2022.09.17 Scrum Fest Mikawa 2022 CLUE 15:00-15:45
Proposal https://confengine.com/conferences/scrum-fest-mikawa-2022/proposal/17037/okr
1OKRはツリーではない株式会社ナビタイムジャパン 小田中2022.09.17
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小田中 育生 (おだなか いくお)(株)ナビタイムジャパンVP of EngineeringACTS(研究開発) ルートグループ責任者経路探索の研究開発部門責任者としてGPGPUを活用した超高速エンジンやMaaS時代にフィットしたマルチモーダル経路探索の開発を推進移動体験のアップデートに携わりながら、VPoEとしてアジャイル開発の導入推進、支援を行う。2019年からOKRをチームに導入し、2022年現在では社内で導入推進を行っている。著書「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」インプレス2
Learning Outcome3• ツリー構造に縛られない、本来のOKRの姿を取り戻す• なぜツリー構造に向かってしまうのか傾向を知る
4•[前半]小田中のOKRジャーニー•[後半] OKRはツリーではないということの深掘り
5•[前半]小田中のOKRジャーニー•[後半] OKRはツリーではないということの深掘り
6OKRとScrum
OKR
ObjectivesとKey Results• Objectives• 目標• 自分は何を目指したいのか、という問いに対する答え• Key Results• 成果指標• 目標までの到達度を測定するものアンドリュー・S・グローブ(1983) HIGH OUTPUT MANAGEMENT 日経BP およびGoogle re:Workに記載の定義に基づく
OKRを組織に循環させる手段• Conversation(対話)• Feedback(フィードバック)• Recognition(承認)ジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社CFR
スクラムプロダクトゴールスプリントプランニングスプリントレビュースプリントレトロスペクティブデイリースクラムプロダクトオーナーメンバースクラムマスター
スクラムの三本柱透明性検査適応
スクラムの5つの価値基準
13OKR-based Scrum Team
エフェクチュエーションとコーゼーション14“エフェクチュエーションは、未来は予測不能であるという前提のもと、所与の資源や手段を用いて、結果を創り出していくことに重きを置くアプローチである。 ”“市場環境の大きな変化を想定せず、未来を予測し目標を立ててバックキャスティング的に行われる「コーゼーション」と呼ばれるアプローチ”グロービス経営大学院MBA用語集より
検査と適応を繰り返していくスクラムはエフェクチュエーションの性質をもつ15透明性検査適応
検査と適応を繰り返す中で起こるプロダクトゴールからの逸脱16プロダクトゴールインクリメント
Objectivesに向かっていくOKRはコーゼーションの性質をもつ17OKRKRKR
KRと向き合う中で学習したことをObjectivesにも反映させたい18OKRKRKR
2つのアプローチを融合させゴールに向かう・変化するを両立19プロダクトゴールOKR KRインクリメント
20OKRツリー
OKRの説明でよく出てくるOKRツリー21Agile Tech Expo Episode 1 OKR-based Scrum Teamより
全体の方向性をあわせることに対しては一定の効果を実感22O KRKRO KRO KRO KRO KRO KR
ツリー構造でつなぐことが難しいケースの存在23O KRKRO KRO KRO KRO KRO KR
難しいケースの例24O KR O KRO KRバーティカルSaaSとして認知度No.1になる検索ランキング1位顧客向けWebサイト開発チームUX改善チーム設定しやすい設定しづらい
OKRが設定しづらいことによる弊害25• OKR設定のコストが高い• 一見してつながりが希薄であるため、組織にもメンバーにも丁寧な説明が必要になる• 進捗しづらい• 関連がわかりづらいOKRになるため優先順位が上がりづらい
KRはOの射程を全てカバーしてはいないO(上位)の射程KR(上位)の射程
上位のOとは関連しているがKRとは関連していない下位のOが存在し得るO(上位)の射程KR(上位)の射程O(下位)の射程KR(下位)の射程O(下位)の射程KR(下位)の射程O(下位)の射程KR(下位)の射程
がんばってツリーにしようとしすぎる問題28O KRKRO KRO KRO KRO KRO KRこのKRはこっちのOにも関連してそうだな・・・重複するからなんとかして分割しないと
がんばってツリーにしようとしすぎる弊害29• 複数のOに作用するKRをどのOにつけるか、という不毛な議論に時間がとられる• クラウドのインフラコスト削減、UX改善のどちらにも寄与するレスポンスタイム高速化。どちらのOにつけるべき?• 越境する余白が生まれない• 厳密なツリーになっているとチーム間で連携する必要はなくなる• 自分のチームのOKRにだけまなざしを注ぐ力学が働く
悩んでいるときに出会った一冊の本長坂 一郎(2015) クリストファー・アレグザンダーの思考の軌跡ーデザイン行為の意味を問う彰国社“(~前略)この分割過程を見れば、その木の枝がいったん分かれた後にまた交わっているから、これはツリー構造ではないことがわかる。アレグザンダーはこの論文の中で、このようなツリー構造ではない構造のことを「セミ・ラティス」と名付けている。”
自分は、ツリーではないものをツリーとして扱っていたのではないかO(上位)の射程KR(上位)の射程O(下位)の射程KR(下位)の射程O(下位)の射程KR(下位)の射程O(下位)の射程KR(下位)の射程
「それは直属の上司のOKRとは一致しないかもしれないが、ゼネラルマネジャーの設定した全社的目標とは一致する。」「うまく機能している組織では、トップダウンとボトムアップの目標、すなわちアラインメントされたOKRとアラインメントされていないOKRの関係が自在に変化する。」ジョン・ドーアいわくジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社
OKRツリー構造にこだわらない33O KRKRO KRO KRO KRO KRKRO KRO
肝心なのはObjectivesの達成に向かうこと• Objectives• 目標• 自分は何を目指したいのか、という問いに対する答え• Key Results• 成果指標• 目標までの到達度を測定するものアンドリュー・S・グローブ(1983) HIGH OUTPUT MANAGEMENT 日経BP およびGoogle re:Workに記載の定義に基づく
ただ、ツリー構造から脱却することは決して簡単ではない35O KRKRO KRO KRO KRO KRKRO KRO
ツリーで分割されているならチームは自チームのOKRとだけ向き合えばよい36OKR KR
スクラムチームのインクリメントと突き合わせるスコープが広がり複雑化する37OKR KR
OKRを組織に循環させる手段• Conversation(対話)• Feedback(フィードバック)• Recognition(承認)これまで以上にCFRが重要になるジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社
CFRを機能させるために試したこと39インセプションデッキをもとにしたOKRのすりあわせ毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション 1on1C F R
求められていることと自分たちのMVVをアラインメントする40インセプションデッキをもとにしたOKRのすりあわせ毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション 1on1C F R上部構造のOKRとインセプションデッキを突き合わせ求められていることとやりたいことのスイートスポットを探索する
OKRを自分たちのリズムにのせる41インセプションデッキをもとにしたOKRのすりあわせ毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション 1on1C F ROKRの進捗がなくてもスキップしない「進捗がない」という情報を共有するうまくいったことを称えるお互いの工夫を共有する
個人の視点からOKRをまなざしともに課題を乗り越える42インセプションデッキをもとにしたOKRのすりあわせ毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション 1on1C F Rチームで集まる場では表明しづらい懸念点の共有個人を評価する場ではなく課題を共有し解決に向かう場である、という点は周知し強調しておく
43OKR KRチーム内外でのCFRを設計しOKRを行き渡らせる
ツリーから脱却して起きた変化44• 組織目線: より組織の目標に直接的にコミットすることになった• 個人目線: 上から降ってくる目標へのアラインメントだけではなく自分たちのMVVから自発的な目標をたてられるようになった• 横のつながり目線: 目標を分割せず共有することで必然的にコミュニケーションをとる機会が増えた
私の中で変化したOKR観• 実施前• ありたい姿を目指し高い目標に勇気をもって向かう仕組み• ツリー構造で強力にアラインメントされる• CFRを活用するとOKRを機能させやすい• 実施後• ありたい姿を目指し高い目標に勇気をもって向かう仕組み• OKRはツリーではない• CFRはOKRを最大限機能させるために必須
46Re: OKRツリー
OKRを始めてから4年社内でもOKR採用事例が増えてきた
私が属する研究開発部門でも全面的に導入研究開発部門全体ルートグループ2019年時点でのOKR導入範囲2022年現在のOKR導入範囲
「理解と納得を前提として導入したい」との責任者の意向で1年がかりで導入研究開発部門全体ルートグループ hogeグループ fugaグループチーム チーム チーム チーム チーム チームメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバーメンバー説明会の実施、段階的導入で徐々に浸透
先行者として相談を受ける中での一幕私「OKRを導入して少し経ちますが、どんなことに課題を感じていますか」相談者「そうですね、全体のOKRを自分のチームのOKRに落とし込むところで苦労しています」
先行者として相談を受ける中での一幕私「OKRを導入して少し経ちますが、どんなことに課題を感じていますか」相談者「そうですね、全体のOKRを自分のチームのOKRに落とし込むところで苦労しています」私「ふむふむ」相談者「ツリーにするのが難しいんですよねー」
先行者として相談を受ける中での一幕私「OKRを導入して少し経ちますが、どんなことに課題を感じていますか」相談者「そうですね、全体のOKRを自分のチームのOKRに落とし込むところで苦労しています」私「ふむふむ」相談者「ツリーにするのが難しいんですよねー」私「あ、OKRって別にツリーじゃなくていいんですよ」相談者「えっ」
全体のOKRとアラインメントしようという動き自体は、あって良い53O KRKRO KRO KRO KRO KRO KR
「それは直属の上司のOKRとは一致しないかもしれないが、ゼネラルマネジャーの設定した全社的目標とは一致する」「健全なOKR環境では、アラインメントと自律性、共通の目標と自由のバランスが取れている。」でも、OKRが機能するのはツリー構造の上だけではないジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社
55人はなぜ、ツリー構造へと向かうのだろうか
56•[前半]小田中のOKRジャーニー•[後半] OKRはツリーではないということの深掘り
何がわれわれをツリーへと誘うのか• OKRに対する現場の悩みから考える• OKRをとりまく環境から考える• 私達の世界理解から考える
OKRに対する現場の悩みから考えるQ.「チームのOKRを個人OKRに落とし込むとき、どうやるのがいいですか」
Q.「チームのOKRを個人OKRに落とし込むとき、どうやるのがいいですか」A.「チームとしての目標はチーム全体で追いかけてほしいので、共同で持つようにすることをおすすめしています」OKRに対する現場の悩みから考える
チームのOKRを共同で持つ、の図61O KRKRチーム メンバー
Q.「チームのOKRを個人OKRに落とし込むとき、どうやるのがいいですか」A.「チームとしての目標はチーム全体で追いかけてほしいので、共同で持つようにすることをおすすめしています」Q.「それだと個人がどう貢献しているかわかりづらくないですか」OKRに対する現場の悩みから考える
個人を評価しよう、となったときに貢献を定量的に知りたいという動機が生まれる63O KRKRチーム メンバー 評価者
OKRはツリーであるという認識65「OKR」でGoogle画像検索をした結果のスクリーンショット(2022.09.02.15:18)
私達の認識の仕方“それでは、モダニストたちはなぜツリー構造を持つ都市を計画したのであろうか。アレグザンダーの答えは、「私たちの認識の仕方が、そもそもそのようになっているからだ」というものであった。”“私たちが一度にイメージできるものごとの数には限りがある。そして、同じものごとをセミ・ラティス構造としてイメージするよりもツリー構造としてイメージするほうが、簡単にできる。”長坂 一郎(2015) クリストファー・アレグザンダーの思考の軌跡ーデザイン行為の意味を問う彰国社
明証性、分析、総合、枚挙デカルト、谷川多佳子(翻訳)(1997) 方法序説(岩波文庫) 岩波書店“第一は、私が明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないことだった。~中略~第二は、わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。第三は、私の思考を順序に従って導くこと。~中略~そして最後は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。”
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive漏れなく・重複がないことを示す概念MECEMECEじゃない MECE MECEじゃない
ロジックツリーMECEMECE
71効率的に物事を捉え効率的に何かを進めるために私たちはツリーで考える
では、ツリーではない構造で物事を捉えることはやるべきではない?72O KRKRO KRO KRO KRO KRKRO KRO
粗っぽさ“「生命」を持っているものには、必ず何らかの形態的な「粗っぽさ」があります。これは偶然ではありません。技術文化の低さのためでも、手づくりであるためでも、不正確さのためでもありません。それは、ものが「全体性」を持つとき、避けることのできない、本質的な構造の特徴なのです。”クリストファー・アレグザンダー、中埜 博(翻訳)(2013) ザ・ネイチャー・オブ・オーダー建築の美学と世界の本質 生命の現象 鹿島出版会
人間が集まり、人間が掲げたビジョンに向かう組織はキレイなツリーではない74O KRKRO KRO KRO KRO KRKRO KRO
そもそも、組織内のコミュニケーションはツリーではない組織はツリーではない – Jim Coplien さんのスケールフリーネットワーク論https://kawaguti.hateblo.jp/entry/2019/12/06/070000“管理職が考えている以上に、組織はもともとスケールフリーネットワークで動いている。中間管理職をなくしても、各チームが自律的にマネジメントすればよく、大規模な組織でもおそらく運営可能だ。ただし、同じ組織は2つと無いので、実験してみる必要がある。”
• 私達はツリーで考えることに慣れている。対象をある程度単純化し、理解しやすくできるから。• だからOKRもツリーとして捉えられやすい• そうすると現場で出てくる課題もツリーであることを前提としたものになるまとめると
“規模が大きい組織では、OKRを階層式にする。チーム全体のハイレベルなOKRと、サブチームごとのより詳細なOKRだ。「水平的OKR(複数のチームが関与するプロジェクト)」では、各サブチームにそれを支える「主要な結果」を割り振る。” ーグーグルのOKR実践マニュアルよりOKRでもツリーが有効な場合もあるジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社
「それは直属の上司のOKRとは一致しないかもしれないが、ゼネラルマネジャーの設定した全社的目標とは一致する」「健全なOKR環境では、アラインメントと自律性、共通の目標と自由のバランスが取れている。」ツリーの良さをいかしつつツリーに縛られないためには?ジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社
79ツリーに縛られずOKRと向き合う方法
ツリー構造のツールを使えばそこにひっぱられる。ツリー構造ではないツールを選択する80Google re:Work OKRスプレッドシートを社内で活用している例。シンプルで使いやすく、当社内でも多くの組織・チームが採用している
ツールを変えるだけでは不十分認識の仕方を変化させる必要がある81
82「OKRはツリーじゃないんです!わかりましたね!」
私たちのアプローチ83インセプションデッキをもとにしたOKRのすりあわせ毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション 1on1C F R
84毎週月曜はOKRの日毎週月曜はOKRの日毎週月曜はOKRの日毎週月曜はOKRの日毎週月曜はOKRの日毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション月イチウィンセッション月イチウィンセッション月イチウィンセッション月イチウィンセッショ定期的に対話し、共にOKRと向き合い続けることで認識を徐々に変化させる
CFRを活用し「ツリーではない」という認識を頭ではなく心で理解する85インセプションデッキをもとにしたOKRのすりあわせ毎週月曜はOKRの日月イチウィンセッション 1on1C F R
86ツリーから脱却しOKRが機能するための大前提
「OKRはみなさんの最も重要な目標を明確にする。全員の努力のベクトルを合わせ、協力させる。組織全体に目的意識と連帯感をもたらし、多様な活動を結びつける。」OKRの意義ジョン・ドーア(2018) Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR 日本経済新聞出版社
目指したいところを示すOになっているか目指さずにはいられないか• Objectives• 目標• 自分は何を目指したいのか、という問いに対する答え• Key Results• 成果指標• 目標までの到達度を測定するものアンドリュー・S・グローブ(1983) HIGH OUTPUT MANAGEMENT 日経BP およびGoogle re:Workに記載の定義に基づく
89ワクワクしてるか?
「上から降ってくる」OKRにアラインメントするだけでワクワクできるか?90O KRKRO KRO KRO KRO KRO KR
ワクワクするOは自分たちから生まれる91
アラインメントと自律性の両立が主体的な動きを促し、OKRを最大限機能させる92OKRが最大限機能するチームが主体的にOKRに向かっている自分たちの内発的動機とOKRが結びついているアラインメント目標が腹落ちしている自分たちで目標を立てている
93まとめ
OKRはツリーではない94• 私たちはツリーで考えることに慣れている。そのように世界を認識している。• だからこそOKRもツリーを前提として語られることが多い• 最良のOKRは全員の努力を結集できるもの。自発的に達成へ向かうことができる指針。ワクワクできるか• ワクワクは自分たちから生まれる• ツリーから脱却しよう、ワクワクしたOKRを掲げよう、自分たちでも信じられないくらいの成果を達成しよう
95持ち帰ってもらいたい問い
96あなたの、そしてあなたのチームの目標はなんですか?
97いきいきしてるかワクワクできるか
98THANKS!