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バスロケーションシステムの情報提供および遅延改善における効果推計

Traffic Brain
November 15, 2020

 バスロケーションシステムの情報提供および遅延改善における効果推計

Traffic Brain

November 15, 2020
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  1. 3 疑問 • IT施策はどれだけ効果があるの? • バスロケって高いけど効果はあるの? • 情報提供で利用者は増えるの? • ダイヤを改善して利用者は増えるの?

    • 税金を投入するだけの効果はあるの? • MaaSって効果あるの? 定量的に答えられていない状況 アンケートによる主観ベースの研究は多数
  2. 4 都市圏における効果@ロンドン 公共交通オープンデータの年間経済効果 対 乗客 待ち時間削減 £70-90m 100-130億円 経路最適化による時間削減 £20m

    29億円 対 交通事業者 問い合わせ窓口のコスト削減 £1m 1.4億円 対 都市 企業活動による総付加価値 £12-15m 17-22億円 http://content.tfl.gov.uk/deloitte-report-tfl-open-data.pdf Assessing the value of TfL’s open data and digital partnerships Deloitte, 2017 データ整備や規制改革の実施にあたり 根拠となる効果を推計する必要がある
  3. バスロケの効果とは? 7 これらのうち 遅延改善による待ち時間短縮・増収の推計をする 情報提供 対象者 効果 利用者 事前確認による出発待ち時間短縮 現場確認による安心

    経路変更による遅れ時間の短縮 事業者 問い合わせ対応の削減・短縮 状況把握による運行管理の容易化 情報提供による利用者増に伴う増収 地域 情報提供による交通手段転換に伴う渋滞削減 対象者 効果 利用者 出発待ち時間短縮 到着遅れによる支障回避 事業者 遅延改善による運行管理の軽減 遅延改善による利用者増に伴う増収 地域 遅延改善による交通手段転換に伴う渋滞削減 遅延改善 情報 ツールの 普及次第 事業者の 管理コス トが不明 バスロケ実績で 改善実績あり! 推計しやすい
  4. 8 推計モデル 年間増収効果 [円/年] = (a)平均短縮待ち時間 [分/人] ①バスロケ運行実績データ から改善目標値を設定 ×

    (b)待ち時間価値 [円/分] 文献から設定 × (c)年間輸送人員 [人/年] ②輸送人員データから設定 × (d)-価格弾力性 文献から設定 年間 利用者便益
  5. 9 利用データ 対象者 ①運行実績データ ②輸送人員データ 事業者 九州産交バス(熊本都市圏) ← 期間 2019/04/08~

    2019/06/30 (84日) 2018/010/01~ 2019/09/30 (1年) 情報源 バスロケーションシステム 整理券発行数・ICカード履歴
  6. (a) 平均短縮待ち時間 ~分布~ 10 これがどこまで短縮するか? 0% 2% 4% 6% 8%

    10% 12% 14% 16% 18% 負 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112131415161718192021222324252627282930 出発遅延時間 中央値 3.0分 平均値 4.1分 N=3,681,403 早発というより データ上の ノイズ?
  7. (a) 平均短縮待ち時間 ~仮定~ 11 ◼本データの分布 • 中央値3.0分、平均値4.1分 ◼過去の改善結果 • 両備バス:全路線・時間帯で遅延半減

    (右図) ◼改善の限界 • 早発が禁止なので1分程度の遅れは残る 全体的に1分短縮と仮定する =(中央値3 - 改善限界1)×0.5 路線 行先 年 朝(7-10) 昼(10-16) 夜(16-19) 2017 10.7 7.0 10.3 2018 4.6 4.5 4.9 2017 8.3 10.2 13.9 2018 5.2 5.7 5.1 2017 9.3 6.8 7.9 2018 5.4 3.7 4.4 2017 3.4 9.1 11.3 2018 2.4 5.5 3.7 2017 9.9 8.5 13.4 2018 6.2 4.7 4.5 2017 9.8 9.3 11.1 2018 5.4 4.5 5.1 2017 7.8 8.8 2018 5.3 5.1 2017 4.2 7.4 10.8 2018 4.9 6.8 5.0 2017 22.0 10.1 12.8 2018 9.9 5.4 8.1 2017 13.7 11.6 16.0 2018 6.5 6.2 6.0 2017 25.8 11.9 17.5 2018 9.8 5.4 8.1 2017 10.3 11.0 17.6 2018 4.4 5.3 8.9 西大寺線 (天満屋 経由) 岡山駅 西大寺 西大寺線 (千日前 経由) 岡山駅 西大寺 倉敷駅 倉敷 循環線 右回り 左回り 小溝線 倉敷 芸科大線 吉岡線 霞橋車庫 倉敷駅 霞橋車庫 倉敷駅 倉敷芸科大 参考)両備バスの遅延改善結果
  8. (b)待ち時間価値 (c)年間輸送人員 (d)価格弾力性 12 ◼(b) 待ち時間価値 • バスの時間価値の平均値:通勤11.8[円/分]、その他17.1 [円/分] •

    参考)加藤浩徳:我が国の旅客交通時間価値に関するメタ分析 • →両値の平均値として14[円/分]に設定 ◼(c) 年間輸送人員 • 916万[人/年] ※予稿から修正 ◼(d) 価格弾力性 • 日本の19都市における1973~1983年度のマクロ的実証(新納克広):-0.369 • 県別のパネルデータ分析(宇都宮浄人):-0.336~-0.487 • 海外の研究50本の平均(Goodwin):-0.41 • 参考)宇都宮浄人:地方圏の乗合パス需要に関する実証分析 • →-0.4に設定
  9. 推定結果 13 出発待ち時間短縮 15万時間 /年 利用者便益 1.3億円 /年 増収効果 51百万円

    /年 =年間収入21億円の2.4% 1千万円の費用で改善できれば1年で5倍の増収が見込める
  10. 今後の課題 14 1. ODデータと運行実績データを組み合わせた短縮待ち時間の精緻化 • 乗った場所によって待ち時間が異なる 2. 実際の遅延改善結果に基づく短縮待ち時間の精緻化 3. 遅延改善による利用者の行動変容の研究

    • アンケートでは利用者の許容値は5分以内が6割。非線形性が強い可能性あり。 • 利用者へのアピールによる効果は? 行動変容までの期間は? 4. 実際の遅延改善作業に基づく費用の算出 5. 遅延改善による他の効果の推計 • 到着遅れ回避、運行管理軽減、渋滞軽減… 6. 情報提供による効果の推計 • バスロケアプリ、サイネージ、経路検索… バスロケ設置、遅延改善、標準化・オープンデータ化に向けた バス事業者の導入決定、行政の補助金支給・義務化の合意形成に 必要な調査研究を進めていきたい