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CV・CG・ロボティクスのためのリー群・リー代数入門

 CV・CG・ロボティクスのためのリー群・リー代数入門

平面や空間における回転,剛体変換,射影変換やそれらの推定や最適化等を扱うとき,あるいはそれらに関する文献や実装を読解しようとする際に,リー群・リー代数の知識の必要性にしばしば行き当たる.本講演では,主に2次元,3次元空間における座標変換への応用に必要となる基礎事項とその理解のための勘所を紹介する.リー群・リー代数の定義とその解釈,リー代数の元とリー群の元の対応を表す指数写像などのトピックを取り上げ,具体的なリー群としてはSO(2),SO(3),SE(2),SE(3),SL(3)等を扱う.

Spatial AI Network

February 26, 2025
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  1. 行列指数関数による座標変換のパラメータ表示 (例1) 地図上の点は,画像への投影に先立って,世界座標系 からカメラ座標系 へ変換される. これはカメラ姿勢を表す 行列 の左からの乗算 で行う. (中略)

    行列 は回転成分と並進成分を含んでおり, 3 次元剛体変換の集 合であるリー群 の元である. (中略) カメラ姿勢の変化は のカ メラ運動行列 を左から乗算することによって表現される: ただしカメラ運動も の元であり,指数写像を用いることで 6 次元ベク トル によって最少のパラメータで表示できる. Klein and Murray, Parallel Tracking and Mapping for Small AR Workspaces, Int'l Symp. Mixed and Augmented Reality (ISMAR 2007) 2 / 38 W C 4 × 4 E ​ CW p ​ = jC E ​ p ​ CW jW E ​ CW SE(3) 4 × 4 M E ​ = CW ′ ME ​ = CW exp(μ)E ​ CW SE(3) μ
  2. 行列指数関数による座標変換のパラメータ表示 (例2) 射影変換行列 はリー群である 群に属して いる. この群に付随するリー代数を と呼ぶ. こ の代数はトレースがゼロである

    行列からなる. (中略) をリー代数 の基底とする. に属する行列 は以下のように書き表せる: に属する射影変換 のうち の近傍にある ものは以下のようにパラメータ表示できる: Benhimane and Malis, Homography-based 2D Visual Tracking and Servoing, Int'l J. Robotics Res., 2007. 3 / 38 G(x) SL(3) sl(3) 3 × 3 A ​ , A ​ , … , A ​ 1 2 8 sl(3) sl(3) A(x) A(x) = ​ x ​ A ​ . i=1 ∑ 8 i i SL(3) G(x) I G(x) = exp(A(x)) = ​ ​ (A(x)) . i=0 ∑ ∞ i! 1 i
  3. (この図は後のページで再掲します) 本日のお話 回転,剛体変換,射影変換などの座標変換の集合は,リー群と呼ば れる曲がった空間の構造を持つ リー群には,リー代数と呼ばれるベクトル空間が付随する リー群とリー代数を行ったり来たりすることで,曲がった空間の問題 を真っすぐな空間の問題に置き換えて扱いやすくできる cf. 時間領域 周波数領域,代数

    幾何 行列指数関数によりリー代数はリー群へ写される リー代数 (ベクトル) を使って座標変換をパラメータ表示できる リー代数にはいろいろな定義のしかたがある 1. リー群の単位元における接ベクトルの全体 2. 指数写像によりそのリー群にマッピングされるベクトルの全体 3. リー括弧積が定義されたベクトル空間 5 / 38 ↔ ↔
  4. 自己紹介 リー群・リー代数の専門家ではないし,バリバリ応 用しているわけでもない 自分自身が馴染み深いのは画像追跡への応用 当初全く理解できずに苦しんだ記憶がある.どのよ うに折り合いをつけたか, その勘所を伝えたい 関連記事等: CV・CG・ロボティクスのためのリー群・リー代数入門 –

    swk’s log はてな別館 https://swkagami.hatenablog.com/entry/lie_00toc ロボット工学のためのリー群・リー代数入門, 日本ロボッ ト学会 第141回ロボット工学セミナー, 2022.8.12. ロボット工学のためのリー群・リー代数入門, 日本ロボッ ト学会誌, 2023. https://doi.org/10.7210/jrsj.41.511 Kagami+, SIGGRAPH 2018 (Emerging Tech.) Kagami+, ISMAR 2019 (IEEE Trans Vis Comput Graph) Kagami+, SIGGRAPH 2020 (Emerging Tech.) 世界!オモシロ学者のスゴ動画祭3, NHK総合, 2022.4.29 6 / 38 0:00
  5. まずは 3 次元回転から 回転行列 の集合は 群である 積について閉じていて結合則を満たす: 単位元がある: すべての元に逆元がある: 9

    次元空間の中の 3 次元多様体であり,各点で接平面が定まる 行列を 9 次元ベクトルとみなす 絵としては 3 次元空間内の 2 次元多様体で我慢してください このように群であり滑らかな多様体である集合をリー群と呼ぶ 左からの乗算で 3 次元ベクトルに作用する 群演算としての乗算と,群作用としての乗算は区別して考える 8 / 38 R = ​ ​ ​ ⎝ ⎛r ​ 11 r ​ 21 r ​ 31 r ​ 12 r ​ 22 r ​ 32 r ​ 13 r ​ 23 r ​ 33 ⎠ ⎞ 3 × 3 R (R ​ R ​ )R ​ = 1 2 3 R ​ (R ​ R ​ ) 1 2 3 RI = IR = R RR = −1 R R = −1 I 3 × 3
  6. いろいろなリー群 (1/2) 復習: 回転行列とは,直交行列のうち行列式が 1 のもの が直交行列とは: (各列ベクトルが長さ 1 で互いに直交)

    直交行列の行列式は 1 (鏡映なし) または (鏡映あり) : 特殊直交群 (Special Orthogonal Group) n 次元回転行列の集合 「特殊」は行列式が 1 のものにつく 丸括弧の中の は次元 : 直交群 回転だけでなく鏡映も許した集合 9 / 38 A A A = T AA = T I −1 SO(n) n O(n)
  7. いろいろなリー群 (2/2) : 特殊ユークリッド群 (Special Euclidean Group) ( : 回転行列,

    : 次元並進ベクトル) 普通は同次変換で考えるのが便利: この同次変換行列の行列式は 1 : ユークリッド群 上記の を (回転に限らない) 直交行列にとったもの : 特殊線形群 (Special Linear Group) 行列式が 1 である 行列の全体 : 一般線形群 正則行列の全体 なぜかこれだけ General (一般) の G をつける 10 / 38 SE(n) x = ′ Rx + t R n × n t n ​ = ( x′ 1 ) ​ ​ ​ ( R 0T t 1 ) ( x 1 ) E(n) R SL(n) n × n GL(n) n × n
  8. リー群に付随するリー代数 曲面は扱いが難しい e.g. 非可換性: 一般に 曲がってない平面で代用できるといろいろ楽 リー群の単位元における接空間を,それに付随する リー代数 (または対応するリー代数) と呼ぶ

    リー群 に付随するリー代数を (小文字のフラク トゥール体) で表す 単なる線形近似? そうではなく, の任意の元から の元への対応が 得られる 曲面上の問題を平面上で考えることができる 曲面の性質を平面で考えることができる          12 / 38 R ​ R ​ = 1 2  R ​ R ​ 2 1 G g g G
  9. リー代数 = リー群の単位元における接空間 単位元における接ベクトル: で単位元 を通 る曲線 の での微分: 注)

    行列を 次元ベクトルと同一視してい ることを思い出す 単位元における接空間: あらゆる の集合 よく接平面の絵を描いて理解するが,接点を原点 に取り直している点に注意する リー代数はベクトル空間である 接ベクトルの和は接ベクトル.接ベクトルのスカ ラ倍も接ベクトル ベクトル空間だから,適当に基底を選んでその線形 結合として表せる          13 / 38 t = 0 I A(t) t = 0 (0) = A ˙ ​ ​ ​ dt dA(t) ∣ ∣ t=0 n × n n2 (0) A ˙
  10. の場合 の各軸まわりの回転に対応する曲線を微分する 軸まわり: 軸, 軸まわりも同様に: の任意の元は で表せ る を基底としたときの座標 とみなせる

    14 / 38 SO(3) x, y, z x R ​ (t) = 1 ​ ​ ​ ​ ​ , J ​ = ⎝ ⎛1 0 0 0 cos t sin t 0 − sin t cos t ⎠ ⎞ 1 ​ ​ ​ = dt dR ​ (t) 1 ∣ ∣ t=0 ​ ​ ​ ​ ​ = ⎝ ⎛0 0 0 0 − sin 0 cos 0 0 − cos 0 − sin 0⎠ ⎞ ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛0 0 0 0 0 1 0 −1 0 ⎠ ⎞ y z J ​ = 2 ​ ​ ​ ​ ​ , J ​ = ⎝ ⎛ 0 0 −1 0 0 0 1 0 0⎠ ⎞ 3 ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛0 1 0 −1 0 0 0 0 0⎠ ⎞ so(3) x ​ J ​ + 1 1 x ​ J ​ + 2 2 x ​ J ​ 3 3 J ​ , J ​ , J ​ 1 2 3 (x ​ , x ​ , x ​ ) 1 2 3
  11. wedge 演算子と vee 演算子 がリー代数の基底のとき, と はしばしば同一視される ベクトル と座標 を同一視するのと同じ

    両者の間の変換を演算子 と で表すことがある (本によってマチマチ) この変換をわざわざ明示しないことも多い (数学書ではそれが普通) 本講演では以下のように統一する: (vee 演算子.ベクトル化するから v) (wedge 演算子.v の逆さま) 15 / 38 {M ​ } k X = ​ x ​ M ​ ∑ k=1 n k k x = (x ​ , x ​ , ..., x ​ ) 1 2 n T x ​ e ​ + 1 1 x ​ e ​ 2 2 (x ​ , x ​ ) 1 2 ∧ ∨ x = X∨ X ​ ​ ​ Murray+1994, Bullo+2010 ​ = x = ∧ x Lynch+2017 ​ = [x] Hartley+2004, Szeliski 2010 ​ = [x] ​ × x = X∨ X = [x] ​ ∧
  12. 左不変ベクトル場 「どうして単位元における接空間だけを考える?」 → それだけで他の元における接空間も定まるから リー群 上の曲線 で と なるものを考える 適当な

    を左からかけて を 作ると, 上の曲線になる で微分して, の における接ベクトル は 単位元における接ベクトル を 1 本選べば,任意 の点 において, が接ベクトルの 1 本となる これにより 上に定まるベクトル場を左不変ベクト ル場と呼ぶ          17 / 38 G A(t) A(0) = I, (0) = A ˙ X B ∈ G C(t) = BA(t) G t = 0 C(t) B (t) = C ˙ B (0) = A ˙ BX X B BX G ​ ​ I X ​ B ⟼ B ​ BX ⟼ B
  13. 指数写像 を適当に取り左不変ベクトル場に沿って進 む その解は は曲面上から離れられないので,任意の と に対して をぐるりとあらゆる方向に取ると, はリ ー群の単位元のまわりを覆いつくす

    逆に, のとき, は単位元における接ベクトルだから          この写像 を 指数写像と呼ぶ ( を とも書く) 18 / 38 X ∈ g (t) = B ˙ B(t)X, B(0) = I B(t) = exp(tX) B(t) X ∈ g t ∈ R exp(tX) ∈ G X exp(tX) exp(tX) ∈ G ​ exp(tX) ​ ​ = dt d ∣ ∣ t=0 X X ∈ g exp : g → G exp(X) eX
  14. リー代数 = 指数写像でリー群にうつるもの となるような の全体を と定義してもよい の基底 を使って と表すと, は

    リー群 の元を表すためのパラメータとして使える 注: 指数写像は全射とは限らない.一般には,あくまで から の単位元 の近傍への写像である 19 / 38 exp(tX) ∈ G X g g {X ​ } i X = ​ p ​ X ​ ∑ i i i (p ​ , p ​ , ...) 1 2 G g G I ​ ​ ​ ​ ​ ​ G ​ ⏐ ↑ exp g ​ ⏐ ↑ ∧ Rn ∋ ∋ ∋ exp( ​ p ​ X ​ ) = exp([p] ​ ) i=1 ∑ n i i ∧ ​ p ​ X ​ = [p] ​ i=1 ∑ n i i ∧ p リー群の行列表示 リー代数の行列表示 リー代数のベクトル表示
  15. 指数写像 (行列指数関数) の定義・性質 定義: 多くの公式が指数関数と共通 特に微分が簡単: 積法則は可換性に要注意: ならば 基本的な微分方程式の解として現れる: の解は

    の解は の解は は の各固有値の指数関数の積 したがって (「特殊〇〇群」を考えるときに重要) 20 / 38 exp(X) = I + X + ​ X + 2! 1 2 ⋯ + ​ X + k! 1 k ⋯ ​ exp(tX) = dt d X exp(tX) = exp(tX)X XY = Y X exp(X) exp(Y ) = exp(X + Y ) ​ p(t) = dt d Xp(t) p(t) = exp(tX)p(0) ​ P(t) = dt d XP(t) P(t) = exp(tX)P(0) ​ P(t) = dt d P(t)X P(t) = P(0) exp(tX) ∣ exp(X)∣ X e e ⋯ e λ ​ 1 λ ​ 2 λ ​ n ∣ exp(X)∣ = e = λ ​ +λ ​ +⋯+λ ​ 1 2 n etr X
  16. の場合 一般に について (直交) だから: のとき, , より (歪対称行列) (特殊)

    だから: より 歪対称行列はこれを満たす 逆に, が歪対称なら かつ であることも確認できる よって, は 歪対称行列全体の集合 の場合: から , なので改めて やはり , , を基底に取れることが確認できる の場合も同様に, 21 / 38 SO(n) A(t) = exp(tX) ∈ SO(n) A A = T AA = T I (t)A(t) + A ˙T A(t) (t) = TA ˙ O t = 0 A(0) = I (0) = A ˙ X X = T −X ∣A∣ = 1 e = tr X 1 tr X = 0 X A A = T AA = T I ∣A∣ = 1 so(n) n × n n = 3 X = ​ ​ ​ ​ ​ = ⎝ ⎛x ​ 11 x ​ 21 x ​ 31 x ​ 12 x ​ 22 x ​ 32 x ​ 13 x ​ 23 x ​ 33 ⎠ ⎞ − ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛x ​ 11 x ​ 12 x ​ 13 x ​ 21 x ​ 22 x ​ 23 x ​ 31 x ​ 32 x ​ 33 ⎠ ⎞ x ​ = ii 0 x ​ = ij −x ​ ji X = ​ ​ ​ ​ ​ = ⎝ ⎛ 0 x ​ 3 −x ​ 2 −x ​ 3 0 x ​ 1 x ​ 2 −x ​ 1 0 ⎠ ⎞ x ​ J ​ + 1 1 x ​ J ​ + 2 2 x ​ J ​ 3 3 J ​ 1 J ​ 2 J ​ 3 n = 2 X = ​ ​ = ( 0 x −x 0 ) x ​ = ( 0 1 −1 0 ) xK
  17. 共通事項 定数ベクトル を,時変の変換行列 で運動させることを考える: 時間微分して を消去すると ここで の場合を考えると よって は以下の微分方程式に従う:

    23 / 38 p ​ 0 A(t) p(t) = A(t)p ​ 0 ​ (t) = p ˙ (t)p ​ A ˙ 0 p ​ 0 ​ (t) = p ˙ (t)A(t) p(t) A ˙ −1 A(t) = exp(tX) ​ (t) = p ˙ X exp(tX) exp(tX) p(t) −1 p(t) (t) = p ˙ Xp(t)
  18. の場合 の元は, を任意の実数として と書けた 運動 は に従う.つまり角速度 の等速円運動である 余談 なので,

    の定義と と のテイ ラー展開を利用することで と表せる は虚数単位 と同様のはたらきをしており, が等速円運動なのも納得がいく 24 / 38 SO(2) so(2) ω X = ω ​ ​ = ( 0 1 −1 0 ) ωK ​ = ( x(t) y(t) ) exp(tωK) ​ ( x0 y0 ) ​ = ( (t) x ˙ ​ (t) y ˙ ) ωK ​ = ( x(t) y(t) ) ​ ( −ωy(t) ωx(t) ) ω K = 2 −I exp(tK) cos sin exp(tK) = cos(t) + sin(t)K K i exp(tK)
  19. の場合 の任意の元は と書けた として, の作用による運動は, つまり, を角速度ベクトル (向きが回転軸,大きさが角速度) とする運動になる はこれが

    のときなので, の向きを回転軸,大きさを角度とし て回転した姿勢を表す よって の任意の姿勢を表せる (いわゆる回転ベクトル表現) 実際の計算は (行列指数関数を直接計算するよりも) ロドリーグの公式によるのがよい 25 / 38 SO(3) so(3) ω ​ J ​ + 1 1 ω ​ J ​ + 2 2 ωJ ​ 3 p = (x, y, z)T R(t) = exp(t ω ​ J ​ + ω ​ J ​ + ω ​ J ​ ) = { 1 1 2 2 3 3} exp(t[ω] ​ ) ∧ ​ ​ ​ (t) p ˙ = [ω] ​ p(t) = ​ ​ ​ ​ ​ p(t) = ​ ​ ​ ∧ ⎝ ⎛ 0 ω ​ 3 −ω ​ 2 −ω ​ 3 0 ω ​ 1 ω ​ 2 −ω ​ 1 0 ⎠ ⎞ ⎝ ⎛ω ​ p ​ − ω ​ p ​ 2 3 3 2 ω ​ p ​ − ω ​ p ​ 3 1 1 3 ω ​ p ​ − ω ​ p ​ 1 2 2 1 ⎠ ⎞ = ω × p(t) ω exp([ω] ​ ) ∧ t = 1 ω SO(3)
  20. の場合 で単位元を通る 3 本の曲線を用意する: 回転: x, y 方向の並進: それぞれ で微分すると

    よって の任意の元は以下のように表せる: として, 指数写像 による運動は以下の微分方程式に従う: のときは 固定点 まわりで角速度 の等速 円運動 のときは等速並進 と をうまく選んで で の任意の 姿勢に至るようにできる 26 / 38 SE(2) t = 0 ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛cos t sin t 0 − sin t cos t 0 0 0 1⎠ ⎞ ​ ​ ​ ​ ​ , ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛1 0 0 0 1 0 t 0 1⎠ ⎞ ⎝ ⎛1 0 0 0 1 0 0 t 1⎠ ⎞ t = 0 ​ ​ , ​ ​ , ​ ​ . ( K 0T 0 0 ) ( O 0T e ​ 1 0 ) ( O 0T e ​ 2 0 ) se(2) ω ​ ​ + ( K 0T 0 0 ) v ​ ​ ​ + x ( O 0T e ​ 1 0 ) v ​ ​ ​ = y ( O 0T e ​ 2 0 ) ​ ​ ( ωK 0T v 0 ) p(t) = (x(t), y(t), 1)T ​ ​ ​ (t) p ˙ ​ ( (t) x ˙ ​ (t) y ˙ ) = ​ ​ p(t) ( ωK 0T v 0 ) = ωK ​ + v ( x(t) y(t) ) = ωK ​ + ​ K v {( x(t) y(t) ) ω 1 −1 } ω =  0 ω ω = 0 ω v t = 1 SE(2)
  21. の場合 6 本の曲線 (回転 3 本,並進 3 本) を微分して ,

    , , , , よって の任意の元は 指数写像による運動は          または をツイストと呼ぶ の動きはスクリュー運動として知られる のうち回転軸と直交する成分だけ考えると の 場合と同じ.それに回転軸方向の並進が加わる と をうまく選んで で の任意の姿勢に至 るようにできる 27 / 38 SE(3) ​ ​ ( J ​ 1 0T 0 0 ) ​ ​ ( J ​ 2 0T 0 0 ) ​ ​ ( J ​ 3 0T 0 0 ) ​ ​ ( O 0T e ​ 1 0 ) ​ ​ ( O 0T e ​ 2 0 ) ​ ​ ( O 0T e ​ 3 0 ) se(3) ​ ​ ​ ​ = ⎝ ⎛ 0 ω ​ 3 −ω ​ 2 0 −ω ​ 3 0 ω ​ 1 0 ω ​ 2 −ω ​ 1 0 0 v ​ 1 v ​ 2 v ​ 3 0 ⎠ ⎞ ​ ​ ( [ω] ​ ∧ 0T v 0 ) ​ = ( (t) x ˙ 0 ) ​ ​ ​ ( [ω] ​ ∧ 0T v 0 ) ( x(t) 1 ) (t) = x ˙ ω × x(t) + v ​ ( ω v ) ​ ​ = [( ω v )] ∧ ​ ​ ( [ω] ​ ∧ 0T v 0 ) x(t) v SE(2) ω v t = 1 SE(3)
  22. の場合 3 次元空間内の平面から平面への透視投影 は 行列 によって表せる: (平面射影変換,ホモグラフィ変換) は定数倍を除いて等しいの意味 第 3

    要素が 1 になるように正規化することで「奥行きで割 る」効果が表現されている つまり にはスカラ倍の任意性がある (都合 8 自由度) に制約して 1 自由度減らす → 行列式 1 という条件は積を取っても逆を取っても保たれる ので,群として扱える 付随するリー代数 は,トレースが 0 の 行列の全体: 28 / 38 SL(3) 3 × 3 H ​ ​ ​ ≃ ⎝ ⎛x′ y′ 1 ⎠ ⎞ H ​ ​ ​ ⎝ ⎛x y 1⎠ ⎞ ≃ H ∣H∣ = 1 H ∈ SL(3) sl(3) 3 × 3 ​ ​ = ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛p ​ 1 p ​ 4 p ​ 6 p ​ 2 −p ​ − p ​ 1 8 p ​ 7 p ​ 3 p ​ 5 p ​ 8 ⎠ ⎞ p ​ ​ ​ ​ ​ ​ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ 1 ⎝ ⎛1 0 0 0 −1 0 0 0 0⎠ ⎞ 2 ⎝ ⎛0 0 0 1 0 0 0 0 0⎠ ⎞ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ 3 ⎝ ⎛0 0 0 0 0 0 1 0 0⎠ ⎞ 4 ⎝ ⎛0 1 0 0 0 0 0 0 0⎠ ⎞ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ 5 ⎝ ⎛0 0 0 0 0 0 0 1 0⎠ ⎞ 6 ⎝ ⎛0 0 1 0 0 0 0 0 0⎠ ⎞ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ + p ​ ​ ​ ​ ​ ​ 7 ⎝ ⎛0 0 0 0 0 1 0 0 0⎠ ⎞ 8 ⎝ ⎛0 0 0 0 −1 0 0 0 1⎠ ⎞
  23. 注意 これらの例を通して,リー代数の元に 2 つのとらえ方がある ことに注意したい: 角速度や速度としての解釈 接ベクトル (微分) としての直接的な意義 姿勢を表すパラメータとしての解釈

    指数写像でリー群に対応付けられることによる意義 一般に全射とは限らない ( は全射ではない) 指数写像が全射になる場合も, 微分は単位元にお いて行うようにすると計算しやすい: 例えば反復計算による最適化をする場合, 反復ごとに 座標系を取り直して常に単位元における微分を使うの がコツ 29 / 38 SL(3) ​ exp(p ​ X ​ + ⋯ p ​ X ​ ) ​ ​ = ∂p ​ k ∂ 1 1 n n ∣ ∣ p=0 X ​ k
  24. 交換子積 に対して以下の点 を考える ( と が可換なら は単位元のまま動かないが, 非可換のとき 上の曲線であり で単位元を通る):

    行列指数関数の定義を代入して展開すると, ( の1次の項が現れないことに注意.3次以上は省略) パラメータを と取り直して を作ると, は単位元における 接ベクトルであり に属する          よって を任意に取ったとき も に属することが要請される と書き,交換子積と呼ぶ 31 / 38 X, Y ∈ g P(t) X Y P(t) G t = 0 P(t) = exp(tX) exp(tY ) exp(−tX) exp(−tY ) P(t) = I + t (XY − 2 Y X) + ⋯ t s = t2 Q(s) = P( ​ ) t ​ (0) = Q ˙ XY − Y X g X, Y ∈ g XY − Y X g [X, Y ] = XY − Y X
  25. 交換子積の解釈と性質 と 非可換のとき, と がどのくらい異なるかを表すのが 可換ならば 以下の性質は直接計算により示すことができる: 歪対称性: 双線形性: ヤコビの恒等式:

    これら3つを満たす積 をリー括弧積と呼ぶ.交換子積 はその具体例 リー括弧積が定義されたベクトル空間をリー代数とみなすことができる (詳細は省略) 32 / 38 X Y XY Y X [X, Y ] = XY − Y X [X, Y ] = O [X, Y ] = −[Y , X] [c ​ X ​ + 1 1 c ​ X ​ , Y ] = 2 2 c ​ [X ​ , Y ] + 1 1 c ​ [X ​ , Y ] 2 2 [[X, Y ], Z] + [[Y , Z], X] + [[Z, X], Y ] = O [x, y] [X, Y ] = XY − Y X
  26. 交換子積のご利益 事実: と が零元に十分近いとき以下が成り立つ (ベイカー・キャンベル・ハウスドルフの公式) 省略されている高次の項もすべて と とそれらに交換子積を繰り返し適用したものの線形和で表せる つまり,リー代数 の交換子積の挙動がわかれ

    ば,対応するリー群 の積の挙動がわかる リー代数はベクトル空間だから,適当な基底 について交換子積の関係を列挙しておけば, あらゆる元どうしの交換子積の挙動がわかる ∵ 交換子積は双線形 33 / 38 X Y exp(X) exp(Y ) = exp X + Y + ​ [X, Y ] + [X, [X, Y ]] + [Y , [Y , X]] + ⋯ { 2 1 12 1 ( ) } X Y g G
  27. の例 の基底として を取る (3 次元ベクトル空間の標準基底 の相互間のベクトル積の関係と同じになっている) 34 / 38 SO(3)

    so(3) J ​ , J ​ , J ​ 1 2 3 J ​ = 1 ​ ​ ​ ​ ​ , J ​ = ⎝ ⎛0 0 0 0 0 1 0 −1 0 ⎠ ⎞ 2 ​ ​ ​ , J ​ = ⎝ ⎛ 0 0 −1 0 0 0 1 0 0⎠ ⎞ 3 ​ ​ ​ ​ ​ ⎝ ⎛0 1 0 −1 0 0 0 0 0⎠ ⎞ ​ ​ [J ​ , J ​ ] 1 1 [J ​ , J ​ ] 1 2 [J ​ , J ​ ] 2 3 [J ​ , J ​ ] 3 1 = [J ​ , J ​ ] = [J , J ​ ] = O 2 2 3 3 = −[J ​ , J ​ ] = J ​ 2 1 3 = −[J ​ , J ​ ] = J ​ 3 2 1 = −[J ​ , J ​ ] = J ​ 1 3 2 e ​ , e ​ , e ​ 1 2 3
  28. の例 特殊ユニタリ群 : 次ユニタリ行列のうち行列式が 1 のものの集合 つまり , (ただし は共役転置)

    と同様の議論により, の元は歪エルミートでトレースが 0: よって の元は一般に , , を基底とすると, つまり と は同じ構造を持つ を虚数単位 で割るとパウリ行列になる 35 / 38 SU(2) SU(n) n QQ = H Q Q = H I ∣Q∣ = 1 QH SO(n) su(n) S = H −S, tr S = 0 su(2) ​ ​ = ( ih ​ 3 h ​ + ih ​ 2 1 −h ​ + ih ​ 2 1 −ih ​ 3 ) h ​ ​ ​ + 1 ( 0 i i 0 ) h ​ ​ ​ + 2 ( 0 1 −1 0 ) h ​ ​ ​ 3 ( i 0 0 −i ) S ​ = 1 ​ ​ 2 1 ( 0 i i 0 ) S ​ = 2 ​ ​ ​ 2 1 ( 0 1 −1 0 ) S ​ = 3 ​ ​ ​ 2 1 ( i 0 0 −i ) [S ​ , S ​ ] 1 1 [S ​ , S ​ ] 1 2 [S ​ , S ​ ] 2 3 [S ​ , S ​ ] 3 1 = [S ​ , S ​ ] = [S ​ , S ​ ] = O 2 2 3 3 = −[S ​ , S ​ ] = S ​ 2 1 3 = −[S ​ , S ​ ] = S ​ 3 2 1 = −[S ​ , S ​ ] = S ​ 1 3 2 su(2) so(3) S ​ , S ​ , S ​ 1 2 3 i
  29. 単位クォータニオンの例 単位元 を通る 3 本の曲線を選んで,単位元における微分を取る: を基底に取ると, 36 / 38 q(t,

    ω ​ , ω ​ , ω ​ ) = 1 2 3 cos ​ + 2 t (ω ​ i + 1 ω ​ j + 2 ω ​ k) sin ​ 3 2 t i = 2 j = 2 k = 2 −1, ij = k, jk = i, ki = j ω ​ + 1 2 ω ​ + 2 2 ω ​ = 3 2 1 1 q ​ (t) = 1 cos ​ + 2 t i sin ​ , ​ ​ (0) = 2 t q ˙1 ​ i 2 1 q ​ (t) = 2 cos ​ + 2 t j sin ​ , ​ ​ (0) = 2 t q ˙2 ​ j 2 1 q ​ (t) = 3 cos ​ + 2 t k sin ​ , ​ ​ (0) = 2 t q ˙3 ​ k 2 1 u ​ = 1 ​ i, u ​ = 2 1 2 ​ j, u ​ = 2 1 3 ​ k 2 1 [u ​ , u ​ ] 1 1 [u ​ , u ​ ] 1 2 [u ​ , u ​ ] 2 3 [u ​ , u ​ ] 3 1 = [u ​ , u ​ ] = [u ​ , u ​ ] = 0 2 2 3 3 = −[u ​ , u ​ ] = u ​ 2 1 3 = −[u ​ , u ​ ] = u ​ 3 2 1 = −[u ​ , u ​ ] = u ​ 1 3 2
  30. まとめ 剛体変換や射影変換はリー群の一種 リー群 = いたるところで接平面が定まる滑らかな群 リー代数 = リー群の単位元における接空間 交換子積 (より一般にはリー括弧積)

    について閉じたベクトル空間 基底に関して交換子積を調べ上げることで構造が定まる 指数写像 = リー代数からリー群への自然な対応 指数写像により,リー群の単位元近傍に扱いやすい「目盛り」を入 れられる 37 / 38
  31. 参考文献 佐武 一郎: リー群の話, 日本評論社, 1982. 示野 信一: 演習形式で学ぶリー群・リー環, サイエンス社,

    2012. Richard M. Murray, Zexiang Li, S. Shankar Sastry: A Mathematical Introduction to Robotic Manipulation, CRC Press, 1994. Kevin M. Lynch, Frank C. Park: Modern Robotics: Mechanics, Planning, and Control, Cambridge University Press, 2017. John Stillwell: Naive Lie Theory, Springer, 2008. 鏡 慎吾: ロボット工学のためのリー群・リー代数入門, 日本ロボット学会誌, 2023. 38 / 38