関与先企業のデジタル化の潮流に税理士業界としても正面から取り組む必要がある。国内外のDXをとりまく潮流と日本の現状を知り、DXが会計・税務業務にどう影響してくるかを解説するとともに、税理士として向き合うべき今後の方向性を示す。
日時 2022.10.04 関東信越税理士会 浦和支部例会にて講演
経理DXの時代に税理士はどう向き合うのか公認会計士・税理士・公認情報システム監査人(CISA)原 幹2022年10月4日
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登壇者紹介原 幹 (HARA , Kan)1992年 井上斉藤英和監査法人会計監査業務に従事した後、コンサルティングサービス部門の初期メンバーとして、主に製造業を対象とした連結決算・グループ経営管理・活動基準原価計算などのシステム企画・設計・構築を行う1998年 フューチャーシステムコンサルティングビジネスアナリストとして、主に製造業・流通業を対象としたビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)実行支援・システム化要件分析を行う2001年 ウルシステムズサービス業・流通業を対象としたビジネス要件分析・業務改革支援・システム要件分析を行う2004年 NTTデータ システムデザイン製造業を対象とした業務改革支援・プロジェクトマネジメント・定着化支援およびプロジェクト管理システムの企画・設計・運用を行う2007年 独立開業現任 原幹公認会計士事務所 代表 2007.04-株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役 2007.05-フリー株式会社 社外監査役 2013.10-2021.09アガサ株式会社 社外監査役 2019.12-株式会社あしたのチーム 社外監査役 2020.03-• 常に実践的な課題解決を展開し、多くのプロジェクトにて高い顧客満足度を得る• 会計およびIT領域での豊富な経験を有し、主要な技術要素やコンサルティングメソッドにも精通• 「経営に貢献するITとは?」という一貫した視点をベースにキャリアを形成、翻訳書およびメディアでの連載実績多数• 専門領域 コーポレートガバナンス・内部統制・ITマネジメント・クラウドセキュリティ• 保有資格 公認会計士/税理士/公認情報システム監査人(CISA)/公認不正検査士(CFE)2
自己紹介 「1冊でわかる! 経理のテレワーク」(中央経済社 2022年刊) 「ITエンジニアとして生き残るための会計の知識」(日経BP社 2015年刊) 「クラウド会計」が経理を変える!(中央経済社 2015年刊) IFRS のきほんがよくわかる本(自由国民社 2011年刊) 会計士さんの書いた 情シスのためのIFRS(共著・翔泳社 2010年刊)3
本日お伝えしたいこと 経理DXとはなにか DXは会計・税務業務にどう影響してくるか DX時代に税理士(事務所)はどうするべきか4
1. 会計・税務領域におけるDXの潮流5
デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは デジタイゼーション(Digitization) データをデジタル化する 紙の書類をデジタルに変える デジタライゼーション(Digitalization) 業務をデジタル化する 紙を前提とした仕事の進め方をデジタルに変える デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation, DX) ビジネスモデルをデジタル化する ユーザーに新たな価値を提供する事業を生み出す6※及川卓也著「ソフトウェア・ファースト」の定義に基づく
DXの位置づけ7既存事業 新規事業/事業変革デジタル・トランスフォーメーション(DX)ABCデジタイゼーションデジタライゼーション×△○○出所:「ソフトウェア・ファースト」図3-10をもとに作成Aの位置の組織: いきなりDX推進することを考えずまずは「B」「C」の位置を狙うBの位置の組織: デジタライゼーションの途中なのでDX推進を始めてもいいがかなりの覚悟が必要Cの位置の組織: デジタイゼーション/デジタライゼーションが完了しているのでDXを進めやすい○
DXの考え方 「ITが人間の仕事を増やす」から「ITを正しく働かせる」へ8これまでのIT化: ITが人間に余計な仕事をさせる…DX: 人間がITを正しく働かせる(ためにさまざまな準備をする)
DXの考え方9https://twitter.com/akira_365/status/1555860379246288896 DXの本質とは…「ITが仕事しやすいように人間が準備する」
DXの方向性 多くの企業は「業務データを「紙」から「データ」に転換」して生産性を向上する段階にいる 次は「業務データを取り扱う基盤をデジタル化する」段階に手を付ける10デジタイゼーションデジタライゼーションデジタル・トランスフォーメーション(DX)• ペーパーレス実現• 業務効率化• 業務プロセス分析• デジタルを前提とした業務構築• デジタルを前提としたビジネスモデル構築多くの企業の現在地
DXを取り巻く背景 コロナ禍 リモートワークを前提に、デジタルを前提にした仕事の組み立てを余儀なくされた リアルな環境変化 顧客企業 フルリモート・ハイブリッドなど労働環境の構築を継続的に模索 会計事務所 顧客の環境に合わせた事務所環境の見直しの要請 「2ヶ所事務所問題」の解決に向けた規制緩和の動き 『税理士の業務とテレワーク(在宅勤務)~新型コロナウイルス感染防止対応版~』の公表 開業税理士のケース 所属税理士のケース 使用人等のケース11出所: https://www.nichizeiren.or.jp/whats-new/200415b/
国内外におけるDXの動向 電子帳簿保存法の改正(2022年施行) 電子取引をはじめ、デジタル処理を前提とした改正 大企業の電子申告義務化 法人税及び地方法人税 内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人その他 消費税及び地方消費税 上記に加え、国及び地方公共団体 インボイス制度の実施(2023年施行)12出所: https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/index.htm
国内外におけるDXの動向 国内における電子申告の普及状況13出所: 令和3年度におけるe-Taxの利用状況等についてhttps://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_202208riyozyokyo.htm
国内外におけるDXの動向 Peppol(Pan European Public Procurement Online) 欧州各国を中心に30か国以上で利用が進む 日本では電子化されたインボイスのグローバル共通仕様を定めた日本版仕様「Peppol BIS Japan Billing: JP PINT」を策定 日本版仕様ではインボイス制度の導入を見据え「適格請求書」(インボイスデータセット)を提供することが決定しており電子帳簿保存法の改正と足並みを揃えた環境整備が進んでいる 「JP PINT」は、0.9x から 1.0 リリースを準備中 標準化された電子インボイスフォーマットに基づき、自社と他社の請求データフォーマットが統一・標準化され、請求書作成業務の効率化が期待される14出所: デジタル庁「JP PINT」https://www.digital.go.jp/policies/electronic_invoice/https://test-docs.peppol.eu/japan/master/billing-1.0/
国内外におけるDXの動向 Peppol: デジタルインボイスの考え方15出所: デジタル請求書推進協議会説明資料よりhttps://www.eipa.jp/peppol
参考: 我が国のデジタル競争力 デジタル競争力ランキングにおける我が国の順位(2020年)16出所: 総務省 令和3年情報通信白書https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd103100.html過去10年にわたり後退傾向が続く
参考: 諸外国の電子申告への取組み17国名 取組みの概要米国• 個人の電子申告率が法人に比べて高水準(個人90% 法人71%)• e-fileによる電子申告の推奨• 電子申告義務化対象外の中小企業の電子申告増加への取組は途上英国• 給与所得者等に対する源泉徴収・年末調整の仕組みであるPAYE(Pay As You Earn)では、毎月の給与等の支払ごとに支払税額の調整を行う「Real Time Information」化を進めており、納税者利便の向上を図ると同時に、財務会計の透明化及びその適時・適正な把握を進めている• 事業所得については、個人事業主や法人について一定所得を超える場合には、2024年4月以降、四半期に一度歳入関税庁に電子的に財務会計情報等を報告するフランス• 雇用者等から集められた情報を公共財政総局(国税当局)があらかじめ申告書に記入し、税務申告を支援するサービス「記入済申告書」を2006年より導入(確定申告が必要な世帯の約1/3において、ページにアクセスするだけで申告が完了する自動申告が行われる)• 電子申告が義務化されており、義務化が免除されるのは納税者番号をまだ有していない海外からの移住者やインターネット環境がない者に限定ドイツ• 給与所得者の利便向上のために、「賃金税源泉徴収データオンライン照会システム(ELStAM)」を2013年に導入し、納税者の家族情報・課税クラス等の情報を蓄積• 雇用主はこれらの情報をもとに源泉徴収税額を算出するため、源泉徴収・年末調整の段階では、雇用主と従業員の間での書類のやりとりは不要• 確定申告を行う納税者の利便向上のため、1999年に電子申告ポータルサイト「ELSTER」を導入出所: 政府税制調査会 海外調査報告https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen14kai2.pdfhttps://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen14kai4.pdf
「クラウド会計ソフト」がDXを加速する クラウド会計ソフトとは クラウドサービスとして会計帳簿作成機能を提供する AIの利点を生かした実装サービスとして2012年頃から台頭 SaaS(Software as a Service)の経理業務領域への適用事例 AIの機能を会計領域に適用した先進事例として注目18
「クラウド会計ソフト」がDXを加速する オンプレミスでは弥生、勘定奉行がメインプレイヤー クラウド会計ソフトでは「freee(フリー)」「マネーフォワードクラウド」など新興勢力が先行 オンプレミス製品がクラウド対応を進めており競争が激化19
クラウド会計ソフトの主な機能 仕訳作成を自動化する カード明細や銀行入出金から仕訳の費目を自動化 機械学習による勘定科目の推測 帳簿チェック 整合性の確認 帳簿残高と明細の整合 基準適合性の確認 10万円を超えた場合の消耗品費の計上 ボトルネックの発見 申請データの傾向分析 ワークフロー 取引の発生から消滅までを一元管理20
DXを支援する作業の自動化とRPA活用 RPA(Robotics Process Automation)適用領域の例21業務領域 RPA活用業務例人事 • 給与計算とチェック、福利厚生業務• 休暇申請の処理・管理• 複数のERPに対する従業員情報のメンテナンス• 人事考課結果の入力管理財務経理 • 請求書処理や売掛金・買掛金などの仕訳• 督促や回収業務• 財務マスターデータの作成• 固定費分析などの財務レポート作成IT • ソフトウェアのインストール及びメンテナンス• ファイル管理やサーバー監視• プリンターのセットアップ• 各アプリケーションに対する新規アカウント作成サプライチェーン • 在庫管理や所在監視などに関わる業務• 作業依頼や指図管理の指示出し• 物流管理、返品処理業務• 契約管理業務出所:「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場の実態と展望2018」矢野経済研究所 2017年11月
2. DXと会計・税務業務の関係22
経理業務とDXの相性 経理業務は「情報」を取り回す業務である 大量のデータを「蓄積」し「分析」し「活用」する 「蓄積」するためには正しいデータ形式を持つ必要 「分析」「活用」するためには定型データで時系列に保管される必要 「まずはペーパーレス経理」でDXの最初のステップを 「原則としてペーパーレス」の前提で業務を検討する 申請書面を「紙」で作成し「印刷」「捺印」によって承認 最初から「データ」で作成「印刷なし」「電子承認」で完結23
「ペーパーレス経理」の実現 従来型経理と「ペーパーレス経理」の違い 従来型経理 書面は「紙」で保存する 業務フローは「出社」が前提 印刷・押印・郵送 ペーパーレス経理 書類は「紙」もしくは「データ」で保存する 業務フローは「テレワーク」または「出社」が前提 ワークフロー・電子署名・データ共有24
経理部門のDX 「とにかくデータ化」からスタートする 紙での業務処理を原則として禁止する 成果物はオンラインで共有する これまでの「経理の常識」を見直す 「いつもの作業」を自動化する メール添付を廃止してクラウドストレージで共有する 人海戦術の仕訳入力から脱却する クラウド会計ソフトで仕訳登録を自動化する25
経理部門のDX 自動化できる「いつもの作業」とは… メールに添付されたファイルをフォルダに格納する ファイルアップロードされたことを担当者に知らせる 業務文書が修正されたことを通知する 定型業務の締切をリマインドする 請求書取引データから銀行振込に連動する26
経理部門のDX• 日付順にソート• ポケットファイルに保存• 画像データ変換後は基本的に参照しない証憑ファイリングの例27とにかくデータ化し、その後の管理工数をかけない
経理部門のDX 「ペーパーレス経理」を実現するために 保管手段として「データ」を原則とする 例外を作らないのがコツ 新しいツールを学ぶために時間がかかる 人間によるチェックは避けられない 完全自動化は現実的ではない 仕訳自動化の精度は人間によって引き上げられる 身の丈に合ったゴールを設定し小さく成功体験を積み上げる 「ペーパーレス」を実現して「場所・時間の制約」から解放されることにより、生産性の向上を目指す28
経理部門のDX「ペーパーレス経理」構築のステップ ステップ1: 現状調査 ステップ2: 業務プロセス再設計 ステップ3: ITインフラ準備29
ペーパーレス経理 ステップ1: 現状調査 改善対象となる業務プロセスの範囲を決める 現状分析を行う 担当者へのヒアリングと資料調査を並行する 業務のボトルネック要因を識別する 「印刷」「捺印」「郵送」を中心に分析する 「紙→データ」「データ→紙」の形式変換のみはないか 二重に作成しているデータがないか30
ペーパーレス経理 ステップ2: 業務プロセス再設計 ペーパーレスを前提とした業務プロセスの見直しを行う 廃止・統合可能なプロセスがないか検討する 人による入力やチェックの処理があれば自動化ができないか、再入力は本当に必要か プロセスそのものを不要にできないか 捺印などのプロセスはワークフロー処理に移行し、原則として紙を使わない形態に変更できないか 会議や連絡など、日々のコミュニケーション業務も「ペーパーレス」を前提として再設計できないか31
ペーパーレス経理 ステップ2: 業務プロセス再設計 取引先との調整 暗号化ファイルの送受信を停止する 紙の請求書を受領しない32これまで これから 留意点印刷 データ保管 • 印刷しない/させない環境を推進する捺印 電子署名 • 安価で本人証明を行うサービスを検討する郵送 ストレージ共有 • メールへのファイル添付を廃止する• ファイル保管場所を固定してポインタ(リンク)を共有する
ペーパーレス経理 ステップ2: 業務プロセス再設計 支払業務プロセスの変更例33受領 スキャン TS付与 格納 承認 取引登録TS: タイムスタンプ請求書画像請求書 請求書画像請求書画像仕訳09.28 12:34:56 09.28 12:34:56請求書画像09.28 12:34:56受領 TS付与 格納 承認 取引登録請求書 請求書仕訳09.28 12:34:56 09.28 12:34:56請求書09.28 12:34:56請求書09.28 12:34:56
ペーパーレス経理 ステップ3: ITインフラ準備 インターネットを介してさまざまなサービスを利用できる「クラウドサービス」と「ペーパーレス」は相性が良い 業務を組み立てるインフラとしてクラウドサービスの活用を前提に考える34
ペーパーレス経理 ステップ3: ITインフラ準備 運用中の社内システムからクラウドサービスに一気に移管することはハードルが高い オンプレミス(社内システム)の場合 社内サーバなどで業務処理を行う クラウドサービスの場合 インターネット環境を介して業務処理を行う 自社の事情に応じて既存インフラを使い分ける 見直したセキュリティポリシーや権限情報に基づいて混乱なくデータ処理できるかどうかに注意する35
ペーパーレス経理 ステップ3: ITインフラ準備 「ペーパーレス」の推進=場所・時間の制約からの解放 あらゆる場所から業務データにアクセスできる セキュリティ対応(端末の特定・リモートワイプなど) 「操作ログ」を必ず残す 「誰が」「いつ」「どのデータ」にアクセスしたかを特定する 従業員の作業状況を把握する基礎データとしても機能する 不正対策としても活用できる36
顧客企業のDXは段階的に進展する 一方、税理士(事務所)は…?37
税理士(事務所)のDX 税理士(事務所)になぜDXが必要なのか 顧客企業のDXは今後不可逆に進んでいく 顧客のデジタル化に会計事務所が対応できないと経理業務が滞留し、顧客に影響が出る 経理業務と連携した税務業務にも影響がある 業務効率の低下は顧客の不満を買い、最悪の場合事務所の変更にもつながる 顧客のDXと足並みを揃え、税理士(事務所)もDXを継続するのが生き残りへの鍵になる38
税理士(事務所)のDX 税理士(事務所)のDXとは 顧客と同じ視線を持つ データをデジタル化する 業務プロセスをデジタル化する ITインフラを見直す 加えて、税理士業務固有の事情も考慮する 多くの顧客に対応するためのIT環境 会計ソフトと税務ソフトの連携 電子帳簿保存法対応 税務調査立会い対応39
税理士(事務所)のDX データをデジタル化する アナログ証憑を「とにかくデジタルデータにする」 アナログ書類の保管コストを最小限にする FAX/複合機/電子メールを原則廃止 業務をデジタル化する データ管理を一元化し、処理履歴を保全する メールサービスはクラウドサービスを標準にする ファイル共有はメール添付から「リンク共有」へ 顧客との資料授受をクラウドストレージで実現する 「紙に出力してチェックする」の習慣を脱する ITインフラを見直す デュアルモニタを導入して生産性を上げる(少額投資で最大の効果) ローカルファイルサーバを廃止してクラウドストレージを導入する クラウドサービスの活用(会計ソフト、税務申告ソフト)40
税理士(事務所)のDX クラウドサービスの活用例 グループウェア Microsoft 365/Google Workspace ストレージ SharePoint/Google Docs/Box/DropBox メッセージング ChatWork/Slack/Microsoft Teams 電子サイン CloudSign/Adobe Sign/DocuSign ワークフロー/RPA Microsoft Power Automate/UIPath41
参考: リンク共有の仕組み¥¥Company¥Acc¥Expense.xlsxhttps://sample.sharepoint.com/:w:/r/sites/sample/Shared%expense.xlsx• 閲覧期限• アクセス権限 を設定ファイル閲覧・編集リンク生成リンクをクリック• リンクを共有する• 実体ファイルは送信しない• 閲覧権限を柔軟に設定可能 42
税理士(事務所)のDX 再掲: 自動化できる「いつもの作業」とは… メールに添付されたファイルをフォルダに格納する ファイルアップロードされたことを担当者に知らせる 業務文書が修正されたことを通知する 定型業務の締切をリマインドする (請求書取引データから銀行振込に連動する) +定型作業用のフォルダを作成する +源泉所得税対象取引を抽出する & e-Taxに連動する +住民税納付情報を抽出する & eLTAXに連動する43
税理士(事務所)のDX 小さく成功体験を重ねて少しずつ範囲を拡げていく 組織風土は急に大きく変化しない 「ペーパーレス」「DX」はキャッチフレーズ 現場に寄り添い、地道に浸透を図る以外ない キャッチフレーズよりも、ステークホルダーをうまく巻き込んで社内調整を図っていくことが結果的に早道 具体的なアクションは? 事務所内で号令をかけやすい体制をつくる 抵抗やストレスを低く抑えるために何をすべきか、プロジェクトを立ち上げ時に検討する44
税理士(事務所)のDX 今日から始めるデジタル化 「とにかくデータ化」から始める 処理を自動化する取組を習慣化する 熟練職員の“職人技”をツールに落とし込む 「属人化」はなくならない!45定型的な作業専門的な判断高度に専門的な判断デジタル化しやすいデジタル化しにくい
税理士(事務所)のDX “未来像” デジタルに特化した税理士(事務所)の姿とは 事務所内で紙が使われない 視界に書類がない すべての証憑書類はデジタルデータで一元管理される 業務フローはデジタルが前提になる ワークフローによるデジタルでの承認プロセスが完結する 不正利用防止策が適切に講じられ、顧客の機密が守られる デジタルでのコミュニケーション機会が拡大する コミュニケーションの履歴が残るため「言った、言わない」問題が発生しにくくなる コミュニケーションストレスが低い リモートワークとのハイブリッド勤務形態が実現46
3 DX時代に税理士はどう向き合うのか47
2025年~2030年までのトレンド予想 経理領域でのデジタル化・AIのさらなる活用 就労人口の減少、特に若年世代の激減 税制関連法令や諸規則の多様化・深化 税理士業界志望者の減少?今後の展望48
制約事項 税制は広範囲に改正が及び、より複雑な制度になる 業務量が劇的に少なくなることはなく、むしろ増える 人手不足が慢性的に続く(解消することはない) AIやロボットの普及は不可逆である 結論として「現在またはそれ以下のリソースで業務量が増えても支障なく運用できるようにデジタル化を追求する」が最適解になる 税理士(事務所)は今後に向けて手をこまねくことなく、「業務のデジタル化」を今日からはじめるべき今後の展望49
税理士業務に求められる一般的なスキルセット ビジネススキル 会計・税務の基本知識 事務処理能力 ITスキル さまざまなITサービスやツールを使いこなせる プログラミングスキルがあればよりよい コミュニケーションスキル 顧客とのコミュニケーション トラブル対応 税務調査対応50
税理士が今後目指すべき方向性とは ストック型知識からフロー型知識へ いままで 会計税務の法令や基準(ストック情報)から知識を得る ストック型知識を適用して判断する これから 会計基準はAIが解釈する(一次的な判断は対応可能) 他社事例、解釈事例など最新情報を検索する(フロー型知識) フロー型知識を適用して実務判断を行う なにが起こるか 作業代行としての税理士業務の終焉 AIを使いこなして業務に付加価値をつけられる51
データサイエンス会計人材とは 今後有望な学問・実務領域として「データサイエンス」が挙げられるようになった アカデミックの世界では人気も高く、多くの企業では優秀なデータサイエンティストの採用争奪戦になっている 会計・税務領域においてもデータサイエンスの知見が生かされるようになってきた “データサイエンス会計人材”とは 会計・税務領域でAIを使いこなせる これまでの会計・税務人材に統計・テクノロジーの知識を強化 就労マーケットでの競争力を高めるものとして期待される52
データサイエンス会計人材に必要な要素 会計・税務業務の基本スキルに加えて以下が必要 セルフスターター 自分で考える、判断できる 情報収集能力 自分で情報を集める、解釈する ディスカッション、コミュニケーション 文化を超えたコミュニケーション機会の増加 AIの基本知識と活用方法 内部構造を理解していなくても使い方がわかることが肝要 統計の基本的知識 「常に傍らにAIがいる環境」のなか、税理士も「AIと共存した仕事の進め方」を追求する53
経理人材からデータサイエンス会計人材への変革 会計税務の領域は、伝統的なバックオフィス業務機能からAIの支援を受けてより合理化が期待される 経理数値という大量のデータに業務の視点から「意味」を与えるという点で、経理業務も広義のデータサイエンスといえる 単純作業をAIに委ねることでむしろ今後ますます創造的な業務領域になっていく 事務所担当者が「社内データサイエンティスト」として、統計やAIに関する基本的な素養が求められる時代が到来する54
データサイエンス会計人材の育成プロセス 知識レベルの設定 初級-上級にレベル分け 不足スキルと強化ポイントを洗い出す 資格のモデルを参考する 事務所での勉強会 テクノロジー(AIなど) AIの利用法、使いこなしかた 統計の基礎 セルフスターターを支援する事務所環境づくり 自由度の高さ、アイデア重視 オーガニック人材が成長する、成長できる環境55
本日のまとめ 経理DXとはなにか DXは会計・税務業務にどう影響してくるか DX時代に税理士(事務所)はどうするべきか56
質疑応答57
Web https://harakancpa.com/ ブログ https://harakancpa.com/blog/ Twitter https://twitter.com/harakancpa LinkedIn https://www.linkedin.com/in/harakan/ Speaker Deck https://speakerdeck.com/kan65535 本資料における会社名・製品名・サービス名・ロゴ等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。 本資料に掲載されている全ての画像・文章・情報等は著作権により保護されています。 本資料の一部または全部を無断で転載、または複製など、他の目的に使用することを固くお断りいたします。 第三者への提供、インターネットでのアップロード、SNSなどでの共有等もご遠慮ください。Contact us58