※ 本内容は筆者の個人的な見解であり、所属する企業・組織の公式見解ではありません。
本スライドでは、アジャイルの本質は組織学習であるということを主張しています(異論反論大歓迎でっす!!)
~初めに~
株式会社MIMIGURI(文科省認定研究機関)が運営する「CULTIBASE」
経営学者 野中 郁次郎先生のSECIモデル・先生ご自身の対談内容
本スライドのコア・ベース・大部分は、こちらから引用・参考にさせて頂いています
~アジェンダ~
1. 結論
2. スクラム・アジャイルの原点
3. スクラム・アジャイルは経営論が始まり
4. アジャイルの本質とは何か
5. 組織学習とは何か
6. 知の創造プロセス SECIモデル
7. 企業の実例集
8. ⼼理的安全性の誤解
スクラム・アジャイルは元々経営学から発祥したものであり、その元になった論文は「The New New
Product Development Games」です。
本論文の共著者でもあり、Jeff Sutherland にスクラムのゴッドファーザーと呼ばれる経営学者 野中郁次郎先生は、スクラムがソフトウェア開発領域に適用された際に抜け落ちたものがあると指摘しています。それは、組織・企業レベルでの学習についてです。
> その部分は、経営視点で見た場合、アジャイルの大きな欠落だと言える。
組織学習理論と呼ばれている領域ですが、野中郁次郎先生は理論モデルとして『SECIモデル』を提唱しています。それがなんなのか?組織で適応するにはどうしたらいいのか?を整理し、まとめました。
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コラム(個人の感想):スクラムにおける経験主義とは何か?
行動し、そこから生まれた思考(リフレクション・振り返り)によって、初めて経験となる。ただ単に行動すれば経験になるわけでは決してありません。
教育哲学者のデューイ曰く
『真実の教育は全て、経験を通して生じる』
『為すことによって学ぶ』
これは、陽明学で言うところの知行合一と同じ思想になります。
知行合一とは『知ることと実行することとは本来二つには分けられない』という思想です。
本当の理解とは理論と実践の統合に鍵があるのです。
ただし、ここには誤解釈がされやすい点があります。
「とにかく経験を積むことが大事」という点です。
デューイはそれだけでは学習は深まらないと言います。
外界に適用とするベクトルだけではなく、内面に対してもベクトルを向け深い洞察を行う時間も必要だと言います。
19世紀のイギリスの政治家であるベンジャミン・ディズレーリは以下の名言を残しています。
「経験は思考から生まれ、思考は行動から生まれる」
行動し、そこから生まれた思考によって、初めて経験となるという意味です。
「経験」を獲得するには無闇矢鱈に行動すればいい訳ではなく、そこから何を得るかを考える必要があるのです。
この方法論をデューイは『反省的思考(リフレクション)』と呼びました。
スクラムにおいてはスプリントレトロスペクティブ・振り返りが大きなリフレクションの場となっています。
リフレクションを行わないままに経験を積み重ねる思想をデューイは『這い回る経験主義』と呼んでいます。
リフレクションを行わないままの行動では点である知識と知識を結びつけずに、それぞれの知識が孤立する事態が起きます。
既存知と既存知の新しい組み合わせこそがイノベーションの定義ですが、個人の中でもチームの中でもイノベーションは起きなくなるでしょう。
スクラムはリフレクションを起こす場所を複数箇所に設けています。
1. デイリースクラム
2. スプリントレビュー
3. スプリントレトロスペクティブ
4. スプリントプランニング
5. それらでのリフレクションが集約されるプロダクトバックログ
これらは理論でも説明されております。
アジャイル・スクラムのゴッドファーザーであり、ナレッジマネジメントの第一人者である野中郁次郎先生です。新SECIモデル(個人と組織を包括している)という理論モデルが存在します。
そこに関連して、シングル・ループ学習(低次学習)やダブル・ループ学習(高次学習)と呼ばれる概念も重要になります。この考え方は、経営論で有名な両利き経営と同じです。
その辺りの話も本スライドにて紹介しております。