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良い仮説を評価する技術

 良い仮説を評価する技術

仮説行動』という書籍で扱っているトピックから、仮説の評価に関する内容を紹介しています。

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仮説のマップ・ループ・リープ
ふわっとした考えを仮説にするまでのステップ
良い仮説を評価する技術
行動なしに良い仮説思考はできない

Takaaki Umada / 馬田隆明

December 30, 2024
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Transcript

  1. 仮説の評価が下手な場合は時間を浪費しがち 仮説の評価が下手な人は時間を無駄に使ってしまいがちです。 6 仮説の評価が下手な人 • 筋の悪い仮説に取り組み、 時間を浪費してしまう • どんな仮説でも検証に回し てしまい、時間を使う

    • リスクだけを気にして全て の仮説を通さず何もしない • 仮説が小さくまとまる 選んだ仮説がいまいちで成果も出 ないし、変な仮説ばかり検証して 時間を無駄にしてしまう…
  2. 仮説の評価が上手だと色々とはかどる 仮説の評価が上手だと、筋の良い仮説を選べるだけではなく、 検証するべき仮説やリスクなども素早く選定できます。 7 仮説の評価が下手な人 • 筋の悪い仮説に取り組み、 時間を浪費してしまう • どんな仮説でも検証に回し

    てしまい、時間を使う • リスクだけを気にして全て の仮説を通さず何もしない • 仮説が小さくまとまる 仮説の評価がうまい人 • 筋の悪い仮説を思いついて もすぐに捨てられる • 検証に値する仮説だけを検 証のループに回せる • 適切なタイミングで仮説検 証のループを止められる • 良いリスクを取れる 悪い仮説はすぐ捨てられるし、 筋の良い仮説を検証して さらに筋の良い仮説にできる!
  3. 仮説の評価がうまくない人の良くあるパターン 仮説の評価がうまくない人にはいくつかのパターンがあります。 これらを乗り越えることで良い評価ができるようになります。 17 仮説の評価軸が 曖昧 優先度の高い 評価軸を見誤る 見えづらい評価 軸を軽視する

    (機会損失など) 特定の評価軸を 過度に重視する (リスクなど) 評価軸を用いた 測り方が下手 十分性や制約 条件に無頓着 全部「直感」 で済ませる 仮説の潜在的な 可能性を見ない
  4. 4 象限で仮説を評価して次のアクションを考える 4 象限に分けて仮説を評価することで、次のアクションを考え やすくなります。 36 影響度 確信度 仮説 1

    仮説 2 仮説 3 仮説 4 仮説 5 仮説 6 【確信度:低 影響度:高】 検証して確信度を 上げるべき仮説 【確信度:高 影響度:高】 検証する必要はなく 今すぐやるべき仮説 【確信度:高 影響度:低】 小さくまとまっている 仮説 (確実だがやっても効果が小さい) 【確信度:低 影響度:低】 検証をする必要も無く 棄却する仮説 (確信度を上げても効果が小さい)
  5. 特に重要なのは左上の象限 左上の象限の仮説を中心に検証することで、事業への影響度の 高い仮説の正誤を判別できます。 37 影響度 確信度 仮説 1 仮説 2

    仮説 3 仮説 4 仮説 5 仮説 6 【確信度:低 影響度:高】 検証して確信度を 上げるべき仮説 【確信度:高 影響度:高】 検証する必要はなく 今すぐやるべき仮説 【確信度:高 影響度:低】 小さくまとまっている 仮説 (確実だがやっても効果が小さい) 【確信度:低 影響度:低】 検証をする必要も無く 棄却する仮説 (確信度を上げても効果が小さい)
  6. 様々な種類の評価軸 目的や領域ごとに異なる評価軸が用いられます。適した評価軸 を用いるようにしましょう。独自の評価軸の開発もお勧めです。 RICE: https://www.intercom.com/blog/rice-simple-prioritization-for-product-managers/ FINE: 『医学的研究のデザイン 推論の質を高める系統的アプローチ 第5版』 40

    RICE (PdM 向け) Intercom によるプロダク トマネージャ向けの優先順 位付けフレームワーク 狩野モデル 品質と顧客満足度の関係性 を捉えるモデル FINE (論文向け) 臨床研究の論文の評価軸 Reach 影響する範囲 Impact 影響の度合い (影響度) Confidence 自信の度合い (確信度) Effort 労力や工数 当たり前品質 あって当然、 ないと不満 一元的品質 あると嬉しい、 ないと不満 魅力的品質 あると嬉しい、 なくても OK 無関心品質 影響がない 逆品質 あると不満、 ないと嬉しい Feasible 実行可能性 Important 重要性 Novel 新規性 Ethical 倫理性 FINER が使われる 場合もあります
  7. 仮説を VIBES でチェックする 影響度+確信度に加えて VIBES で Yes/No をチェックすると、 仮説を選びやすくなるはずです(VIBES は「ノリ」などの意味を持つ言葉)

    44 Verifiable & Viable 検証可能であり、実行可能か Interesting 興味深いか Bold 大胆か Ethical 倫理的か Sharp シャープ (明晰かつシンプル) か
  8. 程度の評価も難しいので注意 ただし測るのは難しく、評価自体も仮説であることが多いです。 またチームでの合意も難しいことには注意してください。 51 低 高 確信度 影響度 緊急度 予算

    工数 チームでの工数の見積もり方法は 『プランニングポーカー』 などの手法もあります 影響度等の評価には 最後にリーダーによる判断が 求められることも多いです
  9. 程度の十分さをすりあわせる 仮説の良し悪しを判断するときにも、こうした程度の問題を事 前にすりあわせておくことで、評価しやすくなります。 53 低 高 確信度 影響度 緊急度 予算

    工数 最低限どの程度の影響度が欲しいです か? 売上が 1 億円以上伸びる施策を、2000 万円以内の予算でやってほしいかな
  10. 評価軸をうまく使うにも「慣れ」が必要 評価軸があったとしても、その評価軸をうまく使えるようにな るためにはある程度の慣れが必要です。 55 Feasible 実行可能性 Important 重要性 Novel 新規性

    Ethical 倫理性 自分の研究の新規性の程度は 既存の研究を広く知ってないと 判断できないのでは? Reach 影響する範囲 Impact 影響の度合い Confidence 自信の度合い Effort 労力や工数 特定の施策(仮説)に どれぐらいの工数がかかるかは ある程度経験がないと 分からないのでは? RICE の場合 FINE の場合
  11. 見えづらい&評価しづらい評価軸にも気を配る 見えづらく評価しづらい評価軸は低く評価されがちなので、そ うならないように気をつける必要があります。 62 見えやすく評価しやすいため、 高く評価されがちな評価軸の例 • 確信度 • お金

    • サンクコスト • 過去 • ダウンサイドリスク 見えづらく評価しづらいため、 低く評価されがちな評価軸の例 • 影響度 • 時間 • 機会損失 • 未来 • アップサイドリスク 高く評価されがちな項目 低く評価されがちな項目
  12. リスクの評価・統合にばらつきが出がち 63 見えやすく評価しやすいため、 高く評価されがちな評価軸の例 • 確信度 • お金 • サンクコスト

    • 過去 • ダウンサイドリスク 見えづらく評価しづらいため、 低く評価されがちな評価軸の例 • 影響度 • 時間 • 機会損失 • 未来 • アップサイドリスク 高く評価されがちな項目 低く評価されがちな項目
  13. 事業においてダウンサイドリスクを把握する目的 しかしリスクを把握するのは、適切にリスクに対処し、リスク を取って「成功する」ためなので注意しましょう。 65 最終目的 失敗しない 成功する 短期的な目標 失敗の可能性を下げる 機会や利益を最大化する

    リスク把握の目的 リスクを可能な限りゼロにする 適切なリスクを取る準備をする リスクへの対処 リスクを指摘して却下する リスクを緩和する 十分なリスクを取れていなければ 決断が遅すぎる可能性も
  14. 確信度は高く評価され、影響度は低く評価されやすい リスクと同様に、確信度と影響度は評価が分かれやすい評価軸 です。 68 見えやすく評価しやすいため、 高く評価されがちな評価軸の例 • 確信度 • お金

    • サンクコスト • 過去 • ダウンサイドリスク 見えづらく評価しづらいため、 低く評価されがちな評価軸の例 • 影響度 • 時間 • 機会損失 • 未来 • アップサイドリスク 高く評価されがちな項目 低く評価されがちな項目
  15. Photo by Dave Thomas, released under the Attribution Creative Commons

    license. http://www.paulgraham.com/bio.html 72 創業者が正しいこと をしたら、どのくら い大きな会社に成長 するだろうか? 初期のスタートアップにするべき質問として - Paul Graham Do things that don’t scale スケールしないことをしよう https://paulgraham.com/ds.html
  16. 参考)プレイヤーによっても異なる評価軸の重み その他、組織の性質上、評価軸の重みが異なるときもあります。 場合によってはその重力にあらがう必要もあります。 74 大企業や官僚組織の場合 組織として『失敗しない』ことを重 視する傾向になるため、 • 確信度: 高

    • 影響度: 低~中 あたりを高く評価することが多い。 ベンチャーキャピタル等の場合 リターンの構造的に、 • 確信度: 低 • 影響度: 超高 という仮説を高く評価する。しかし 並大抵の影響度の大きさでは投資し ないことになる。
  17. 詳細は書籍をご参照ください 『解像度を上げる』の姉妹本 『仮説行動』発売中 81 第1部 仮説行動を理解する なぜ仮説は重要なのか 仮説行動の全体像 第2部 仮説を強くする

    仮説を生成する 仮説を検証する 仮説マップを生成/統合する ループの停滞を回避する 第3部 仮説を現実にする 仮説を評価する 決断する 仮説を実行する 第4部 大胆な未来を実現する 影響度の大きな仮説を目指す 目次 本スライドは 主にこの章の内容