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AIを活用し経理業務を「データサイエンス業務」に 変革するためのポイントと実務

AIを活用し経理業務を「データサイエンス業務」に 変革するためのポイントと実務

人工知能(AI)がビジネスの現場においても活用機会を拡大してきている。巷間では「AIが人間の仕事を奪う」と考えられているが、経理業務も例外ではないのか?近い将来に経理人材はAIに駆逐されてしまうのか?より高速・正確に処理するAIの能力を経理業務としていかに活用するべきなのかを真剣に考える時期が到来している。
本講演では、AIの業務への活用が経理業務をどのように変革していくのかを概観し、AIと共存しつつ経理業務を「データサイエンス業務」に変革する機会と可能性について今後の展望を解説する。

HARA, Kan

July 01, 2021
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Transcript

  1. ⾃⼰紹介 原 幹 (HARA , Kan) 1992年 井上⻫藤英和監査法⼈ 会計監査・コンサルティングサービス部⾨(現 PwCコンサルティング)の初期メンバーとして、主に製造業を対象とした連結決

    算・グループ経営管理・活動基準原価計算などのシステム企画・設計・構築を⾏う 1998年 フューチャーシステムコンサルティング ビジネスアナリストとして、主に製造業・流通業を対象としたビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)実⾏⽀援・ システム化要件分析を⾏う 2001年 ウルシステムズ サービス業・流通業を対象としたビジネス要件分析・業務改⾰⽀援・システム要件分析を⾏う 2004年 NTTデータ システムデザイン 製造業を対象とした業務改⾰⽀援・プロジェクトマネジメント・定着化⽀援およびプロジェクト管理システムの 企画・設計・運⽤を⾏う 2007年 独⽴開業 現任 株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役 原幹公認会計⼠事務所 代表 • 常に実践的な課題解決を展開し、多くのプロジェクトにて⾼い顧客満⾜度を得る • 会計およびIT領域での豊富な経験を有し、主要な技術要素やコンサルティングメソッドにも精通 • 「経営に貢献するITとは︖」という⼀貫した視点をベースにキャリアを形成、翻訳書およびメディアでの連載実績多数 • 専⾨領域 連結会計・内部統制・国際会計(IFRS)・ITマネジメント • 保有資格 公認会計⼠・税理⼠・公認情報システム監査⼈(CISA)・公認不正検査⼠(CFE) 2
  2. ⾃⼰紹介  「1冊でわかる! 経理のテレワーク」(中央経済社 2020年刊)  「ITエンジニアとして⽣き残るための会計の知識」(⽇経BP社 2015年刊)  「クラウド会計」が経理を変える︕(中央経済社

    2015年刊)  IFRS のきほんがよくわかる本(⾃由国⺠社 2011年刊)  会計⼠さんの書いた 情シスのためのIFRS(共著・翔泳社 2010年刊) 3
  3. AIとは  AI(Artificial Intelligence)とは  さまざまな⼈⼯知能の定義  「⼤量の知識データに対して⾼度な推論を的確に⾏うことを⽬指したもの」 (⼀般社団法⼈ ⼈⼯知能学会設⽴趣意書より)

     “the simulation of human intelligence processes by machines, especially computer systems“ (*)  ⼀般的には「⾃律的に振る舞いヒトの脳の代替を⾏う」  現実的なAIの振る舞い  ヒトの振る舞いの⼀部を模倣する  模倣するための学習データが必要  基本的なAIの振る舞い  探索  知識表現  進化的⼿法  機械学習 6 (*) https://searchenterpriseai.techtarget.com/definition/AI-Artificial-Intelligence
  4. AIの基本的な振る舞い  「探索」  膨⼤なデータから必要な情報を探し出す機能  地図ルート案内  あらかじめ登録された地図情報・交通状況・コスト情報にもとづいて 最適経路やコストを検索し、利⽤者に提⽰する

     「⼒づく探索」は、迷路を⼀⽅向で検索するため⾮効率  検索条件の集合体である探索⽊(search tree)をいかに効率的に 解くかがポイント  探索⽊をくまなく探索する⽅法  縦型探索  横型探索  知識を⽤いてより効率的に探索する⽅法  発⾒的探索  最良優先探索  ⼭登り法  最適経路探索 7
  5. AIの基本的な振る舞い  「知識表現」  ⼤量のデータの集合体を「知識」として分析可能なデータ形式 に変換する技術  意味ネットワーク(semantic network) 

    データや事象の関係をネットワーク形式で表現する  フレーム(frame)  ある概念に関するひとくくりの単位の知識を扱うための知識表現法 8
  6. AIの基本的な振る舞い  「進化的⼿法」  ⽣物進化や⽣物群の移動を模倣することで データの最適化を⾏う技術  遺伝的アルゴリズム(Genetic algorithm, GA)

     解決する問題の解の候補を「0」「1」の2つの「遺伝⼦」として表現し、 問題の解も遺伝⼦として表現する「遺伝的プログラミング」を⾏う 9
  7. AIの基本的な振る舞い  「機械学習」  ⼈⼯知能分野において進展が著しい領域  ⼊⼒データの特性に基づき、最も合理的に説明がつくように データの分割及び再構成を⾃動的に⾏う  より⼈間の思考に近い⾼度な振る舞いが実現される

     機械学習の種類  教師データの有無  学習⽤データを与えて⾏う「教師あり学習」  学習⽤データなしに⾏う「教師なし学習」  強化学習  未知のデータに対しても⾃⼒で学習内容を変化できるようにする  深層学習(ディープラーニング)  正解データに到達するまでに多層の処理階層を持つ  表現⼒の深い関数を⽤いる(データと計算量が多いほど精度が上がる) 10
  8. AIの基本的な振る舞い  「機械学習」  深層学習(ディープラーニング)の最新技術  深層⽣成モデル  データ⽣成の過程そのものをモデル化する「⽣成モデル」を深い階層の ニューラルネットワークによって実現する

     実装例  変分オートエンコーダー(Variational Autoencoder: VAE)  ⽣成的敵対ネットワーク(Generative Adversarial Network: GAN)  深層強化学習  価値算出変数の組み合わせを⽣成するため、深い関数で「状態」から 「価値」の計算を学習する  実装例  Q学習 DQN(deep Q-Network)  DeepMindなど 11
  9. AIの世代変化  第1次ブーム 1960〜80年代  ルールベースのアルゴリズムに基づいた問題処理システムを 「エキスパートシステム」の誕⽣を契機に、有機化合物の 化学構造を求める研究が進んだ  第2次ブーム

    1980〜90年代  コンピューティングの進歩とともに、⼈間の脳の仕組みを 模倣する「ニューラルネットワーク」の開発が進んだ  第3次ブーム 2000年代〜現在  機械学習と深層学習の進化が新たなブームを迎えた  ディープラーニング(深層学習)の登場により、⼤量のデータから 有⽤な特徴をコンピュータが⾃律的に分析することができる  コンピュータの⾶躍的な機能向上がブームを後押ししている 13
  10. 記述統計学  全てのデータをもとに分析する  データの「代表値」をあらわす  平均値(mean)  中央値(median) 

    最頻値(mode)  データの「ばらつき」を表す  分散(Variance)  確率変数の分布が期待値からどれだけばらついているか  標準偏差(Standard Deviation)  分散の正の平⽅根 15
  11. 推測統計学  正規分布の危険率(通常は5%程度)を超えない程度の確からし さがあるかどうかを検証する 17 0 0.05 0.1 0.15 0.2

    0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 ‐5.0 ‐4.0 ‐3.0 ‐2.0 ‐1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 正規分布曲線 -2.5% +2.5% 危険率(5%)の範囲にデータがある場合に帰無仮説を「棄却」する
  12. なぜいまAIが注⽬されるのか  各国の政策動向  ⽶国  GAFAによるAI研究開発活動が活発  Summit on

    Artificial Intelligence for American Industry  Artificial Intelligence for the American People  EU  AIに関する協⼒宣⾔(2018.04)  英国・ドイツ・フランスを中⼼にAIスタートアップへの活発な投資  イノベーション助成プログラム “HORIZON Europe”  中国  BAT+iFLYTEK+SenseTime  2019 AI 100に中国企業が多数選出される 21 「AI⽩書2020」独⽴⾏政法⼈情報処理推進機構(IPA) より
  13. 作業の⾃動化に向けたRPAの活⽤  RPAとは  処理の⾃動化・⾼速化  操作記録に基づく⾃動化で業務の⾼速化を図る  あくまで既存の「⼈⼒の作業」を⾃動化するための仕組み 

    RPAとAIとの違い  RPAは︖  コンピュータに対する⼈間の指⽰に基づき操作を⾃動化する  操作記録に基づく⾃動化により業務の⾼速化を図ることができる  課題を⾃律的に解決するわけではない  課題⾃体を⾒つけることができない  課題設定、解決⽅法は⼈間が考える必要がある  AIは︖  課題を設定し、解決⽅法を探索する  AIは⾃律的に思考と探索を⾏い、最適解を追求する 25
  14. 作業の⾃動化に向けたRPAの活⽤  RPA適⽤領域の例 26 業務領域 RPA活⽤業務例 ⼈事 • 給与計算とチェック、福利厚⽣業務 •

    休暇申請の処理・管理 • 複数のERPに対する従業員情報のメンテナンス • ⼈事考課結果の⼊⼒管理 財務経理 • 請求書処理や売掛⾦・買掛⾦などの仕訳 • 督促や回収業務 • 財務マスターデータの作成 • 固定費分析などの財務レポート作成 IT • ソフトウェアのインストール及びメンテナンス • ファイル管理やサーバー監視 • プリンターのセットアップ • 各アプリケーションに対する新規アカウント作成 サプライチェーン • 在庫管理や所在監視などに関わる業務 • 作業依頼や指図管理の指⽰出し • 物流管理、返品処理業務 • 契約管理業務 「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場の実態と展望2018」⽮野経済研究所 2017年11⽉
  15. AIのビジネスでの活⽤領域と先進事例  「煩雑さをなくす」という視点  仕事の⽬的の障害になるものを取り除く  Uberの例  仕事の⽬的は「⽬的地にたどりつくこと」 

    顧客が「⽬的地にたどりつくこと」の障害を可能なかぎり取り除く  阻害要因とは  タクシーを探す  ⽬的地を指⽰する  ⽀払う  阻害要因を取り除くために運転⼿と 道路情報による学習とフィードバックが必要  タクシーを探す→最短地点を学習する  ⽬的地を指⽰する→最短経路を学習する  ⽀払う→決済を効率化する 28 https://www.uber.com/jp/ja/
  16. 適⽤領域 検討 PoC パイロット 導⼊ 効果測定 本格導⼊ AI適⽤の実際  導⼊サイクルは”⼩さく⽣んで⼤きく育てる”

    30 データ取得 データ蓄積 学習 デプロイ 運⽤ データ取得 データ蓄積 学習 デプロイ 運⽤
  17. 経理業務におけるAIの活⽤機会  仕訳⽣成の⾃動化  会計ソフト等がクレジットカードや銀⾏⼊出⾦などの明細 データを⾃動取得し、明細データから勘定科⽬名を抽出する  勘定科⽬名の候補を表⽰し、ユーザが確認・修正を⾏う  不正検知

     本来整合するべきデータを検出してユーザに提⽰する  ⼊出⾦明細の値と元帳残⾼の不整合  未決済残⾼と決済済み⾦額の不整合  会計数値の⽉次推移等から想定の傾向を超える異常値を検出  予測・⾒積り  不確実性のある取引への対応  減損・税効果・退職給付債務  財務分析  特徴の把握・今後の⽅向性予測・健全性抽出・改善ポイント 34
  18. 経理業務とAIの相性  テキストマイニング  ⼤量のテキスト情報から統計的⼿法に基づく⾔語処理 アルゴリズムを適⽤してデータを処理する⽅法  コンピュータを使って⼤量のテキストデータを分析し、 データに内在する有⽤な情報を抽出する技術 

    「データマイニング」の適⽤領域のひとつとして普及した  マーケティング分野の利⽤が活発だが、経理領域においても 効果が実証されている  経理業務は「情報」を取り回す業務である  ⼤量にデータを蓄積し、分析し、活⽤する環境として最適 35
  19. 監査領域へのAIの活⽤事例  これまでの監査⽀援  ⼈的リソースの制約があった  サンプル抽出も⼈⼒に頼ってきた  「90%以上の信頼性を得るために25件のサンプルを抽出」 

    これからの監査⽀援  仕訳テストの要請(監査⼿続として必須のものに)  実務でコンピュータ利⽤監査技法(Computer Assisted Auditing Techniques, CAAT)が推奨される  試査から精査へ  ⼤量データの取り扱いが容易になった  分析的⼿続機能がAIに期待できる  経理財務部⾨の⽴場からも、監査に耐えうる必要⼗分な監査 証跡を提供するためにどのようなデータセットを準備するの かを検討するべき時期が到来しつつある 38
  20. AIを適⽤しやすい業務領域(財務会計)  ⼊⼒業務  仕訳起票の⾃動化  集計業務  整合性チェック 

    B/S残⾼と明細資料  P/L残⾼と明細資料  総勘定元帳と増減明細期末残⾼  統制チェック  仕訳登録と承認  承認エラーや異常データの検知  出⼒業務  表⽰チェック  基準の準拠性  財務諸表本表と注記情報の整合性チェック  変更の影響チェック 43
  21. AIを適⽤しにくい業務領域(財務会計)  ⾼度な判断業務  会計費⽬の選定が困難  仕訳⾃体の⽣成が困難  税務⾯での判断が必要 

    特徴  複雑・少量・⾃動化が困難  ⾮定型・判断が必要な処理  開⽰にあたっての重要性判定  キャッシュ・フロー「その他」の内訳分析 44
  22. AIの財務会計領域への適⽤  RPA導⼊を契機としたAI活⽤のステップ  ⼿動作業の記録  RPAツールの導⼊(定型作業の記録)  処理の⾃動化 

    RPAツールの運⽤(記録に基づく⾃動実⾏)  処理の学習  ⾃動実⾏スクリプトの蓄積(オンプレミス/クラウド)  学習による⼿順最適化  主なRPAツール  Power Automate Desktop  UIPath  WinActor 46
  23. AIの業務リスクと対処⽅法  データ所有権のリスク  分析の元データとなる財務会計データは利⽤者(個⼈または法⼈) の重要な業務データである  再利⽤や活⽤はサービス提供事業者の独断で進められるべき性 質のものではない 

    特にサービス提供事業者は⼤量のユーザーデータを保持してい ることから、それらのデータを横串で分析し、データに新たな 価値を付与しうる⽴場にある  データの利活⽤を⾏うのであれば以下の必要な対応を経たうえ で法的なリスクを低減する必要がある  データ所有者や契約者の同意  取り扱うデータの適切な匿名化 47
  24. AIの業務リスクと対処⽅法  情報漏洩のリスク  取り扱うデータに個⼈情報が含まれているならば適切な 個⼈情報保護施策を図る必要  個⼈情報保護法  個⼈情報の定義の明確化、個⼈情報の第三者提供、

    外国の第三者への提供制限  EU⼀般データ保護規則(General Data Protection Regulation, GDPR)  個⼈の明確な同意、「忘れられる権利」、データ・ポータビリティ 等 48 https://eugdpr.org/
  25. クラウド会計ソフトのこれまでの会計ソフトとの違い  オンプレミスvsクラウド  インストール不要  最新機能を常に使うことができる  ⼿⼊⼒の削減と⾃動化 

    通帳や明細資料からの⼿動転記をなくす  サービス料⾦体系  無料+⽉額定額課⾦  初期費⽤+アップグレード費⽤  仕訳ビッグデータの蓄積  ⼤量の事業者データを保持 52
  26. クラウド会計におけるAIの活⽤  ⾃動仕訳  カード明細や銀⾏⼊出⾦から仕訳の費⽬を⾃動化  機械学習による勘定科⽬の推測  帳簿チェック 

    整合性の確認  帳簿残⾼と明細の整合  基準適合性の確認  10万円を超えた場合の消耗品費の計上  ボトルネックの発⾒  申請データの傾向分析 54
  27. クラウド会計ソフトにおける要素技術  ⾃然⾔語処理  請求書や領収書などの証憑書類に記載された「⽇付」 「利⽤店名」「⾦額」「摘要」といった情報をOCRなどの 技術を使って⼿書きや印刷された⽂字からコンピュータが 利⽤できるデジタルデータに変換する  機械学習の成果を利⽤して、適切な仕訳を⽣成するために

    最適な勘定科⽬の推測を⾏う  単語の出現頻度や対応表の利⽤により、より確度の⾼い 勘定科⽬を推測する  ⼤規模データ処理  ある程度データ⺟集団が多くなければ、それらの相関を ⾒極めるのは難しい  200件の取引データよりも、200,000件の取引データから 得られる分析結果のほうが有意な結果を得やすくなる 55
  28. クラウド会計ソフトにおける要素技術  基礎技術  形態素解析  テキストデータから必要な単語を抽出  構⽂解析 

    形態素のつながりからテキストの構造を調べ、テキスト全体の構造を解析  意味解析  形態素解析や構⽂解析の結果を⽤いてテキストの「意味」を分析  応⽤技術  頻出する単語や情報を統計的⼿法により抽出するtf-idf (term-frequency inverse document frequency)⼿法  特定の⽂書における出現頻度と多くの⽂書に共通の出現頻度を 組み合わせ、特定の単語がその⽂書の特徴をどの程度表現して いるかどうかを分析する 56
  29. クラウド会計ソフトにおける要素技術  スクレイピングとAPI連携 57 yamada ****** ID PASS 代理ログイン ⼊出⾦データ提供

    クラウド会計ソフト ネットバンキング サービス ID PASS API連携 ⼊出⾦データ提供 クラウド会計ソフト ネットバンキング サービス ログイン情報を 保存する ログイン情報を 保存しない スクレイピング API連携
  30. 予算実績管理  予算実績管理の要件  計画・予算値と実績値との乖離をタイムリーに把握する  継続的に次の打ち⼿につなげる  財務会計費⽬ごとの実績として、クラウド会計ソフトが保持し ている総勘定元帳データを利⽤可能

     主要な機能  取得した実績値と当初予算を⽐較し、乖離と過去の統計データ に基づき要因仮説を抽出する  予算管理担当者が予算修正の適否を判断する(必要に応じ修正)  AIが仮予算案を設定、修正後仮予算に基づく効果予測を⾏う  必要に応じて修正後予算に対するファイナンス提案を作成する  予算管理担当者はマネジメントに承認された仮予算を本予算と して確定する 60
  31. 売上予測(新規事業との関連)  新規事業計画における予測変数  費⽤の変動固定分解  損益分岐点の特定  費⽤の変動固定分解において 

    過去実績データに基づく傾向分析が可能  損益分岐点の特定において  売上⽬標や安全余裕率の想定に基づく分析が可能  その他  その他のリスク係数を折り込んだうえで、より確度の⾼い事業 予算の策定にAIが貢献する  製品ライフサイクルを予測したうえで、次の新サービスを投⼊ するタイミングやそれによる収益貢献予測を⾏う 63
  32. 与信管理  クラウド会計ソフトが保持する取引データの集積を与信判定 に利⽤する  外部サービスに依存しない独⾃のスコアリングを提供可能  相⼿企業の同意のもとに会計データの開⽰を求め、取引データ を共有し、スコアリングを⾏う 

    定量データの共有  過去売上⾼、総資産、キャッシュ・フロー、従業員数  定性データの共有  経営者プロファイル、主要取引先  分析結果の学習に基づき、将来の新規取引先の発⽣において も「業種」「売上規模」「サービス特性」といった変数をも とに簡易なスコアリングを⾼速に⾏う 64
  33. ⽴ち上げフェーズにおける経営計画策定⽀援  事業開始に伴うさまざまな事務⼿続きや資⾦繰りのための対 外的な折衝など、本業に集中することを妨げる要因が⾮常に 多い  事業計画は初期に暫定的に策定された後に定期的な⾒直しが ⾏われることなく形骸化していきがち  AIの活⽤局⾯

     事業⽴ち上げ段階で必要な経営計画の素案をAIの活⽤により作 成し、それらを事業主が加⼯して利⽤できるようにする  経営計画の素案は以下の変数をもとに、過去の経理実績データ からAIが最適値をシミュレーションする  業種、規模、サービス性質、主要KPI、キャッシュ・フロー、従業員数  事業主はこの素案を叩き台として経営計画を作成し、さらに必 要な資⾦調達の規模やタイミングをAIがシミュレーションする ことによって企業がより短い時間で本業にフォーカスすること を⽀援する 65
  34. 経理業務の本質とAIの適⽤可能性  データ加⼯業務としての経理業務  ⼊⼒情報  明細データ  証憑類 

    処理情報  伝票起票  仕訳登録  出⼒情報  仕訳  試算表  決算書 67
  35. 経理業務の付加価値とは  社内に散在する情報をとりまとめる  元情報は⾮定型・被構造化・分散保存されている  元情報を定型・構造化・集中保存する  複式簿記のルールに基づいてデータを整理する 

    構造化・集中保存されたデータから仕訳を起票する  定型化された仕訳は容易に起票可能  ⾮定型的な仕訳は専⾨知識をもとに起票する必要がある  ⼀定の形式で判断可能な情報を出⼒する  仕訳帳  総勘定元帳  試算表  決算書  決算書本体  注記 68
  36. 経理業務の付加価値を⾼めるための要点  正確性  業務習熟度に⽐例する  ダブルチェックによる正確さの確保  信頼性 

    検証を経た数値  相互チェックによる品質確保  ⾼速性  タイムリーな成果物の作成  ⼈間が補完できる領域に注⼒ 70 正確性 信頼性 ⾼速性
  37. 経理業務に求められるスキルセット  ビジネススキル  会計・税務の基本知識  事務処理能⼒  コミュニケーション 

    テクノロジースキル  ITサービスやツールを使いこなせること  プログラミングスキルも推奨される  語学スキル  海外拠点対応  連結決算対応 71
  38. 経理⼈材が今後⽬指すべき⽅向性  ストック型知識からフロー型知識へ  いままで  会計基準(ストック)から知識を得る  ストック型知識を適⽤して判断する 

    これから  会計基準はAIが解釈する(⼀時判断は対応可能)  他社事例、解釈事例など最新情報を検索する(フロー型知識)  フロー型知識を適⽤して実務判断を⾏う 72
  39. データサイエンス会計⼈材に必要な要素  経理業務の基本スキルに加えて以下が必要  セルフスターター  ⾃分で考える、判断できる  情報収集能⼒ 

    ⾃分で情報を集める、解釈する  ディスカッション、コミュニケーション  ⽂化を超えたコミュニケーション機会の増加  AIの基本知識と活⽤⽅法  内部構造を理解していなくても使い⽅がわかる  統計の基本的知識  「常に傍らにAIがいる環境」のなかで 「AIと共存した仕事のあり⽅」が求められる 74
  40. 経理⼈材からデータサイエンス会計⼈材への変⾰  経理財務の領域は伝統的な業務機能だった  今後はAIの⽀援を受けてより合理化を進めることが期待  経理数値という⼤量のデータに業務の視点から「意味」を与 えるという点で、財務経理業務も広義のデータサイエンスと もいえる 

    単純作業をAIに委ねることでむしろ今後ますます創造的な業 務領域になっていく  財務経理担当者は「社内データサイエンティスト」として、 統計やAIに関する基本的な素養が求められる時代が到来 75
  41. データサイエンス会計⼈材の育成プロセス  知識レベルの設定  初級-上級にレベル分け  不⾜スキルと強化ポイントを洗い出す  資格のモデルを参考する 

    勉強会  テクノロジー(特にAI)  AIの利⽤法、使いこなしTIPS  統計の基礎  セルフスターターを⽀援する環境づくり  ⾃由度の⾼さ、アイデア重視)  オーガニック⼈材が成⻑する環境 77
  42. 現場での分析⼒の活⽤  技術トレンドを経理部⾨に統合するためにまずやるべきこと  教育担当者のボランティアを募る  “アーリーアダプター”として知⾒を部署で共有する  教育担当者の学習を推奨する 

    Khan Academy/ Udemy/ Coursera  基礎固めを優先する  ブロックチェーン、AIなど基礎知識の習得を優先する  最新技術のリサーチプロジェクトを⽴ち上げる  オープンソースの動画、オンライン学習コース など  グループプロジェクトを課す  スプレッドシートから最新技術に業務をどのように進化させるか 80 https://www.journalofaccountancy.com/newsletters/extra-credit/blockchain-artificial-intelligence-accounting-curriculum.html
  43. まとめ  AIの進化の過程と現在位置  どのように進化して、今どのような状況なのか  経理業務にAIをどのように活⽤しうるか  クラウド会計の台頭による経理業務への影響 

    会計⼈材がAIを活⽤するために何をすべきか  視点の転換 ストック⼈材からフロー⼈材へ  ⼈材育成の⽅向性とは 82
  44.  Web  https://harakancpa.com/  Twitter  https://twitter.com/harakancpa  LinkedIn

     https://www.linkedin.com/in/harakan/  本資料における会社名・製品名・サービス名・ロゴ等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。  本資料に掲載されている全ての画像・⽂章・情報等は著作権により保護されています。  本資料の⼀部または全部を無断で転載、または複製など、他の⽬的に使⽤することを固くお断りいたします。  第三者への提供、インターネットでのアップロード、SNSなどでの共有等もご遠慮ください。 Contact us 84