活動のプロセス
    マーケティング・キャンペーン・マネジメント(MCM)が鍵
    効果測定
    (測定)
    キャンペーンの
    管理(実行)
    キャンペーンへ
    の投資(選択)
    フィードバック
    (適応学習)

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  26. - マーケティング活動の成功確度を上げるためには、定量的な指
    標を追う必要がある
    - マーケティング活動に合った指標選定がポイント。特に需要喚
    起以外のマーケティング活動は短期的・直接的に売上に結びつ
    くことを確認しにくいケースが多いので、目的に合った指標選
    定が重要
    - マーケティング施策の設計には、スコアカードやマーケティン
    グ・キャンペーン・マネジメント(MCM)の導入を推奨
    マーケティング指標の紹介(まとめ)

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  27. データサイエンスの概要

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  28. データサイエンスとは
    統計学などの知見をもとにデータからインサイトを導き出すこと

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  29. 本スライド内における”データサイエンス”
    先ほどの定義に加えて、統計学・機械学習・最適化など広義の数理
    的手法も含めて“データサイエンス”と表現
    データサイエンス警察
    ※「データサイエンス」という表
    現は曖昧な便利ワードとして用い
    られがちなので、要注意です
    (正直、何が正解かは私も分かりません)

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  30. 3大”データサイエンス”手法(あくまでも主観)
    - 統計学(統計解析)
    - 機械学習
    - 数理最適化
    ➢ 重なる部分も多く、厳密な棲み分けはない

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  31. 統計学って何ができるの?
    手元のデータを使って、母集団について考える
    イメージ: カレーの味見
    味見で全部は食べない
    小皿にすくって
    (鍋全体の)味を確認

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  32. 統計学を用いた効果検証(カレーの例)
    いつものレシピに隠し味を入れて、味の変化を考える
    隠し味入り
    隠し味なし
    味の差が隠し味の効果

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  33. 機械学習って何ができるの?
    手元のデータから学習し、ある値を予測する(教師あり学習)
    イメージ: カレーの味
    じゃがいも
    玉ねぎ にんじん お肉 カレールー 味
    aグラム bグラム cグラム dグラム eグラム

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  34. 機械学習を用いた効果検証(カレーの例)
    隠し味ありとなしの味の予測値の差を考える
    隠し味入りの味の予測値
    隠し味なしの味の予測値
    予測値の差が隠し味の効果

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  35. 数理最適化って何ができるの?(補足)
    データと制約条件から、ある値を最大(最小)にする配分を実現
    イメージ: カレーをできるだけたくさん作る
    甘口カレー4食分の具材
    玉ねぎ1個
    じゃがいも2個
    にんじん2本
    牛肉100g
    甘口カレールー1個
    辛口カレー4食分の具材
    玉ねぎ2個
    じゃがいも2個
    にんじん1本
    牛肉200g
    辛口カレールー1個
    冷蔵庫(制約条件)
    玉ねぎ6個
    じゃがいも6個
    にんじん6本
    牛肉500g
    甘口カレールー3個
    辛口カレールー3個

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  36. データサイエンスの概要(まとめ)
    - データサイエンスとは、統計学などの知見をもとにデータから
    インサイトを導き出すこと
    - 統計学、機械学習、数理最適化でできること
    - 統計学: 手元のデータから母集団を考えることができる
    - 機械学習: 手元のデータから予測できる(教師あり学習)
    - 数理最適化: 手元のデータと制約条件からある値を最大(最小)
    にする配分を実現することができる

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  37. データサイエンスの
    マーケティング領域への応用

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  38. 本スライドで紹介する4つの手法
    - 回帰分析
    - ネクストベスト・オファーモデル分析
    - 決定木分析
    - LiNGAMモデル分析

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  39. 回帰分析
    いい感じの回帰直線を考えて、効果を推定する手法
    イメージ: キャンペーン施策の平均売上効果
    売上高の指標に注目
    - 縦軸: 平均売上の推定値(単位: 円)
    - 横軸: 年齢(単位: 歳)
    - 効果: 2直線の差
    キャンペーンには売上を平均1,000円上げ
    る効果があると解釈

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  40. 回帰分析(補足)
    前回、紹介した手法も回帰分析の枠組み
    差分の差分法(DID)
    t4時点でキャンペーンを実施
    - 縦軸: 平均売上の推定値(単位: 円)
    - 横軸: 時点(t1, t2, t3, t4)
    - 効果: t4時点のキャンペーンありの実
    線と破線の差

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  41. 回帰分析(補足)
    前回、紹介した手法も回帰分析の枠組み
    回帰不連続デザイン(RDD)
    累計ポイントが1,000ポイント以上の顧
    客にだけキャンペーンを実施
    - 縦軸: 平均売上の推定値(単位: 円)
    - 横軸: 累計ポイント
    - 効果: 累計ポイントが1,000ポイント
    付近の平均売上の差

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  42. 回帰分析(メリット・デメリット)
    回帰分析のメリットとデメリット
    メリット
    - 考え方が比較的シンプルなため、受け入れられやすい
    - 汎用性が高い
    デメリット
    - 変数の選択などが実は難しく、誤用されやすい

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  43. ネクストベスト・オファーモデル
    既存の顧客の購入意欲を点数化し、1番点数の高いものを提案する
    Eメールによる販促
    Eメールで提案
    最も購入意欲が高い
    商品を提案
    モデルの作成
    ロジスティック回帰
    モデルなど
    データ蓄積
    過去の購買履歴など
    の属性データ
    効果測定
    オファー承諾率など
    モデルは定期的に
    更新する

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  44. ネクストベスト・オファーモデル(補足)
    似た手法に「アソシエーション分析」がある(クラスター分析)
    顧客がどんな商品やサービスを同時に購入するかを特定する分析手法
    (例)野球のグローブを購入する人に野球ボールやバットをレコメンド

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  45. ネクストベスト・オファーモデル(メリ・デメ)
    ネクストベスト・オファーモデルのメリット・デメリット
    メリット
    - 分析結果に基づいたEメール配信など、一度実装すればネクストアクションま
    で自動化することが可能
    デメリット
    - 分析結果が視覚的に分かりにくい
    - データ基盤などのITインフラ整備が必要

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  46. 決定木分析
    データに基づいてルールを設定し、木構造に分類する
    解約率が高い顧客を割り出す
    全顧客1,000人
    解約率10.0%
    顧客数500人
    解約率5.0%
    顧客数500人
    解約率15.0%
    顧客数100人(解約率9.0%)
    顧客数400人(解約率4.0%)
    顧客数200人(解約率21.0%)
    顧客数300人(解約率11.0%)
    この顧客層に刺さるネクスト
    アクションを考える
    Yes
    No
    例)顧客ランクが〜以上

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  47. 決定木分析(メリット・デメリット)
    決定木分析のメリット・デメリット
    メリット
    - 視覚的に理解しやすい
    - 幅広いケースでアプローチが可能
    デメリット
    - モデルの過学習の懸念

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  48. LiNGAMモデル分析
    いい感じのモデルを考えて、各要素の影響度合いを推定
    イメージ
    求めたい関係式
    - x = 2y + a
    - y = b
    - z = 3x + 4y + c
    ※a,b,cは誤差(ノイズ)
    変数y
    変数x 変数z
    ×2 ×4
    ×3
    ➢ 矢印と赤の数字たちを知りたい
    LiNGAMの由来
    必要な仮定の頭文字
    - Linear: 線形
    - Non-Gaussian: (誤差項が)ガウス分布
    に従わない
    - Acyclic: 非循環(な因果グラフで表すこ
    とができる)
    - Model: モデル

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  49. LiNGAMモデル分析(メリット・デメリット)
    LiNGAMモデル分析のメリット・デメリット
    メリット
    - 視覚的に理解しやすい
    デメリット
    - 前提条件が厳しい

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  50. DSのマーケティング領域への応用(まとめ)
    - 回帰分析、ネクストベスト・オファーモデル分析、決定木分
    析、LiNGAMモデル分析などを紹介
    - いずれの手法にもメリット・デメリットがあるため、目的に合
    わせた手法選定が必要

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  51. おわりに

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  52. 参考文献
    - マーク・ジェフリー「データ・ドリブン・マーケティング」ダ
    イヤモンド社(2017)
    - 安井「効果検証入門」ホクソエム社(2020)
    - Ron Kohavi他「ABテスト実践ガイド」ドワンゴ(2021)
    - 小川「Pythonによる因果分析」マイナビ出版(2021)
    - 佐藤「マーケティングの統計モデル」朝倉書店(2015)

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  53. ご清聴ありがとうございました

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