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マネジメント3.0をその基礎となる複雑適応系、自己組織化から理解しよう

Taku Fujii
September 22, 2023

 マネジメント3.0をその基礎となる複雑適応系、自己組織化から理解しよう

マネジメント3.0(M30)は、ビジネス等の外界の変化への適応力の高い組織(複雑適応系)を育て、運営するためのアプローチである。M30を理解するためには、最終的に目指す組織全体の状態としての複雑適応系と、適応力の高い組織を作るうえでチームレベルの土台となる自己組織化の理解が鍵になる。本セッションは、複雑適応系、自己組織化、M30モデルの3つのパートで構成され、各パートで講演と議論を実施することでパートの内容の理解を深めることを目指す。
講演部分では、まずM30と従来のマネジメントの違いを説明し、簡単な例を用いて複雑適応系の組織の具体的なイメージを説明する。次に自己組織化を理解するために、アジャイル開発フレームワークであるスクラムの適用により、もたらされる自己組織化した、いいチームの状態と、そのいい状態が形成される仕組みを説明する。さらに、自己組織化したチームとともに変化への適応力の高い組織(いいチームの状態)を実現するためのマネジメントのあり方を提示するM30モデルの3つの視点を説明する。
講演内容の理解を促進するために、本セッションの冒頭でグループ分けを行い、以降のパートではグループ毎に議論を行っていく。

Taku Fujii

September 22, 2023
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Transcript

  1. 本セミナーのアウトライン ⚫アイスブレイク ◆グループ内の自己紹介等 ⚫複雑適応系とマネジメント3.0 ◆議論 ⚫アジャイル開発の「自己組織化」とマネジメント3.0 ◆議論 ⚫マネジメント3.0モデルとその3つの視点 ◆全体の振り返り 2023/9/23

    3 ©2023 M3&T LAB. 本セミナーでは、お話のパートごとにグループ毎の議論を実施します。 全体的に時間がタイトなので、グループワークは時間厳守でお願いします!
  2. なぜ、マネジメント3.0 なのか? ⚫現在、周囲の速い変化にすばやく適応する組織作りが 求められており、その鍵を握るのがマネジメントだから。 ◆自己組織化 ◆サーバントリーダーシップ ⚫Jurgen Appeloが書籍『Management 3.0 —

    Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders』でその1つの回答 となるマネジメント3.0モデルを理論と実践の両面から説 明した 2023/9/23 6 邦訳:Jurgen Appelo, マネジメント 3.0 :適応力の高いチームを育むための6つの視点, 丸善出版, 2022 ©2023 M3&T LAB.
  3. 自己組織化! マネジメントの責務とマネジメント3.0 マネジメントの責務は主として以下のようなものだと思うが、マネジメント3.0モデルはこ れらを従来と異なる視点で考え直すことで、組織の適応性を高める道筋を切り開くこと を助けるという意義を持つ ◆ビジョン(方向性)を考える ◆リソースを確保する ◆様々な判断をする ◆分担(実行方法)を考える ◆育成する、または成長を支援する

    ◆組織を作る ◆現状を把握する ◆現状や今後の見通しを説明する ◆成果(結果)に対する責任を負う 2023/9/23 8 チーム/グループ マネジメント ここでのマネジメントは、主としてチームのマネジャーを指すが、同時にラインマネジメント階層も指す。 マネジメント3.0 モデルは、従来のやり方を再考し、組織の適応性を高めるための視点を提供する ©2023 M3&T LAB.
  4. 線形な考え方 対 非線形な考え方 自分たちを取り巻く世界(システム)の捉え方は、2通りある ◆線形な考え方 ➢世界が将来どのように振舞うかは、因果関係によって決まる。因果関係を理解すれば、将来の振る舞いを予測 できる。 ◆非線形な考え方 ➢世界の振る舞いを左右する因果関係は複雑で理解するのは困難である。そのため、世界の将来の振る舞いを 予測することは困難である。

    ◦ 複雑性とは、将来の振る舞いの予測が困難なことを意味する 「線形な考え方」でマネジメントする場合、「因果関係を理解した」人にみんな (部下)が従えばよいというようになることが多い。 2023/9/23 9 システム(系)とは、複数の相互作用する要素から構成されるものを意味する:太陽系、人間の集団、等々 ©2023 M3&T LAB.
  5. マネジメント 1.0, 2.0 対 3.0 階層型組織+線形思考 対 非線形思考 2023/9/23 11

    マネジメント1.0 マネジメント2.0 マネジメント3.0 マネジメント1.0 は、上位マネジメントが正しい指示を出し、統制するというモデル マネジメント3.0 は、組織自身を外界に適応する複雑系(複雑適応系)にすることを目指す ©2023 M3&T LAB.
  6. スクラム (Scrum) とは Jeff Sutherland、Ken Schwaber、Mike Beedleによって提案されたコンパクトな(プ ロジェクト管理)アジャイルフレームワーク ◆ラグビーのスクラムに、ちなんだ名称 ◆野中らの知識創造プロセスの影響を受けている

    「ラグビーボールは一定のやり方では動かない…ラグビーボールの動きは、フィールドでの チームメンバーの連携プレーから生まれてくるのである。…それは、チーム・メンバー間の濃密 で骨の折れる相互作用を必要とする」(野中郁次郎、竹内弘高、『知識創造企業』、東洋経済 新報社、1996を引用) 2023/9/23 18 スクラムは世界的にもっともよく使われているアジャイル開発フレームワークである ©2023 M3&T LAB.
  7. 自己組織化した良いチームの振る舞い イベント 開発チームの振る舞い スプリント計画 不明点を可能な限り無くして、POが目指すものを考慮した達成可能な計 画を立案し、確約する デイリースクラム 自分の作業だけではなく、チーム全体の状況を認識する。個人の遅れ等 を責めるのではなく、むしろ不都合なことを正直に言ってくれたことに感謝 し、その問題に対処する。

    スプリントレビュー 自分達の仕事の成果を喜び、フィードバックに感謝する スプリント振り返り 自分達の仕事の結果とそれをもたらした過程でよかったこと、不十分点に ついてメンバー各自が自由かつ積極的に意見を出すとともに、これらの意 見から次のスプリントで適用できる改善策を一緒に考える 2023/9/23 27 ⚫ プロダクトオーナー(PO):目標を押し付けない。チームが成果を達成するために協力する。 ⚫ スクラムマスター(SM):困っているメンバーの問題解決を助けるとともに、スクラムを説明し、より良い 状態への移行を支援する。 ©2023 M3&T LAB.
  8. スクラムの外界への適応力を高める仕組み 2023/9/23 34 モチベーション 内発的モチベーション を高めるもの • 自律性 • 習熟

    • 目的 ダニエル・ピンク、『モチベー ション3.0』、講談社、2010 POとSMを「マネジメント」に置き換えると、マネジメント3.0の3つの視点が実現しようとしている状態とほぼ重なる 活性化 ©2023 M3&T LAB. 創発
  9. 50個の美徳の大きなテーブル 正確さ 創造性 正直さ 粘り強さ シンプルさ 自己主張 好奇心 ユーモア 現実主義

    スキル 美学 潔さ 勤勉 明確な目的を持つ 管理 バランス 決断力 率先 合理性 如才なさ 慎重 忍耐力 誠実 信頼性 徹底 清潔 熱意 楽しさ 回復力 寛容 真剣さ 卓越 知識 敬意 信頼 自信 柔軟性 注意深さ 責任 頼り甲斐 協力 焦点 率直さ 自己訓練 結束 勇気 有益さ 整頓 奉仕 ビジョン 42 書籍 『Management 3.0』の表を翻訳 2023/9/23 ©2023 M3&T LAB.
  10. 視点#2:チームに委任する 委任(エンパワメント)することで、チームの成長を後押しする。また、以下のよう な意思決定のオプションを理解し、使い分ける。 44 自己組織化した チーム/グループ マネジメント 責任を委ねる 告げ る

    売り 込む 相談 する 合意 する アドバ イスす る 尋ね る 委譲 する 責任を抱え込 む 起こりがちなこと 自分の発想 に限定される 失敗を恐れる 2023/9/23 ©2023 M3&T LAB.
  11. 第7章「チームにどのように委任するのか」 :委任対委譲 ⚫委任 対 委譲 ◆委譲: ➢何らかの責任を誰か他の人に任せる行為(出典『Management 3.0』を独自に翻訳) ◆委任: ➢委譲以上のものであり、以下のことをサポートする

    ◦ リスクを取る ◦ 個人の成長 ◦ 文化の変革 ➢権限を認めることだけではなく、相手がどれほど力を持っているかを認める。(出典『Management 3.0』を独自に 翻訳) ➢それでも、マネージャーにとっては怖いことでもある 45 2023/9/23 ©2023 M3&T LAB.
  12. 第8章「目的に沿ってリードし、統治する」 :自己組織化するチームとマネージャー ⚫パラメーターを構成する ◆自己組織化するチームは、一定のパラメーターが決定的な範囲にある時にカオスの縁に取り組む(出 典『Management 3.0』を独自に翻訳) ➢多様性、情報のフロー、チーム間のつながりなど ➢ゲームの細かいルールを作る必要はない ⚫システムを守る ◆マネージャーとして、私は働くのによく、安全な組織とするための基本的な管理を実施し、そして人々や

    共有されたリソースが確実に公平に扱われることで、人々と共有されたリソースを守る。(出典 『Management 3.0』を独自に翻訳) ➢例えば、ハラスメントやイジメなどが起きないようにしたり、限られた予算や共有環境を管理する 49 • 「パラメーターを構成する」とは、チームメンバーの選定/採用等によりチームの初期状態を作ることである • カオスの縁:秩序と無秩序の間に位置し、線形な思考では予測困難な、複雑な振る舞いが生じる 2023/9/23 ©2023 M3&T LAB. 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成
  13. 全体のまとめ マネジメント3.0を理解するためには、マネジメント3.0が目指す組織のあり方につい て具体的なイメージが持つことが有効である ◆複雑適応系 ◆自己組織化 ⚫今回のお話 ◆複雑適応系とマネジメント3.0 ◆アジャイル開発の「自己組織化」とマネジメント3.0 ◆マネジメント3.0モデルとその3つの視点 2023/9/23

    54 チームに委任する 人々を元気づける 制約を揃える コンピテン スを育む 構造を 成長させる すべてを 改善する 書籍 『Management 3.0』の図を基に作成 ©2023 M3&T LAB. • スクラム等でどのように自己組織化の良い状態の実現を促進しているかが参考になる • マネジメント3.0は、マネジメントが一人で学ぶこともできるし、チームとともに学ぶこともできる!
  14. 参考文献 ⚫ Jurgen Appelo、マネジメント 3.0 :適応力の高いチームを育むための6つの視点、 丸善出版、 2022 ⚫ ヨーガン・アペロ、マネージング・フォー・ハピネス――チームのやる気を引き出すゲーム、

    ツール、プラクティス、 明石書店、2022 ◆ マネジメント3.0に基づくゲーム、ツール、プラクティスを紹介する書籍 ⚫ 書籍『マネジメント3.0:適応力の高いチームを育むための6つの視点』のご紹介: https://onl.la/NyqZSas ◆ 書籍紹介 ⚫ ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン、経営の未来、日本経済新聞社、2008 ◆ マネジメント3.0と似た考え方で、大企業を変革した事例が紹介している 2023/9/23 55 ©2023 M3&T LAB.