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【RESEARCH Conference 2023】freeeのデザインリサーチのこれまでとこれから

【RESEARCH Conference 2023】freeeのデザインリサーチのこれまでとこれから

freeeは、2019年の専門チーム発足以来、4年弱に渡って本格的にデザインリサーチの実践を積み重ねてきました。その間、仮説検証から仮説探索・発見へとスコープを広げてきています。
当日はチーム発足経緯に始まり、ユーザーテストからユーザーインタビューを経てエスノグラフィ応用に至るまでにどのように取り組みを発展させてきたか、どのようにリサーチ環境づくりに取り組んできたか、最新の課題は何でどう対応検討しているか、などについてお話させていただく予定です。

粟村 倫久
freee株式会社
デザイン事業本部 エクスペリエンスデザイン課 Associate Manager & Design Lead

RESEARCH Conference

June 14, 2023
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Transcript

  1.   2 デザイン事業本部 エクスペリエンスデザインチーム Associate Manager & Design Lead (&

    ResearchOps Manager) 【経歴】 2021年6⽉にfreee⼊社←スタートアップ1社 ←パロアルト研究所 「エスノグラフィを起点とした⼈間中⼼イノ ベーション」を背景に、デジタルプロダクト 開発の世界へ 粟村 倫久 あわむら のりひさ
  2. 4   電子稟議
 経費精算
 債権債務
 管理
 人事労務
 電子契約
 固定資産
 請求管理


    会計
 工数管理
 販売管理 会計・人事労務・販売管理を核とした統合型経営プラットフォーム
  3. 7 • プロダクト開発のフェイズの捉え⽅ • デザインリサーチの種類の捉え⽅ ◦ 探索のためのデザインリサーチ ▪ 取り扱うべき領域を探し、特定‧輪郭付けするリサーチ ◦

    企画‧設計のためのデザインリサーチ ▪ 作るべきものやその領域の解像度を上げるためのリサーチ ◦ (2種が折り重なる場合もしばしば) 本発表における⽤語の定義 フェイズ 探索 企画 設計〜実装 アウトプット 機会領域とその表現と してのアイデア群 要求‧要件 仕様 前提 →リリースへ
  4. 10 デザインリサーチ組織の発展の概観 年 時期名 チーム名 リサーチ種類 説明 2018 (⽴上げ前) (なし)

    企画‧設計 • 数⼈のプレイヤーが着⼿ 2019後半〜 ⽴上げ期 UXリサーチ • ユーザビリティテスト普及 • kit作成開始 • 主にUXデザイナーと協働 2020〜 普及期 デザイン リサーチ • 仮説検証リサーチ普及 • ResearchOpsの⽴上げ • 主に会計チームと協働 2021後半〜 拡⼤期 企画‧設計 探索 • 仮説探索リサーチ普及(主に業 務観察) • 複数プロダクトチームと協働 2022後半〜 定着期 エクスペリエ ンスデザイン (上記の拡⼤、現在進⾏形)
  5. 13 • 改善検討のため ◦ 顕在ニーズの背景を知りたいことが増えてきた • 事業成⻑のため ◦ スモールビジネスの経営プラットフォームを⽬指すには、さらなるユーザー基盤拡⼤ を狙っていく必要があった

    ◦ ⼤⽟施策や新規プロダクト⽴上げを考えていくうえで⾃信を持ちたくなった。プロダ クトアウトに加えマーケットインを強化し、両輪を持ちたかった • 初期の信頼が得られたため ◦ 数⼈のプレイヤーによる初期の実践から、上の2点についてのユーザーリサーチの効果 が認識された 専⾨チーム⽴上げ (2)⽴上げの理由 ⽴上げ期〜普及期
  6. 15 • ユーザビリティテスト • 仮説検証リサーチ ◦ 業務フロー仮説、ペイン仮説などの検証 ◦ 受容性調査 (コンセプトやプライシング)

    • おもな⼿段 ◦ ユーザーインタビュー ◦ カスタマージャーニーマップ、ペルソナ、シナリオなどの作成 ◦ アンケート 企画‧設計のためのデザインリサーチを広める ⽴上げ期〜普及期
  7. 16 • 「kit」の作成 ◦ ⾃⼒でリサーチができるための資料を「kit」として作成。チームメンバーの経験知を freeeに「翻訳」したもの • デザインリサーチサロン ◦ 週1、1時間の「なんでも相談に来てください!」という固定枠

    ▪ いろんなところから相談していただけるので、副産物として社内事情がわかる場 にもなった • ResearchOpsの⽴上げ ◦ リサーチの本格化と広まりにつれ、アポ‧謝礼‧機密情報などに関わるやり取りと実 査の並⾏が不可能になる。そのため、専⾨スタッフを雇⽤。⼤活躍中 リサーチ環境を作る ⽴上げ期〜普及期
  8. 17

  9. 18 • 社会情勢⾯ ◦ コロナでいろんなことが変化していくなかで、ユーザーの声をキャッチしたいという 気持ちが強く働いた ◦ コロナ下でオンラインインタビューが当たり前になった。相対的に⼿軽に聞けるよう になった •

    企業フェイズ⾯ ◦ freeeの解くべき課題が複雑化する&組織の規模が拡⼤して現場が⾒えにくくなるなか で、リサーチ結果を投資の意思決定のための材料として活⽤できた • 上記を背景に、企画に対する⾃信をより得るための⼿段の⼀つとして、仮説検証リサーチに 追い⾵が吹いた ⼩括 (1)なぜ普及が進んだのか ⽴上げ期〜普及期
  10. 23 • 新たな企画アプローチへの期待 ◦ 「プロダクトチームのみんなでリサーチ」は広まったが、企画の着想源としては、引 き続きドメインスペシャリストPMの知識や原体験が中⼼だった ◦ プロダクトチームを超えたみんなで探索‧企画したらどうなるかという期待があった ◦ 企画に関わる⼈全員の共通⾔語たる⼀次情報と体感を得るための⼿段として、観察が

    注⽬された • 経営の全体性の理解への期待 ◦ 経営プラットフォームを⽬指すとしたときに、プロダクトごとではなく、バックオ フィスの実践を丸ごと理解することが必要だとあらためて認識されるようになった • という機運の中、エスノグラフィのビジネス応⽤を実践してきた登壇者が⼊社した 探索と観察への期待の⾼まり 拡⼤期〜定着期
  11. 25 • ⽬的とことばを合わせないと進まない ◦ 「企画‧設計が⽬的なのか、探索が⽬的なのか」、「⼯程のどこを話しているのか」 などで期待値がズレる • テーマと優先度設定をしないと進まない ◦ 「探索だから⾃由な発想でボトムアップで」のみではスケールしない。各⼈のロール

    に応じてすべきことはすでに⼭積みで、そこから余地を作って探索するのは容易では ない • 参加者の志向‧嗜好に合わせないと進まない ◦ 取り組むべき領域が⾒えていて、作り込んでいくほうが得意で好きな⼈もいる • 以上を踏まえ、引き続き進⾏中 これまでの探索プロジェクトからの学び 拡⼤期〜定着期
  12. 28 freee会計「修正待ちリスト」(1-1) 機能の説明 ケース1 ① “間違っている可能性 のある取引” を⼀括検知 ホーム「やること」で ユーザーにお知らせ

    ②修正内容が集約された リストを確認 ③選択した修正項⽬から  修正画⾯へ移動&修正 ④ユーザーはリストに出  てきた間違いをガイド  に沿って修正するだけ
  13. 30 • ⾏なったこと ◦ PM‧デザイナー‧カスタマーサクセスが合同し、freee会計ユーザーの記帳業務のあ りのままを20件程度インタビュー+オンライン観察。社内リサーチも実施 ◦ 分析ワークショップを⾏ない、機会領域を導出。その後、企画〜設計‧実装へ • 発⾒

    ◦ 帳簿の登録ミスへの恐れや⼿に負えない感により、特にはじめての決算‧申告にたど り着けない。知識+情緒のサポートが必要 • 機会領域 ◦ ユーザーが「中間ゴール」的な達成感やフィードバックを得られやすくすれば、初回 決算‧申告にたどり着けるユーザーを増やすことができる ◦ たとえば、帳簿チェックサポート機能を作ればよいのでは? freee会計「修正待ちリスト」(2) プロジェクトの説明 ケース1
  14. 32 • 探索の結果として「当たり前で、かえって光が当たらなくなっていたこと(hidden obvious)」に光を当て、リフレーミングし、ユーザー価値にすることができた ◦ 業務観察によるありのままへの共感をベースに、以下の埋もれていた知識を「発掘」 ▪ freeeユーザーに帳簿の登録ミスへの恐れや⼿に負えない感を抱かせてしまって いる、という、とくにカスタマーサクセスメンバーには当たり前の知識 ▪

    過去に存在した、帳簿のチェック機能 ◦ いまのプロダクトの状況に合わせてこれらを「編集」し、新たな機能としてリリース • 探索〜企画を、PM‧デザイナー‧カスタマーサクセス‧エンジニア‧アナリティクスの多 職種協働で、業務観察を共通⾔語に、納得感の⾼い形で⾏うことができた freee会計「修正待ちリスト」(4) 意義 ケース1
  15. 34 • 関わり⽅ ◦ 受け⼊れ先との交渉、現場での業務観察とユーザビリティテストの進⾏⼤枠の設計を ⾏ない、現場では「⽔先案内⼈」に徹した ◦ 数件同⾏した後は、プロダクト開発チームが⾃⽴して実施できるようになった • 意義

    ◦ それまでの設計に対するフィードバックが得られるとともに、プロダクトチーム内で の議論の⽬線が合いやすくなった、とのこと ◦ プロダクトデザイナー⽬線での振り返りは以下まで ▪ 業務の観察結果が、どのようにUI設計のヒントになったか|ひろみつ • その後 ◦ 23年4⽉に機能の第1弾リリースが⾏なわれた。継続的に改善予定 会計事務所での業務観察 (2)関わり⽅と意義 ケース2
  16. 38 • kitの維持が追いつかない ◦ ところどころ古くなっている、のはわかっている‧‧ ◦ とくに新⼊社員にとってキャッチアップが⼤変 • リサーチの再教育が必要? ◦

    PMやデザイナーによるユーザビリティテストやユーザーインタビューに、基本を踏ま えないものが⾒られるように ▪ 例えば、タスクのないユーザビリティテスト、クローズド質問の多いインタ ビュー 急速な組織拡⼤への対応 (1)
  17. 43 • ⽴上げ〜普及期は、freee会計を「拠点」に、kitなどのリサーチ環境を整えながら、デザイ ンリサーチを定着させることを共通⽬標としていた。それは、定着期を迎え達成された • そして、「特務チーム」でいることの課題も⾒えてきた ◦ ロールの固定化により、デザインの可能性が限定されているかも ▪ 「デザインリサーチは上流、プロダクトデザインは下流」になりがち

    ▪ しかしそれでは、上流寄り⼯程でのモデリング‧プロトタイピングにプロダクト デザイナーが⼊ったり、下流寄り⼯程での発想にデザインリサーチャーが⼊った りする機会は少なくなりがち ◦ デザインリサーチチームの共通⽬標が薄くなっている。むしろ、それぞれのメンバー がそれぞれのプロダクトチームとの結びつきを深めるほうがよいのでは デザインリサーチ組織の次の形の検討 (1)
  18. 44 • 特務チームから、よりプロダクトチーム側のメンバーとしての活動を強める • ロール内連携により、プロダクトの垂直成⻑と統合両⾯を進めることを⽬指す など? デザインリサーチ組織の次の形の検討 (2) プ ロ ダ

    ク ト プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト エクスペリエンスデザイン チーム プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト プ ロ ダ ク ト X D X D X D X D X D