2022年7月に刊行されたヨーガン・アペロの名著『Management 3.0』の待望の邦訳『マネジメント3.0』の概要を紹介するチラシです。
1書籍『マネジメント 3.0:適応力の高いチームを育むための 6 つの視点』のご紹介本書は、アジャイル開発の土台となる自己組織化や奉仕型リーダーシップなどに基づく新たなマネジメントのあり方を提案するものです。本書の特徴は、そのような新たなマネジメントのモデル(マネジメント 3.0 モデル)を理論面と実践面の両方から解説していることです。⚫ 本書の基本情報⚫ 目次⚫ 本書の内容⚫ 本書に対するコメント本書の基本情報⚫ タイトル:マネジメント 3.0⚫ サブタイトル:適応力の高いチームを育むための 6 つの視点⚫ 著者名:Jurgen Appelo⚫ 翻訳者:藤井 拓⚫ 出版社:丸善出版 5,720 円(2022/8/4 現在、税込み)⚫ サイズ:A5 サイズ⚫ ISBN:978-4621307359目次⚫ 第 1 章:なぜ物事はそれほど単純ではないのか
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2⚫ 第 2 章:アジャイルソフトウェア開発⚫ 第 3 章:複雑系の理論⚫ 第4章:情報-イノベーションシステム⚫ 第5章:人々をどのように元気づけるか⚫ 第6章:自己組織化の基本⚫ 第 7 章:チームにどのように委任するか⚫ 第 8 章:意図的にリードし、統治する⚫ 第9章:制約をどのように揃えるか⚫ 第 10 章:ルール作りの技能⚫ 第 11 章:コンピテンスをどのように育むか⚫ 第 12 章:構造の上のコミュニケーション⚫ 第 13 章:構造をどのように成長させるか⚫ 第 14 章:変革の地形⚫ 第 15 章:すべてをどのように改善するか⚫ 第 16 章:全て間違っているが、いくらかは有用である本書の内容第 1 章-第 3 章では、マネジメント 3.0 の基礎となる複雑系の科学、アジャイル開発が説明されています。第 4 章以降は、図 1 で表されるマネジメント 3.0 モデルの 6 つの視点の各々が理論面から説明する章と実践面から説明する章の 2 章で説明されます。以降、マネジメント 3.0 の土台になる非線形性、アジャイル開発、複雑系を説明する第 1 章-第 3 章と、マネジメント 3.0 モデルの 6 つの視点の各々を2章で説明する第 4 章-第 15章、最後のまとめである第 16 章の概要を説明します。チームに委任する人々を元気づける制約を揃えるコンピテンスを育む構造を成長させるすべてを改善する図 1 マネジメント 3.0 モデル(マーティー)書籍 『Management 3.0』の図を基に作成
3第 1 章-第 3 章では、まず因果関係を理解し、それに基づいて将来を予測できるという線形なシステムと、因果関係が明確ではなく、将来の予測が困難だという非線形なシステムの両者が存在することを説明します。システムとは、人間の組織や生命体の群れのように複数の要素の相互作用からなるもので、それらのシステムのうちで非線形でその将来の挙動が困難だというものが複雑系です。我々を取り巻く世界が複雑系であれば、我々の組織もその環境に適応するために複雑系(正確には複雑適応系)でなければならないことを説明します。つまり、上位の指示と統制で動く階層的な組織(マネジメント 1.0)ではなく、上位の指示と統制無しに変化に柔軟に適応する組織(マネジメント 3.0)にならねばならないということです。加えて、アジャイル開発の概要やシステム科学の発展についても概説しています。第 4 章-第 5 章では、マネジメント 3.0 の「人々を元気づける」という視点を理論と実践の両面で説明します。ここでは、まず組織が情報を得て、それからイノベーションを生むという「情報-イノベーションシステム」として捉えます。この「情報-イノベーションシステム」は、知識、創造性、モチベーション、多様性、個性という 5 つの歯車により機能しており、これらの歯車を活性化させることが「人々を元気づける」ということです。書籍では、創造性、モチベーション、多様性、個性の4個の歯車を活性させる方法を理論面と実践面の両面から説明します。第 6 章-第 7 章では、マネジメント 3.0 の「チームに委任する」という視点を理論と実践の両面で説明します。第6章では、自己組織化というのが自然界でありふれた現象であり、自己組織化するだけでは良いものも悪いものも生み出しうることを説明しています。さらにマネージャーとして自己組織化する組織に委任(エンパワメント)することでメンバーを成長させること、権限移譲のレベルの選択肢、組織に対する委任のレベルについて説明しています。第 8 章-第 9 章では、マネジメント 3.0 の「制約を揃える」という視点を理論と実践の両面で説明します。自己組織化する組織がより良い成果を生むためのマネジメントの役割が、目指すべき方向性を設定したり、ここだけは守ってほしいという最低限の境界を設定することであることを説明しています。さらに、マネージャーの役割が「育む」、「守る」、「方向づける」ことであることを説明しています。第 10 章-第 11 章では、マネジメント 3.0 の「コンピテンスを育む」という視点を理論と実践の両面で説明します。ここでは、アジャイル開発では高いコンピテンスが求められるにも関わらずそのことを明示していないことが死角になっていると論じ、コンピテンスを育むための 7 つオプションを説明しています。また、組織の実務上のルールを、マネジメントから課すのではなく、実務メンバーが自らルールを作ることができるようになることを目指すべきことだということを説明しています。第 12 章-第 13 章では、マネジメント 3.0 の「構造を成長させる」という視点を理論と実践の両面で説明します。まず、組織のパフォーマンスや適応性を左右するのは、人々のつながりと底を介したコミュニケーションの質です。この 2 章では、組織の編成の際に考慮す
4べき、コミュニケーションを媒介する原型(アーキタイプ)について説明し、組織の編成のオプションとしてスペシャリスト中心の機能組織と機能横断的な組織の両方について論じます。さらに、組織間の調整方式のオプションと組織をスケールさせる2つのオプション、スケールアップとスケールアウトについて論じます。第 14 章-第 15 章では、マネジメント 3.0 の「全てを改善する」という視点を理論と実践の両面で説明します。組織変革は、ビジネス環境の中で自らの適応性を高めるために行うものです。これは、生物が進化の中で自らの遺伝子を変化させることで環境への適応性を高めてきた行為に似ています。この章では、変革による適応性の変化を可視化する適応度地形を紹介し、さらに生物の進化における 3 つの戦略を組織変革に適用するというアイデアを提案しています。第 16 章は、ネタバレになると面白くないので、詳しい内容は読んでのお楽しみですが、マネジメント 3.0 を完全に伝えることの難しさとそれの克服方法について論じています。本書に対するコメント以下に本書を読み、コメントを寄せて下さった方々のコメントを紹介します。“いわばアジャイルなマネジメントに向けて、複雑性の理論から組織やマネジメントを捉え、自己組織化やモチベーション、成長など多岐にわたり深い考察。チームやシステムを育む庭師の比喩等々示唆に富みUncle Bob の前書きにあるようにマネジメントの職人向きの逸品”鷲崎 弘宜, 早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 教授“アジャイル(ソフトウェア開発)、そして複雑系理論から始まり、人、リーダー、チームそしてルールに触れ、構造の理解とその成長、変革および改善へと至る。著者の執筆に至る最初のインスピレーションとその後の旅とも一致する展開は物語のよう。各章には経営工学(技術含む)に関わる古典、最新理論、実践から紡いだ語句が所狭しと織り交ぜられており、洋書(英語)ならでは情報密度に圧倒される。しかし、読者を手引きし、導いてくれるような不思議な丁寧さがあり、安心して読み進められる。…“中谷 公巳, アクシスインターナショナル株式会社 代表取締役
5参考情報本 書 籍 紹 介 の PDF 版 や 書 籍 の 内 容 を 紹 介 す る プ レ ゼ ン 資 料 をhttps://speakerdeck.com/takufujii に掲載しています。参考文献⚫ ヨーガン・アペロ、マネージング・フォー・ハピネス――チームのやる気を引き出すゲーム、ツール、プラクティス、 明石書店、2022⚫ 藤井 拓、7 月末に Appelo さんの名著『マネジメント 3.0』が刊行されます、https://m3tlab.wordpress.com/2022/06/25/7%e6%9c%88%e6%9c%ab%e3%81%abappelo%e3%81%95%e3%82%93%e3%81%ae%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e3%80%8e%e3%83%9e%e3%83%8d%e3%82%b8%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%883-0%e3%80%8f%e3%81%8c%e5%88%8a%e8%a1%8c%e3%81%95%e3%82%8c/