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電子帳簿保存法改正後におけるペーパーレス経理構築のポイント

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December 28, 2021

 電子帳簿保存法改正後におけるペーパーレス経理構築のポイント

電子帳簿保存法が改正され、2022年1月からは課税文書に係る電子取引については原則として書面でなくデータの保存が求められるようになった。これらの改正が経理業務に与える影響は大きく、実務を安定的に運用しつつ業務フローやITインフラを見直すことが今後避けて通れない。

経理業務で電子帳簿保存法に対応するためには、ペーパーレスをどこまで推進すればよいのか。またどのようなプロジェクト体制で、いつまでに取り組むべきなのか。本講演では、電子帳簿保存法の改正を見据えて、経理業務でペーパーレスをどのように推進していくべきかを概観し、効果的かつ効率的な業務改革のアプローチを解説する。

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December 28, 2021
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  1. 電子帳簿保存法改正後における ペーパーレス経理構築のポイント 公認会計士・公認情報システム監査人(CISA) 原 幹 2021年12月23日

  2. 自己紹介 原 幹 (HARA , Kan) 1992年 井上斉藤英和監査法人 アガサ株式会社 社外監査役

    1992年 井上斉藤英和監査法人 会計監査業務に従事した後、コンサルティングサービス部門の初期メンバーとして、主に製造業を対象とした連結決算・グ ループ経営管理・活動基準原価計算などのシステム企画・設計・構築を行う 1998年 フューチャーシステムコンサルティング ビジネスアナリストとして、主に製造業・流通業を対象としたビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)実行支援・ システム化要件分析を行う 2001年 ウルシステムズ サービス業・流通業を対象としたビジネス要件分析・業務改革支援・システム要件分析を行う 2004年 NTTデータ システムデザイン 製造業を対象とした業務改革支援・プロジェクトマネジメント・定着化支援およびプロジェクト管理システムの 企画・設計・運用を行う 2007年 独立開業 現任 原幹公認会計士事務所 代表 株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役 株式会社あしたのチーム 社外監査役 アガサ株式会社 社外監査役 • 常に実践的な課題解決を展開し、多くのプロジェクトにて高い顧客満足度を得る • 会計およびIT領域での豊富な経験を有し、主要な技術要素やコンサルティングメソッドにも精通 • 「経営に貢献するITとは?」という一貫した視点をベースにキャリアを形成、翻訳書およびメディアでの連載実績多数 • 専門領域 コーポレートガバナンス・内部統制・ITマネジメント・クラウドセキュリティ • 保有資格 公認会計士/税理士/公認情報システム監査人(CISA)/公認不正検査士(CFE) 2
  3. 自己紹介  「1冊でわかる! 経理のテレワーク」(中央経済社 2020年刊)  「ITエンジニアとして生き残るための会計の知識」(日経BP社 2015年刊)  「クラウド会計」が経理を変える!(中央経済社

    2015年刊)  IFRS のきほんがよくわかる本(自由国民社 2011年刊)  会計士さんの書いた 情シスのためのIFRS(共著・翔泳社 2010年刊) 3
  4. 本日お伝えしたいこと  電子帳簿保存法改正のポイント  ペーパーレスのDXにおける位置づけ  ペーパーレス実施にあたってのハードル  ペーパーレス導入の具体的な進め方 

    ペーパーレスにおける実務的な留意点 4
  5. 1 電子帳簿保存法の改正 5

  6. 1 電子帳簿保存法の概要  電子帳簿保存法(電帳法)の概要  正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類 の保存方法等の特例に関する法律」  課税文書(印紙税課税対象となる契約書や受取書など)となる 「帳簿」や「書類」の電子化を容認

     徴税当局の事務を簡素化することを目指す法律として所得税法 や法人税法などの国税に関する法律の特例として定められた 6
  7. 電子帳簿保存法の役割と歴史  1998年  電子帳簿保存法の制定  2005年(平成17年) 改正  一部の紙で作成された課税文書についてスキャナ保存できる制

    度を導入した  2016年(平成28年) 改正  「スキャナ保存制度の規制緩和」においてスキャナ保存制度の 厳格な要件を緩和した  読み取りを行う装置に係る要件の緩和  受領者等が読み取りを行う場合の手続の整備  相互けんせい要件に係る小規模企業者の特例 7 出典 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/01.htm
  8. 電子帳簿保存法の全体像 8 種類 内容 例 国税関係帳簿 • データ入力段階から会計帳簿段階に至るまで全て コンピュータで処理することを想定する書類 •

    従来「書面」での保存が前提だったものを、事前 の承認手続きを経ることで電子的に保存すること が「容認」された • 仕訳帳(原則として全て保存) • 総勘定元帳(原則として全て保存) • 補助簿(必要なものについて保存) 国税関係書類 • 経理事務の過程で生成された各種書類 データ保存(データとして作成された書類をそ のまま保存する) スキャナ保存(紙で生成された書類をスキャン しデータとして保存する) のいずれかより保存形式を選択できる • 決算関係書類(決算作業に際して作成 された書類) • 貸借対照表、損益計算書、棚卸表、そ の他決算書類など • 取引関係書類(取引の過程において作 成された書類) • 会社が発行した契約書、請求書、見積 書、領収証など • 会社が受け取った契約書、請求書、見 積書、領収証など 電子取引 • EDIやインターネットを介した電子商取引におい てやりとりされた取引情報を電子データとして保 存したもの • 発生から消滅までの一連の取引を全て電磁的に保 存することが義務付けられる • 保存期間は7年(電子署名やタイムスタンプの付与 など一定の要件がある) • 注文書 • 契約書 • 送り状
  9. 2021年改正の4つのポイント POINT 項目 内容 規制の方向性 電子取引のデータ保存義務化 • 電子取引により授受したデータを書面で なくデータで保存する 強化

    検索要件の緩和 • 検索条件を限定する • 検索範囲の範囲指定や複合検索の要件を 不要とする 緩和 タイムスタンプ付与要件の緩和 • 電磁的記録に真実性や可視性を担保する ためにタイムスタンプを付す期限を延⾧ する 緩和 事前手続きや整備ルールの廃止 • 帳簿や書類の電磁的記録での保存に税務 当局への届出を不要とする • 適正な事務処理を行うための体制整備を 不要とする 緩和 4 2 3 1 9
  10. 国税関係帳簿保存要件の主な改正点 # 項目 内容 (改正前) 改正後 優良電子帳簿 改正後 その他の電子帳簿 1

    訂正削除履歴の確保 記録事項の訂正・削除を行った場合に は事実や内容を確認できる電子計算機 処理システムを使用する 必要 必要 不要 2 業務処理期間経過後の入力 通常の業務処理期間を経過した後に入 力した場合は、その事実を確認できる 電子計算機処理システムを使用する 必要 必要 不要 3 相互関連性の確保 電子帳簿の記録事項と他の帳簿の記録 事項の相互に関連性が確認できる 必要 必要 不要 4 システム関係書類等の備え付け 電子計算機処理システムの概要書・仕 様書・操作説明書などを備え付ける 必要 必要 必要 5 見読可能性の確保 保存場所に操作マニュアルを備え付け、 画面・書面に整然な形式・明瞭な状態 で速やかに出力できる 必要 必要 必要 6 検索機能の確保(1)検索条件 取引年月日・勘定科目・取引金額ほか の主要な記録項目により検索できる 必要 検索条件の限定なし 必要 検索条件は以下のみ 取引年月日 取引金額 取引先 不要 税務調査においてダ ウンロードデータを 提供する ただし1/2/3/6の要 件をすべて満たす場 合はダウンロード データの提供も不要 検索機能の確保(2)検索範囲 日付または金額の範囲指定により検索 できる 必要 不要(*1) 不要 検索機能の確保(3)複数条件検索 二つ以上の任意の記録項目を組み合わ せた条件により検索できる 必要 不要(*1) 不要 7 電磁的記録のダウンロード 税務職員による質問検査権に基づく電 磁的記録のダウンロードの求めに応じ ることができる - 不要(*1) 必要(*2) 8 事前承認制度 電磁的記録の保存を行う場合に事前に 税務署⾧の承認を行う 必要 不要(廃止) 不要(廃止) (*1)ダウンロードデータの提供条件を満たしている場合のみ (*2)優良電子帳簿の要件を満たしかつ一定の届出がある場合は不要 4 2 2 2 10
  11. 国税関係書類(スキャナ保存要件)の主な改正点 # 項目 内容 (改正前) 改正後 重要書類 改正後 一般書類 1

    訂正削除履歴の確保 記録事項の訂正・削除を行った場合に は事実や内容を確認できる電子計算機 処理システムを使用する 訂正削除が確認できる 訂正削除が確認できる 訂正削除ができない仕 様である のいずれか 訂正削除が確認できる 訂正削除ができない仕 様である のいずれか 2 タイムスタンプの付与(1) 付与期限 スキャナで読み取る際または書類作 成・受領時に一定期間内にタイムスタ ンプを付す ・特に速やかに ・速やかに ・業務サイクル後速や かに のいずれか に付与する ・速やかに ・業務サイクル後速や かに のいずれか ※ただし入力したこと を確認できる場合はタ イムスタンプの付与が 不要 ・速やかに ・業務サイクル後速や かに ・スキャナで読み取る 際に のいずれか ※ただし入力したこと を確認できる場合はタ イムスタンプの付与が 不要 タイムスタンプの付与(2) 書類への自署 スキャナで読み取った際に書類に自署 する 必要 不要 不要 3 検索機能の確保(1)検索条件 取引年月日・勘定科目・取引金額ほか の主要な記録項目により検索できる 必要 検索条件の限定なし 必要 検索条件は以下のみ 取引年月日 取引金額 取引先 必要 検索条件は以下のみ 取引年月日 取引金額 取引先 検索機能の確保(2)検索範囲 日付または金額の範囲指定により検索 できる 必要 不要(*1) 不要(*1) 検索機能の確保(3)複数条件検索 二つ以上の任意の記録項目を組み合わ せた条件により検索できる 必要 不要(*1) 不要(*1) 4 電磁的記録のダウンロード 税務職員による質問検査権に基づく電 磁的記録のダウンロードの求めに応じ ることができる - 必要 必要 5 事前承認制度 電磁的記録の保存を行う場合に事前に 税務署⾧の承認を行う 必要 不要(廃止) 不要(廃止) 6 適正事務処理要件 相互牽制、定期的検査、不備の原因究 明ができる体制づくり 必要 不要(廃止) 不要(廃止) (*1)ダウンロードデータの提供条件を満たしている場合のみ 4 4 3 2 2 2 11
  12. 電子取引保存要件の主な改正点 # 項目 内容 (改正前) 改正後 1 電子取引データへの措置(1) 原則的な要件 電子取引データに対して施すべき処理やルー

    ル整備 以下のいずれかを満たす 1. タイムスタンプ付与後に取引 データを授受 2. 取引情報の授受後速やかにタイ ムスタンプを付すとともに、 データ保存担当者や管理者を確 認できる 3. 訂正削除が確認できるか、訂正 削除ができない仕様である 4. 訂正削除防止の事務処理規程を 整備する 以下のいずれかを満たす 1. タイムスタンプ付与後に取引 データを授受 2. 取引情報の授受後速やかにタイ ムスタンプ(下記の条件あり)を 付すとともに、データ保存担当 者や管理者を確認できる 3. 訂正削除が確認できるか、訂正 削除ができない仕様である 4. 訂正削除防止の事務処理規程を 整備する 2 電子取引データへの措置(2) タイムスタンプ付与期限 電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付 す ・授受後遅滞なく ・授受後速やかに ・業務サイクル後速やかに のいずれか(事務処理規程 を定めている場合) 3 検索機能の確保(1)検索条件 取引年月日・勘定科目・取引金額ほかの主要 な記録項目により検索できる 必要 検索条件の限定なし 必要 検索条件は以下のみ 取引年月日 取引金額 取引先 検索機能の確保(2)検索範囲 日付または金額の範囲指定により検索できる 必要 不要(*1) 検索機能の確保(3)複数条件検索 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条 件により検索できる 必要 不要(*1) 4 電子取引データの書面出力 書面に出力保存可能である 必要 書面に出力保存不可 5 適正事務処理要件 相互牽制・定期的検査・不備の原因究明がで きる体制づくり 必要 不要(廃止) (*1)ダウンロードデータの提供条件を満たしている場合のみ 4 3 2 2 2 1 12
  13. (適用時期)  事前承認制度の廃止  2022年1月1日以降に備え付けを開始する事業年度等に係る国税関係帳簿から  国税関係帳簿に係る電磁的記録の保存  2022年1月1日以降に備え付けを開始する事業年度等に係る国税関係帳簿から 

    国税関係書類に係る電磁的記録の保存  2022年1月1日以降に行うスキャナ保存を行う国税関係書類から (経過措置)  国税関係帳簿  改正前の同法適用済み企業は取りやめの届出を提出する必要なし  2022年1月1日以後に備付けを開始する場合は 2021年9月30日までに届出が必要  国税関係書類  改正前の同法適用済み企業は取りやめの届出を提出する必要なし  2022年1月1日以後にスキャナ保存を開始する場合は 2021年9月30日までに届出が必要 電子帳簿保存法改正の適用時期及び経過措置 13
  14.  令和4年税制改正大綱(2021年12月10日公表) 電子帳簿保存法改正の適用時期及び経過措置 14 出典 https://www.jimin.jp/news/policy/202382.html

  15.  令和4年税制改正大綱(2021年12月10日公表) 電子帳簿保存法改正の適用時期及び経過措置 15 出典 https://www.jimin.jp/news/policy/202382.html

  16.  寛恕規程の解釈  「やむを得ない事情があると認め」  「質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面の提示又は提 出の求めに応じることができるようにしている場合」  一定の要件を満たす場合のみ、書面保存が引き続き認められる 

    「改正法対応を延期できる」とはされていないので注意 電子帳簿保存法改正の適用時期及び経過措置 16
  17. 電子帳簿保存法改正が実務に与える影響  対応スケジュール  新しい保存要件に基づく電子帳簿の保存開始 →2022年1月1日  新しい保存要件に基づく電子帳簿の想定利用期間 →2023年1月1日以降 

    上記から逆算し、寛恕規程を考慮すると、電子帳簿保存法改 正に向けた対応は2022年の前半に準備を始めるのが現実解 になる  過去に税務調査が行われていない/最後の税務調査から⾧期間 経過している企業は早期の準備が求められる 17
  18. 電子帳簿保存法改正が実務に与える影響  他の法令との関係  電帳法は「所得税法の特例」として整備されている  一方で「消費税法」における課税文書の保存は原則として 「書面」を前提としている  消費税法の要件は電子帳簿保存法が目指すところの「原則としてデータ化」

    と符丁がとられていない  電子帳簿保存法においても消費税法における扱いは例外に位置付けられる。 具体的には  消費税に係る保存義務者が行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について は、その保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して、2022年1月1 日以後も引き続きその電磁的記録を書面に出力することにより保存することも認めら れる 18
  19. 電子帳簿保存法改正が実務に与える影響  スキャナ保存書類の扱い  データ保存方法  タイムスタンプを付す方法及びタイミング  電子取引の扱い 

    データ保存方法  タイムスタンプを付す方法及びタイミング  業務フローの整備や見直し  手動でタイムスタンプを付す方法は非現実的  事務処理規程との整合 19
  20. 2 DXに向けた経理業務改革と ペーパーレス 20

  21. ペーパーレスを取り巻く状況  新型コロナウイルスの感染対策の一環として テレワークが普及してきた  「紙」や「ハンコ」などのアナログ処理によって行われ てきた業務も大幅に見直しが行われ、テレワークに適し た業務設計のニーズが高まっている  経理業務は通常の状態でも「紙」「データ」を併存させ

    た業務であり、業務自体がデジタルデータと相性がよく ペーパーレスの効果も出やすい  電子帳簿保存法改正もペーパーレス化の追い風になる 21
  22. デジタルトランスフォーメーション(DX)とは  DXを定義する  デジタイゼーション (Digitization)  データのデジタル化  いままでアナログ(紙)で扱っていたものをデジタル情報として扱う

     デジタライゼーション (Digitalization)  プロセスのデジタル化  紙を前提とした仕事の進め方がデジタルを前提として運用する  デジタルトランスフォーメーション (Digital Transformation, DX)  ビジネスモデルのデジタル化  データ・プロセスのデジタル化を前提として、ユーザーに 新たな価値を提供する事業を生み出す  「ペーパーレス」は「デジタイゼーション」に位置付ける 22 ※及川卓也著「ソフトウェア・ファースト」の定義に基づく
  23. デジタイゼーション/デジタライゼーションとDX 23 既存事業 新規事業/事業変革 デジタル トランスフォーメーション (DX) A B C

    デジタイゼーション デジタライゼーション × △ ◦ ◦ 出所:「ソフトウェア・ファースト」図3-10をもとに作成 Aの位置の組織: いきなりDX推進することを考えずまずは「B」「C」の位置を狙う Bの位置の組織: デジタライゼーションの途中なのでDX推進を始めてもいいがかなりの覚悟が必要 Cの位置の組織: デジタイゼーション/デジタライゼーションが完了しているのでDXを進めやすい ◦
  24. デジタイゼーション/デジタライゼーションとDX  IT化(ITが人間を手伝う)からDX(人間がITを使う)へ 24 <IT化>=デジタイゼーション/デジタライゼーション <DX>

  25. ペーパーレスの方向性  まずは業務データを「紙」から「データ」に転換するこ とで生産性の向上を図る(デジタイゼーション)  さらに「デジタライゼーション」「デジタルトランスフ ォーメーション」の実現に向けて、業務データを取り扱 う業務基盤をデジタル化する 25 デジタイゼーション

    デジタライゼーション デジタルトランス フォーメーション (DX) • ペーパーレス実現 • 業務効率化 • 業務プロセス分析 • デジタルを前提と した業務構築 • デジタルを前提と したビジネスモデ ル構築
  26. 「ペーパーレス」の検討プロセス  保存手段の検討  業務プロセスの検討  ビジネスモデルの検討  検討のポイント 

    保存手段として「紙」を「データ」に置き換えることがで きないか(デジタイゼーション)を考える  「DXプロジェクト」という大きなスコープよりも、自社 の身の丈に合ったゴール(経理部門の紙をなくす、など)を 設定し、小さく成功体験を積み上げる  「ペーパーレス」を実現して「場所・時間の制約」 から解放されることにより、生産性の向上を目指す 26
  27. 「ペーパーレス経理」の実現  従来型経理と「ペーパーレス経理」の違い  従来型経理  書面は「紙」で保存する  業務フローは「出社」が前提 

    印刷・押印・郵送  ペーパーレス経理  書類は「紙」もしくは「データ」で保存する  業務フローは「テレワーク」または「出社」が前提  ワークフロー・電子署名・データ共有 27
  28. 3 「ペーパーレス経理」実現に向けて 乗り越えるべきハードル 28

  29. ペーパーレス経理のハードル  「ペーパーレス経理」の最初の一歩を踏み出す前に  やみくもに「紙を廃止する」ことのみにこだわらない  「ペーパーレス経理」は業務効率や生産性を向上させる選択肢 のひとつだが、目的ではない  「ペーパーレス経理」実現に向けて乗り越えるべきハードル

    1. トップの理解とコミットメント 2. 変わりたがらない現場 3. ペーパーレス文化の確立 4. リスクマネジメントの視点 29
  30. トップの理解とコミットメント  「ペーパーレス経理」は全社的に影響が及ぶ  現場主導で進めても従わない部署が出てきたりするため うまく進まない  全社的な影響を踏まえ、トップマネジメントが主導して 「ペーパーレス経理」を推進する 

    トップの号令次第で、社内調整がスピーディに働き迅速に動ける 30
  31. 変わりたがらない現場  「番頭」役としての経理担当者の存在  ⾧年の経験のなかで仕事をしやすい方法を追求・最適化を 継続してきた  「ペーパーレス経理」は現場のプロセス(仕事のやり方)を 変革するプロセスであるため、現場の反発を招きやすい 

    「今までこれでうまくいっていた」  「やり方を変えたら業務が回らない」  全社的な取組みとしての「ペーパーレス経理」  「全社最適化」(現場レベルの最適化に優先する)の一方で 従業員へのケアを行う  自分の仕事を奪うのでない  より効率的に仕事できる環境を一緒に作る  「仲間作り」の方向付け 31
  32. ペーパーレス文化の確立  「ペーパーレス経理」を実現する視点  「ハンコ」「FAX」「紙」で運用する業務は本当に必要 か  慣習で続けられたルールの可能性を考える  業務ルールそのものを廃止できないかを検討する

     「紙を必要としない業務プロセス」に対する理解  「ペーパーレスでも問題なく運用できる」という安心感 32
  33. ペーパーレス文化の確立  「ペーパーレス経理」実現に向けた思考の転換  「原則としてペーパーレスにする」という前提で 業務プロセスを検討する  従来は申請書面を「紙」で作成し「印刷」「捺印」によって承認  今後は最初から「データ」で作成し「印刷なし」「電子承認」で

    完結できないか  「現実解」としてのワークフローの導入  標準化された業務プロセスの整備に有効  ただしシステムが万能・完璧なわけではない  システムの機能を活用しつつ、自社向けの運用を確立する 33
  34. ペーパーレス文化の確立  システム導入で解決を図る場合の留意点  例外を認めない、システムに合わせる  例外を認めると、それにともなうシステム改修や例外的運用に まつわる追加コストが発生する  「仕組みに人を合わせる」という発想

     データを前提としたワークフローを設計する 34
  35. リスクマネジメントの視点  業務の「ペーパーレス」化に伴う新たな業務リスク  紙でなくデータによる保管を行うことで、情報漏洩や文書 改ざんのリスクは増加する  書類の承認行為にどこまで本人性を求めるか  従来の「認印」の持つ代理業務の解釈範囲が

    デジタル化により厳密な定義を求められる 35
  36. リスクマネジメントの視点  プラスのリスク  デジタル化にともなう中⾧期的な生産性向上  ⾧期的には業績の向上につなげることも可能(実際に効果を挙げ ている企業も多い)  マイナスのリスク

     セキュリティリスクが増加する  業務のペーパーレス化にともない一時的に生産性が低下する  導入当初から顕著な効果は出ない  全体スケジュールの中でどのような時間軸で効果を挙げてい くかの想定を現実的に見積もる 36
  37. 4 ペーパーレス経理を進める 5つのステップと留意点 37

  38. ペーパーレスを進める5つのステップ  ペーパーレス化は以下のアプローチが有効である  「ペーパーレス」そのものを目的にするのではなく 「業務効率化」の手段のひとつと位置付ける  業務効率の達成度を測る指標としてペーパーレス進捗 度を設定する 

    ペーパーレス化を進めるための体制  当事者としての業務担当者を横断的に編成する  バックオフィスとフロントオフィスが連携できるような 混成チームとする 38
  39. ペーパーレスを進める5つのステップ  ステップ1: 現状調査  ステップ2: 業務プロセス再設計  ステップ3: ITインフラ準備

     ステップ4: トライアル運用  ステップ5: 本格運用 39
  40. ステップ1: 現状調査  改善対象となる業務プロセスの範囲(スコープ)を決める  現状分析を行う  担当者へのヒアリングと資料調査を並行する  業務のボトルネック要因を識別する

     「印刷」「捺印」「郵送」を中心に分析する  「紙→データ」「データ→紙」の形式変換のみはないか  二重に作成しているデータがないか 40
  41. ステップ2: 業務プロセス再設計  ペーパーレスを前提とした業務プロセスの見直しを行う  廃止・統合可能なプロセスがないか検討する  人による入力やチェックの処理があれば自動化ができない か、再入力は本当に必要か 

    プロセスそのものを不要にできないか  捺印などのプロセスはワークフロー処理に移行し、原則と して紙を使わない形態に変更できないか  会議や連絡など、日々のコミュニケーション業務も 「ペーパーレス」を前提として再設計できないか  進め方のノウハウがない場合は、業務設計に精通した 外部コンサルタントを活用することも有効 41
  42. ステップ2: 業務プロセス再設計  取引先との調整  暗号化ファイルの送受信を停止する  紙の請求書を受領しない 42 これまで

    これから 留意点 印刷 データ保管 印刷しない/させない環 境を推進する 捺印 電子署名 安価で本人証明を行う サービスを検討する 郵送 ストレージ共有 メールへのファイル添付 を廃止する ファイル保管場所を固定 してポインタ(リンク)を 共有する
  43. ステップ2: 業務プロセス再設計  支払業務プロセスの変更例 43 受領 スキャン TS付与 格納 承認

    取引登録 TS: タイムスタンプ 請求書 画像 請求書 請求書 画像 請求書 画像 仕訳 09.28 12:34:56 09.28 12:34:56 請求書 画像 09.28 12:34:56 受領 TS付与 格納 承認 取引登録 請求書 請求書 仕訳 09.28 12:34:56 09.28 12:34:56 請求書 09.28 12:34:56 請求書 09.28 12:34:56 <スキャナ保存書類> <電子取引>
  44. ステップ3: ITインフラ準備  インターネットを介してさまざまなサービスを利用 できる「クラウドサービス」と「ペーパーレス」は 相性が良い  業務を組み立てるインフラとしてクラウドサービスの 活用を前提に考える 44

  45. ステップ3: ITインフラ準備  ITインフラの導入例  ハードウェア: スキャン環境  ScanSnapシリーズ(PFU) 

    ソフトウェア: クラウドストレージ  Box  Dropbox  Google Drive  OneDrive(Microsoft)  電子署名サービス  Adobe Sign(Adobe)  Cloud Sign(弁護士ドットコム)  GMOサイン(GMOグローバルサインHD)  NINJA Sign(freee)  クラウド会計ソフト(CAS) 45
  46. クラウド会計ソフト(CAS)の導入検討  クラウド会計ソフト(Cloud Accounting Software)とは  クラウドサービスとして会計帳簿作成機能を提供する  AIの利点を生かした実装サービスとして2012年頃から 台頭してきた

     SaaSの経理業務領域への適用事例となる  AIの機能を会計領域に適用した先進事例として注目される 46
  47. クラウド会計ソフト(CAS)の主な機能  自動仕訳作成  監査対応(AI監査)  ワークフロー確立(データの発生から消滅まで)  ペーパーレスの実現 47

  48. クラウド会計ソフト(CAS)と従来型会計ソフトの違い  オンプレミスvsクラウド  インストール不要  最新機能を常に使うことができる  手入力の削減と自動化 

    通帳や明細資料からの手動転記をなくす  サービス料金体系  無料+月額定額課金  初期費用+アップグレード費用  仕訳ビッグデータの蓄積  大量の事業者データを保持 48
  49. クラウド会計ソフト(CAS)におけるAIの活用  自動仕訳  カード明細や銀行入出金から仕訳の費目を自動化  機械学習による勘定科目の推測  帳簿チェック 

    整合性の確認  帳簿残高と明細の整合  基準適合性の確認  10万円を超えた場合の消耗品費の計上  ボトルネックの発見  申請データの傾向分析 49
  50. ステップ3: ITインフラ準備  セキュリティポリシーの見直し  取り扱う情報のレベルに応じて紙からデジタル文書に変更 した際に見直す必要があるかを検討する  社内システムやクラウドサービスのセキュリティ設定や アクセス権限を見直す

     主要な機能に「作成」「承認」の権限を一人に集中させる べきではない  承認機能は不正な利用を防ぐため、必ず複数の従業員に権 限を割り当てる 50
  51. ステップ3: ITインフラ準備  運用中の社内システムから一足飛びにクラウドサービス に移管することは困難なことが多い  オンプレミスの場合  社内サーバなどで業務処理を行う 

    クラウドサービスの場合  インターネット環境を介して業務処理を行う  自社の事情に応じて既存インフラを使い分ける  見直したセキュリティポリシーや権限情報に基づいて混乱 なくデータ処理できるかどうかに注意 51
  52. ステップ3: ITインフラ準備  「ペーパーレス」の推進=場所・時間の制約からの解放  あらゆる場所から業務データにアクセスできる  セキュリティ対応(端末の特定・リモートワイプなど)  「操作ログ」を必ず残す

     「誰が」「いつ」「どのデータ」にアクセスしたかを特定する  従業員の作業状況を把握する基礎データとしても機能する  不正対策としても活用できる 52
  53. ステップ4: トライアル運用  局所的な業務で実際に運用を始める  主に運用面での改善点を発見して次の改善プロセスに進め るのが目的  仮に業務が止まっても影響のない範囲にとどめて試行錯誤 運用を進めることで、本格運用における大きなリスクを取

    り除くことが可能になる 53
  54. ステップ4: トライアル運用  トライアル運用の例  経理業務のなかでも支払処理に限定する  仕訳登録以降の処理はペーパーレスを前提とする  運用面の課題を収集し、改善点を検討する

     定期的なミーティング実施  プロジェクトメンバー及び現業部門のメンバーでプロセスの改善や システムとの連携で変えられないかどうかの議論を進める 54
  55. ステップ5: 本格運用  「ペーパーレス」の最終ステップ  ペーパーレスを前提に、新たな業務ルールを全社に展開  現場の一時的な抵抗やストレスはこの時期がピーク  トライアル運用で蓄積した課題を解決する方向性が見いだ

    されることで、運用定着がスムーズになる  「ペーパーレス」は組織のデジタル化(デジタイゼーシ ョン)を進めるための最初のステップにすぎない  短期: 業務データのペーパーレス化によりデジタルな業務 プロセスの基盤を作り上げる  中⾧期: 運用にともなうフィードバックのサイクルを回せ る組織基盤を作り上げる 55
  56. ペーパーレスプロジェクトにおける留意点  社内研修や周知徹底にリソースを割く  小さく成功体験を重ねて少しずつ範囲を拡げる  継続的な業務の整流化を進める 56

  57. 社内研修や周知徹底にリソースを割く  ペーパーレス化にともない、新たなシステム機能や 操作を習得する必要がある  古参の従業員にとって抵抗を受けやすい  具体的なアクション  定期的な社内研修や周知徹底により理解を深める

     ペーパーレスを見える化し、改善進捗度を共有する 57
  58. 小さく成功体験を重ねて少しずつ範囲を拡げていく  組織風土は急に大きく変化しない  「ペーパーレス」「DX」はキャッチフレーズ  現場に寄り添い、地道に浸透を図る以外ない  キャッチフレーズよりも、ステークホルダーをうまく巻き 込んで社内調整を図っていくことが結果的に早道

     具体的なアクション  社内で号令をかけやすい体制をつくる  抵抗やストレスを低く抑えるために何をすべきか、プロジ ェクトを立ち上げ時に検討する(リスク分析の一環) 58
  59. 継続的な業務の整流化を進める  「ペーパーレス」は目的ではない  組織の業務効率を高めるための手段にすぎない  ペーパーレスを達成した後は、ペーパーレスを前提とした 業務プロセスの継続的な見直しにつなげていく  具体的なアクション

     定期的なフィードバックサイクルの実施  現場からの意見収集、プロセス改善機会の分析  ITインフラ利用度合いの分析  利用されないプロセスや機能の原因分析 59
  60. まとめ  電子帳簿保存法改正のポイント  ペーパーレスのDXにおける位置づけ  ペーパーレス実施にあたってのハードル  ペーパーレス導入の具体的な進め方 

    ペーパーレスにおける実務的な留意点 60
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