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2026/02/04 AIキャラクター人格の実装論 口 調の模倣から、コンテキスト制御による ...

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February 14, 2026

2026/02/04 AIキャラクター人格の実装論 口 調の模倣から、コンテキスト制御による 『思想』と『行動』の創発へ

2026年に行われた「Tech Challenge Party」での登壇資料です。
https://f2ff.jp/introduction/11744?event_id=20260204
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2026年、SFT(Supervised Fine-Tuning)の民主化により、誰もがデータセットを用意し、キャラクターの「口調」を模倣させることが可能になりました。しかし、表面的なセリフを学習させるだけでは、想定外の事態に弱い「着ぐるみ」のようなBotしか生まれません。本セッションでは、「それっぽく話す(Talk)」フェーズから、「思想を持ち、行動し(Action)、その結果として話す」フェーズへの移行を提言します。 重要なのは出力結果ではなく、「どのような思考を経てその発言に至ったか」というプロセスの設計です。

当日は、OSSとして公開・検証した独自エンジンの実装事例を交えながら、以下の技術トピックを解説します。
SFTの限界とレイヤー設計
モデルの学習(SFT/LoRA)ではなく、プロンプトとコンテキスト制御に回帰すべき理由。
「老化」と「可塑性」の実装(Personality Engine)
経験(ログ)の蓄積によってパラメータを変化させ、価値観を不可逆的に固着させる「思考の減衰」モデル。
「非合理性」の構造化(Anamnesis)
過去の体験やトラウマをInputとし、防衛機制としての「行動の偏り」を出力するアーキテクチャ。
展望:MCPによる行動の創発
確立された「思想」が、Model Context Protocolを通じてどのように外界への「行動」を選択するか。
モデルを賢くするのではなく、モデルに「制約」と「偏り」を与えることで人格を宿す、アプリケーションレイヤーの実装論をお話しします。

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Sald ra

February 14, 2026
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Transcript

  1. 自己紹介 サルドラ AI キャラクター開発者 / エンジニア 活動 「生成AI なんでも展示会」主催 AITuber

    入門本著者 「AITuber を作ってみたら生成AI プログラミングがよくわかった件」 「AITuber を作ってみたらプロンプトエンジニアリングがよくわかった件」 公開OSS Personality Engine - 経験から学び老いる人格エンジン Anamnesis - 心理学的アーキテクチャによる人格構造化ツール 2
  2. おしながき 1. 現状のAI キャラクターについて知る 2. 新しいフェーズ「人格」の時代へ 3. 自分で人格を育てる...Personality Engine 4.

    キャラクターとして人格を作る...Anamnesis 5. 人格から行動の創発へ...MCP 連携 6. まとめ 3
  3. SFT の限界 ユーザー: 友達に裏切られたんだ...つらい Bot: それは大変だったね!元気出して!何か楽しいことしよ! ユーザー: 最近、自分の価値がわからなくなってきた Bot: そんなことないよ!君は素敵だよ!自信持って!

    問題点 口調は「元気なキャラ」を再現している 様々な口調にチューニングもできる しかし文脈理解と共感の深みが欠落 「設定通りに話す」だけで思考していない 5
  4. これからのAI キャラクター 「どう思って発言したのか」がわかるキャラ Before 発言のみ生成 ↓ 行動が単調 After 思考過程を含む ↓

    発言・行動・内省 すべてが創発可能 思想-> 行動の多段階推論設計、発言のみの時代の終焉へ 6
  5. 設計思想 「当事者性を持った、流動的で偏りのある思想」を目指す 問題意識 解決策 テキストの世界に人格を入れる ことで 疑似的な当事者性を獲得させる ポイント 1. 経験学習

    - テキストを「体験」として学ばせる 2. 老いの導入 - 価値観が徐々に固まっていく AI は身体を持たないため当事者性がない → 理想論に偏りやすい “ “ 9
  6. フェーズに分けたプロンプト設計 分析フェーズ   └ 客観的に読み感想を言語化   ↓ 没入フェーズ   └当事者視点に切り替え   └主観的情景を記述   └心の揺れを出力   ↓

    人格への統合 没入フェーズのプロンプト例 → ドラえもんの「絵本入りこみぐつ」のように実際に世界に入る 「あなたはこのテキストの世界に実際に入ることになりました。 そこで見た情景を主観的に、思ったことを詳細に記述してください」 “ “ 10
  7. 「老い」の導入 ~可塑性(Plasticity )パラメータ~ 状態 可塑性 特徴 若年期 1.0 どんな経験も素直に受け入れる 成熟期

    0.7 新しい価値観を取り入れにくくなる 老年期 0.3 以下 既存の価値観を補強するのみ 人間と同じメカニズム 「いくつのテキストを学習したか」= 年齢 年齢が上がるほど価値観が固まる 経験による不可逆的な変化 11
  8. 可塑性計算ロジック function calculatePlasticity(age: number, params: PlasticityParams): number { // 1.

    若年期は柔軟性を維持 if (age <= params.youth_period_days) { return 1.0; } // 2. 成熟期に向かって指数関数的に減衰 const daysAfterYouth = age - params.youth_period_days; const decay = Math.exp(-params.decay_rate * daysAfterYouth); // 成熟点での値を基準にカーブを補正 const targetAtMaturity = 0.7; const correction = targetAtMaturity / Math.exp(-params.decay_rate * (params.maturity_point - params.youth)); // 3. 最小値を下回らないように制限 return Math.max(decay * correction, params.minimum_plasticity); } 13
  9. 衝撃体験による「若返り」 閾値を超えた体験で可塑性がリセット if (adjustedArousal >= dynamicArousalThreshold) { // Reset age

    on major change - 年齢を半分にリセット const oldAge = currentPhilosophy.age_in_days; currentPhilosophy.age_in_days = Math.max(Math.floor(oldAge / 2), 30); } 効果 衝撃的な体験 → 発想が柔軟に 頑固だった人格が、ある日突然大きな気づきを得る 生命感のある存在へ 14
  10. 人格エンジンの効果 Before ❌ 静的な設定に縛られる ❌ 経験から学ばない ❌ いつまでも同じ反応 ❌ 思想の理由が存在しない

    → すぐに飽きられる After ✅ 経験を通じて変化する ✅ 時には頑固になる ✅ ある日突然、若返る ✅ 思想の理由が存在する → 生命感と驚きがある 15
  11. Input → Process → Output 例: 「無口なキャラクター」の構造化 Input: 過去に強い⾔葉で⼈ を傷つけた経験

    Process: ⾔葉の威⼒への過 剰警戒 Output: 類似ケースでの緘 黙 友⼈が強い⾔葉を使いそう になったら注意する 泣いている友達を積極的に フォローする 強い⾔葉を発した記憶を思 い出し⾔葉に詰まる 効果 漠然とした「無口」という設定から脱却し、 文脈を含めた行動・発言の生成が可能に 18
  12. 心理学モジュール統合 早期不適応スキーマ(メイン) スキーマ療法/ ジェフェリー・ヤング による モード・コーピング・中核的な傷 の分析 4 つの並列モジュールが統合 モジュール

    役割 ユング心理学 8 機能モデル・認知特性 ナラティブ アイデンティティ シュワルツ 価値観理論・意思決定 グリップ ストレス反応 19
  13. 構造化データ出力(Markdown ) # [キャラクター名] - 深層人格アーキテクチャ ## 1. サマリー -

    アーキタイプ: ENTJ (指揮官) - 支配的な価値観: 自己高揚 (達成) > 自己超越 (博愛) - 中核的な傷: 無価値であることへの根源的な恐怖 - 主要な防衛: 過剰補償 ## 2. 認知的ダイナミクス ### 2.1 ヒーローと親(意識) Te-Hero(英雄としての外向的思考)が支配... ### 2.2 シャドウとグリップ(無意識/ストレス) 敗北に直面すると意識的システムが崩壊... 柔軟に加工可能なMarkdown 形式で出力 20
  14. 出力例:えみり サマリー 項目 値 アーキタイプ ENTJ ( 指揮官) 支配的な価値観 自己高揚(

    達成) > 自己超越( 博愛) 中核的な傷 無価値であることへの恐怖 主要な防衛 過剰補償 トリガー反応 行動ループ:刺激 → スキーマ活性化 → コーピング・モード 彼女の「能力」 「判断力」を疑う発言 → Te-Hero が過剰活性化 → 相手を論理的に完膚なきまでに打ち負かそうとする “ “ 21
  15. 対話型UI によるプロファイル構築 これを誰でも作れるようにする必要がある! AI カウンセラーによるインタビュー AI: そのキャラクターが最も恐れていることは何ですか? You: 自分が無価値であることを認めざるを得ない状況 AI:

    その恐れはどのような経験から生まれましたか? You: 幼少期、努力しても親に認められなかった経験から... 仕組み 1. AI が心理学理論に基づいた質問を投げかける 2. ユーザーはインタビューに答えるだけ 3. 裏側で複雑な心理プロファイルが自動構築 22
  16. 実例:えみりの暴走 🔧 MCP Action 🧠 Anamnesis 処理 🎯 Input ユーザー:

    その判断間違ってない? ⚡ スキーマ活性化 中核的な傷:無価値への恐 怖 💢 グリップ状態 Te-Hero 過剰活性化 モード: 激怒‧過剰補償 X API → 📱 煽りツイート 連投 えみりの出力例 「間違ってる」? ほう、なら論理的に説明してみろよ お前の判断力でできるならな てかそもそも私に意見できると思ってるのがウケる 実績で語れ 話はそれからだ あ、実績ないから意見してくるのかw 了解了解 → MCP がX API を叩き、このテキストを実際に投稿 25
  17. まとめ 「制約」と「偏り」を与えることで人格を宿す 本セッションのキーポイント 1. SFT → コンテキスト制御への回帰 口調の模倣ではなく、思考プロセスの設計 2. 「老化」と「可塑性」の実装

    経験による不可逆的な価値観の固着 3. 心理学的アーキテクチャ Input → Process → Output の因果関係 4. MCP による行動創発 確立された思想が外界への行動を選択 26