Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
Linux環境のCPU上で10ミリ秒間に起こること
Search
Satoru Takeuchi
PRO
March 20, 2024
Technology
3
310
Linux環境のCPU上で10ミリ秒間に起こること
以下動画のテキストです
https://youtu.be/6dZuOq5P468
Satoru Takeuchi
PRO
March 20, 2024
Tweet
Share
More Decks by Satoru Takeuchi
See All by Satoru Takeuchi
低レイヤソフトウェア技術者が YouTuberとして食っていこうとした話
sat
PRO
7
6k
ポーリングと割り込み
sat
PRO
1
67
Rook: Intro and Deep Dive With Ceph
sat
PRO
1
130
会社員しながら本を書いてきた知見の共有
sat
PRO
3
840
デバイスにアクセスするデバイスファイル
sat
PRO
1
56
ファイルシステムのデータを ブロックデバイスへの操作で変更
sat
PRO
1
45
デバイスドライバ
sat
PRO
0
73
マルチスレッドの実現方法 ~カーネルスレッドとユーザスレッド~
sat
PRO
2
160
共有メモリ
sat
PRO
3
86
Other Decks in Technology
See All in Technology
「Roblox」の開発環境とその効率化 ~DAU9700万人超の巨大プラットフォームの開発 事始め~
keitatanji
0
100
Claude Codeから我々が学ぶべきこと
s4yuba
8
2.1k
ロールが細分化された組織でSREと協働するインフラエンジニアは何をするか? / SRE Lounge #18
kossykinto
0
180
大規模イベントに向けた ABEMA アーキテクチャの遍歴 ~ Platform Strategy 詳細解説 ~
nagapad
0
190
Agent Development Kitで始める生成 AI エージェント実践開発
danishi
0
120
【Λ(らむだ)】最近のアプデ情報 / RPALT20250729
lambda
0
230
Vision Language Modelと自動運転AIの最前線_20250730
yuyamaguchi
3
1.1k
Amazon Q と『音楽』-ゲーム音楽もAmazonQで作成してみた感想-
senseofunity129
0
100
Kiroでインフラ要件定義~テスト を実施してみた
nagisa53
3
310
AI人生苦節10年で会得したAIがやること_人間がやること.pdf
shibuiwilliam
1
270
LLMをツールからプラットフォームへ〜Ai Workforceの戦略〜 #BetAIDay
layerx
PRO
1
860
生成AI時代におけるAI・機械学習技術を用いたプロダクト開発の深化と進化 #BetAIDay
layerx
PRO
1
1k
Featured
See All Featured
Done Done
chrislema
185
16k
How GitHub (no longer) Works
holman
314
140k
Embracing the Ebb and Flow
colly
86
4.8k
Distributed Sagas: A Protocol for Coordinating Microservices
caitiem20
332
22k
Become a Pro
speakerdeck
PRO
29
5.5k
Balancing Empowerment & Direction
lara
1
530
Chrome DevTools: State of the Union 2024 - Debugging React & Beyond
addyosmani
7
790
10 Git Anti Patterns You Should be Aware of
lemiorhan
PRO
656
60k
Site-Speed That Sticks
csswizardry
10
750
Large-scale JavaScript Application Architecture
addyosmani
512
110k
Fight the Zombie Pattern Library - RWD Summit 2016
marcelosomers
234
17k
Making the Leap to Tech Lead
cromwellryan
134
9.5k
Transcript
Linux環境のCPU上で 10ミリ秒間に起こること Mar. 20th, 2024 Satoru Takeuchi X: satoru_takeuchi 1
はなすこと • Linux環境(Linuxをインストールしたマシン)で10ミリ秒程度の短い期間にCPU上で 何が起きるかを説明 • 📝多くの仮定を置いて話を簡略化している ◦ Linuxをインストールしているのは物理マシン ◦ 1CPU1コア環境
◦ tickless kernelではない ◦ あらゆる処理の所要時間は 1ms単位 ◦ その他いっぱい 2
前提知識: プロセススケジューリング • CPUリソースを使うプロセスが複数存在すると、CPU上で動作するプロセスをカー ネル内のスケジューラが定期的に切り替えている • プロセスが一度に動ける期間をタイムスライスと呼ぶ ◦ タイムスライスの残量はタイマーというハードウェアを使って確認 (後述)
• 例: プロセスp0,p1が動作中でタイムスライスは両方2ms p0 p1 p0 p1 時間 CPU 3 *1マスが1msに対応
前提知識: システムコール • プロセスがシステムコールを発行すると、カーネルに制御が移って処理を開始す る。完了すると再度プロセスが動き出す p0 カーネル p0 syscall発行 syscall完了
時間 CPU 4
前提知識: システムコール • プロセスがシステムコールを発行すると、カーネルに制御が移って処理を開始す る。完了すると再度プロセスが動き出す p0 カーネル p0 syscall発行 syscall完了
時間 CPU 5 1. syscall判別 2. 個々のsyscallの処理 3. スケジューラ: 次に動くプロセスの決定 p0のsyscall処理
前提知識: デバイス操作 • システムコールの延長でデバイスにアクセスすると、デバイスにI/O発行した後にプ ロセスは待ち状態になり、その後は他のプロセスが動作する • 例: p0がread()を発行し、待ちの間はp1が動作し、I/O完了後は再度p0が動く p0 I/O処理
CPU SSD p1 カーネル カーネル read発行 I/O依頼 p0 6 I/O完了 read完了 時間
前提知識: デバイス操作 • システムコールの延長でデバイスにアクセスすると、デバイスにI/O発行した後にプ ロセスは待ち状態になり、その後は他のプロセスが動作する • 例: p0がread()を発行し、待ちの間はp1が動作し、I/O完了後は再度p0が動く p0 I/O処理
CPU SSD p1 カーネル カーネル read発行 I/O依頼 p0 7 I/O完了 read完了 時間 1. Virtual File System(VFS)層: 全fs共通の read処理 2. 個々のfs: read処理 p0のsyscall処理 1. ブロック層: 全ブロックデバイス共通処理 2. デバイスドライバ: I/O発行処理 3. スケジューラ: 次に動くプロセスの決定 I/O発行処理
前提知識: デバイス操作 • システムコールの延長でデバイスにアクセスすると、デバイスにI/O発行した後にプ ロセスは待ち状態になり、その後は他のプロセスが動作する • 例: p0がread()を発行し、待ちの間はp1が動作し、I/O完了後は再度p0が動く p0 I/O処理
CPU SSD p1 カーネル カーネル read発行 I/O依頼 p0 8 I/O完了 read完了 時間 1. I/O完了処理 2. スケジューラ: 次に動かすプロセスの決定 SSDの割り込み処理 1. fs: 完了処理 2. VFS層: 完了処理 p0のsyscall処理
前提知識: タイマー • プロセスのタイムスライスはタイマーというデバイスで確認 ◦ 定期的にCPUに通知して、割り込みハンドラを実行 • 例: p0,p1が存在し、4msに一回タイマーがCPUに通知 p0
時間計測(実際はカーネルが設定したタイマーが切れたときにちょっと動くだけ CPU タイマー カーネル 通知 9 p0 割り込み p1 カーネル 時間 残り3ms… 時間切れ!
前提知識: タイマー • プロセスのタイムスライスはタイマーというデバイスで確認 ◦ 定期的にCPUに通知して、割り込みハンドラを実行 • 例: p0,p1が存在し、4msに一回タイマーがCPUに通知 p0
時間計測(実際はカーネルが設定したタイマーが切れたときにちょっと動くだけ CPU タイマー カーネル 通知 10 p0 残り3ms… p1 カーネル 時間切れ! 時間 1. スケジューラ: 次に動かすプロセスを決定 割り込み タイマー割り込み処理
状況 • 2つのプロセスp0,p1が存在する • 10ミリ秒の間にやること ◦ p0: 計算->read発行->計算 ◦ p1:
計算し続ける • 途中で一回タイマー割り込み発生 11
10msのうちわけはこんなかんじになる 12 p0 I/O処理 CPU SSD カーネル 依頼 通知 タイマー
時間計測 p1 完了 時間 カーネル p0 p0 カーネル 時間切れ! p1 p1 p1 read発行 通知 read完了 1. Virtual File System(VFS)層: 全fs 共通のread処理 2. 個々のfs: read処理 p0のsyscall処理 1. ブロック層: 全ブロックデバイス共通処理 2. デバイスドライバ: I/O発行処理 3. スケジューラ: 次に動くプロセスの決定 I/O発行処理 1. I/O完了処理 2. スケジューラ: 次に動かすプロセスの決定 SSDの割り込み処理 1. fs: 完了処理 2. VFS層: 完了処理 p0のsyscall処理 1. スケジューラ: 次に動かすプロ セスを決定 タイマー割り込み処理
まとめ • Linux環境では10ミリ秒程度の間にCPU上では様々なことが起きている • これでもかなり簡略化していて、実際はさらに複雑 • そのうち別のどこかで紹介するかも 13