プロトタイプシティ 出版記念講演 中国イノベーションと「安全な公園」 / China innovation comes from "safety park"

プロトタイプシティ 出版記念講演 中国イノベーションと「安全な公園」 / China innovation comes from "safety park"

2020-07-31 に角川書店より発売された「プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション」の出版を記念したトークイベントの発表資料です。

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Sawada Sho

July 31, 2020
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  1. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 1 プロトタイプシティ 出版記念講演 中国イノベーションと「安全な公園」 2020-07-31

    インターネットプラス研究所 所⻑ 澤⽥ 翔
  2. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 2 ⾃⼰紹介 澤⽥ 翔 (shao)

    • 慶應義塾⼤学環境情報学部卒業 : 専攻は HCI (Human Computer Interaction) • 複数の IT ベンチャー企業の⽴ち上げからEXITまで経験 • スマートフォン広告、カメラアプリなど • 2018/09〜 深圳⼤学に留学 (中国語の習得、中国テック事情の理解) • 現在 • スタートアップの技術⽀援 • 中国テック事情、フィンテック、ブロックチェーン、スマー トモビリティ、AI 営業⽀援… • 2018/10〜 インターネットプラス研究所を設⽴。同所⻑ • インターネットの社会実装を研究テーマとした研究集団 • 受託研究、記事執筆など • 2020/01〜 OMO領域を⼿掛けるスタートアップの⽴ち上げ準備中
  3. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 3 インターネットプラス研究所とは インターネットの社会実装をテーマにした研究集団です 2018年10⽉15⽇に設⽴しました。 澤⽥

    翔 所⻑、発起⼈ エンジニア ITスタートアップ技術⽀援 ⾼須 正和 副所⻑ スイッチサイエンス(株) 海外ビジネス開発 伊藤 亜聖 ⾸席研究員 東京⼤学 社会科学研究所准教授 藤岡 淳⼀ 主任研究員 (株)ジェネシスHD 代表取締役
  4. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 4 インターネットの社会実装とは インターネットサービスを社会に根付かせること “若い⼈⼝構造を持ち、エンジニアの多い深センでは、輪をかけてこうした社会実験的なサービスの導 ⼊が進んでおり、私は「社会実装先進都市」と呼んでいます。”

    ̶̶ 伊藤亜聖: デジタル技術の社会実装に正解はない中国IT企業から⽇本が学ぶべきポイントとは https://www.dhbr.net/articles/-/5444?page=2 “研究成果として得られた「知」は,学術的価値を持つと同時に,それが社会において活⽤された場合 には,新たな製品・サービスや社会システムの創出などを通じて経済や社会に多くの便益を(時には 不利益も)もたらすものでもあります。” ̶̶ ⾦澤良弘:社会的課題の解決につながる社会実装研究の推進 https://www.dhbr.net/articles/-/5444?page=2
  5. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 5 活動の⽬標 テクノロジーを社会に実装する⽅法を研究し、その成果を広く社会に還元することでイノベーション を活性化したい -

    社会に実装されてきたテクノロジーを研究し、その成果や失敗事例を考察する 例: UBER と DiDi はそれぞれモビリティをどう変えたのか - 産業界や⾏政が問題解決を図るときに、テクノロジーを適切に選択できるよう、過去の事例を集積 して分析を⾏う テクノロジーを武器に社会を改善しようとしている⼈、チーム、会社を適切に後押しする - 「テクノロジーが我々の未来を明るくしてくれる」と信じてもらえる社会を築けるよう、テクノロ ジーの正しい使い⽅を啓蒙していく
  6. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 6 具体的な活動内容 具体的には以下のような活動を⾏います - 研究員の観測と調査に基づく、インターネットの社会実装に関する現況レポート

    - Web での発表、寄稿記事、論⽂など - 企業、官公庁などの依頼に基づく個別調査レポート - 本研究に関わる執筆、論述、講演などの活動⽀援 - 研究成果を広く共有するための講演会、イベントなどの開催 - インターネットの社会実装をテーマにした事業、起業家、チームの⽀援
  7. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 7 プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション

  8. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 8 プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション - イノベーションの最前線としてメディアに取り上げられる

    ようになった深圳 - ⾼速なイノベーションの源泉に「プロトタイプ駆動」とい う考え⽅があることを突き⽌める - 深圳に詳しい専⾨家、実業家、メイカーが集い共著を執筆 編著: ⾼⼝康太、⾼須正和 著: 澤⽥翔、藤岡淳⼀、伊藤亜聖、⼭形浩⽣ インタビュー: ナオミ・ウー, GOROman (近藤義仁)
  9. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 9 「まず、⼿を動かす」が時代を制した。 連続的価値創造から⾮連続的価値創造へ 出典: ⾃動⾞の燃費ランキングを公表します!

    - 国⼟交通省 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000230.html 連続的価値創造 (⾃動⾞の燃費改善など) - 「過去の実績を元に予測できる未来」に対する取り組み - 未来予測の裏付けを組織や政治から得てから着⼿する - 失敗しないことを前提に全員で全⼒で取り組む 出典:九号平衡车Plus图集 - ⼩⽶商城 https://www.mi.com/scooterplus/gallery ⾮連続的価値創造 (ドローンなど) - 今もちうる技術と課題をもとに未来にアプローチする - 素早くリリースして社会に解くことでニーズの裏付けをする - 失敗することを前提に少数でスケールしながら取り組む
  10. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 10 デジタル化が引き起こした「前提」の変化 従来型産業 出典: ⽇⽴CM

    この⽊なんの⽊ HITACHI - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=XJKCZMwo8Hw 出典: 淘宝 https://www.taobao.com/ イノベーションには「⼤量の⼈と資⾦」が必要 ⼤量の⼈と資⾦を運⽤するため、精度の⾼い経営が 求められる デジタル産業 デジタル技術では⼈的リソースも⽣産設備も最⼩限で 構わない → 中⼩の競合も⼤企業の脅威になる コピーが容易 → 真似されるのも容易 多産多死の中、⾒極めと進化の速い経営が求められる
  11. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 11 第2章 中国イノベーションと 安全な公園

  12. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 12 ① 超⾼速ビジネス のつくりかた

  13. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 13 超⾼速ビジネスのつくりかた ⾮連続価値創造における超⾼速ビジネスの重要性 - 前例のない取り組みは失敗の可能性が⾼い

    - 成否を短期間、低コストで⾒極めると次のチャンスに活かせる → 「速く、軽い」起業で打ち⼿を増やし成功に繋げていく 超⾼速ビジネスを成⽴させる要件 - 分散型開発 → 検証したい領域に限った⼩さなビジネス (Proof of concept) に特化 - 成果の共有と再利⽤ → お互いに⾞輪の再発明を防ぐため、既知の解決⽅法は他者が適切に利⽤できるようにする - ⾼速なPDCAサイクル
  14. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 14 超⾼速! PDCAリターンズ 計画 検証可能な

    最⼩限のゴール を設定する 実⾏ 得意分野・ 差別化領域に 集中する 評価 素早く リリースして 社会に問う 改善 軌道修正を試みる 明らかに違うなら プロジェクト破棄
  15. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 15 ゴールポストを⼿前に置く ゴールが不明確なテクノロジー:「⻘魔術」 - 5G?

    VR? ブロックチェーン? 何に使うの? - ⾮連続的価値創造のスタート地点はだいたい⻘い 「脱⻘」に必要なのは社会の理解 - 研究室で技術を磨いても答えが出ない - 実社会に素早く投⼊することで技術の⽅向性を明らか にしていく → 「実社会への投⼊」というゴールポストを⼿前に置く
  16. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 16 「とりあえずzipください」 すでに誰かが作った成果物を使うことで⾞輪の再発明を防ぐ • 正しいアプローチ

    - 他社から知的財産の利⽤権を購⼊する (ライセンシング) - 部品やサービスとして供給を受ける - オープンソースにして社会の公有財産とする • 中国における現実 「テンプレ詰め合わせ」「設計流⽤」などの権利処理が不⼗分な事例 近年はGiteeなど中国でもオープンソースをリスペクトする動きが出 てきた
  17. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 17 ウォーターフォール? アジャイル? いいえ…… ウォーターフォール:

    - 明確なゴールをブレイクダウンして開発するスタイル アジャイル: - ⼩さな反復を繰り返しながらリリースするために⾃動テストや会議 体などの仕組みを導⼊ 出典:令和元年版情報通信⽩書 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n2300000.pdf アドホックモデル: - 特定の開発スタイルを持たず、必 要に応じて開発、修正、リリース などが⾏われる
  18. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 18 会社ではなく社会に問う 中国⼈エンジニア「ソフトウェアのテストフレームワークを整備するよりも、プロダクトが社会に受け容れ られるかのテストのほうが先でしょ」 社会実装を優先した結果の「アドホック開発」

    - 多産多死が前提であるので、プロダクトの可否の⾒極めが優先される - もしプロダクトが社会に受け容れられ事業採算が合う (PMF: Product Market Fit) のであれば、それが判明し てからモダンな設計に作り直せばよい (WeChat: QQの作り直し、Alipay: Taobao Payの作り直し) 決して会社や上司、投資家に問うものではない
  19. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 19 当たりクジだけを買うことはできない 連続的価値創造: 「当たりそうな」ルートへの連続投資 -

    去年の時点で新型コロナウイルスの感染流⾏を予想していた⼈ はいましたか? - 2010年の時点で⽇本の原⼦⼒発電所が全部停⽌することを予想 していた⼈はいましたか? ⾮連続的価値創造を⽀えるには: 「当たりを選別しない」 - iモードの公式サイトを作るにはNTTドコモの厳しい審査が必要 - App Storeは個⼈でもアプリを公開できる - Webサイトであれば審査すら不要
  20. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 20 エンジニアリングを加速させ多産多死を実践する ⼩さく試す - 検証したい本質に取り組む

    間⼝を広げる - 「みんなが使える技術」を積み上げて作る 選別しない - 低いハードルで参⼊できる仕組み - 当たりクジだけを集めるようなことはしない 次に進む - 素早くリリースして市場の声をいち早く拾う - ダメなら速やかに撤収する
  21. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 21 ② アタリショック を避けるには

  22. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 22 アタリショックとは 1982年頃、アメリカでコンシューマゲーム市場が 急速に拡⼤して市場が飽和した話 -

    「クソゲー」にあふれ、消費者が品質の⾼い ゲームにたどり着くことが困難になった - ソフトウェアの品質を保つ仕組み(審査やレ ビュー、批評など)が⽋如してたことが原因 - ソフトウェア会社の倒産から不良在庫の投げ売 りになり、ゲーム市場全体が落ち込んだ
  23. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 23 WeChatのミニプログラム WeChat内で動作するアプリケーションを提供する仕組み - Web開発の知識があればつくることができる

    - WeChatの機能(メッセージ、課⾦、QRコード読み取りな ど)を活⽤できる 参⼊のしやすさとWeChat機能をビジネスに活⽤しやすいこ とから、瞬く間に普及した
  24. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 24 WeChat ミニプログラムの例

  25. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 25 ミニプログラムストアは安全な公園 リリースのハードルは低い - Web

    開発の知識があれば制作できる 課⾦など複雑な⼿続きはWeChat側で引き受ける - ⾦銭や個⼈情報などクリティカルな被害からユーザを守る セキュリティ的にも保護されている - Webと⼀部の命令しか動かない - テンセントが内容を審査 - 機敏な情報へのアクセスは制限
  26. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 26 安全な公園の先駆者 いずれもサービス内でできることを制約し、サードパーティーを通じてユーザの間⼝を広げることに成功 iモード グリー/モバゲー

    Twitter App Store
  27. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 27 制約のある⾃由が多くのユーザを集めた 制約のある⾃由 - iモード:

    iモードセンターと専⽤線で接続した「公式サイト」 → マネタイズが容易でプレイヤーが増加、おサイフケータイもここから。 - グリー: ゲーム⼈⼝を広げるためのガイドライン (例: 英語は Go / Get だけ) - iOS: App Store 以外のソフトウェア導⼊禁⽌ 放任型の⾃由 - W-ZERO3: マネタイズが難しくコンテンツが広がらなかった - Android: iOSに⽐べて⾃由度が⾼かったが、Google のコントロール強化の 傾向にシフト (審査強化、Google Play⾮対応端末の締め出しなど) 出典: (上)ドコモiモード、26年3⽉終了 FOMAも(共同通信) - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/0ce10247fd6587de0ed65ac0851f8d37075e6978 (下) ⽇本初のスマホ「W-ZERO3」でネット閲覧は可能なのか? マイネ王 https://king.mineo.jp/magazines/special/1060
  28. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 28 ③ バックラッシュ の時代

  29. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 29 資本家の役割とソビエト社会主義の崩壊 資本家 = 収益とリスクを事業から切り離す役割

    - 直接⾦融(出資), 間接⾦融(貸付)ともにリスクをお⾦に換え る⾏為 - リスクを引き受ける相⼿が明確だったからこそ事業が成り ⽴った ソビエト社会主義 = リスクは官僚が引き受けた - 責任の所在が曖昧になり、⼤きなリスクを引き受けるカウ ンターパーティーがいない → ソビエト社会主義は信⽤による事業拡⼤ができなかった
  30. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 30 中国社会主義とデジタル信⽤経済 出典: 中国公共交通機関でスタート〜ブロックチェーンによるインボイスの衝撃 |

    DG Lab Haus https://media.dglab.com/2019/05/05-chinanblockchain-01/ 1) 市場経済の導⼊ 2) デジタルが⽣み出した新たな信⽤のフレームワーク 「即時化」「システム化」「可視化」 - クレジットカード : タイムラグを信⽤供与でカバー → Alipay (即時決済) - 国営郵便 : いつ届くかわからない、不安定なシステム → SF Express (ブロックチェーンとIoTでトラッキング) - ホテル: 従業員の教育コストと信⽤の積み上げ → スマートホテル: AIとセンサーで安全を担保 お⾦ではなくシステムで信⽤を創造することに成功
  31. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 31 近代国家の終わりの始まり インターネットサービスが国家が持つ機能を代替しつつある - 数千万〜億単位のユーザーを抱える

    - 独⾃の通貨、経済システム - 無料でサービスを提供する - 事業者が極めて幅広い裁量権を持つ - 複数の国をまたいだ複雑な体制 国家の重要性、統治⼒が相対的に低下する テクノロジートレンドと国家の衝突: バックラッシュ 出典: PayPal、Facebookの仮想通貨リブラから撤退。直前に中国進出を表明 〜現時 点で中国市場以外を取るよりも中国市場が優先の⾒⽅か - 仮想通貨 Watch https://crypto.watch.impress.co.jp/docs/news/1211251.html
  32. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 32 やりたいこと、すべきことに⽬を向ける デジタルでできることが急速に広がっている - 「安全な公園」の整備

    - スマートフォンの性能向上 - 再利⽤可能なソフトやハードのエコシステム 「まず⼿を動かす」が現実解に - コンセプト実証にかかるコストの漸減 - コミュニティがついてくる: 場所や空間を超え、 ⾃分を必要とする⼈と繋がれる 出典:バーチャルキャストで「REALITY」の配信が可能に、参加型の"持ち込み番組企 画"も開催 | Mogura VR https://www.moguravr.com/virtualcast-reality/
  33. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 33 まとめ 未来予測はますます困難に • 連続的価値創造の強みが失われつつある

    「やりたいこと」ドリブンで⾮連続的価値創造ができるように • “安全な公園”がイノベーションの中⼼地に • 「速い」「軽い」開発プロセスが多産多死を⽀える 権威と⾦に次ぐ新たな信⽤: デジタルと社会実装 • 権威や資本を持たなくてもチャレンジが可能に • デジタルによって信⽤を担保できる • プロダクトを社会に出して磨き上げることによって信⽤を積 み上げられる
  34. © Internet Plus Laboratory 2020-07-31 34 FOLLOW US 澤⽥ 翔

    インターネットプラス研究所 https://note.mu/internet_plus