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『創発と物理』第二章「還元と創発の哲学的定義の歴史」

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March 21, 2025

 『創発と物理』第二章「還元と創発の哲学的定義の歴史」

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  1. 第2章の構成 00 目的 : 物理学における創発を捉えるような創発の定義を提示 まずは、これまでの科学哲学や物理学の哲学においてどのように還元や創発が定義されてきたかを確認する 3 科学哲学 : 論理学によって諸科学を基礎づけ統一しようという運動(論理実証主義)

    ⇨ このような方針で理論間の関係を捉えるには限界あり 物理学の哲学 : 科学哲学とは異なる方法で定義を試みるが問題点もあり 事例に基づいて(ボトムアップに)創発を定義する ・事例 : くりこみ郡の手法 ・モデルの科学哲学(科学におけるモデルの役割や特徴を検討)において、くりこみ郡の事例がいかに 特徴的なのかを明確にすることで、創発の特徴を引き出す ・さらに、その定義が実際にこれまでの物理学の哲学や科学哲学における創発の議論点、問題点を 解決することを示す
  2. 二つの理論  と  の間に還元関係があるためには, まず, ある初期条件のもとで  から導出される  *が存在し, さらに,  と強いアナロジーが成立するような *が存在する.

    このときに,  *と  *の間に相互の概念に対応を 与えるような法則(橋渡し法則)が存在するとき,  と  は還元であるといえる. 2-1-1 ネーゲル的還元の現在 01 ネーゲル的還元 5 接続可能性 高い階層の理論における理論語Aで表せれる全てのものと、低い階層の理論における理論語で示される 性質の間に適切な関係を仮定するある種の規則が必要である  理論語Aを含む高い階層の理論における全ての法則が、低い階層の理論による仮定と関連する理論から 論理学的に導出可能でなければならない ※ ネーゲル的還元の洗練・実質化 ⇨ シャフナーの定義(ネーゲル・シャフナー還元)へ 導出可能性 図2.1  基礎的な理論が現象論的な理論に還元される条件 ネーゲル的還元の二つの条件
  3. 2-1-1 ネーゲル的還元の現在 01 ネーゲル・シャフナー還元 6 1. 修正された  *において現れるあらゆる基本的な単語が  の中に現れている。あるいは、  における

    一つ以上の単語と以下の a~c のように関連づけられている   a.   と  *における個物や個物のグループ間に一対一対応を与えるような還元関数が存在   b.  *の基礎的な述語は、還元関数によって  の述語との対応が与えられている   c. aとbを満たすような還元関数は、経験的な根拠がある 1 : 接続可能性に対応. 還元関数という橋渡し法則の存在を要請. 2 : 導出可能性に対応. ネーゲルとの違いは  と   ではなく,   *と  の関係として還元を定義 3~5 : 理論  の修正についての細かい条件 5.   と  *の関係は強いアナロジーの関係にある 2. 還元関数が存在する時に、  *が  から導出可能である 3.  *は、以下のような意味で  を修正したものである.  よりも正確な予言を与え(結果として  が誤り であることを示し),  がなぜうまく機能していたのかを説明することができる 4.   は  によって厳密ではないが説明可能である. つまり  から演繹的な導出の結果とし得られる のは *であり, これは  と極めて似た数値予測を与えるものである 再掲 : 図2.1
  4. 2-1-1 ネーゲル的還元の現在 01 7 (1a) 遺伝学における遺伝子という概念と, 生化学におけるDNA配列の間には一対一対応 再掲 : 図2.1

    ネーゲル・シャフナー還元の例 : 遺伝子(遺伝学)とDNA(生化学)の関係 また, この事例で還元される側の理論は遺伝学であるが, 修正される前の 理論  は1950年代時点での遺伝学であり, 修正された理論  *がDNA塩基 についての理解が踏まえられた遺伝学である. ⇒ 厳密に言えばこの二つの理論は異なるが, おおむね同一視してよいという意味で, 強いアナロジーがある. ⇒ この対応関係を与えるものが還元関数 (1b) この還元関数によって, 以下の二つの文の間に対応関係が与えられる ・ 「遺伝子1が優勢である」というのは, ・ 「DNA配列1が活性化酵素の合成を支持することが可能である」ときに限られる. ⇒ 還元関数によって二つの理論の間の概念やその主張の間を結びつける (1c) この還元関数には経験的な根拠がある.
  5. 2-1-1 ネーゲル的還元の現在 01 8 接続可能性 (1) 修正された理論  *あるいは, そのままの理論  が 

    を修正した理論である  *と関連付けられる (2) 修正された理論  *というのは,  の還元が成立するようにするために修正された理論を指す 導出可能性 (3)  が不十分あるいは誤りであると考えられているときに,  ないし  *が  の適用範囲においてより正確な予測 を与えることができる (4)   は  によって説明される. これが成り立つのは,  *と  の間に強いアナロジーが成立し,  ないし  *が  がなぜ歴史的に機能してきたのかを説明するとき, または,  ないし  *によって  の適用範囲が説明されたとき である. シャフナーの定義は ・理論間の還元が成立するために, 理論に適宜修正が加えられる点 ・導出可能性を説明という概念に帰着させている点 が特徴的であるが, ネーゲルと同様に理論を命題の集合としてとらえている 再掲 : 図2.1 接続可能性と導出可能性も更新 ⇒ しかし, 実際の物理学では理論を命題の集合として表現しないため, 使いづらいものにとどまっている ⇒ さらに洗練 ⇒ 「一般化されたネーゲル・シャフナー還元」
  6. 2-1-1 ネーゲル的還元の現在 01 一般化されたネーゲル・シャフナー還元 9   が  に還元されるのは, 以下のとき, かつそのときに限る.

     を修正した  *が存在し, (a)  *の語と  の語を結びつける橋渡し法則が与えられたときに  *が  から導出可能であり (b)  *と  の関係は少なくとも強いアナロジーの一つである  ※   *と  が接続不可能な場合には,   *が  *との間で 接続可能性の条件を満たすときに, 還元であると認める(図2.1) 再掲 : 図2.1 例 : 理想気体のボイルシャルルの法則 熱力学   のボイル=シャルルの法則がニュートン力学   に還元される 還元される理論 ⇒ ⇒ これをニュートン力学  に還元していく
  7. 例 : 理想気体のボイルシャルルの法則 体積 V のとある空間を考えたとき、xy平面に対する圧力   は ← *

    (   ではないことに注意) 2-1-1 ネーゲル的還元の現在 01 10 空間が等方性の場合は       であり, さらにベクトルの定義から          であるため 運動エネルギーは     であるため 示したいのは理想気体の法則なので, 熱力学的量である温度Tと, 力学的な物理量である運動エネルギーEの関係として, 次のように仮定. このとき, ← 橋渡し法則 これまで, 科学哲学の伝統的なアプローチを見てきたが, 問題点として「理論」に偏重していることが挙げられる ⇒ そもそも, 自然科学の実践において中心的な役割を果たしているのはモデルである ⇒ 物理学の哲学における還元 (→ 2-2節, 2-3節) ニュートン力学  から, 熱力学  と強いアナロジー関係にある  *を導出できた ⇒ 還元関係
  8. 2-1-2 創発の哲学 01 キムによる創発の定義 11 創発を特徴づける5つの特徴 複雑で高い階層の実体の創発:高い階層の複雑性を持つシステムは, 新しい構造的な配位にある低い  階層の実体が集まることで創発する 1.

    高い階層の性質の創発:高い階層の実体の全ての性質は, その構成要素の部分を特徴づけるような性質と 関係から生じる. 複雑なシステムの一部の性質が創発であり, それ以外は結果的(resultant)である 2. 創発的性質の予測不可能性:創発的性質は、基礎的な条件についてのあらゆる情報を尽くしても予測する  ことができない. 一方で, 結果的な性質は低い階層の情報から予測できる 3. 創発的性質の説明不可能性・還元不可能性:創発的性質は, 単に結果的である物とは違い, 基礎的な  条件から説明することも還元することもできない 4. 創発の有効性:創発的性質はそれ自身の因果効力を有している. つまり, 基礎的な構成要素の因果効力に この新奇な因果効力は還元できない 5. 条件1,2の例 : 水 キム流の定義では, 5番目の条件である高い階層の対象が示す因果的な作用が重要な役割を果たしていることが 創発にとって本質的な特徴となっている
  9. 2-1-2 創発の哲学 01 ハンフリーズによる下方因果と強い創発の関係の整理 12 ベドゥ(次スライド)は, キムが定義する創発を強い創発と呼び, その本質的な特徴として還元不可能な 因果効力の存在を挙げている 創発的な実体にはあり,

    低い階層の実体の構造化された集まりにはない特徴によって, 低い階層の実体に因果的に 影響を与えることが, ある高い階層の実体で可能であるとき, その高い階層の実体は強い創発である. 下方因果 (ハンフリーズによる) 例:脳と意識 意識が身体からキム的な意味で創発しているとする ⇒ このとき, 意識には脳に還元できないような因果関係があるということになる 例えば, 「ケーキが甘い」 ⇒ 甘いものが好きな私は「甘い」という意識によって「幸せ」という意識が生まれる ⇒ 「幸せ」を意識した私の身体には「鳥肌」が立つ  ⇒ 「幸せ」は身体には還元できない創発的な性質であるにもかかわらず, 我々の身体に影響を与える このように, 創発的な事象に因果効力の存在を認めれば, 下方因果が存在することになる
  10. 2-1-2 創発の哲学 01 ベドゥによる「弱い創発」の定義 13 下方因果が存在することを創発の条件と考えると、現実的な創発の事例は存在しなくなってしまう 存在論的には低い階層の構成要素に還元できるが, 説明的自律性ないし説明的な還元不可能性があるとき, その事象を弱い創発と呼ぶ。 弱い創発

    例: 「ストライキによって交通渋滞が生じ, 多くの人が遅刻した」 例:心(非物理的)が脳(物理的)に作用 → その作用は物理的な要因に還元できない = 科学的に意味がない ⇒ 構成要素であるそれぞれの車がどのように動いてきたかということをまとめることで,「渋滞によ って多くの人が遅刻した」という事象は説明できる ⇒ 一方で, 一台の車が別の経路を通っていたとしてもやはり渋滞は生じるわけで, 「渋滞によって多 くの人が遅刻した」という事象は, 特定の車の詳細な挙動とは自律的である ・存在論的には低い階層の構成要素に還元できる ・説明的自律性ないし説明的な還元不可能性
  11. 2-1-2 創発の哲学 01 多重実現と普遍性 14 構成要素の初期条件や挙動が多少異なっていても安定的に表れる事象 フォーダー 普遍性 : 反例:貨幣

    貨幣の役割を実現する物質は多種多様  → 統一科学的還元主義者であれば、貨幣の役割を担う物と同じ構成要素からなる物を, 物理学の概念や   法則だけから区別する必要があるが, 現実的ではない   → 経済学と物理学の間の還元関係を与えるような橋渡し法則は存在しない マクロな現象がミクロな構造からある程度独立であることを指す概念 多重実現という概念と創発や還元の科学哲学的な議論を結びつけた ネーゲルのアイディアは、 「統一科学」という論理実証主義あるいは還元主義的な姿勢がある ※ 統一科学:科学の対象となったあらゆる事象は物理学的な事象であり, 物理学の法則にしたがう 機能主義 ある物が貨幣であるのは、ある経済においてそれが貨幣の機能を果たしているとき 高い階層の事象は低い階層の事象に対して自律性を示すということが、その事象の機能という観点 から説明できる
  12. 2-1-2 創発の哲学 01 部分全体関係 15 部分(例:原子、非生命)と全体(生物、生命)の間の関係として、創発を捉えられる 集積性 ウィムザット (1997; 2000)

    相互置換(IS) : 系の部分の配置を変えたり, 任意の数の部分をその部分と同じ同値類に属す         同数のものに交換するといった操作の下での系の性質の不変性 創発的な性質は、構成要素の組織のされ方に依拠していると主張 集積性の否定(=非集積性)によって創発を特徴づける サイズスケーリング(QS) : 部分を加えたり, 減らしたりすることでの, 系の性質の質的類似性(自己同一性,             ないし, 量的性質であれば, 値のみが異なる) 分解と再集積(RA) : 分解や部分の再集積を含む操作における系の性質の不変性 線形性(CI) : 系の性質に影響するような、系の部分間に協調的・抑制的な性質が存在しない 部分を集めたときにそれが単なる和であるということ キムとネーゲルの創発の定義に共通するもう一つの特徴. 例:石山の質量
  13. 2-1-2 創発の哲学 01 ジレット(2016)による創発と還元の定義 16 部分全体関係に着目した創発を定義する哲学的な試み 科学的構成(Scientific composition) 性質や力能(power)、プロセスなどの間にも構成関係が存在すると考える 因果という概念を避けるために,

    Machresis という概念を導入する 構成物が自身の構成要素の役割を形どったり制限したりすることで, 構成要素の力能の一部を決定する 構成物と構成要素の間の非生産的で決定的な関係 ※ 力能 : 変化を引き起こしたり, 防いだりするような能力 Machresisは, 構成物がその構成要素の本質的な性質を決定するような性質であり, この概念が創発に 共通する特徴である これまで, いくつかの哲学的な創発の定義を見てきたが ・予測不可能性によって定義する(キムら)という方針は到底受け入れられない (アンダーソンの物性物理の事例は予測可能) ・物理学の哲学において因果性はあまり好まれない (ここでいう因果は形而上学的な意味であり,自然科学との関係が難しい) ⇒ 一般的な創発の定義にはいくつかの問題がありそう → 2-2, 2-4節へ
  14. 2-2-1 極限に訴える定義 : バターマンの議論 02 バターマンの物理学における還元の定義 18 より洗練された理論  は, その本質的なパラメータ(ε)が極限値に近づくことで,

    より「粗い」理論 に対応する. 図式的には, 物理学における還元は次のように表現される: 一方, 正則でないときは特異であると呼び, この時創発である 極限が正則であるときに限り、極限の関係は還元と呼ぶことができる. ※ 正則 : と のときで挙動が等しいこと つまり, 極限を取る操作によって, 元々の方程式には表れなかった新しい性質が現れることがある ということに訴えて創発を定義している 例 : 二次方程式の解 と のときで解が変わらない と のときで解が変わる ⇒ 特異 他の例 : 特殊相対性理論とニュートン力学, 幾何光学と波動工学
  15. 2-2-2 還元と創発が両立する定義 : バターフィールドの議論 02 バターフィールドの物理学における還元の定義 19 還元と創発は両立するものとして定義する (バターマンやネーゲルとの差異) 二つの理論間の対応関係を与える定義の集合Dの存在がネーゲル的還元の橋渡し法則に対応し、

    Dの存在によって接続可能性条件が満たされる 以下のような定義的拡張が存在するときに還元が成り立つ   が  の定義的拡張と言えるのは以下のとき, かつそのときに限る.  の論理的な記号でない記号それぞれに 対応する定義があり、その定義の集合Dを  に加えることで、  のあらゆる定理が証明できるときである → ネーゲル的還元における二つの条件を, 定義の集合Dの存在や定理の証明と言い換えることで, 実際の事例が  検討可能な形となったネーゲル的還元を提示している 再掲 : 図2.1 還元の定義については, ネーゲルの定義を引き継いでいる
  16. 2-2-2 還元と創発が両立する定義 : バターフィールドの議論 02 バターフィールドの物理学における創発の定義 20 創発については、ネーゲル(および哲学的な定義)とは異なる方針で定義 複合系:ある系が複合系であり;その性質や挙動が, 構成要素の系の性質や挙動と比べて新規で頑健であるとき,

     複合系が創発である → 創発を還元の否定ではなく、還元と独立した概念として定義 以下の新規性と頑健性という性質を満たすとき、創発である 新規性 : 対象群からは定義できないもの 極限系:ある系が別の系の系列の極限であり;その極限系の性質や挙動が, 有限なパラメータで記述される系の     性質や挙動と比べて新規で頑健であるとき, この極限系は創発である 頑健性 : 対象群の様々な選択や想定に対して変わらないもの ⇓ 対象群は以下の二つの事例に分類できる → 複合系と極限系は厳密には排他的ではない。(例 : 相転移)
  17. 2-2-2 還元と創発が両立する定義 : バターフィールドの議論 02 バターフィールドの定義から得られる教訓 21 (1) ある物理量Nの極限を取ったときに、創発は還元と両立 (2)

    創発は極限を取る前に、つまり、有限な物理量Nにおいても創発は現れる → 論理学的に導出可能であること(還元)と、対象群から定義できないこと(創発)は両立する → 極限を取るということは、無限の系を考えることを意味しない。(非常に大きい値と考える) バターフィールドの定義に対する批判 新規性を定義不可能性で定義することだけでは創発を特徴づける新規性の説明として曖昧である → 定義不可能な性質とはそもそも何か。定義不可能であればどのような性質でも良いのか? 両立可能性についても批判できる → 創発の定義を形式的なものでなくすことで両立可能性を提示することができるが、その副産物と して定義不可能性、つまり新規性という概念が曖昧という問題を抱えることになる
  18. 2-2-3 還元と創発の定義に求められていること 02 ノックスの議論 22 バターマンとバターフィールドへの批判を元に, 説明的価値・役割に注目 ディーゼルエンジン : 断熱圧縮によって点火

    創発の定義に求められる三つの特徴 (1) 極限に基づかないこと → 極限と創発の間に本質的な関係はない上に、極限を必要としない創発の事例(フォノン)も指摘 (2) 新規性の明確性 → 創発を含意するような新規性について、明確な基準を与える必要がある。 (3) 新規性は十分に制約されたものでなければならない → 還元概念についても同様の指摘がされている(→ 次節:ロサラーの議論) ディーゼルエンジン : 点火プラグ 両者の違いを説明するには 「なぜ断熱過程が必要なのか」が重要 「なぜ断熱過程が必要なのか」は, 熱や仕事といった概念が必要だが, 統計力学はこれらの概念を用いていない ⇒ 熱力学には統計力学にはない新奇な説明的価値があり, これこそ創発を特徴づける新奇性である 例 =⇒ ※ 新奇な説明的価値があっても, 創発的とは言い難い事例が存在 (例 : 二つの粒子からなる系) ⇒ ノックスの指摘する説明的な価値は, 新奇性の条件として弱いと言える 批判
  19. 2-3 モデル間関係としての還元 03 バターマンとバターフィールドの議論の問題点 24 還元の議論に極限が用いられているが, 極限と還元の関係が明確ではない 還元を理論間の関係として定義するという方針自体が、物理学における実践から乖離している → 極限が何らかの意味で還元という概念に関連していることを示すものの,

    結局, 還元とは何かということに ついては不明確なまま → 理論間の還元が成立するためにはモデル間の還元が成立する必要があると指摘 高い階層の理論から低い階層の理論への還元が成立するための条件 ある理論  が別の理論  に理論還元されるのは,  のドメインであるあらゆる系Sに対して―つまり, 理論  のモデル  によってその挙動が正確に表現されるあらゆる物理系Sに対して―  のあるモデル  によっても 表現される, つまり  が  へモデル還元されるとき, かつ, そのときに限る → ある特定の対象系を考えて, 二つの理論のそれぞれのモデルでその系の挙動が説明できるときに, 理論間の還元が成立しているとする立場 → 理論間還元の議論を, モデル間還元の議論へと帰着させている
  20. ・状態空間 つまり,  が示すある状態の軌道(変化)と, これとの対応が与えられる  が示す状態の軌道(変化)とが近似的に一致 するときに, 二つのモデルの間にモデル間還元が成り立つということ. 2-3 モデル間関係としての還元 03 モデル間還元 25

    ・モデル ・時刻 t ・初期状態からの決定論的な時間発展 ・初期状態 ・橋渡し関数 B このとき、モデル間還元が成り立つのは が成り立つときである。より簡単には が成り立つとき、二つのモデルは還元関係にあるという 図 2.2 ロサラーのモデル間還元の模式図
  21. END