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SLAMはどこまで解決されたのか?

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July 09, 2026

 SLAMはどこまで解決されたのか?

ROBOMECH2026 ワークショップ SLAMの現在地: 到達点・課題・展望
2026年6月29日

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tomonom

July 09, 2026

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Transcript

  1. 2 自己紹介 • ~1999 NEC勤務 • 1999~2002 筑波大学 油田研究室(ロボ研) 博士課程

    • 2002~2006 JSTさきがけ研究者 • 2006~2008 東洋大学准教授 • 2008~ 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 主席研究員・副所長 経歴 ロボットの研究はここから • 移動ロボットのナビゲーションとそのための環境認識 昔は、物体認識や地図構築の研究は少なかった よそ者、ばか者、若者 研究分野 当時の私
  2. 3 SLAMのざっくりとした歴史 SLAM: Simultaneous Localization and Mapping • 1986年~ Smith

    and Cheeseman が基本概念を提唱 • 1990年~ Leonard and Durrant-Whyte がカルマンフィルタで理論整備 • 2000年~ Burgard, Fox and Thrun が ベイズフィルタやグラフ最適化で発展 • 2010年~ ポーズグラフ最適化、3D-SLAM、Visual SLAM • 2020年~ IMU融合、深層学習SLAM 昔は、地図を手作業で作っていた。 研究室の模様替え → 地図作成(一大行事) Lidarの登場で SLAMブーム いい加減な地図で ナビゲーション 当時の私の研究テーマ
  3. 5 地図はとても重要 ナビゲーションのほぼすべてで地図を必要とする • 自己位置推定 : 初期位置あり(逐次推定)、初期位置なし(大域推定) • 経路計画 :

    目的地設定、既知障害物 (事前地図) • 障害物回避 : 未知障害物、移動障害物 (オンライン地図) • 走行領域認識 : 地形、材質・地質、交通法規、マナー • 場所認識 : 目的地判定、場所ごとの行動選択
  4. 7 SLAMとは何だったか? 考え方はシンプル • ロボット位置とランドマーク位置の連立方程式 (Simultaneous equations) • 冗長な方程式になるので、最小二乗法で解く (最適化アプローチ)

    ロボット位置と地図の同時推定が必要 x1 q1 z1 x2 x3 z5 z6 q3 q2 z3 z4 q4 z2 a1 a2 𝑞1 = 𝑥1 + 𝑧1 𝑞2 = 𝑥1 + 𝑧2 𝑥2 = 𝑥1 + 𝑎1 𝑥2 = 𝑞2 − 𝑧3 𝑞3 = 𝑥2 + 𝑧4 𝑥3 = 𝑥2 + 𝑎2 𝑥3 = 𝑞3 − 𝑧5 𝑞4 = 𝑥3 + 𝑧6
  5. 8 8 𝐺 = ෍ 𝑡 (𝑥𝑡 − 𝑔(𝑥𝑡−1 ,

    𝑎𝑡 ))𝑇Ω𝑡 −1(𝑥𝑡 − 𝑔 𝑥𝑡−1 , 𝑎𝑡 )+ ෍ 𝑡 ෍ 𝑖 (𝑧𝑡 𝑖 − ℎ(𝑥𝑡 , 𝑞𝑗𝑖))𝑇Σ𝑖,𝑡 −1(𝑧𝑡 𝑖 − ℎ(𝑥𝑡 , 𝑞𝑗𝑖)) 負の対数をとる 完全SLAM 𝑝(𝑥0:𝑡 , 𝑚 𝑧1:𝑡 , 𝑎1:𝑡 , 𝑐1:𝑡 = 𝜂𝑝(𝑥0 ) ς𝑡 𝑝 𝑥𝑡 𝑥𝑡−1 , 𝑎𝑡 ς𝑖 𝑝(𝑧𝑡 𝑖|𝑥𝑡 , 𝑚, 𝑐𝑡 𝑖) [Thrun, Burgard & Fox 2005] 最適化アプローチ • 運動予測とランドマーク計測の確率モデルを作る • 運動モデルと計測モデルからベイズ推定を構成 • 各モデルに正規分布を仮定し、最小二乗法に帰着 (ガウス-ニュートン法 ≈ 繰り返しEKF) • 全データが揃った後に一括処理: 適切な初期値が必要
  6. 9 9 𝐺𝑡 = (𝑥𝑡 − 𝑔(𝑥𝑡−1 , 𝑎𝑡 ))𝑇Ω𝑡

    −1(𝑥𝑡 − 𝑔 𝑥𝑡−1 , 𝑎𝑡 )+ ෍ 𝑖 (𝑧𝑡 𝑖 − ℎ(𝑥𝑡 , 𝑞𝑗𝑖))𝑇Σ𝑖,𝑡 −1(𝑧𝑡 𝑖 − ℎ(𝑥𝑡 , 𝑞𝑗𝑖)) 逐次SLAM ( ≈ オンラインSLAM) 最適化アプローチ • 各時刻のデータから逐次的に地図を作る: 完全SLAMの初期値になる • 時刻 t-1の地図にスキャンをマッチングさせて、時刻 t のロボット位置を推定する • ロボット位置に沿って、スキャンを配置して地図に加える
  7. 10 10 ロボット位置と地図の分離 最適化アプローチ • ランドマーク位置は、ロボットの軌跡が決まれば互いに独立(条件独立性) • ロボットの軌跡を求めた後、ランドマーク位置を個別に求める • これにより、一度に最適化する変数の個数を大幅に減らせる

    𝑝 𝑥1:𝑡 , 𝑚 𝑧1:𝑡 , 𝑎1:𝑡 ) = 𝑝 𝑥1:𝑡 𝑧1:𝑡 , 𝑎1:𝑡 ) ෑ 𝑗 𝑝(𝑞𝑗 | 𝑥1:𝑡 , 𝑧1:𝑡 ) 軌跡 ランドマーク 𝑝 𝑥𝑡 , 𝑚𝑡 𝑧1:𝑡 , 𝑎1:𝑡 ) ≈ 𝑝 𝑥𝑡 𝑧𝑡 , 𝑎𝑡 , 𝑚𝑡−1 ) ෑ 𝑗 𝑝(𝑞𝑗 | 𝑥𝑡 , 𝑧𝑡 , 𝑚𝑡−1 ) 位置 ランドマーク 完全SLAM 逐次SLAM 𝑚𝑡−1 は定数
  8. 11 SLAMは解決されたか? SLAMの課題 (本講演ではLidar SLAMに限定) 課題 内容 解法 同時推定 ロボット位置とランドマーク位置の同時推定

    完全SLAM、逐次SLAM 計測誤差 センサデータのノイズ、ドリフト ベイズ推定、最小二乗法 スケーラビリティ 大規模空間の膨大なセンサデータ、処理時間 ロボット位置と地図の分離 データ対応づけ センサデータとランドマークをどう対応づけるか ? ロバスト性 センサデータの外れ値、歪み、速い動き、環境変化 ? 退化 位置合せのためのセンサデータが不足 ? ループ閉じ込み 推定誤差の累積によって周回路で地図がずれる ? キッドナップ ロボットを強制移動 (大域自己位置推定) ?
  9. 12 データ対応づけ SLAM = 位置の最適化(連続)+ 対応づけ最適化(離散) • 何も制約がないと計算量が膨大 • 地形・物体は変形しない

    → 対応づけはロボット位置でほぼ決まる (最近傍探索の場合) 解法: スキャンマッチング • 外れ値(誤対応)の除去: M推定 • IMUによるロボット位置の予測 センサデータとランドマークをどう対応づけるか 非常に有効 ランドマーク t-1 スキャン t ロボット位置 t-1
  10. 13 LIOはなぜ精度が高いのか? IMUによるスキャンマッチングの初期値設定 • スキャンマッチングには局所解がつきもの: 初期値が離れているほど局所解のリスクが高い • IMUにより初期値が最適値のすぐ近くに得られる: 局所解に陥る確率が減る Lidar

    Inertial Odometry (LIO) の高精度には何が効いているか? (例) スキャン10,000個で地図構築 (A) 初期値=前回位置: 局所解に陥る確率 1/100 scan 100個のスキャンで大ずれ (B) 初期値=IMU予測値: 局所解に陥る確率 1/10000 scan 1個のスキャンで小ずれ
  11. 15 ロバスト性 環境変化 (自己位置推定、地図更新) • 静止物体の増減、移動物体の存在 • ランドマークの増減により、データ対応づけに影響 自己位置推定: 既存地図と現在スキャンのマッチング

    逐次SLAM: 現在地図と現在スキャンのマッチング 環境変化に弱い ランドマーク増減はほぼない 解法 • 外れ値の除去: M推定 • 自己位置推定と逐次SLAMの同時実行
  12. 16 退化 ヘッセ行列のランク落ち 退化 (degeneracy): ランドマーク不足で位置決めができない G 𝒙𝑘 = ෍

    𝑗=1 𝑚 ( 𝒛𝑗 + 𝐻𝑗 𝒙𝑘 ))𝑇𝑄𝑗 −1(𝒛𝑗 + 𝐻𝑗 𝒙𝑘 ) • スキャンマッチングの最適化計算において、ヘッセ行列がランク落ちして解が不定になる 解法 • データ融合: 車輪オドメトリ、脚オドメトリ、IMU、GNSS、カメラ、レーザ輝度情報 • 潜在情報の利用: 振動情報、速度指令、擬似計測(変数制約) 𝑥𝑘 = − ෍ 𝑗=1 𝑚 𝐻𝑗 𝑇𝑄𝑗 −1𝐻𝑗 −1 ෍ 𝑗=1 𝑚 𝐻𝑗 𝑇𝑄𝑗 −1𝑧𝑗 ヘッセ行列
  13. 17 退化 有望な解法 データ融合も完璧ではない • FMCW-Lidar (周波数変調連続波Lidar): ドップラー効果で相対速度を計測可能 • 地面さえあれば、自分の速度を知ることができる

    • ただし、退化時はオドメトリとして使うので、どこかでランドマークによる位置修正は必要 • 車輪オドメトリ・脚オドメトリ: 車輪や脚がないとダメ。人の手持ちLidarは? • IMU: 並進推定が弱い。回転もバイアス補正が必要 • カメラ・輝度情報: テクスチャが必要 • GNSS: 衛星電波が悪い環境(高層ビル、森林、トンネル、地下、屋内)に弱い
  14. 18 ループ閉じ込み 解法 ループを手がかりに地図の広域誤差を削減 • 軌跡の修正: ポーズグラフ内の相対姿勢制約の残差を最小化 (ポーズ調整) • ループ検出:

    歪み小 → スキャンマッチング、 歪み大 → 大域自己位置推定 • ループ検出: 同じ場所に戻ったことを検出 • 軌跡の修正: 各点の位置誤差を最小化するように軌跡を調整 • 地図の修正: 修正軌跡に沿ってマップ点を再配置
  15. 19 キッドナッピング 解法 大域自己位置推定: 初期位置なしで自己位置推定する • 特徴空間探索: 点群の特徴量、画像特徴量で場所検索 • 位置空間探索:

    分枝限定法、パーティクルフィルタ • センサ融合: GNSS、カメラ • ロボット誘拐問題: ロボットのセンサを無効にして別の場所に移す • 広大なループ検出や地図結合でも生じ得る 万能策はない 問題設定が重要
  16. 20 SLAMは解決されたか? SLAMの課題 (本講演ではLidar SLAMに限定) 課題 内容 解法 同時推定 ロボット位置とランドマーク位置の同時推定

    完全SLAM、逐次SLAM ノイズ センサデータのノイズ、ドリフト、歪み ベイズ推定、最小二乗法 スケーラビリティ 大規模空間の膨大なセンサデータ、処理時間 ロボット位置と地図の分離 データ対応づけ センサデータとランドマークをどう対応づけるか IMUによる予測、M推定 ロバスト性 センサデータの外れ値、速い動き、環境変化 IMUによる予測、LIO+LOC 退化 位置合せのためのセンサデータが不足 データ融合、FMCW-Lidar? ループ閉じ込み 推定誤差の累積によって周回路で地図がずれる ポーズ調整、? キッドナップ ロボットを強制移動 (大域自己位置推定) ?
  17. 21 SLAMは解決されたか? 地図構築全般の課題はまだまだある 課題 内容 解法 移動物体 地図に広範囲なノイズを残す ? 地図更新

    環境の時間変化を地図に反映 ? 地図結合 地図領域を拡張する、複数ロボットの地図を結合 ? 探査と地図構築 未知環境でロボットが自律的にデータ収集して地図を作る ? セマンティクス 場所や物体の認識、データのセグメンテーション ? 作成管理コスト 地図の軽量化、トポロジカルマップ、経路グラフ ?
  18. 22 移動物体の検出・除去 移動物体の検出・除去 • 移動物体は地図上で広範囲なノイズとして残り、経路計画において障害物となる • 移動物体の点群を地図から取り除く: 物体認識、運動検出、速度検出 レイキャスティングによる運動検出 •

    原理: Lidarのレーザ光(レイ)が通過した区画(セル)には物体はなく、反射したセルに物体がある • 複数のレイからセルの占有確率を計算し、占有確率が小さいセルを移動物体とみなす [友納:ロボシン2021] Lidar p1 p3 レイ 占有 p2 非占有 未観測 [Hara: AR2020]
  19. 26 セマンティクス ロボットの動作の高度化 地図に意味を付与: 形状、位置、属性 • 物体: 机、椅子、ドア、冷蔵庫、自動車、バイク、人間、・・・ • 場所:

    玄関、部屋、廊下、道路、歩道、階段、ホール、畑、公園、・・・ • 走行可能性の判断: 車道、歩道、段差、スロープ、水たまり、芝生、砂利道 • 適切な場所の判断: 玄関から出入りする、階段で上がる、横断歩道を渡る • 物体操作の判断: 荷物を持って運搬する、ドアを開ける、自動車を警戒する ロボットの自律化に必須の機能
  20. 27 27 例: 物体地図 椅子A:9 椅子B:1 ケース:1 茶箪笥:1 机:9 モニタ:7

    キャビネット:2 本棚:2 流し台:1 ホワイトボード:1 小型ロボット:2 対象物体:11種36個 画像からの物体地図の生成 • 地図画像から3D地図を生成 • 背景の異なる物体画像から 共起エッジ点を抽出 [Tomono: ISVC2009]
  21. 29 SLAMは解決されたか? 課題 内容 解法 移動物体 地図に広範囲なノイズを残す 物体・運動・速度検出 地図更新 環境の時間変化を地図に反映

    いろいろ 地図結合 地図領域を拡張する、複数ロボットの地図を結合 いろいろ 探査と地図構築 未知環境でロボットが自律的にデータ収集して地図を作る いろいろ セマンティクス 場所や物体の認識・セグメンテーション いろいろ 作成管理コスト トポロジカルマップ いろいろ 地図構築全般の課題はまだまだある
  22. 30 まとめ 未解決問題 SLAMの進化 • SLAM: 退化、大域自己位置推定(ループ検出、キッドナップ、地図結合) • 地図構築全般: 広く果てしない

    • 課題は世代依存: 応用や目標次第でさまざまな課題が生まれる • センサの役割は大きい: ソナー、Lidar、カメラ、IMU、・・・ • 理論・アルゴリズムの整備も重要: フィルタ、ベイズ推定、最適化、リー代数、・・・ よそ者、ばか者、若者 期待