AIを活用し経理業務を「データサイエンス業務」に変革するためのポイントと実務-経理人材が今後目指すべき方向性を提示-

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January 15, 2019

 AIを活用し経理業務を「データサイエンス業務」に変革するためのポイントと実務-経理人材が今後目指すべき方向性を提示-

人工知能(AI)がビジネスの現場においても活用機会を拡大してきている。巷間では「AIが人間の仕事を奪う」と考えられているが、経理業務も例外ではないのか?近い将来に経理人材はAIに駆逐されてしまうのか?より高速・正確に処理するAIの能力を経理業務としていかに活用するべきなのかを真剣に考える時期が到来している。本講演では、AIの業務への活用が経理業務をどのように変革していくのかを概観し、AIと共存しつつ経理業務を「データサイエンス業務」に変革する機会と可能性について今後の展望を解説する。

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harakan

January 15, 2019
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  1. AIを活⽤し経理業務を「データサイエンス業務」に 変⾰するためのポイントと実務 -経理⼈材が今後⽬指すべき⽅向性を提⽰- 公認会計⼠・公認情報システム監査⼈(CISA) 原 幹 2019年1⽉15⽇

  2. ⾃⼰紹介 原 幹 (HARA , Kan) 1992年 井上⻫藤英和監査法⼈ 会計監査・コンサルティングサービス部⾨(現 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント)の初期メンバーとして、

    主に製造業を対象とした連結決算・グループ経営管理・活動基準原価計算などのシステム企画・設計・構築を⾏う 1998年 フューチャーシステムコンサルティング ビジネスアナリストとして、主に製造業・流通業を対象としたビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)実⾏⽀援・ システム化要件分析を⾏う 2001年 ウルシステムズ サービス業・流通業を対象としたビジネス要件分析・業務改⾰⽀援・システム要件分析を⾏う 2004年 NTTデータ システムデザイン 製造業を対象とした業務改⾰⽀援・プロジェクトマネジメント・定着化⽀援およびプロジェクト管理システムの 企画・設計・運⽤を⾏う 2007年 独⽴開業 現任 株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役 http://kleta.co.jp/ 原幹公認会計⼠事務所 代表 http://harakancpa.com/ freee株式会社 監査役(社外) http://freee.co.jp/ • 常に実践的な課題解決を展開し、多くのプロジェクトにて⾼い顧客満⾜度を得る • 会計およびIT領域での豊富な経験を有し、主要な技術要素やコンサルティングメソッドにも精通 • 「経営に貢献するITとは︖」という⼀貫した視点をベースにキャリアを形成、翻訳書およびメディアでの連載実績多数 • 専⾨領域 連結会計・内部統制・国際会計(IFRS)・ITマネジメント • 保有資格 公認会計⼠・税理⼠・公認情報システム監査⼈(CISA) 2
  3. 本⽇お伝えしたいこと  AIの進化の過程と現在位置  どのように進化して、今どのような状況なのか  経理業務にAIをどのように活⽤しうるか  クラウド会計の台頭による経理業務への影響 

    会計⼈材がAIを活⽤するために何をすべきか  視点の転換 ストック⼈材からフロー⼈材へ  ⼈材育成の⽅向性とは 3
  4. 1. AIの進化と現在 4

  5. AIとは  AI(Artificial Intelligence)とは  さまざまな⼈⼯知能の定義  「⼤量の知識データに対して⾼度な推論を的確に⾏うことを⽬指したもの」 (⼀般社団法⼈ ⼈⼯知能学会設⽴趣意書より)

     “the simulation of human intelligence processes by machines, especially computer systems“ (*)  ⼀般的には「⾃律的に振る舞いヒトの脳の代替を⾏う」  現実的なAIの振る舞い  ヒトの振る舞いの⼀部を模倣する  模倣するための学習データが必要  基本的なAIの振る舞い  探索  知識表現  進化的⼿法  機械学習 5 (*) https://searchenterpriseai.techtarget.com/definition/AI-Artificial-Intelligence
  6. AIの基本的な振る舞い  「探索」  膨⼤なデータから必要な情報を探し出す機能  地図ルート案内  あらかじめ登録された地図情報・交通状況・コスト情報にもとづいて最適経 路やコストを検索し、利⽤者に提⽰する

     「⼒づく探索」は、迷路を⼀⽅向で検索するため⾮効率  検索条件の集合体である探索⽊(search tree)をいかに効率的に 解くかがポイント  探索⽊をくまなく探索する⽅法  縦型探索  横型探索  知識を⽤いてより効率的に探索する⽅法  発⾒的探索  最良優先探索  ⼭登り法  最適経路探索 6
  7. AIの基本的な振る舞い  「知識表現」  ⼤量のデータの集合体を「知識」として分析可能なデータ形式 に変換する技術  意味ネットワーク(semantic network) 

    データや事象の関係をネットワーク形式で表現する  フレーム(frame)  ある概念に関するひとくくりの単位の知識を扱うための知識表現法 7
  8. AIの基本的な振る舞い  「進化的⼿法」  ⽣物進化や⽣物群の移動を模倣することでデータの 最適化を⾏う技術  遺伝的アルゴリズム(Genetic algorithm, GA)

     解決する問題の解の候補を「0」「1」の2つの「遺伝⼦」として表現し、問 題の解も遺伝⼦として表現する「遺伝的プログラミング」を⾏う 8
  9. AIの基本的な振る舞い  「機械学習」  ⼈⼯知能分野において進展が著しい領域  ⼊⼒データの特性に基づき、最も合理的に説明がつくように データの分割及び再構成を⾃動的に⾏う  より⼈間の思考に近い⾼度な振る舞いが実現される

     機械学習の種類  教師データの有無  学習⽤データを与えて⾏う「教師あり学習」  学習⽤データなしに⾏う「教師なし学習」  強化学習  未知のデータに対しても⾃⼒で学習内容を変化できるようにする  深層学習(ディープラーニング)  正解データに到達するまでに多層の処理階層を持つ  表現⼒の深い関数を⽤いる(データと計算量が多いほど精度が上がる) 9
  10. AIの基本的な振る舞い  「機械学習」  深層学習(ディープラーニング)の最新技術  深層⽣成モデル  データ⽣成の過程そのものをモデル化する「⽣成モデル」を深い階層のニューラルネ ットワークによって実現する

     実装例  変分オートエンコーダー(Variational Autoencoder: VAE)  ⽣成的敵対ネットワーク(Generative Adversarial Network: GAN)  深層強化学習  価値算出変数の組み合わせを⽣成するため、深い関数で「状態」から 「価値」の計算を学習する  実装例  Q学習 DQN(deep Q-Network)  DeepMindなど 10
  11.  Amazon GO (Amazon)  完全無⼈店舗 2016.12より 1. カメラで店内を撮影 2.

    ゲートを通過 3. Amazonアカウントに請求 11 https://en.wikipedia.org/wiki/Amazon_Go 教師あり学習の活⽤事例
  12.  Apolong Baidu(百度)/厦⾨⾦⿓汽⾞集団  レベル4⾃動運転バス 2018.07より  ⾃動運転システム「Apollo」を搭載  ⽇本でも実証実験を展開

    12 教師あり学習の活⽤事例 https://www.baidu.jp/info/103/
  13. AIの世代変化  第1次ブーム 1960〜80年代  ルールベースのアルゴリズムに基づいた問題処理システムを 「エキスパートシステム」の誕⽣を契機に、有機化合物の化学 構造を求める研究が進んだ  第2次ブーム

    1980〜90年代  コンピューティングの進歩とともに、⼈間の脳の仕組みを模倣 する「ニューラルネットワーク」の開発が進んだ  第3次ブーム 2000年代〜現在  機械学習と深層学習の進化が新たなブームを迎えた  ディープラーニング(深層学習)の登場により、⼤量のデータから 有⽤な特徴をコンピュータが⾃律的に分析することができる  コンピュータの⾶躍的な機能向上がブームを後押ししている 13
  14. AIと統計的思考  AIは「統計的思考」を基礎にしている  ⼤量のデータに基づく推論は統計的推論により⾏われる  AIの振る舞いにおいては多くの局⾯で統計的思考が求められる  統計学の類型 

    記述統計学(descriptive statistics)  推測統計学(inferential statistics)  ベイズ推定(Bayesian inference) 14
  15. 記述統計学  全てのデータをもとに分析する  データの「代表値」をあらわす  平均値(mean)  中央値(median) 

    最頻値(mode)  データの「ばらつき」を表す  分散(Variance)  確率変数の分布が期待値からどれだけばらついているか  標準偏差(Standard Deviation)  分散の正の平⽅根 15
  16. 推測統計学  ⼤量データから抽出したサンプルから⺟集団の特徴を推測す る  仮説検定  検証を⾏ううえで「棄却」されることを期待される仮説 (帰無仮説)を設定する 

    帰無仮説を棄却(否定)することで残りの仮説を採⽤する 16
  17. 推測統計学  正規分布の危険率(通常は5%程度)を超えない程度の確からし さがあるかどうかを検証する 17 0 0.05 0.1 0.15 0.2

    0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 ‐5.0 ‐4.0 ‐3.0 ‐2.0 ‐1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 正規分布曲線 -2.5% +2.5% 危険率(5%)の範囲にデータがある場合に帰無仮説を「棄却」する
  18. ベイズ推定  トーマス・ベイズが考案しラプラスが体系化した学問領域  統計学の学問体系における近年においての⼤きな進展  伝統的統計学(記述統計学や推測統計学)に対して、主観的な⾒解 で確率を決めたり変更したりする考え⽅を追加した  ベイズ統計の出現により、実務領域でも⾶躍的進化を遂げた

     ベイズフィルター  迷惑メールの抽出において使⽤されるフィルター  メールシステムの実装で広く利⽤されている 18
  19. なぜいまAIが注⽬されるのか  海外では  AI関連特許出願数は級数的に伸びている 19 「AI⽩書」独⽴⾏政法⼈情報処理推進機構(IPA) P166より

  20. なぜいまAIが注⽬されるのか  海外では  AIソフトウェア世界市場の伸びも著しい 20 https://www.tractica.com/research/artificial-intelligence-use-cases/

  21. なぜいまAIが注⽬されるのか  各国の政策動向  ⽶国  Summit on Artificial Intelligence

    for American Industry  Artificial Intelligence for the American People  EU  AIに関する協⼒宣⾔(2018.04)  EU全体としてのAI活⽤の取り組み提案  イノベーション助成プログラム “HORIZON Europe”  中国  新世代⼈⼯知能発展計画 2017.07-  “Internet Plus”  ⼈⼯知能⾰新発展  デジタルエコノミー 21
  22. なぜいまAIが注⽬されるのか  ⽇本の動向  少⼦⾼齢化・労働⼈⼝の減少  単純作業に割ける⼈⼿が絶対的に不⾜してきたことによる ⾃動化や効率化の要請の⾼まり  ⽣産性向上の⼿段としてAIが注⽬されつつある

    22
  23. なぜいまAIが注⽬されるのか  ⽇本の動向  「業務効率化」 「⽣産性向上」 ⽬的が60%以上 23 「AI⽩書」独⽴⾏政法⼈情報処理推進機構(IPA) P326より

  24. なぜいまAIが注⽬されるのか  内閣府「⼈間中⼼のAI社会原則検討会議」 24 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/humanai/2kai/siryo4.pdf

  25. 作業の⾃動化に向けたRPAの活⽤  RPAとは  処理の⾃動化・⾼速化  操作記録に基づく⾃動化で業務の⾼速化を図る  あくまで既存の「⼈⼒の作業」を⾃動化するための仕組み 

    RPAとAIとの違い  RPAは︖  コンピュータに対する⼈間の指⽰に基づき操作を⾃動化する  操作記録に基づく⾃動化により業務の⾼速化を図ることができる  課題を⾃律的に解決するわけではない  課題⾃体を⾒つけることができない  課題設定、解決⽅法は⼈間が考える必要がある  AIは︖  課題を設定し、解決⽅法を探索する  AIは⾃律的に思考と探索を⾏い、最適解を追求する 25
  26. 作業の⾃動化に向けたRPAの活⽤  RPA適⽤領域の例 26 業務領域 RPA活⽤業務例 ⼈事 • 給与計算とチェック、福利厚⽣業務 •

    休暇申請の処理・管理 • 複数のERPに対する従業員情報のメンテナンス • ⼈事考課結果の⼊⼒管理 財務経理 • 請求書処理や売掛⾦・買掛⾦などの仕訳 • 督促や回収業務 • 財務マスターデータの作成 • 固定費分析などの財務レポート作成 IT • ソフトウェアのインストール及びメンテナンス • ファイル管理やサーバー監視 • プリンターのセットアップ • 各アプリケーションに対する新規アカウント作成 サプライチェーン • 在庫管理や所在監視などに関わる業務 • 作業依頼や指図管理の指⽰出し • 物流管理、返品処理業務 • 契約管理業務 「RPA(ロボティック・プロセス/オートメーション)市場の実態と展望2018」⽮野経済研究所 2017年11⽉
  27. AIのビジネスでの活⽤領域と先進事例  AIのビジネスでの活⽤とは  合理化・⾃動化のツールにとどまるのか  ⼈間の意思決定を補完する役割なのか  あるいは新たな役割が与えられる︖ 27

    ⾃動化 意思決定 ︖︖
  28. AIのビジネスでの活⽤領域と先進事例  「煩雑さをなくす」という視点を持つ  仕事の⽬的の障害になるものを取り除く  Uberの例  仕事の⽬的は「⽬的地にたどりつくこと」 

    顧客が「⽬的地にたどりつくこと」の障害を可能なかぎり取り除く  阻害要因とは  タクシーを探す  ⽬的地を指⽰する  ⽀払う  阻害要因を取り除くために運転⼿と 道路情報による学習とフィードバックが必要  タクシーを探す→最短地点を学習する  ⽬的地を指⽰する→最短経路を学習する  ⽀払う→決済を効率化する 28 https://www.uber.com/jp/ja/
  29. AIのビジネスでの活⽤領域と先進事例  学習とフィードバックのためにはビッグデータの蓄積が必要  あらゆるデバイスからデータを収集  収集したデータをビッグデータとして蓄積  蓄積したデータに基づく機械学習 

    継続学習とフィードバックのサイクルがAIの活⽤には必須 29 AI IoT Big Data
  30. 適⽤領域 検討 PoC パイロット 導⼊ 効果測定 本格導⼊ AI適⽤の実際  導⼊サイクルは”⼩さく⽣んで⼤きく育てる”

    30 データ取得 データ蓄積 学習 デプロイ 運⽤ データ取得 データ蓄積 学習 デプロイ 運⽤
  31. AIの導⼊事例: IHI 31 https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2017/industrial_general_machine/2017-12-07/index.html

  32. AIの導⼊事例: オムロン 32 https://www.omron.co.jp/press/2018/10/c1001.html

  33. 2. AIと経理業務の関係 33

  34. 経理業務におけるAIの活⽤機会  仕訳⽣成の⾃動化  会計ソフト等がクレジットカードや銀⾏⼊出⾦などの明細デー タを⾃動取得し、明細データから勘定科⽬名を抽出する  勘定科⽬名の候補を表⽰し、ユーザが確認・修正を⾏う  不正検知

     本来整合するべきデータを検出してユーザに提⽰する  ⼊出⾦明細の値と元帳残⾼の不整合  未決済残⾼と決済済み⾦額の不整合  会計数値の⽉次推移等から想定の傾向を超える異常値を検出  予測・⾒積り  不確実性のある取引への対応  減損・税効果・退職給付債務  財務分析  特徴の把握・今後の⽅向性予測・健全性抽出・改善ポイント 34
  35. 経理業務とAIの相性  テキストマイニング  ⼤量のテキスト情報から統計的⼿法に基づく⾔語処理アルゴリ ズムを適⽤してデータを処理する⽅法  コンピュータを使って⼤量のテキストデータを分析し、データ に内在する有⽤な情報を抽出する技術 

    「データマイニング」の適⽤領域のひとつとして普及してきた  マーケティング分野の利⽤が活発だが、経理領域においても効 果が実証されている  経理業務は「情報」を取り回す業務である  ⼤量にデータを蓄積し、分析し、活⽤する環境として最適 35
  36. 不正検知へのAIの活⽤事例  特徴・メリット  ⼤量・⾼速のデータを扱うAIの特性を活⽤できる  事例  異常値分析 範囲外のデータ、境界値など

     権限外のデータ登録や承認 登録者と承認者の⼀致など  統制違反の操作 36
  37. 不正検知へのAIの活⽤事例 37 http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1804/17/news056.html

  38. 監査領域へのAIの活⽤事例  これまでの監査⽀援  ⼈的リソースの制約があった  サンプル抽出も⼈⼒に頼ってきた  「90%以上の信頼性を得るために25件のサンプルを抽出」 

    これからの監査⽀援  仕訳テストの要請(監査⼿続として必須のものに)  実務でコンピュータ利⽤監査技法(Computer Assisted Auditing Techniques, CAAT)が推奨される  試査から精査へ  ⼤量データの取り扱いが容易になった  分析的⼿続機能がAIに期待できる  経理財務部⾨の⽴場からも、監査に耐えうる必要⼗分な監査 証跡を提供するためにどのようなデータセットを準備するの かを検討するべき時期が到来しつつある 38
  39. 監査領域へのAIの活⽤事例  新⽇本監査法⼈の取り組み  異常検知アルゴリズムの開発  異常仕訳の分析・抽出 39 https://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2017/2017-11-06.html

  40. 監査領域へのAIの活⽤事例  監査法⼈トーマツの取り組み  データを活⽤した監査⼿続  監査業務管理システム  AIを利⽤した⽂書解析 40

    https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/audit/articles/ai/audit-innovation-actions.html
  41. 3. 経理業務にAIを活⽤するため のポイント 41

  42. AIと経理業務(財務会計)の適合性  定型・⾼速・⼤量処理  過去の学習成果を活⽤できる  性能により⾼速化を図ることができる  ⾮定型・判断処理 

    判断する基準がない場合に対応できない  ⾮定型処理は⾼速化が困難 42
  43. AIを適⽤しやすい業務領域(財務会計)  ⼊⼒業務  仕訳起票の⾃動化  集計業務  整合性チェック 

    B/Sと明細  P/Lと明細  G/Lと増減明細期末残⾼  統制チェック  仕訳登録と承認  承認エラー、異常データの検知  出⼒業務  表⽰チェック  基準の準拠性  財務諸表本表と注記情報の整合性チェック  変更の影響チェック 43
  44. AIを適⽤しにくい業務領域(財務会計)  ⾼度な判断業務  会計費⽬の選定が困難  仕訳⾃体の⽣成が困難  税務⾯での判断が必要 

    特徴  複雑・少量・⾃動化が困難  ⾮定型・判断が必要な処理  開⽰にあたっての重要性判定  キャッシュ・フロー「その他」の内訳分析 44
  45. AIの財務会計領域への適⽤  ⼈間の組み合わせによる効果  単純な集計業務は⾃動化し、⾼度な判断業務は⼈間が⾏う  AIが⼈間の仕事を奪うのではなく、AIが⼈間の仕事を補完する  ⼀次集計とチェックをAIが実施、最終確認を⼈間が⾏う など

    45 AIによる⽀援 記録 処理 判断
  46. AIの業務リスクと対処⽅法  データ所有権のリスク  分析の元データとなる財務会計データは利⽤者(個⼈または法⼈) の重要な業務データである  再利⽤や活⽤はサービス提供事業者の独断で進められるべき性 質のものではない 

    特にサービス提供事業者は⼤量のユーザーデータを保持してい ることから、それらのデータを横串で分析し、データに新たな 価値を付与しうる⽴場にある  データの利活⽤を⾏うのであれば以下の必要な対応を経たうえ で法的なリスクを低減する必要がある  データ所有者や契約者の同意  取り扱うデータの適切な匿名化 46
  47. AIの業務リスクと対処⽅法  情報漏洩のリスク  取り扱うデータに個⼈情報が含まれているならば適切な個⼈情 報保護施策を図る必要  個⼈情報保護法  個⼈情報の定義の明確化、個⼈情報の第三者提供、外国の第三者への提供制

    限  EU⼀般データ保護規則(General Data Protection Regulation, GDPR)  個⼈の明確な同意、「忘れられる権利」、データ・ポータビリティ 等 47 https://eugdpr.org/
  48. AIの業務リスクと対処⽅法  AIの振る舞いにまつわるリスク  誤処理(⼊⼒や集計)を「⾼速」「⼤量」に⾏う  勘定科⽬の設定ミスなど  対策 

    出⼒結果の検証を徹底、エンジンの品質維持  定期的なメンテナンスによる品質改善 48
  49. クラウド会計ソフトにおけるAIの主要な機能  クラウド会計ソフトとは  クラウドサービスとして会計帳簿作成機能を提供する  AIの利点を⽣かした実装サービスとして2012年頃から台頭して きた  SaaSの経理業務領域への適⽤事例となる

     AIの機能を会計領域に適⽤した先進事例として注⽬される 49
  50. クラウド会計ソフトの主な機能  ⾃動仕訳作成  監査対応(AI監査)  ワークフロー確⽴(データの発⽣から消滅まで)  ペーパーレスの実現 50

  51. クラウド会計ソフトのこれまでの会計ソフトとの違い  オンプレミスvsクラウド  インストール不要  最新機能を常に使うことができる  ⼿⼊⼒の削減と⾃動化 

    通帳や明細資料からの⼿動転記をなくす  サービス料⾦体系  無料+⽉額定額課⾦  初期費⽤+アップグレード費⽤  仕訳ビッグデータの蓄積  ⼤量の事業者データを保持 51
  52. クラウド会計ソフトのマーケット概況  オンプレミスでは弥⽣、勘定奉⾏がメインプレイヤー  クラウド会計では「freee」「マネーフォワードクラウド」 が先⾏  オンプレミス製品がクラウド対応を進めてきており 競争が激化している 52

  53. クラウド会計におけるAIの活⽤  ⾃動仕訳  カード明細や銀⾏⼊出⾦から仕訳の費⽬を⾃動化  機械学習による勘定科⽬の推測  帳簿チェック 

    整合性の確認  帳簿残⾼と明細の整合  基準適合性の確認  10万円を超えた場合の消耗品費の計上  ボトルネックの発⾒  申請データの傾向分析 53 https://corp.freee.co.jp/news/freee-aigetsujikannsa-8360.html
  54. クラウド会計ソフトにおける要素技術  ⾃然⾔語処理  請求書や領収書などの証憑書類に記載された「⽇付」「利⽤店 名」「⾦額」「摘要」といった情報をOCRなどの技術を使って ⼿書きや印刷された⽂字からコンピュータが利⽤できるデジタ ルデータに変換する  機械学習の成果を利⽤して、適切な仕訳を⽣成するために最適

    な勘定科⽬の推測を⾏う  単語の出現頻度や対応表の利⽤により、より確度の⾼い勘定科 ⽬を推測する  ⼤規模データ処理  ある程度データ⺟集団が多くなければ、それらの相関を⾒極め るのは難しい  200件の取引データよりも、200,000件の取引データから得られ る分析結果のほうが有意な結果を得やすくなる 54
  55. クラウド会計ソフトにおける要素技術  基礎技術  形態素解析  テキストデータから必要な単語を抽出する  構⽂解析 

    形態素のつながりからテキストの構造を調べ、テキスト全体の構造を解析す る  意味解析  形態素解析や構⽂解析の結果を⽤いてテキストの「意味」を分析する  応⽤技術  頻出する単語や情報を統計的⼿法により抽出するtf-idf (term-frequency inverse document frequency)⼿法  特定の⽂書における出現頻度と多くの⽂書に共通の出現頻度を 組み合わせ、特定の単語がその⽂書の特徴をどの程度表現して いるかどうかを分析する 55
  56. クラウド会計ソフトにおける要素技術  スクレイピングとAPI連携 56 yamada ****** ID PASS 代理ログイン ⼊出⾦データ提供

    クラウド会計ソフト ネットバンキング サービス ID PASS API連携 ⼊出⾦データ提供 クラウド会計ソフト ネットバンキング サービス ログイン情報を 保存する ログイン情報を 保存しない スクレイピング API連携
  57. 経理業務におけるAIの活⽤事例  クラウド会計ソフトの事例  導⼊による合理化  ワークフロー確⽴による⽣産性向上  今後の⽅向性 

    多⾔語展開  多拠点展開  APIサービス連携(経理機能以外) 57
  58. 経理業務におけるAIの活⽤事例  クラウド会計ソフトの事例 58 https://www.freee.co.jp/cases/-/business_houjin/?cond=service_accounting

  59. AIと経理業務(管理会計)の適合性  財務会計に⽐べて適⽤が遅れている領域  今後の適⽤領域拡⼤が期待される  主要な適⽤領域  予算管理 

    事業計画策定  売上予測  与信管理  経営計画策定⽀援 59
  60. 予算実績管理  予算実績管理の要件  計画・予算値と実績値との乖離をタイムリーに把握する  継続的に次の打ち⼿につなげる  財務会計費⽬ごとの実績として、クラウド会計ソフトが保持し ている総勘定元帳データを利⽤可能

     主要な機能  取得した実績値と当初予算を⽐較し、乖離と過去の統計データ に基づき要因仮説を抽出する  予算管理担当者が予算修正の適否を判断する(必要に応じ修正)  AIが仮予算案を設定、修正後仮予算に基づく効果予測を⾏う  必要に応じて修正後予算に対するファイナンス提案を作成する  予算管理担当者はマネジメントに承認された仮予算を本予算と して確定する 60
  61. 予算実績管理  ある予算変数をコントロールするで、売上や利益にどのタイ ミングで影響が出てくるのかの相関を分析  広告宣伝費をn⽉で増額した場合に、そのインパクトが(n+1)⽉ ⽬や(n+2)⽉⽬で売上や利益にどのような影響を及ぼすのか  シミュレーションにあたり機械学習の適⽤可能性がある 61

  62. 売上予測(組織改編との関連)  組織改編に伴う管理変数の変化が、売上や利益といった管理 対象データにどう貢献するかをシミュレートする  売上に関しては異動前の組織または個⼈が持っている⾒込み客 数(リード数、アポ数)に対してどのような相関を⽰すのか分析し 、損益の影響を試算する  メンバーの活動に直接関連するコスト

     部署で管理可能なコスト  部署で管理不能な全社コスト 62
  63. 売上予測(新規事業との関連)  新規事業計画における予測変数  費⽤の変動固定分解  損益分岐点の特定  費⽤の変動固定分解において 

    過去実績データに基づく傾向分析が可能  損益分岐点の特定において  売上⽬標や安全余裕率の想定に基づく分析が可能  その他  その他のリスク係数を折り込んだうえで、より確度の⾼い事業 予算の策定にAIが貢献する  製品ライフサイクルを予測したうえで、次の新サービスを投⼊ するタイミングやそれによる収益貢献予測を⾏う 63
  64. 与信管理  クラウド会計ソフトが保持する取引データの集積を与信判定 に利⽤する  外部サービスに依存しない独⾃のスコアリングを提供可能  相⼿企業の同意のもとに会計データの開⽰を求め、取引データ を共有し、スコアリングを⾏う 

    定量データの共有  過去売上⾼、総資産、キャッシュ・フロー、従業員数  定性データの共有  経営者プロファイル、主要取引先  分析結果の学習に基づき、将来の新規取引先の発⽣において も「業種」「売上規模」「サービス特性」といった変数をも とに簡易なスコアリングを⾼速に⾏う 64
  65. ⽴ち上げフェーズにおける経営計画策定⽀援  事業開始に伴うさまざまな事務⼿続きや資⾦繰りのための対 外的な折衝など、本業に集中することを妨げる要因が⾮常に 多い  事業計画は初期に暫定的に策定された後に定期的な⾒直しが ⾏われることなく形骸化していきがち  AIの活⽤局⾯

     事業⽴ち上げ段階で必要な経営計画の素案をAIの活⽤により作 成し、それらを事業主が加⼯して利⽤できるようにする  経営計画の素案は以下の変数をもとに、過去の経理実績データ からAIが最適値をシミュレーションする  業種、規模、サービス性質、主要KPI、キャッシュ・フロー、従業員数  事業主はこの素案を叩き台として経営計画を作成し、さらに必 要な資⾦調達の規模やタイミングをAIがシミュレーションする ことによって企業がより短い時間で本業にフォーカスすること を⽀援する 65
  66. 4. データサイエンス業務に 進化する経理業務 66

  67. 経理業務の本質とAIの適⽤可能性  データ加⼯業務としての経理業務  ⼊⼒情報  明細データ  証憑類 

    処理情報  伝票起票  仕訳登録  出⼒情報  仕訳  試算表  決算書 67
  68. 経理業務の付加価値とは  社内に散在する情報をとりまとめる  元情報は⾮定型・被構造化・分散保存されている  元情報を定型・構造化・集中保存する  複式簿記のルールに基づいてデータを整理する 

    構造化・集中保存されたデータから仕訳を起票する  定型化された仕訳は容易に起票可能  ⾮定型的な仕訳は専⾨知識をもとに起票する必要がある  ⼀定の形式で判断可能な情報を出⼒する  仕訳帳  総勘定元帳  試算表  決算書  決算書本体  注記 68
  69. 経理業務の付加価値とは  経理業務の付加価値とは情報の加⼯・集計を通じて 情報に付加価値をつけること 69 ⾮構造化 ⾮整形 散在 構造化 整形

    集中 書類 明細 モノ 会話 データ 加⼯・集計
  70. 経理業務の付加価値を⾼めるための要点  正確性  業務習熟度に⽐例する  ダブルチェックによる正確さの確保  信頼性 

    検証を経た数値  相互チェックによる品質確保  ⾼速性  タイムリーな成果物の作成  ⼈間が補完できる領域に注⼒ 70 正確性 信頼性 ⾼速性
  71. 経理業務に求められるスキルセット  ビジネススキル  会計・税務の基本知識  事務処理能⼒  コミュニケーション 

    テクノロジースキル  ITサービスやツールを使いこなせること  プログラミングスキルも推奨される  語学スキル  海外拠点対応  連結決算対応 71
  72. 経理⼈材が今後⽬指すべき⽅向性  ストック型知識からフロー型知識へ  いままで  会計基準(ストック)から知識を得る  ストック型知識を適⽤して判断する 

    これから  会計基準はAIが解釈する(⼀時判断は対応可能)  他社事例、解釈事例など最新情報を検索する(フロー型知識)  フロー型知識を適⽤して実務判断を⾏う 72
  73. データサイエンス会計⼈材とは  今後有望な学問・実務領域として「データサイエンス」が 挙げられるようになった  アカデミックの世界では⼈気も⾼く、多くの企業では優秀な データサイエンティストの採⽤争奪戦になっている  会計領域についてもデータサイエンスの知⾒が⽣かされるよ うになってきた

     “データサイエンス会計⼈材”とは  経理領域でAIを使いこなせる  これまでの会計⼈材に統計・テクノロジーの知識を強化  労働マーケットでの競争⼒を⾼めるものとして期待される 73
  74. データサイエンス会計⼈材に必要な要素  経理業務の基本スキルに加えて以下が必要  セルフスターター  ⾃分で考える、判断できる  情報収集能⼒ 

    ⾃分で情報を集める、解釈する  ディスカッション、コミュニケーション  ⽂化を超えたコミュニケーション機会の増加  AIの基本知識と活⽤⽅法  内部構造を理解していなくても使い⽅がわかる  統計の基本的知識  「常に傍らにAIがいる環境」のなかで 「AIと共存した仕事のあり⽅」が求められる 74
  75. 経理⼈材からデータサイエンス会計⼈材への変⾰  経理財務の領域は伝統的な業務機能だった  今後はAIの⽀援を受けてより合理化を進めることが期待  経理数値という⼤量のデータに業務の視点から「意味」を与 えるという点で、財務経理業務も広義のデータサイエンスと もいえる 

    単純作業をAIに委ねることでむしろ今後ますます創造的な業 務領域になっていく  財務経理担当者は「社内データサイエンティスト」として、 統計やAIに関する基本的な素養が求められる時代が到来 75
  76. 経理⼈材からデータサイエンス会計⼈材への変⾰  データサイエンス会計⼈材のあるべき姿  ストック型知識を継続的に習得している  フロー型知識を積極的に収集することができる  集計作業・⼀時判断をAIに任せつつ実務判断を正確に⾏う 76

    会計⼈材に必要なスキルセットを拡張して AIと共存した仕事のスタイルを確⽴する
  77. データサイエンス会計⼈材の育成プロセス  知識レベルの設定  初級-上級にレベル分け  不⾜スキルと強化ポイントを洗い出す  資格のモデルを参考する 

    勉強会  テクノロジー(特にAI)  AIの利⽤法、使いこなしTIPS  統計の基礎  セルフスターターを⽀援する環境づくり  ⾃由度の⾼さ、アイデア重視)  オーガニック⼈材が成⻑する環境 77
  78. データサイエンス会計⼈材の育成 78 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mirainokyositu/pdf/002_s01_00.pdf

  79.  第四次産業⾰命スキル習得講座  認定講座(第1回) 79 データサイエンス会計⼈材の育成 http://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180110001/20180110001.html

  80.  第四次産業⾰命スキル習得講座  認定講座(第1回) 80 データサイエンス会計⼈材の育成 http://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180110001/20180110001.html

  81.  第四次産業⾰命スキル習得講座  認定講座(第2回) 81 データサイエンス会計⼈材の育成 http://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180725003/20180725003-1.pdf

  82.  第四次産業⾰命スキル習得講座  認定講座(第2回) 82 データサイエンス会計⼈材の育成 http://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180725003/20180725003-1.pdf

  83. 現場での分析⼒の活⽤  技術トレンドを経理部⾨に統合するためにまずやるべきこと  教育担当者のボランティアを募る  “アーリーアダプター”として知⾒を部署で共有する  教育担当者の学習を推奨する 

    Khan Academy/ Udemy/ Coursera  基礎固めを優先する  ブロックチェーン、AIなど基礎知識の習得を優先する  最新技術のリサーチプロジェクトを⽴ち上げる  オープンソースの動画、オンライン学習コース など  グループプロジェクトを課す  スプレッドシートから最新技術に業務をどのように進化させるか 83 https://www.journalofaccountancy.com/newsletters/extra-credit/blockchain-artificial-intelligence-accounting-curriculum.html
  84. 参考: 分析⼒と組織成熟度 84 ダベンポート+ハリス 「分析⼒を武器とする企業」⽇経BP社

  85. まとめ  AIの進化の過程と現在位置  どのように進化して、今どのような状況なのか  経理業務にAIをどのように活⽤しうるか  クラウド会計の台頭による経理業務への影響 

    会計⼈材がAIを活⽤するために何をすべきか  視点の転換 ストック⼈材からフロー⼈材へ  ⼈材育成の⽅向性とは 85