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IFLA図書館参照モデル輪読会資料 4.1.3 / IFLA LRM 4.1.3

Masao Takaku
September 26, 2020

IFLA図書館参照モデル輪読会資料 4.1.3 / IFLA LRM 4.1.3

2020年9月26日(土)
情報組織化研究グループ勉強会
『IFLA図書館参照モデル』輪読会
担当箇所: 第4章 4.1.3節 実体定義の詳細

Masao Takaku

September 26, 2020
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Transcript

  1. 1 2020 年 9 月 26 日(土) 『IFLA 図書館参照モデル』輪読会 高久雅生(筑波大学)

    担当範囲:第 4 章 4.1.3 節 実体定義の詳細(後半) 今回の担当範囲では、第 2 グループ実体(行為主体、個人、集合的行為主体)と Nomen 実体、場所・時間間隔実体を扱う。 ※4 年ほど前に、当時の FRBR LRM と呼ばれていた時代に、FRBR&RDA 勉強会(現・ データモデル勉強会)にて今回の担当箇所を読んだ際のメモを一部利用している。 LRM-E6 行為主体(Agent) 個人(Person)と集合的行為主体(Collective Agent)を包含するスーパークラス(親クラ ス)として振る舞うエンティティ。 - オントロジー的に階層関係を記述して、属性定義や定義域・値域を継承して扱えるよう にするために、新たに導入された。 - 意図した行為を行える主体、アクセス権利などを付与されうる主体、著作などに責任を 負える主体として定義されている。 - FRBR における第 2 グループ実体と同様、WEMI との関連において、さまざまに関連付 けられることを想定して用いる(著作、翻訳、出版、所蔵など) 。 - 「ヒト」の介在を想定している:ソフトウェアプログラムや装置の類を「エージェント (Agent)」と称する場合もあるが、この実体については純粋にそのプログラムの背後で 意図をもってそのプログラム/装置を実行しているヒトを指し示す。 ※コメント※ (そもそも IFLA LRM 全体を通じて、英語が酷い…。 ) 行為主体(Agent)は、これまでの FRBR/FRAD/FRSAD ファミリーには存在しなかった 実体であり、 どのような実装を想定しているのかわかりづらい側面が否めない (もしくは、 特定の実装モデルに依拠しすぎている感もある) 。また、正直に「モデルの冗長さを縮小す るため」 との説明が付されており、 オントロジー記述の簡潔さを優先しているきらいが感じ られる。 個人(Person)実体においても触れるが、ヒト/人類の介在を前提としていて、その前提 がなぜ/何に由来するのか説明されていない。現実に、ヒト以外の架空の人物などを扱う名 称典拠は数多く作られている。例えば、初音ミク、上田次郎、コバトン、くまモン、神武天 皇等々。
  2. 2 LRM-E7 個人(Person) 個々のヒトを示す実体。 - 実在する、存命の人物または過去に生きていたとされる人物に限定 - 厳密な存在証明は不要だが、一般に歴史上の知られているものも許容される。しかし ながら、架空の人物、文学上の人物、伝説上の人物は個人実体のインスタンスとはな らない。

    ※コメント※ なぜ実在性を強く仮定した実体としているのか?(同上…) LRM-E8 集合的行為主体(Collective agent) 特定の名称をもつこと、 ひとつの単位として振る舞うことを前提とした、 人の集まりまたは 組織を指す。 - 例えば、 家族、 会社、 営利団体、 その他の法人格をもつ団体に加えて、 任意団体や協会、 音楽グループ、アート集団、演劇団体、政府機関、その他の下部組織を含む。 - 集合的行為主体における構成員は時間とともに変わっていくこともある。 - 共同筆名や集合筆名は、その筆名が社会的・文化的には個人実体とみなされるものだっ たとしても、集合的行為主体のインスタンスへの参照を表現する Nomen 実体となる。 さらに、 この共同筆名の背後にある集合的行為主体実体は複数の個人実体から構成され る。 - 書誌的な関心をもつ実体(WEMI)のインスタンスに対して活動を行うときにのみ、集 合的行為主体とみなされうる。 - また、単なるひとの集まりとの本質的な違いは、特定の(固有の)名称を持つこと。 ※コメント※ 共同筆名に関する注記などは、FRBR LRM から IFLA LRM への移行時に追記された新し い記載。全世界レビューの結果を受けて追加されたと思われる。同様に、5.5 節など、関連 する実装(典拠ファイルや関連関係における扱い)に関する詳細な説明も加わっている。 LRM-E9 Nomen 実体と実体を指し示す名称(designation)との結びつき。 - 他のすべての実体に対応する呼称(appellation)とその実体を結びつける。任意の実体 は必ず一つの Nomen を通して名付けられる。 - 文字列単体では呼称とはみなされず、 特定の文脈で他の実体と結び付けられることで呼 称とみなされる。Nomen 実体は、res のインスタンスと文字列との関連の具現化として 理解できる。Nomen 実体のインスタンスとはならないが、Nomen 実体がもつ nomen string(nomen 文字列)という属性の値としてモデル化される。 - 同一の Nomen 文字列を持つ複数の Nomen 実体インスタンスは、指示する実体先が違
  3. 3 ったり、Nomen 属性が異なったりするものであれば、別個のものとして両立しうる。 - Nomen の役割:同一の呼称を持つ別々のもの同士を区別する(多義語・同形同音異義 語) 、異なる呼称が同一の実体インスタンスに対応することを指示する(同義語) - Nomen

    文字列の構造:対象となる実体によっては、呼称が、あらかじめ決められた規 則を持つ場合がある(識別子、アクセスポイント、日付の呼称など) 。 ※コメント※ Nomen は、LRM のなかでの取り扱い、概念そのものが難しい実体の一つ。FRBR LRM のときは単なる「名称」と定義されていたものから、 「結びつき (association)」なる概念に 変更されており、さらに難解さが増している。この難解さの一番の理由は、まったく異なる スキーマの文字列を Nomen なる実体に押し込めている難しさから来ていると思われる。 ス コープノートにもある通り、 呼称とそれの対応する実体との結びつきだけでなく、 その周辺 の様々な文脈やスキーマの中で全く異なる意味を持つ文字列に Nomen という実体を与え ることの難しさが噴出しているように感じられる。 以下のようなものは Nomen 実体の属性 LRM-E9-A3(スキーマ)や LRM-E9-A5(使用の文脈)といった周辺情報を与えることで 初めて扱えるようになる。 恐らく実際に計算機システム等で実装する際には、 これらを区別 するために別個のモデル化を行うのではないかと思われる。  典拠形アクセスポイント、異形アクセスポイント  識別子  人物の名前、別称 LRM-E10 場所(Place) 空間の一定の範囲。 - 一定の地理的な領域や空間の範囲について、ひとが識別したもの。 - 場所実体は、物理的な物(地理的な特徴や人工物)または地政学的な実体(国や都市な ど) 、出来事の場所として識別される。 - 同時代的な場所、歴史的な場所、地球上の場所、地球外の場所として設定されうる。た だし、 想像上の場所、 架空の場所については場所実体のインスタンスとしては扱わない。 - 場所実体の境界は曖昧で、時間とともに変動しうる。そのため、場所実体は地理空間上 の座標のみでは識別できない。 ※コメント※ 日本語訳定義の「一定の範囲 (given extent)」は、書誌的世界の範囲に責任を持つものが 指定した、与えられた(所与の)範囲と考えたほうが理解しやすい気がする。 個人実体などと同様、なぜ「実在の」場所に限定しているのかは不明(架空の場所は res 実体が概念として扱うだけでよいから???) 。
  4. 4 LRM-E11 時間間隔(Time-span) 始まりと終わり、長さ(期間)を持つ時間的な範囲。 - 図書館における実装では、時間間隔実体のインスタンスは、年を単位として表現される ことが多い(個人の生年・没年、企業団体の存続期間、ある体現形の出版年など) 。 - 時間間隔の精度は、

    目録作成者が利用できる情報や時間的な特性そのものから影響を受 ける (記述対象に応じて、 ”14 世紀”という記述だけで十分なこともあれば、 ”1970 年代” という記述でよいこともある) 。 - 日付の暦制度や時間管理に応じた記述は、時間間隔実体に対する Nomen を通じて提供 される。また、時間間隔は一般的な用語で参照することもできる(時代、地質年代、世 紀) 。 ※コメント※ 時間間隔は単一もしくは複数の「年」として扱うことが一般的であるため、他の実体に比 べれば相対的には単純な実体。ただし、年以外の表現で扱う場合は、Nomen とその表記規 則を関連付けて記録する形になり、一見するとわかりづらい例が提示されている。 以下、参考までに、関連する実体群の Transition Mapping での構成を示しておく: FRBR FRAD FRSAD 対応 IFLA LRM ― ― ― 新設 Agent (LRM-E6) An entity capable of deliberate actions, of being granted rights, and of being held accountable for its actions Person An individual Person An individual or a persona or identity established or adopted by an individual or group ― 継続 (FRBR から) Person (LRM-E7) An individual human being ― ― ― 新設 Collective Agent (LRM-E8) A gathering or organization of persons bearing a particular name and capable of acting as a unit
  5. 5 ― Family Two or more persons related by birth,

    marriage, adoption, civil union, or similar legal status, or who otherwise present themselves as a family ― 廃止 (Collecti ve Agent のサブク ラスへ) ― Corporate Body An organization or group of individuals and/or organizations acting as a unit Corporate Body An organization or group of persons and/or organizations identified by a particular name acting as a unit ― 廃止 (Collecti ve Agent のサブク ラスへ) ― Concept An abstract notion or idea Concept (FRBR と同一) ― 廃止 ― Object A material thing Object (as FRBR) Object (FBRR と同一) ― 廃止 ― Event An action or occurrence Event (FRBR と同一) ― 廃止 ― Place A location Place (FRBR と同一) ― 再定義 Place (LRM-E10) A given extent of space ― ― ― 新規 Time-span (LRM-E11) A temporal extent having a beginning, an end and a duration
  6. 6 ― Name A character, word, or group of words

    and/or characters by which an entity is known Nomen any sign or sequence of signs (alphanumeric characters, symbols, sound, etc.) that a thema is known by, referred to, or addressed as 併合 Nomen (LRM-E9) An association between an entity and a designation that refers to it ― Identifier A number, code, word, phrase, logo, device, etc., that is associated with an entity, and serves to differentiate that entity from other entities within the domain in which the identifier is assigned ― 廃止 (Nomen のサブク ラスへ) ― ― Controlled Access Point ― 廃止 (Nomen のサブク ラスへ) ―