2022.11.05 Scrum Fest Sapporo 2022
SCRUM MASTER'S LANGUAGE言葉遣いこそ最強の武器2022.11.05 Scrum Fest Sapporo 2022
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河野圭一郎(かわのけいいちろう)@kawanotronScrum Alliance®認定スクラムマスター2011年頃よりアジャイルを学び始めるベンチャー企業での自社サービス開発中小企業での受託開発大企業での自社サービス開発を経て2021年秋、星野リゾートに スクラムマスターとして参画ミッションは「星野リゾートのアジャイルをブーストすること」2
星野リゾートは「旅を楽しくする」をテーマに・圧倒的非日常を提供する「星のや」・温泉旅館「界」・自然を体験するリゾート「リゾナーレ」・都市ホテル「OMO(おも)」・ルーズに過ごすカフェホテル「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に国内外60施設(国内56、海外4)を運営しています3
北海道にある星野リゾート界 ポロトリゾナーレトマムOMO7旭川OMO5小樽OMO3札幌すすきの4リゾナーレトマムOMO3札幌すすきの界 ポロト2026年星のやロッジ ニセコ(仮)開業予定
情報システム部門でこういうことやっています● 2チームのスクラムマスター● 2チームのアジャイルコーチ● 情報システムグループ全体の組織開発やプロセス改善● エンジニアチームの支援● 主催する月1勉強会の運営● 外部勉強会参加や自己研鑽5
■ 人を育てる秘訣は、言葉遣いにある■ 背中を押して一歩前進を促す言葉■ ちょっと立ち止まってもらう言葉■ ふりかえりで学びを促す言葉■ スクラムならではの言葉■ 大事なことを伝えるときの言葉■ 逆に言われたい言葉■ みなさんがよく使う言葉をいくつか紹介話すこと6
人を育てる秘訣は、言葉遣いにある7
米海軍で屈指の潜水艦艦長が書いた書籍『LEADER’S LANGUAGE』自分は優秀だと思っていた艦長が、離艦率が最下位の戦艦サンタフェの艦長となり、指示命令で立て直そうとするも失敗。その後、艦長は一歩下がり、一切命令をせず、艦長の意図や目的を乗員に伝え、乗員は艦長からの指示を待たず、どのように成し遂げるかを艦長に伝える、この変更により、使う言葉が少しばかり変わった、、、。最終的にサンタフェは、当艦長がいなくなった後も卓越した成果をあげ続けた。■ 人を育てる秘訣は、言葉遣いにある8
自分が使う言葉を変えることでチームが変わる■ 人を育てる秘訣は、言葉遣いにある9始めるのは私からだ。結局のところ、リーダーシップは言葉から始まる。私が乗員たちとのコミュニケーションで使う言葉を変えると、彼らが私に話しかけてくるときの言葉や、乗員どうしが話す言葉も変わった。話すときに使う言葉が変わると、艦内の文化も変わった。文化が変わったことで、われわれが生み出す成果にも変化が現れた。使う言葉を変えたら、世界が変わったのだ。「文化が大事」と言われるが、どうやって文化を作るのか?その答えの一つが自分が使う言葉を変えること
スクラムマスターの言葉遣いとは(河野調べ)ポイント● 基本的に「問いかけ」、チームに気づいてもらう特に思い込みに気づいてもらう● 評価せず事実を伝える、情報を与える● 選択肢を提示するだけ、選択するのはチーム自分で選択できることが自律に繋がる● システム1の思考からシステム2の思考になるよう促す■ 人を育てる秘訣は、言葉遣いにある10
システム1とシステム2の思考システム1(速い思考)感情や本能、バイアス、思い込みで判断する瞬時に判断できるので危険回避に有効短絡的に判断するので誤った判断となることがあるシステム2(遅い思考)合理的で、熟考する、様々な角度から考える複雑で難解な問題にはこちらが有効意図的に呼び起さないと使えない、時間がかかる11
背中を押して一歩前進を促す言葉12
チームの主体性を伸ばすためにチームの【Want】を後押しするチームが前進できないときは何かしらの迷いや思い込みがある進みたいという気持ちはあっても一歩踏み出すことができない背中を押してあげることで勇気を持って前に進める■ 背中を押して一歩前進を促す言葉13
「全部揃わないと進めない、本当にそうですか?」準備が万全でないと前に進めないと思い込んでいる人は多い「例えば〇〇だけでやってみることはできないですか?」と続けて問いかけることでリフレーミングを促すよくあるのが会議は全員が出席するという思い込みスケジュール調整だけで数日かけるのは投資対効果が低い事前準備や議事録などをうまく使って参加できる人だけで実施できないか検討してもらう■ 背中を押して一歩前進を促す言葉14
■ 背中を押して一歩前進を促す言葉「〇〇どうなってますか?」「これ放置してて大丈夫ですか?」目の前のタスクに追われて大事なタスクが忘れられてるときやらないといけないのに逃げてしまっているとき「やりなさい」という指示ではなく「どうしてできてないの?」という詰問でもなく情報を与えることで自ら考えてもらう進捗していない/放置しているという事実だけを伝える15
「みんなはどう思ってるんですかね?」チームのみんながいるのに独りで考え込んでいるとき独りで答えを出さないといけないという思い込みがある独りで考えても出ない答えはみんなで考えるそもそもチームの課題として認識してもらうチームで考えれば多角的に捉えることができて解決に繋がる■ 背中を押して一歩前進を促す言葉16
「この沈黙はなんなんですかね?w」好奇心を持って明るく問いかける沈黙は悪いことではない、独りで考え込んでいるということただ、独りで考えていては前進できないこともある「今どういうことを考えてるんですか?」とか「悩んでることは何ですか?」と問いかける独りで考えていることを口に出してもらいみんなで考えることで一歩前進できる■ 背中を押して一歩前進を促す言葉17
「前進できそうですか?」「前進するにはどうしたらいいと思いますか?」単刀直入に聞いてしまう■ 背中を押して一歩前進を促す言葉18
「前はうまくいかなかったけど、あれから 成長してるし、もう一回やってみない?」前やってうまくいかないとあきらめたことに再挑戦してもらうチームの成長あってこそこの言葉が使えるスクラムマスター冥利に尽きる■ 背中を押して一歩前進を促す言葉19
「なんでもいい」「自由に」前進を阻害するのでこの言葉は使わない範囲が広くなり認知負荷が高く思考がオーバーフローするある程度範囲を限定できるように支援する「今すぐできることは何ですか?」(時間を限定)「あっさりとこってりどっちがいい?」(カテゴリを限定)■ 背中を押して一歩前進を促す言葉20
ちょっと立ち止まってもらう言葉21
人は続けてしまうこのままではまずいかもと思っていても続けてしまうかつて、言われたことを続けることが正しいとされていた大量生産大量消費の時代は同じものを作り続けていた変化の多いVUCAの時代において続けることはリスク適宜立ち止まって進路が今の状況に合っているか確認する■ ちょっと立ち止まってもらう言葉22中断のためにアジャイル手法を活用する書籍『LEADER’S LANGUAGE』ではアジャイルも取り上げられている中断は大事、スプリントによってリズムよく中断が行われる、という話
「気になることはありますか?」「問題はあるか?」だと本当に問題になってから報告になるまた、ネガティブな報告はしたがらない問題が大きくなってから対応するのは大変できれば、小さい内に、問題になる前に検知したい現場からのアラートを出しやすくするための問いかけ■ ちょっと立ち止まってもらう言葉23
「『がんばります!』で出来ますかね?」ついつい精神論になりがち(自信過剰バイアス)「頑張りますじゃダメだろ」と評価するのではなくしっかり考えてもらうように問いかける考えた結果できると言うならやってもらう→コミットメント■ ちょっと立ち止まってもらう言葉24
「楽観的に見てませんか?実際どうですか?」ついつい楽観的に考えがち(楽観バイアス)もうちょっとだけ考えてもらうために問いかける■ ちょっと立ち止まってもらう言葉25
「今のまま進めて大丈夫ですか?」客観的に見ていて危なっかしいときの問いかけチームを見ていてこれまずいぞと不安になることもあるそういうときに鬼気迫る感じで詰問しない「こういうことが気になるんだけど」とこちらの意見を伝えるチームに見えていないものがあることを伝えた上で大丈夫かどうかの判断はチームに委ねる■ ちょっと立ち止まってもらう言葉26
「むきなおりします?」人は続けてしまう、惰性でやってしまいがち現状にもやもやしてても続けてしまうチームがもやもやしてるなと感じたらむきなおりを提案する■ ちょっと立ち止まってもらう言葉27むきなおり一旦立ち止まって進む方向(やり方)を変えることむきなおりした結果そのままでということもあるがそれはそれでもやもやがなくなってすっきりできる
ふりかえりで学びを促す言葉28
スクラムマスターがふりかえりのファシリテーターをしてもしなくても、参加者として問いかけをすることでチームの学びを促すことができるふりかえりのファシリテーターに慣れてない時はこれらの問いかけを使うところから始めると良さそう■ ふりかえりで学びを促す言葉29
「具体的にはどういうことですか?」「〇〇が良かった」のような抽象的な話が出てきがち掘り下げて本質を理解するために具体例を挙げてもらう■ ふりかえりで学びを促す言葉30
「どうしてそうなったと思いますか?」要因を掘り下げる問いかけうまくいかなかったときに使いがちだけどうまくいったときにも使えるどういう行動や考え方をするとうまくいくのか?うまくいかないのか?を学ぶ■ ふりかえりで学びを促す言葉31
「次に同じことがあったらどうしますか?」思考実験を促すことで学びを得る思考実験なので理想をイメージしてもらうのもいい理想に近づくにはどうしたらいいか?など盛り上げられる■ ふりかえりで学びを促す言葉32
「〇〇さんがいないとしたらどうでしたか?」〇〇さんすごいという属人的な話で終わってしまいがち〇〇さんになることはできないが〇〇さんがやっているコトは真似ができる(再現性)ヒトよりもコトに、個人ではなく過程に意識を向ける〇〇さんにできたコトが他の人でもできるようになるには?と脱属人化を促す■ ふりかえりで学びを促す言葉33
「他の人はどう思ってました?」特定の個人の話だけで終わらせてしまわないように他の人を巻き込む問いかけ当事者と他の人とで認識が同じとは限らないお互いの認識のズレを顕在化させることで情報の非対称性をなくしつつ、当事者の視座を高める■ ふりかえりで学びを促す言葉34
「ここから学べることは何かありますか?」単刀直入に聞いてしまう■ ふりかえりで学びを促す言葉35
スクラムならではの言葉36
スクラムで大事なことは、スクラム以外でも大事ここまではスクラムではなくても使える言葉だったここではスクラムならではの言葉を扱う■ スクラムならではの言葉37
「スクラムガイドにはこう書いてますね」こうあるべき/こうしなければならないとは言わないスクラムガイドに従う必要もない選択肢の一つとしてスクラムの知識をティーチングする同じように「アジャイル界隈では~」とか「〇〇という人もいますね」と選択肢を提供する■ スクラムならではの言葉38
「優先順位順に並んでますか?」優先順位はどんな仕事においても重要だがスクラムは特に優先順位を重視している口すっぱく優先順位を意識しているか問いかけるバックログはもちろん、会議のアジェンダも、食べ放題も■ スクラムならではの言葉39
「そのバックログアイテム分割できませんか?」これ以上分割できないと思い込んでいることがあるその思い込みをなくすために違う角度や切り口はないか問うチームの熟練度に合わせて「こういうやり方で分割できますか?」と提案してみる「こうすれば分割できる」と言わないチームが考えるプロセスを必ず入れる■ スクラムならではの言葉40
「顧客にとっての価値ってなんですかね?」チームは目先のことに集中して近視眼的になりがちあらためて顧客価値を考えてもらい視座を高める複数の案で迷っているときなど顧客価値を判断基準にすることができる■ スクラムならではの言葉41
「チケットのカテゴリーが未設定ですよ」以前、サーバントリーダーシップとはチームが集中できるように雑務をすることだと考えていたチームで取り決めた運用ルールが守られていないときに「こちらでやっておきました」と手を動かしていたそれだといつまで経ってもチームがやらないまま真のリーダーは、細かいことを気にするが事実を伝えるだけ実際に手を動かすのはチームに委ねる■ スクラムならではの言葉42
「スプリントゴールに対してどうですか?」ゴールに向かって順調かどうかを問いかける順調でないならその原因を掘り下げて改善していく極論、スクラムマスターはこれだけ言ってれば十分チームが常にゴールを意識してくれるようになってこの問いかけをしなくてよくなるのが理想ただ、チームは目先のものに集中してゴールを見失うのでそういうときに思い出してもらうように問いかける■ スクラムならではの言葉43
大事なことを伝えるときの言葉44
大事だと思っていることをチームへ伝えるときの言葉そもそも黙っていたら伝わらない多様性の時代で「察してくれ」は通用しない一度伝えても十分に伝わるとは限らない大事なことは何度も何度も伝える■ 大事なことを伝えるときの言葉45
「私たち/チームにとってどうですか?」うまくいかないときや追いつめられて余裕がなくなるとどうしても個人の視点になりがち、意識が内側に向く主語を「私たち」や「チーム」にしてあげることで内側ではなく外側に意識を向ける■ 大事なことを伝えるときの言葉46
「線を引くこと大事、その上で越境するの大事」モノゴトの間に線を引くことでその役割や責務が明確になるしかし、線を引くと線を越えてはいけないと思い込んでしまう線を引きながらも、その線を越えることで役割や責務を明確にしたまま協働することができる垣根を越えてつながる■ 大事なことを伝えるときの言葉47
「やらないことを決めるの大事」いろんな問題の原因となるのが【欲張り過ぎ】リーン思考やマインドフルネス、ストア哲学など欲張らないことがうまくいくコツという考え方やらないことを決めることでうまくいくことはたくさんある開発スコープしかり、会議中の話題しかり、勉強しかりインセプションデッキにも「やらないことリスト」がある■ 大事なことを伝えるときの言葉48
「ねばならないってどういうことですか?」ねばらないという言葉を使っているときは何か思い込みがある「ねばならない」はイラショナル・ビリーフというバイアスその思い込みを手放すことでより良い気づきが得られる■ 大事なことを伝えるときの言葉49
「私も学びになりました」リーダーやスクラムマスターは偉い人ではない上下関係を作らないためにも一緒に学んでいるという姿勢を見てもらうチームから学ぶこともいっぱいある学んだら学んだときに学びになったと口にする■ 大事なことを伝えるときの言葉50
逆に言われたい言葉51
老子曰く「最も理想的な指導者は誰からも意識されない存在」スクラムマスターの活動の効果が目に見えることはあまりないチームが使う言葉からその効果を検証する■ 逆に言われたい言葉52
「スクラムマスターさんにいて欲しい」そこにいることで何かしら効果が得られるから出てくる言葉「どうしていて欲しいんですか?」と深堀することでどういう効果を期待してくれているのかがわかる実際によく言われるのが「客観的に俯瞰して見てくれる」■ 逆に言われたい言葉53
「スクラムマスターさんいなくても大丈夫」逆に、成熟してきたタイミングで言ってもらえるとチームが自律してきているということ常にいらないということではないどうしてもイベントに参加できないときなどの話「私たちでなんとかします」って言ってもらえるとうれしい■ 逆に言われたい言葉54
「腹落ちしました」「納得です」説明責任をしっかり果たせているときにもらえる言葉Why を相手が理解できるように伝えられているからこそ逆にこの言葉が出てこないときは言われたからやるになっているかも二つ返事で「わかりました」は要注意かも■ 逆に言われたい言葉55
「やったことがないのでやりたいです」主体性がないと出てこない言葉チャレンジしてみたいという心の現れ失敗ができる環境にあり心理的安全性が高いしっかりエンパワーメントできているということ■ 逆に言われたい言葉56
「ふりかえりでもありましたが~」ふりかえりがしっかり機能しているということふりかえり直後のプランニングでこの言葉が出てきたらふりかえりで学んだことがすぐに活かせているもしくは、数日後に「あのときのふりかえりで~」とあればふりかえりがその場限りになっていないということ■ 逆に言われたい言葉57
「今のアジャイルっぽい」チームがアジャイルになっているということ何がアジャイルかを理解していて自分たちがやっていることを俯瞰していないと出てこない言葉■ 逆に言われたい言葉58
チームがスクラムマスターの言葉を使い始めるチームに先に発言させて、最後に口を開くようにするとその内、チームがスクラムマスターの言葉を使い始める■ 逆に言われたい言葉59リーダーは最後に口を開く考えを押しつけず関心を示すという姿勢には、自分の発言は後回しにすることも含まれる。社員は立場が上の人と意見を合わせようとするものなので、社内での立場が高い人ほど、この姿勢を忘れてはならない。最後に口を開くのは、リーダーの威厳を証明するためではない。ほかの人々に自由に発言させるためである。
みなさんがよく使う言葉をいくつか紹介60
みなさんがよく使う言葉を discord に投げてもらえますか?お互いに共有し合えたらいいなと思います■ みなさんがよく使う言葉をいくつか紹介61
ご清聴ありがとうございました62