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技術と事業を「システム」と「レイヤー構造」で理解する

 技術と事業を「システム」と「レイヤー構造」で理解する

ディープテックスタートアップを進める上では、事業における技術の位置づけを理解する必要があり、そのためにもビジネス全体をシステムやレイヤー構造で理解してみると良いのではと考えています。そのための導入スライドです。

YouTube での解説: https://youtu.be/4n1Q6kn1qds

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Transcript

  1. 技術と事業の関係性を見るときの 3 つの視点 ビジネス全体をシステムとレイヤー構造で捉えることで、技術と 事業の関係を押さえながら技術開発を進める視点を提供する。 5 ① ビジネスの要素を システムで捉える ②

    ビジネス全体を レイヤー構造で捉える ③ 技術と事業の 結合度を整理する ビジネスを構成する要素をシ ステムとして捉える。 紹介する概念 システム ビジネス全体を複数のシステ ムが織りなすレイヤー構造と して捉える。 紹介する概念 サブシステム、システム・オ ブ・システムズ (SoS) レイヤー構造の中で、技術が 事業にどう影響をするのかを、 結合度合いで捉える。 紹介する概念 疎結合、密結合
  2. まずはシステムで捉えるところから 6 ① ビジネスの要素を システムで捉える ② ビジネス全体を レイヤー構造で捉える ③ 技術と事業の

    結合度を整理する ビジネスを構成する要素をシ ステムとして捉える。 紹介する概念 システム ビジネス全体を複数のシステ ムが織りなすレイヤー構造と して捉える。 紹介する概念 サブシステム、システム・オ ブ・システムズ (SoS) レイヤー構造の中で、技術が 事業にどう影響をするのかを、 結合度合いで捉える。 紹介する概念 疎結合、密結合
  3. 「技術」は製品を構成するほんの一部 11 価格 変更可 能性 & 拡張性 安全性 製品 技術的な

    優位性 (性能) 使いやすさ デザインで 使いやすさは違う 使う技術で 製品の性能は違う
  4. 例)DeepL という「製品」を織り成す複数の要素 翻訳サービスである「DeepL」を織り成す要素を表にしてみる と、技術以外にも価格や安全性、使いやすさなどの要素がある。 12 価格 変更可 能性 & 拡張性

    安全性 製品 技術的な 優位性 (性能) 使いやすさ DeepL 技術(性能) 精度の良い翻訳を数秒で返 す。高度な機械学習を利用 価格 無料~月5000円 安全性 有料版は暗号化とデータ利 用なし 使いやすさ アプリやブラウザアドイン。 すぐに使える 変更可能性 & 拡張性 API の提供
  5. 例)翻訳サービスでそれぞれの要素を比較する DeepL 以外の各種翻訳サービスも、翻訳の性能を支える技術だ けではなく、様々な要素によって構成されており、比較可能。 13 DeepL みんなの自動翻訳 Gengo 技術(性能) 精度の良い翻訳を数秒で返

    す。高度な機械学習を利用 精度の高い翻訳を数秒で返 す。高度な機械学習を利用 (DeepL に勝る翻訳性能の場合もある) 翻訳者とのマッチングと翻 訳支援ツールの提供(最先端 の技術を用いているわけではない) 価格 無料~月5000円 無料 1文字5円から 安全性 有料版は暗号化とデータ利 用なし ISO/IEC27001 取得 翻訳者の守秘義務を契約で 縛る 使いやすさ アプリやブラウザアドイン。 すぐに使える 様々な高機能ツールを用意。 でもとっつきづらい フォームから人力でテキス トを送る。若干面倒。 変更可能性 & 拡張性 API の提供 様々な API やツールの提 供 サービスレベルを変更可能、 ジャンルなどを指定可能、 動画などの文字起こし可能
  6. ② ビジネス全体をレイヤー構造で捉える 複数のシステムが積み重なった層(レイヤー)としてビジネスを 捉えることで、ビジネス全体と要素である技術の位置を理解する 19 ① ビジネスの要素を システムで捉える ② ビジネス全体を

    レイヤー構造で捉える ③ 技術と事業の 結合度を整理する ビジネスを構成する要素をシ ステムとして捉える。 紹介する概念 システム ビジネス全体を複数のシステ ムが織りなすレイヤー構造と して捉える。 紹介する概念 サブシステム、システム・オ ブ・システムズ (SoS) レイヤー構造の中で、技術が 事業にどう影響をするのかを、 結合度合いで捉える。 紹介する概念 疎結合、密結合
  7. 「解決策」として機能するには製品以外の要素も必要 製品だけで解決できる顧客もいれば、その他の要素がなければ 解決策として採用できない顧客もいる。 22 購入& 入手し やすさ 解決策 サポート サービス

    製品 保証 業務プロセ スとの統合 しやすさ 請求書払いじゃな いと買えない 保証がないと誰が 責任を取るの? 業務プロセスを 変えるのは無理 サポートがないと 不安…
  8. 例)翻訳サービスの「解決策」を構成する要素 企業の中で解決策として採用されるには、サポートや保証、支 払い方法やプロセス統合などが必要な場合もある(必要ない場合もある) 23 要素 DeepL みんなの自動翻訳 Gengo 製品 技術(性能)

    精度の良い翻訳を数秒で返す 精度の高い翻訳を数秒で返す。日本語では DeepL に勝る翻訳の場合も 翻訳者とのマッチングと翻訳支援ツールの提供 価格 無料~月5000円 無料 1文字5円から 安全性 有料版は暗号化とデータ利用なし ISO/IEC27001 取得 契約で縛る 使いやすさ アプリやブラウザアドイン。すぐに使える。 様々なツールを用意。でもとっつきづらい。 フォームから人力でテキストを送る 変更可能性 & 拡張性 API の手教 様々な API やツールの提供 サービスレベルを変更可能、ジャンルなどを指 定可能、動画などの文字起こし可能 サポート ヘルプセンターとメー ル対応 特になし(技術移転先 の法人だとあり) 様々なサポートあり。 品質保証もあり。 業務プロセスとの 統合しやすさ なし なし ワークフローなどのカ スタマイズ可能 入手&購入しやすさ クレジットカード払い のみ 無料 都度クレカ払いに加え、 請求書払いが可能 保証 特になし 特になし 品質保証あり
  9. サブシステムや System of Systems という概念もある 24 価格 変更可 能性 &

    拡張性 安全性 製品 技術的 優位性 (性能) 使いやすさ 購入& 入手し やすさ 解決策 サポート サービス 製品 保証 業務プロセ スとの統合 しやすさ 製品は解決策のサブシステムであり 解決策は複数のシステムからなるシステム・オブ・システムズ と呼ぶこともある
  10. 「解決策」は「事業」を構成する一要素 そして解決策も事業を構成する一部でしかない。事業として成 立するためには、戦略や組織、ビジネスモデルなども重要。 26 運用 しや すさ 製品 技術的 優位性

    (性能) 使い やすさ 解決策 サポート サービス 製品 組織 戦略 事業 マーケ ティング 解決策 ビジネス モデル 安全性 価格 保証 入手し やすさ 業務プロ セスとの 統合性
  11. それぞれの関係性を別アングルから見ると…… それぞれを抽象度の異なるレイヤーとして見てみると… 29 運用 しや すさ 製品 技術的 優位性 (性能)

    使い やすさ 解決策 サポート サービス 製品 組織 戦略 事業 マーケ ティング 解決策 ビジネス モデル 安全性 コスト 効率 導入 コンサル ティング 入手し やすさ 業務プロ セスとの 統合性
  12. ビジネス全体をレイヤーで捉えることができる ビジネスの全体を俯 瞰すると、抽象度の 異なる複数のシステ ムがあるように見え る。 また異なる抽象度の システムは、サブシ ステムやシステム・ オブ・システムズと

    して機能しているよ うにも捉えられる。 30 戦略、組織、 マーケティング ビジネスモデル など 製品、導入支援、 業務プロセス統合、 サポートなど 事業 レイヤー 解決策 レイヤー 製品 レイヤー 技術 レイヤー 個別技術の性能、 使いやすさ、 運用しやすさなど 独自技術、 組み合わせ方、 調達方法など 抽象 度高
  13. 技術は事業のほんの一部の要素 多くの場合、技術は 具体性の高いレイ ヤーのシステムに位 置しており、事業の ほんの一要素でしか ない。 事業のレイヤーから 見ると、技術の影響 度が小さい場合は十

    分にありうる。 32 戦略、組織、 マーケティング ビジネスモデル など 製品、導入支援、 業務プロセス統合、 サポートなど 事業 レイヤー 解決策 レイヤー 製品 レイヤー 技術 レイヤー 個別技術の性能、 使いやすさ、 運用しやすさなど 独自技術、 組み合わせ方、 調達方法など 抽象 度高
  14. Deep Tech は技術と事業が近く、技術の影響が大きい Deep Tech は、技 術の良さが事業の良 さの大きな部分を占 めることが多い。 とはいえ、Deep

    Tech スタートアッ プでも、技術以外に 事業の良さを規定す るものは多い。 34 事業 レイヤー 技術 レイヤー
  15. ※ 事業も社会の一要素でしかない 事業も社会の一要素 でしかないので、事 業を進めるうえでは 社会と向き合う必要 もある。 36 戦略、組織、 マーケティング

    ビジネスモデル など 製品、導入支援、 業務プロセス統合、 サポートなど 事業 レイヤー 解決策 レイヤー 製品 レイヤー 技術 レイヤー 個別技術の性能、 使いやすさ、 運用しやすさなど 独自技術、 組み合わせ方、 調達方法など 抽象 度高 他企業、規制、 NPO、金融、 などなど 社会 レイヤー
  16. ③ 技術と事業の結合度を整理する システムとレイヤー構造の考え方を用いてビジネス全体を見なが ら、技術と事業の結合度合いを考える 38 ① ビジネスの要素を システムで捉える ② ビジネス全体を

    レイヤー構造で捉える ③ 技術と事業の 結合度を整理する ビジネスを構成する要素をシ ステムとして捉える。 紹介する概念 システム ビジネス全体を複数のシステ ムが織りなすレイヤー構造と して捉える。 紹介する概念 サブシステム、システム・オ ブ・システムズ (SoS) レイヤー構造の中で、技術が 事業にどう影響をするのかを、 結合度合いで捉える。 紹介する概念 疎結合、密結合
  17. 技術を考えるときの「疎⇔密」「研究⇔開発」の整理 技術を考えるときに、事業と技術の結合の「疎⇔密」と「研究 ⇔開発」を考えると、技術と事業の関係性を整理できる。 43 事業と技術は「疎 or 密」 事業と技術の関係性が「密」であれば、技 術開発の進捗がそのまま事業の進捗に反映 されやすい。「疎」の場合は、事業開発の

    影響がより大きい。 技術開発は「研究 or 開発」 技術を発展させるための主な活動が「研 究」なのか、統合や改善などを含んだ「開 発」なのか。開発はお金があれば進みやす いが、研究はお金をかけても発見につなが るか分からない(でも試行錯誤にお金が必要) 技術とビジネスが 「密」な結合 技術とビジネスが 「疎」な結合 開発 研究
  18. 48 事業によって 技術の影響度は異なる 開発 研究 技術とビジネスが 「密」な結合 技術とビジネスが 「疎」な結合 🧰新ハード

    🤖ロボット 📱アプリ 💻半導体 💊創薬 ⚡エネルギー 🩺医療機器 🧫素材 🛰宇宙 🌽食 🧠神経 🚛輸送 📀データ ⚗️合成生物
  19. 領域ごとの傾向 あくまで参考まで。個別の事業で疎⇔密と研究⇔開発の位置づ けは大きく違う。 55 💊 創薬 基本的には科学的発見 がそのまま事業の強さ に繋がる領域。 🧫素材

    創薬に近いけれど、素 材の適用領域なども重 要なため事業も重要な 領域。 🛰 宇宙 事業に近いところはお 金をかけた開発要素が 大きい。また未開拓市 場なので事業開発要素 もかなり強い。 🚛 輸送 EV などは開発かつ事 業が重要な領域。輸送 ルートなどは研究にな る部分もある。 🌽 食 & 農業 研究要素が強いものの、 事業をかなりしっかり 考えなければ採算が取 れないことが多い。 🩺 医療機器 研究も必要であるもの の、ハードウェアは開 発の要素が大きくなっ てくる場合も多い。 🤖 ロボット 研究というよりも開発 に近いことが多く、ど のような事業に使われ るかが採算性を決める ことが多い。 📱 アプリ 基本的にはビジネスと 開発が重要。ただし、 初期の機械学習等、先 端的な技術を応用する 場合は研究寄り。
  20. ただし事業によって異なる 領域によって傾向はあるものの、事業やビジネスモデルによっ て異なるのでそれぞれの事業を細かく見て判断する必要がある。 56 B2C 系の IT Google の広告ビジネスなどの場合、 •

    検索の精度 • 広告のマッチング率 など、技術的な発展がそのまま売上に繋が りやすいため、「技術の良さ=事業の良 さ」となりやすい。 エンジニアが権力を持ちやすい組織になる 傾向にある。 B2B 系の IT SaaS などの場合、製品以外にも • 営業 • サポート などが売上に大きな貢献をするため、「技 術の良さ=事業の良さ」とはなりづらい。 また、営業が権力を持ちやすい組織になる 傾向にある。
  21. システムとレイヤーで整理して結合度を見るメリット システムとレイヤーという視点で事業を整理し、結合度を見る ことで、いくつかの論点の整理が可能。 58 揃えるべき要素の整理 どういった要素を揃える と、各抽象度のレイヤーで 良いシステムを作れるのか を考えられる。 要素に抜け漏れがないかを

    考えるときのチェックにも 使える。 各要素の影響度 技術という一要素が事業に どれだけ影響するのかなど を整理できる。 また技術を伸ばすのではな く、他の要素を伸ばすこと で事業全体が良くできるか どうかを検討できる。 相互作用の最適化 システム上でどのような相 互作用を組んでいけば良い のかを考えることで、技術 開発の方向性なども見えて くる。 ビジネス全体を見ながら 事業開発と技術開発を進めるための捉え方
  22. FoundX - 東京大学のスタートアップ支援プログラム 61 東京大学 FoundX は東京大学 産学協創推進本部の下部組 織です。東京大学 本郷キャンパスの近くに

    3 つの施設を構 え、起業志望者向けのプログラムを複数提供しています。 投資は行いませんが、無償での個室貸与やプログラムの提 供、起業家コミュニティへの参加を支援します。 🔥 興味 情熱 Fellows (9 か月) Founders (9 か月) 👨‍👩 ‍👧 ‍👦 共同創業者 の説得 💰 有利な 資金調達 🤝 フル コミット 🏆 ビジネス 実績 📝 初契約 初売上 💻🤖 製品開発 と改善 💲 助成金や コンテス ト 賞金の獲 得 Deep Tech 起業ゼミ (9 か月) ➰ 試行 錯誤 🌱 アイデア の種 💡 検証された アイデア 📚 起業家の 基礎知識 &スキル 🔨 プロト タイプ 🙎 顧客イン タビュー
  23. プログラムの対応表 62 Deep Tech 起業ゼミ (毎月 10 日締切) Deep Tech

    系で アイデアを探している 卒業生・研究者の個人 技術を持っていて 助成金を獲得したい 研究者の個人 Fellows Program (毎月 10 日締切) Deep Tech 系のみの支援 アイデアを持っていて 資金調達をしたい 卒業生のチーム Founders Program (3/1, 6/1, 9/1, 12/1 締切) アイデアは何でも OK (Deep Tech から B2C まで全てが対象)
  24. スライド著者 & FoundX 運営 馬田隆明 (東京大学 FoundX ディレクター) University of

    Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリス トとしてスタートアップ支援を行う。スタートアップ向けのスライ ド、ブログなどの情報提供を行う。 サイト: https://takaumada.com/ 63 スタートアップの 方法論の基礎 Amazon (2017年3月) 起業環境の重要性と アクセラレーター の設計方法 Amazon (2019年4月) スタートアップの 公共や規制との 付き合い方 Amazon (2021年1月) スタートアップに ついてのスライド Slideshare SpeakerDeck