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【第1回】ゼロから始めるゲノム解析(R編)

nkimoto
September 11, 2020

 【第1回】ゼロから始めるゲノム解析(R編)

2020/09/11 【第1回】ゼロから始めるゲノム解析(R編) 資料

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September 11, 2020
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  1. ゲノム = 生物の設計図 すべての遺伝情報を含む生物の完全な DNA配列は、ゲノムと呼ばれます。 真核細胞では、DNAはタンパク質(ヒス トン)の周りを包み、クロマチンや染色 体を構成するヌクレオソームのような高 次構造を形成します(右図) ヌクレオソーム

    クロマチン クロマチン クロモソーム(伸ばした状態) クロモソーム consists of consists of ヌクレオソーム クロモソーム consists of クロマチン ゲノム解析の目的:ゲノム配列を読み、生物学的示唆を得る! ヌクレオソーム ヒストン, DNA ATCTCGATCTATCT.... TAGAGCTAGATAGA...
  2. ゲノムはどのように読むのか ゲノムを読む際の基本的な流れ 1. 対象のゲノム配列(DNA、RNA)を
 検体から抽出 2. 抽出した配列をバラバラにする (断片化) 3. 断片化した配列を読む

    4.断片同士を並べる(アライメント) 5.バラバラにする前の配列を推測する The Cost of Sequencing a Human Genome (https://www.genome.gov/about-genomics/fact-sheets/Sequencing-Human-Genome-cost)
  3. ゲノムシーケンスのコストは劇的に落ちている 1999-2000年では$30億だった。 ↓ 2020年現在$1000を下回った。 コストが下がることにより生成される データ量は指数関数的に増加している。 データストレージのコストが増加、
 バイオインフォマティクス関連データ を扱える人材の需要も高まる。 チャンス!!

    米国のマーケット別次世代シーケンシング市場 ヒトゲノム1検体のシーケンシングコスト変化 The Cost of Sequencing a Human Genome (https://www.genome.gov/about-genomics/fact-sheets/Sequencing-Human-Genome-cost) Next Generation Sequencing (NGS) Market Analysis And Segment Forecasts To 2022
 (https://healthcaremarketanalysis.wordpress.com/2016/03/21/next-generation-sequencing-ngs-market-analysis-and-segment-forecasts-to-2022/)
  4. 遺伝子の定義 機能的な転写産物をコード化するため に必要なすべての配列要素を含む1つま たは複数の領域(Eilbeck et al。2005) 単一のタンパク質または単一の触媒お よび構造RNA分子に対応するDNA配列 のセグメント(Alberts et

    al。2002) 遺伝子はすべての生物の 遺伝の基本単位である ゲノムの中には、遺伝産物がコードされている特定の領域がある。 この配列を遺伝子という。 コードする DNAは暗号のようなもの。
 あるゲノム配列が、ある遺伝情報を 持っていることを「コードする」 という。
 例)配列Aは遺伝子Aをコードする ヒトでは約5%!
  5. AUGUGGCGA..... . WR...... A TGTGGCGA...... AUGUGGCGA..... WR...... 遺伝産物ができる流れ DNA 細胞分裂によってDNAの複製を行う

    RNA 活性化された遺伝子領域はRNAに転写される タンパク質 タンパク質をコードする遺伝子の場合、
 RNAはタンパク質に翻訳される これら一連の流れを分子生物学では
 「セントラルドグマ」と呼ぶ。 転写 翻訳 :3文字1セットで変換 :T→Uになる
  6. 1.1.3 How genes are controlled? 
 The transcriptional and 


    the post-transcriptional regulation
 遺伝子発現はどのように制御されるか。 転写及び転写後調節
  7. DNAからRNAへの転写・転写調節 1. 3. 4. RNAポリメラーゼがある領域に結合 し、RNAの合成を開始 RNAポリメラーゼはテンプレートとなる DNAに沿って移動しpre-RNAを次々に作成 スプライシングによりpre-RNAはmRNAとし てタンパク質の鋳型となる

    RNAへの転写は、RNAポリメラーゼという 酵素によって行われる。
 DNA配列に特定の領域が存在することで RNAへの転写・転写の調節が可能となる。 どれだけRNAが作られるかは 転写制御・転写後調節次第!
  8. 転写後調節(スプライシング) エクソン エクソン DNAまたはRNAの塩基配列中で 成熟RNAに残る塩基配列 DNA
 (遺伝子領域) 転写 転写 スプライシング

    pre-RNA RNA イントロン 転写はされるが転写産物から
 スプライシング反応によって
 除去される塩基配列 イントロン スプライシングにより、 1つの遺伝子配列から多様なRNAが生まれる → 多様なタンパク質が生まれる pre-RNAには、タンパク質をコードする領域(エクソン)がゲノムDNA上に分断 されて存在している。転写後、この領域を選択的に繋ぎ合わせる操作が行われている
  9. non-coding RNA (ncRNA) 生体中のRNAは、タンパク質に翻訳 されることなく機能構造をとるRNA がほとんど(96%)を占める これらは下記のような機能を持つ。 全RNA non-coding RNA

    96% pre mRNA mRNA pre rRNA pre tRNA rRNA tRNA sncRNA lncRNA coding RNA 4% タンパク質翻訳を調節(rRNA, tRNA) 遺伝子発現を調節(sncRNA) ・ ・
  10. エピジェネティックな調節 エピジェネティック?
 遺伝子発現調節に影響を与えるDNA配列以外の構造
 (クロマチン構造、DNAメチル化等 ) i)DNA修飾 ・メチル化(CpG island等) ・ヒドロキシメチル化 ・ホルミル化

    ii)ヒストン修飾 ・メチル化 ・アセチル化 ・リン酸化
 ・ユビキチン化 エピジェネティクス|環境儀 No.59|国立環境研究所
 (https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/59/column2.html) ヒストンメチル化・アセチル化の例
  11. non-coding RNAによる調整 long non-coding RNAs(lncRNA) クロマチン再構築因子と相互作用するこ とによりエピジェネティック制御に関与
 small-interferring RNAs(siRNA)
 Argonauteタンパク質と協力して標的遺

    伝子を抑制
 
 などなど micro RNA(miRNA)
 相補的な配列を使用してターゲット遺伝 子と相互作用し分解を促進 Non-coding RNA - Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Non-coding_RNA) ・ ・ ・
  12. 突然変異のメカニズム ゲノムの変異は、いくつかの理由で発生します。 DNA複製のミス : : 環境要因 : DNA修復のミス 10 ~

    10 塩基対に 1 回ミスをする 10 8 紫外線などの変異原はゲノムに変異を誘発する 毎日、人間の細胞は複数のDNA損傷を受けている。
 その度にDNA修復が行われるが、このプロセスでミスをする
 (DNA修復メカニズムによってエラー率は異なる) DNA polymerase II - Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_polymerase_II)
  13. ハイスループットな実験法により分かること 新しい問いに答えるため、既存の手法の改良版が日々提案されている。 ・ どの遺伝子がどの程度発現しているか 転写因子はどこに結合するか? ・ ゲノム中でどの塩基がメチル化されているか? ・ どの転写産物が翻訳されるか? ・

    RNA結合タンパク質はどこに結合するか? ・ ゲノムのどの部分が互いに接触しているか? ・ ゲノムの変異がどこにあるか? ・ ゲノムのどの部分がNucleosome-free(ヒス トンとヒストンの間の領域)なのか? ・
  14. ステップ② 取れた配列がどこの?どれくらい? 生成したフラグメントがゲノムのどこから来ているのか、どれだけあるのか を定量化する ② マイクロアレイ ハイスループット
 シーケンシング 2005年辺り 「プローブ」と呼ばれる


    相補的な配列を設計。 ・「プローブ」と呼ばれる
 相補的な配列を設計。 ・ ・遺伝物質を直接シーケンス ・ ・リファレンス配列に対して
 アライメントし、定量化 ・ ・実際のフラグメントに基づく 定量化が可能 ・ 蛍光強度から遺伝物質量が分かる ・ 設計したプローブに関してのみ定量化 ・ 「プローブ」とフラグメントが
 反応すると蛍光を発光 ・
  15. ハイスループットゲノムシーケンシングの今後 父、母から引き継いだ配列の同定 PacBio Sequel Systems Oxford Nanopore Technologie MinION Long

    read sequencing - WEHI bioinformatics seminar - tue 16 june 2015 
 (https://www.slideshare.net/torstenseemann/long-read-sequencing-wehi-bioinformatics-seminar-tue-16-june-2015) Pacbio Sequel Systems - Pacbio (https://www.pacb.com/products-and-services/sequel-system/) Products - Oxford Nanopore Technologies (https://nanoporetech.com/products/minion) 特徴: より長いリード長を使って配列を読むことが可能 メリット: ロングリードシーケンシング 繰り返し配列が多い領域も正確に読み取り可能 ・ 構造変異を検出しやすい ・ が可能 ハプロタイプフェージング ・
  16. ハイスループットゲノムシーケンシングの今後 メリット: 特徴:
 1細胞レベルでの発現変動を定量化可能 シングルセルシーケンシング 10X Genomics
 Chromium Single cell

    sequencing - Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Single_cell_sequencing) Chromium Controller - 10x Genomics(https://www.10xgenomics.com/jp/instruments/chromium-controller/) より精緻なセルタイプの同定が可能になる ・ 微量のサンプルで検出が可能 ・
  17. ハイスループットデータの公開データベース 通常、論文に使用されたデータは公開データベースに保存する必要がある。 Gene expression Omnibus (GEO)
 (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/) European nucleotide archive

    (ENA) (http://www.ebi.ac.uk/ena) 運営:EMBL-EBI 
 対象:核酸配列の一次データとそのアノテーション 運営:NCBI 
 対象:遺伝子発現情報(マイクロアレイ、RNA-seq)
  18. Q. 真核生物が主体ですが原核生物の話は? A. 転写後調節(スプライシング等)がない。
 発現の調節はおもに転写のレベルのみ。 ゲノムサイズ
 大腸菌:420万~470万塩基対 アメーバ:2,900億塩基対(ヒトの約100倍) 真核生物のように染色体構造は持っておらず、 1本のDNA分子が環状につながった単純な構造を持つ

    ・ ・ ・ 本資料は真核生物を対象としていますが、解析部分に関して基本 的な流れは変わりません。原核生物の解析を行う際に留意すべき 特徴は下記です。 既知の最大ゲノムを持った生物はアメーバ → ポリカオス・ドゥビウム (Polychaos dubium) 引用:Biology 10e Textbook (chapter 4, Pg: 63)