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2023年度ICT職専門研修(海外派遣研修)報告書 No.4

2023年度ICT職専門研修(海外派遣研修)報告書 No.4

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  1. 現職では2021度から東京都立大学における情報セキュリティと情報インフラを担当。 DX推進のために必須となる最低限の情報基盤を整備中。業務を進める中で、デジタル ツールの単なる利活用がDXとして語られる場面に遭遇、考え直すきっかけとなった。 デジタイゼーション デジタライゼーション DX (単なる電子化) (既存プロセスの改善) (変革) ➢

    DXとは単なる「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」に留まらず、業務を深く 理解し、そのあり方やサービスそのものを根本から見直すものではないだろうか? ➢ 組織として変革を進めるために必要なマネジメント手法等を体系立てて学ぶとともに 海外自治体の先進事例をヒアリングすることで、今後の都政に役立てられるのでは? 研修概要 4 訪問先 まとめ 渡航テーマ(2/3)設定の背景
  2. 研修概要 5 訪問先 まとめ ※1 Quacquarelli Symonds Limited . “QS

    World University Rankings 2024: Top global universities”. Quacquarelli Symonds Limited. 2023- 06-27.https://www.topuniversities.com/world-university-rankings, (参照 2024-01-12). ※2 International Institute for Management Development. “World Digital Competitiveness Ranking 2023”. International Institute for Management Development. https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness- ranking, (参照 2024-01-12). ※3 International Institute for Management Development. “Smart City Index 2023”. International Institute for Management Development. https://imd.cld.bz/IMD-Smart-City-Index-Report-20231, (参照 2024-01-12). 渡航テーマ(3/3)訪問先の選定 以下の理由から、シンガポール国立大学及びシンガポール政府機関等を訪問先とした。 訪問先1 NUS(National University of Singapore:シンガポール国立大学) • イギリスの大学評価機関クアクアレリ・シモンズ「QS世界大学ランキング※1」等で世界的に著名。 • DXに特化した公開講座(3日間)が開講。 訪問先2 シンガポール政府機関 • 限られた天然資源、自給率の低さ、少子高齢化の進展といった面で都と共通点が多い。 • 一方、スイスの国際経営開発研究所「World Digital Competitiveness Ranking(※2)」や 「Smart City Index(※3)」等にて高く評価。
  3. 研修概要 6 訪問先 まとめ 研修日程と訪問先一覧 日程 訪問先(訪問相手) 訪問場所 12月11日(月) ~

    12月13日(水) NUS(シンガポール国立大学) 【No.1】 公開講座「Digital Transformation Planning」 NUS(シンガポール国立大学) システム科学研究所 12月14日(木) シンガポール政府機関 【No.2】 HDB(住宅開発庁) Punggol Northshore (プンゴル・ノースショア地区) シンガポール政府機関 【No.3】 JTC(スマートタウン建設に携わるデベロッパー) JTC Summit (JTCの本社) シンガポール政府機関 【No.4】 A*STAR(科学技術研究所) FusionWorld (A*STAR本部の展示施設) 12月15日(金) シンガポール政府機関 【No.5】 SNDGO(首相府スマートネーション・デジタル政府オフィス) City Gallery (都市再開発庁の都市博物館) Punggol Northshore (プンゴル・ノースショア地区)
  4. 研修概要 8 訪問先No.1 NUS まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(概要) 訪問先: NUS(シンガポール国立大学)システム科学研究所 訪問期間:

    2023年12月11日(月)から12月13日(水)まで 講座名: Digital Transformation Planning 概要: 組織がどのようにデジタルを取り入れて変革を実現するかについての フレームワークとアーキテクチャを学び、ワークショップにてDX計画の 策定を学習、食事のたびにディスカッションに加わることで交流を深めた 参加国比: シンガポール9名、香港5名、日本1名 参加者層: 民間企業におけるCIOやCTO、政府機関等においてDX施策に携わる マネージャークラスが中心
  5. 研修概要 10 まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(1日目) 1日目は「戦略」と「価値提供」について学ぶ。「戦略」の前に、改めてDXを定義する。 ・DXはビジネスプロセスのデジタル化ではない(技術と文化の変革である) ・DXは既存のプロセスを調整するものではない(ビジネスモデルの創出である) ・DXとは破壊的なものでなければならない(でなければ単なる改善に留まる) ・DXは短期間或いは一回限りの戦術ではない(戦略に基づく長期的なもの)

    ➡孫氏(古代中国の兵法書) 『人皆な我が勝の形(戦術)を知るも、 吾が勝を制する所以の形(戦略)を 知ることなし』 Strategy:戦略 Value Proposition:価値提供 Drivers:推進者 Enablers:実現者 Architecture:アーキテクチャ Business Model:ビジネスモデル チェンジ マネジメント ガバナンス DXのフレームワーク 訪問先No.1 NUS
  6. 研修概要 11 まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(1日目) 訪問先No.1 NUS 戦略に続いて「価値提案」にて、顧客視点でどのような価値が提供可能かを示す。 ・DXの84%が失敗に終わる(単にデジタライゼーションに留まるものも含む) ・下図における要素のどれか1つでも欠けるとDXは失敗する

    ワークショップでは「TikTokの現在の主力商品を分析のうえで新たな顧客層を対象とした 新たな商品を提案せよ」とのテーマでグループディスカッションと発表を行った。 ➡繰り返し「顧客の設定、顧客の分析、顧客への価値提供が重要である」とのフィードバック 戦略 エンゲージ メント イノベー ション テクノロ ジー データ分析 DX 人材、文化、リーダーシップ、スキル
  7. 研修概要 12 まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(2日目) 訪問先No.1 NUS 2日目は「推進者」、「実現者」及び「ビジネスモデル」について学ぶ。 DXはテクノロジーというより、むしろ人材に関するものである。 ・どんなに素晴らしい技術も、それを使いこなすスキルがなければ意味がない

    ・どんなに素晴らしい頭脳の持ち主でも、技術がなければ、有用性は薄れる ・技術への投資の前に、その技術を使いこなす人材への投資を考えるべきだ Strategy:戦略 Value Proposition:価値提供 Drivers:推進者 Enablers:実現者 Architecture:アーキテクチャ Business Model:ビジネスモデル チェンジ マネジメント ガバナンス DXのフレームワーク
  8. 研修概要 13 まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(2日目) 訪問先No.1 NUS Drivers(強力な推進者)とEnablers(技術的な実現者)の存在が必要。 両者をつなぐのがビジネスモデルである。 ・第一次技術革命では「工場」というビジネスモデルがあった

    ・第二次技術革命では「会社」というビジネスモデルがあった ➡ジャック・マー(アリババグループ、アントグループの創業者) 『今世紀に最適なビジネスモデルは何だろうか? 私たちは、それを「プラットフォーム・ビジネス」と呼ばれるものだと考えている』 ワークショップでは「ペット業界向けの架空のプラットフォームビジネスを創造し、核となる機能とビジネス モデルを定義せよ」とのテーマ。ペットショップとペットオーナーが一堂に会するプラットフォームを提案。 ➡「関係者をいかに巻き込むかが重要、顧客を具体的かつ明確に定義せよ」とのフィードバック
  9. 研修概要 14 まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(3日目) 訪問先No.1 NUS 3日目は「チェンジマネジメント」、「ガバナンス」及び「アーキテクチャ」を学ぶ。 ・チェンジマネジメントが必要(変革の70%は従業員の抵抗等により失敗する) ・ガバナンスとは目標達成のために積極的に管理を行うこと

    ・価値主導の原則、顧客重視の考え方、組織プロセスの簡素化が重要 ➡アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(小説家) 『船を造りたいのなら、男どもを森に集めたり 仕事を割り振って命令したりする必要はない 代わりに、彼らに広大で無限な海の存在を 説けばいい』 Strategy:戦略 Value Proposition:価値提供 Drivers:推進者 Enablers:実現者 Architecture:アーキテクチャ Business Model:ビジネスモデル チェンジ マネジメント ガバナンス DXのフレームワーク
  10. 研修概要 15 まとめ 訪問先No.1 シンガポール国立大学(3日目) 訪問先No.1 NUS ・失敗から学べば、将来の失敗が少なくなる(Fail Fast and

    Fail Forward) ・機動的(アジャイル)に、シンプルに、適切な規模から取り組むこと ・決断の45%は単なる習慣によってなされている ・正しいデータと動機付けによってなされるべき ・WhatとHowに注目しがちだが、Whyが最重要 ➡組織におけるWhyの回答とはお金を稼ぐことではない それは結果に過ぎない ➡組織におけるWhyとは目的、原理原則、信念である すなわち、組織の存在意義である What How Why ゴールデンサークル
  11. 研修概要 16 まとめ 訪問先No.2 スマートタウン(概要) 訪問先No.2 Punggol ※ Housing &

    Development Board. “Punggol”. Housing & Development Board. https://www.hdb.gov.sg/about-us/our-role/smart-and- sustainable-living/punggol-ecotown, (参照 2024-01-12). 訪問先: Punggol Northshore(プンゴル・ノースショア地区) 訪問日: 2023年12月14日(木)及び12月15日(金) 概要: シンガポールで初とされる本格的なスマートタウン ・同国では国民の約8割がHDB(住宅開発庁)の集合住宅に居住 ・うち、プンゴルは2000年から開発を開始した比較的新しい地域 ・訪問先のノースショア地区のコンセプトは「スマート&サステナブル」 ・2022年までに住宅2棟、商業施設、それらに直結する駅が開業 ・現在も建設が進められており今後は大学やオフィスビルが誘致予定 ➡開発にあたった住宅開発庁職員による説明の下で現地を視察
  12. 研修概要 17 まとめ 訪問先No.2 スマートタウン(1/3) 訪問先No.2 Punggol スマートな駐車場 駐車場アプリとIoTが連動して混雑状況が可視化され、 利用料金の支払いも自動化されている。

    サステナブルな施設 風通しと日差しと雨除けのためフィンの向きが自動調整され、 水やりが自動化されたグリーンカーテンが安心感を与える。 車のナンバーを読取るカメラ 利用状況や種別を示すランプ 壁一面の気流調整用フィン グリーンカーテン ※ Housing & Development Board. “Parking@HDB”. Housing & Development Board. https://www.hdb.gov.sg/cs/infoweb/car- parks/parkinghdb, (参照 2024-02-20).
  13. 研修概要 18 まとめ 訪問先No.2 スマートタウン(2/3) 訪問先No.2 Punggol AR(仮想現実)によるバーチャルガイドの利用 バーチャルガイドがノースショア周辺の様々な取組みを 紹介する(写真はトンボ池での様子)。

    カメラやセンサーの利用 顔認証によるドアの開施錠でセキュリティを高めるとともに、 人感センサーによる照明の自動調節でエコにも貢献する。 トンボの種類をAR表示 雨水をろ過してトンボ池へ 顔認証機能付きカメラ 人感センサー
  14. 研修概要 19 まとめ 訪問先No.2 スマートタウン(3/3)まとめ 訪問先No.2 Punggol シミュレーション結果に基づき風の通り道を計算して 設計・建築されるなど、デジタルツイン活用が進む。 また、現在建設中のPunggol

    Digital District (PDD:プンゴル・デジタル地区、ビジネスに特化)では 更なるスマートタウン化が図られる計画。 ここでは「ODP(Open Digital Platform)※」と 呼ばれる仕組みが用いられている。 ※ JTC. “Open Digital Platform: the digital backbone of Punggol Digital District”. JTC. https://estates.jtc.gov.sg/pdd/stories/open-digital- platform-the-digital-backbone-of-pdd, (参照 2024-01-12). 建築設計に活用されるデジタルツイン (デジタルツイン:現実世界のものをデジタル 空間上に双子のように再現する技術)
  15. 研修概要 20 まとめ 訪問先No.3 デベロッパー(概要) 訪問先No.3 JTC 訪問先: JTC(旧称:ジュロン・タウン・コーポレーション)本社 訪問日:

    2023年12月14日(木) 概要: MTI (通商産業省)の管轄下で産業発展、インフラ整備に携わる政府機関 ・元々は工業団地などの施設を計画、建設・運営するため1968年に設立 ・PDDでは地区の規模でシステムとサービスとの連動を目指している ・訪問したJTC Summit(JTCの本社屋)自体がショーケース化 ➡ JTC社の担当者に対して「ODP(Open Digital Platform)」が デジタルツインもしくは都市OSとして機能するものかヒアリング (都市OS:さまざまなデータの集積・分析・連携・流通及び認証等の基本的機能を提供する基盤のこと。 コンピュータにおける基本ソフトウェア(OS)になぞらえて、一般に「都市OS」と呼ばれる。)
  16. 研修概要 22 まとめ 訪問先No.3 デベロッパー(2/3)定義 訪問先No.3 JTC ここではデジタルツインを5つの段階で定義している。 ※単にJTC内にとどまらず、シンガポール政府内の共通認識とされている。 レベル5:自律的

    レベル4:包括的 レベル3:予測的 レベル2:情報的 レベル1:記述的 AI、モデリング、シミュレーションを通じて意思決定する モデリング、シミュレーションに基づいてシナリオの作成やあるべき姿の分析を行う リアルタイムデータ分析から潜在的な問題点を特定する センサーなどのIoTからのデータを統合する 単にレプリカとして機能する
  17. 研修概要 23 まとめ 訪問先No.3 デベロッパー(3/3)まとめ 訪問先No.3 JTC ・SLA(土地管理局)が管理、運営する「Virtual Singapore※」はレベル1の段階 ・一方、JTCとGovTechとで共同開発された「ODP」はレベル3.5相当の段階

    (GovTechは同国のシステムの開発・運用を担う政府機関、2016年に創設) ・ODPはさまざまなシステム(ビル管理システム等)、製品、サービス、アプリと連動可能 ・その様子は、まるでビル用の「Android OS」のようなもの ・JTC Summit等での実績を生かし、ODPはPDDに展開される予定 ・ただし、原状では対象とする規模は都市単位ではなく地区単位に限られる 都においてもデジタルツイン、都市OSに関して改めての定義付けと 目指すべき段階についての目標設定が必要であると感じた。 ※ Singapore Land Authority. “Virtual Singapore”. Singapore Land Authority. https://www.sla.gov.sg/geospatial/gw/virtual-singapore, (参 照 2024-02-05).
  18. 研修概要 24 まとめ 訪問先No.4 科学技術研究所(概要) 訪問先No.4 FusionWorld 訪問先: FusionWorld 訪問日:

    2023年12月14日(木) 概要: A*STAR(シンガポール科学技術研究所)が運営する展示施設 ・同研究所は科学技術研究や人材育成推進等のため2002年に設立 ・情報通信関連の複合施設であるFusionopolis内に本部を設置 ・最先端の開発品、発明品、企業との共同制作試作品等を展示 ➡同研究所の職員による案内の下で展示品の説明を受けるとともに ➡同国における産官学の取組み等についてヒアリング
  19. 研修概要 25 まとめ 訪問先No.4 科学技術研究所 まとめ 訪問先No.4 FusionWorld シンガポールでは産官学での取組みが当たり前のように意識されているとのこと。 同庁は18の研究機関と約5,000人のスタッフが在籍する組織で、国内外の企業等と

    連携しつつ先進的な技術開発に取り組むとともに知的財産管理も行う。 シンガポール最大のテックイベントであるSWITCH (Singapore Week of Innovation & Technology)にも出展するなどして世界やアジアの起業家、 投資家らと研究機関・研究者との橋渡しの役割も担っている。 産官学での取組みの重要性・必要性を改めて痛感。
  20. 研修概要 26 まとめ 訪問先No.5 シンガポール政府(概要) 訪問先No.5 City Gallery 訪問先: City

    Gallery 訪問日: 2023年12月15日(金) 概要: URA(都市再開発庁)が企画・運営する3階建ての都市博物館 ・同国の直近50年における都市の物理的な変化を展示するため1999年に設立 ・400分の1スケールのジオラマ模型を中心に、過去と将来の都市計画が展示 ・10を超えるテーマエリアに50を超える光と音による体験型展示が並ぶ ➡SNDGO(シンガポール首相府直轄スマートネーション・デジタル政府オフィス)の 職員立会いのもと、シンガポールにおける都市計画について説明を受けるとともに 同国におけるDX関連政策や課題等についてヒアリングを実施
  21. 研修概要 28 まとめ 訪問先No.5 シンガポール政府(2/2)まとめ 訪問先No.5 City Gallery SNDGOはDX関連施策の旗振りや予算調整を担う。 ・政府のシステム調達はほとんどが一般競争入札、特殊な案件のみGovTechに委託

    ・公務員のデジタルリテラシー向上のため2001年に専門の研修組織を立ち上げ ・より高度なスキル習得のため2021年に「GovTechデジタルアカデミー」を開講 ・複数の省庁間でデジタルツインの共同利用やデータの共有などが検討されている 一方で、 ・政府内のいくつかの分野では、サイロ(孤立)化したシステムが存在 ・中長期的なシステム運用のランニングコストなど、コスト抑制が課題となっている 都における課題、問題意識とも共通点あり、継続的な情報交換や関係強化に繋げたい。