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2024年度ICT職専門研修(海外派遣研修)報告書No.1

 2024年度ICT職専門研修(海外派遣研修)報告書No.1

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  1. 3 01 研修概要 渡航テーマ・研修の目的 DX推進のためのAIエンジニアリング・データ分析スキルの取得 このテーマを選択した背景 ①東京都ではAIのシステム・ツール利用、データ分析を用いたDXが求められており、 都のDX推進にこの2分野の知識は欠かせない。 一方でAIを扱える人材は全国自治体レベルでも不足(※)している。 ②自身が民間企業でAI・データ分析の研究開発経験(7年半)を持っている。

    ⇒・AI・データ分析の業務経験で得たスキルを都政に直接活かしたい。 ・全庁のAI・データ分析導入推進で広く活躍する人材となりたい。 ※総務省情報流通行政局地域通信振興課「自治体におけるAI・RPA活用促進」(令和6年7月5日版) AIは音声認識・文字認識・チャットボットなどの領域で自治体業務での需要が高いものの、 AIに取り組むための人材がいないことが1番の課題として挙げられている。
  2. 5 01 研修概要 渡航先と日程 アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 ボストン ①Massachusetts Institute of

    Technology ▪MIT Professional Education (社会人向けコース)で AI・データ分析のプログラムに参加 訪問先①マサチューセッツ工科大学(MIT) 訪問日:7/22~7/24 訪問先②ボストン市役所 訪問日:7/25 ②Boston City Hall ▪ボストン市役所を訪問し 業務の生成AI活用に関するヒアリング
  3. 研修内容 7 02 渡航先と日程 Massachusetts Institute of Technology ▪MIT Professional

    Education (社会人向けコース)で AI・データ分析のプログラムに参加 〇マサチューセッツ工科大学(MIT) 訪問日:7/22~7/24 科学・工学分野で世界的に有名(QSランキング世界1位) 教育に力を入れており講義が充実 〇大学の講義を受講する目的 ・講義に参加し、AIやデータ分析について最高レベルの知識・技術を身に着けたい。 ・MITの教授や、講義に参加している民間企業・公的機関等の職員等とリレーションを形成したい。
  4. 研修内容 8 02 参加した講義について Workplace Analytics, AI , and Ethics

    ①職場におけるデータ分析 人事データ(採用/従業員満足度/成績/労働時間等)が対象 分析手法(技術的な話)、分析結果データに対する知見の講義 ②AIを利用する場合の倫理的配慮 この講義を選んだ理由 ・人事系データは、庶務事務システム等、都庁での取扱も多く、 「働き方改革」に直接貢献する重要データである。 ・AI導入時の倫理的な観点での取扱方法の知識は、行政職員として重要(プライバシー、公平性 その他) 授業は生徒への問いかけが多いディスカッションベース 課題やグループワークあり→後日、コースの修了証明判定(合格) 講義担当 Ben Waber先生
  5. 研修内容 9 02 講習内容1:データの分析手法について 回帰・クラスタリング等手法を学習 ニューラルネットワーク等の基盤的な手法も取り上げられた。 基本的手法を基にした分析スキルは 多くの受講者が身に着けていた。 ※内容は専門的なため、ここでは割愛 講習により、既存データの傾向から将来の値を予測したり、

    類似データのグルーピングを自動で実施するデータ分析法の最新を学んだ。 回帰 入力xから出力yへの計算(変換)式を 大量のデータから予測する クラスタリング 個々のデータをベクトル化し 距離の近いデータに同じ色に 割り当てる ニューラルネットワーク 入力xから出力yを脳を模した機構で 高精度計算(近年のAIの根幹)
  6. 研修内容 12 02 講習内容3:欧米におけるAIのリスク分類と規制 EUを発端としてAIの分類や規制が決められてきている。 AIは、以前より使ってよいもの/悪いものが明確に定められてきているため、 今後以下のような分類やリスク把握が必須になる。 高いリスク 限定的なリスク 最小限のリスク

    許容不可 •AI利用者または他者に危害を加える •人種、政治的意見、宗教的信条などの機微な特徴に基づい て人を分類するAIの使用 •潜在的犯罪者に関する自動リスクスコアリング、 基本的権利を妨げる可能性のある法執行システム •ChatGPTをベースとしたチャットボット •感情認識システム •ビデオゲーム、スパムフィルタ 利用禁止 DB登録 セキュリティ確保 人間による監視 透明性確保 利用可 内容 対処
  7. 研修内容 15 02 訪問先2 ②Boston City Hall ▪ボストン市役所を訪問し 業務の生成AI活用に関するヒアリング 〇訪問の目的

    自治体における生成AIの利用やガイドラインについての質問のため、テクノロジー・ ガバナンス担当や、新テクノロジー担当のディレクターを訪問 〇ボストン市役所 訪問日:7/25 生成AIの行政活用に関して先進的な自治体(2023年からAIガイドラインを作成)
  8. 研修内容 16 02 ボストン市役所におけるAIの導入について <現在導入のシステム> 【例1】ロールコール投票要約システム(市民に公開) Googleの大規模言語モデル Gemini を利用して、 市議会の投票内容を要約しわかりやすく表示

    例 タイトルの生成 〇議会の議事録 2024年10月23日に・・・警察庁内の民間人審査委員 会および内部調査委員会についてを提出した。 ・・・(中略)・・受理され、命令は可決された。 ↓ 〇タイトル 民生審査委員会および内部監査委員会の指名が承認された 主体となる組織や、承認/不承認がわかりやすく要約されている → 市民が記事一覧を探しやすくなる ロールコール投票のページ タイトル 議事の内容
  9. 研修内容 18 02 ボストン市役所の生成AIのガイドライン ボストン市役所は早期に「生成AIガイドライン」を策定・運用開始(2023/5~) 職員による利活用ユースケースや注意点を列挙 ボストンでは各職員が積極的に生成AIを利用しており 例えば以下のようなケースで利用が進んでいる。 <職員向けユースケース> 平易な表現での文書作成

    他言語での文書作成 テキストの要約 データ分析の補助(データ活用チーム) <今後> 職員向けにまず展開したが、市民向けに活用の仕方のガイドが されていない点を課題と感じており、 市民向けの利用ケースが充実させたガイドラインをリリースしていく予定
  10. 研修内容 19 02 生成AIに関する質疑 <質疑> 東京都文書生成AIガイドラインでの課題事項を 中心に質疑を実施 〇個人情報の入力をしない状態でどうAIを利用するか: 機密性の低いデータやタスクを適切に選び適用する。 議会の議事の要約・文書簡易化(ロールコール投票)や、

    公開した住民データのAI分析など、活用の幅は広い。 〇生成AIが苦手な数字計算に対策はあるか? ・計算が得意なClaudeやWolframAlpha の AIを利用 ・今後のプロンプト入力の工夫で解決が進むと考えている。 ・各職員が生成AIの得意不得意の特性を学んでいる。 東京都の文書生成AIのガイドラインでは、 得意・不得意分野が調査されている
  11. 研修内容 20 02 訪問しての所感 全体的なボストン市役所の動向について 生成AIについて職員向けに導入検証しているシステムが多いが、市民向けのシステムも展開されてき ている。また、職員業務効率化に関し、AI活用が積極的に試されている。 ガイドラインの活用対象(利用ケース紹介等)も、職員だけでなく市民向けにも動き始めている。 アメリカと日本の比較 ボストンでは、実際に手を動かしてデータ分析・集計等ができる人材や部署が存在し、意思決定にも利

    用しているのは、大きく違う点であった。また、AIについて職員は積極的に最新知識を得ていた。 個人情報の観点を重要視するためデータの適用先に慎重なのは日本と同じである。 生成AIの人材不足はボストンでも起きており、職員への教育が必要なこと・採用を強化することは 日本と同様に課題であった。 その他 訪問対応として部長レベルが応対することが標準的と思われるため、管理職向けのリレーション形成 としてもよい研修にもなると思われる。 比較的若い職員が部長になっており、日本と違い若手にも裁量が与えられていると感じた。
  12. 研修内容 21 02 訪問全体を通しての感想 苦労したこと MIT: とにかく講義のディスカッションが激しい。 人事データに関して「あなたはどう思いますか?」という意見が多く求められ、 技術的知識を用いた切り替えしが求められ、苦労した。 ボストン市役所:

    行政特有の英語がスムーズに出ないこともあり、より学習を進められれば良いと感じた。 良かった点 MIT: 現地で参加するとディスカッションがあるため、講義内容の吸収効率が高い 講義者は、着目させるようなプレゼンテーションが大変上手く、発表方法も参考になった。 ボストン市役所: 日本と違い、AIなど先進技術の展開に積極的で、現状を変えていこうという意欲が高い。 議論した職員の方は最新AIの知識も豊富であり、ツールも使いこなしていた。 東京都は最新ツール等のキャッチアップに抵抗のある職員も多いが、AIは最新動向が頻繁に変 わるため、全庁でも技術の情報収集の文化を促進する必要があると感じた。
  13. 24 03 まとめ 研修で得たスキルのまとめ MIT ・データ分析の具体的手法や活用ケースを学び、実際の人 事データを分析する課題を通して分析手法を身に着けた ・人事データの分析法やこれまでの専門家が分析した結果 の一般的な知見を得た ・アメリカにおけるAI活用時の倫理的な面での法律に関す

    る知識を得た ボストン市役所 ・アメリカの自治体における具体的な生成AIの活用例や東 京都の文書生成AI利用時の課題に関する知見を得た ・アメリカの自治体の日本との人材構成の比較をすること で、体制等の違いに関する知見を得た