システム思考とプロダクトマネジメント
※プロダクトオーナー祭り2021 Spring - PO祭り2021Springでの登壇資料です https://postudy.connpass.com/event/202404/
システム思考とプロダクトマネジメントPO祭り2021株式会社グロービスプロダクトマネージャー久津佑介
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NameCareer社内SE(エンジニア&インフラエンジニア)PjM & PdMPdM & 新規事業責任者PdM久津佑介 / Yusuke Hisatsu@ 凸版印刷@ リクルートテクノロジーズ@ CAMPFIRE@ グロービス
今日話したいこと• 常に複雑なものと対峙しているプロダクトマネージャーが持つべきだと思う考え方(思考法)について話します• 抽象的な話が多めですm(_ _)m
プロダクトマネージャーが向き合う相手ユーザーマーケット社会 事業組織人自分自身
プロダクトマネージャーが向き合う相手ユーザーマーケット社会 事業組織人自分自身複雑系複雑系複雑系複雑系複雑系複雑系複雑系
複雑系とは相互に関連する複数の要因が合わさって全体としてなんらかの性質を見せる系であって、しかしその全体としての挙動は個々の要因や部分からは明らかでないようなものをいうー Wikipediaより
複雑系とは
複雑系とは要因要因要因要因要因
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とあるプロジェクトの 経験背景・事象• 共通認証基盤をリプレースするプロジェクト• 5チームが関わる(基盤側2チーム、サービス側3チーム)• システム制約が強く、しっかり各チーム間で仕様や認識を合わせる必要がある• 進捗管理やタスクの前後関係が整理できておらず、一向に進捗が出ない打ち手• 情報の非対称性の解消のため、ドキュメントの集約と公開+定例MTGの実施• タスク間の制約整理とタスクマネジメントの徹底
プロジェクトが進まない根本的な原因は…• 各チームが認識している自分たちの役割と、お互いへの期待値が大幅にズレている• そのため進捗確認しても「え、あのチームのタスクを待ってるんですけど」「え?それうちがやるの?」の連発これらの根本原因に気づかないまま、経験則に基づく打ち手、または一般的な打ち手(フレームワーク)を安易に選択してしまった
複雑系はフレームワークでどうにかならない• フレームワークは先人たちが複雑系と闘ってきた中で得た実践知を凝縮し、複雑系を単純化&構造化して理解するためのツール• 複雑系は再現性が低いため、フレームワークを使えば必ず成功するわけではない• 特に対峙する複雑系に対する解像度が粗いと表面的な対症療法になりやすい(例)• アジャイルを導入すれば開発が早くなる• ジョブ理論を導入すればプロダクトが伸びる• OKRを導入すればパフォーマンスが上がる• 1on1をすればメンバーのモチベーションが上がる• 新規ユーザーを増やせば売上が上がる
「対症療法的な解決策」を選ぶことは魅惑的である。明らかな改善が得られる。(中略)だが、問題の症状が和らぐと、同時に、より根本的な解決策を見つける必要性の認識が低くなる。(中略)やがて、人々は対症療法的な解決策にますます頼るようになり、一見したところ、それが唯一の解決策と思い込む。ー ピーター・M・センゲ. 学習する組織 システム思考で未来を創造する より引用
複雑系への向き合い方1. 対峙する複雑系の「システム構造」を理解する2. システム内にある作用ポイント(=レバレッジポイント)を見つける3. レバレッジポイントを叩くシステム思考 / SYSTEM THINKING
システム構造を理解する
システム構造(例:英会話レッスンの継続)失敗 焦りレッスン喜び成功諦め実践次のアクションにつながる関係性対象の確率を上げる関係性
システムに入り込む• システム内で働く力学を知るために、システムに入り込み観察をする• ホワイトボックステストのイメージ例:組織の場合• 自分の周りだけでなく経営層やステークホルダーが集まる会議に出てみる→「意思決定に重要な要因は何か?(人?合理性?プロセス?)」を見抜く例:ユーザーの場合• ユーザーインタビューにてユーザーのライフスタイルや課題を探しに行く→「サービス選択に重要な要因は何か?(価格?コンセプト?機能?)」を見抜く
システムの中にいる人に要因を聞いてもわからない私たちは、自分自身の問題の原因を分析する場合、自分の都合のいいように解釈したがる。すなわち、よい結果、望ましい出来事については、その要因を自己の内側(努力や才能)に求めたがる。逆に悪い結果、望ましくない出来事については、外部環境や他社のせいにしたがる。(中略)それなのに私たちは、相手が問題について語り始めるやいなや、「それはなぜですか」とつい聞いてしまう。すると相手は、自分勝手な安易な原因分析をその場で初めてしまう。(中略)つまり本当の原因を知りたいのであれば、「なぜ?どうして?」と聞かない方がいい。「先生、お腹が痛いんです」と言う患者に対して、医者が「どうしてですか?」と聞くはずがない。(中略)「いつからですか?」「今朝何か食べましたか?」という具合に問診、すなわち事実質問を重ねていく。ー 和田信明/中田豊一. 途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法 より抜粋
システムの外に出てみる• システムの全体像を俯瞰し、顕在化していない力学や挙動の傾向を見つける• ブラックボックステストのイメージ例:組織の場合• 会議での発言の仕方を変えてみて、それぞれがどう扱われるか観察する→想定しない結果になった場合、まだ見つけられてない要因があるかもしれない例:ユーザーの場合• 仮説検証用の機能をリリースして、ユーザーの行動を観察する→想定しない結果になった場合、まだ見つけられてない要因があるかもしれない
可視化してみる• Values Stream Mapping• Job Maphttps://wwwen.uni.lu/university/news/latest_news/university_publishes_an_iso_standard_for_value_stream_management https://speakerdeck.com/inuse/tony-ulwick-put-jobs-to-be-done-theory-into-practice-with-outcome-driven-innovation?slide=32
システム構造(例:英会話レッスンの継続)失敗 焦りレッスン喜び成功諦め実践モチベーション時間次のアクションにつながる関係性対象の確率を上げる関係性
レバレッジポイントを見つける
レバレッジポイントのイメージ失敗 焦りレッスン喜び成功諦め実践モチベーション時間レバレッジポイント• コントロール可能• 未熟なうちは失敗サイクルが多いためレバレッジポイント• コントロール可能• 両サイクルの勢いを伸ばすため
(参考)レバレッジポイントの見つけ方• バランス型フィードバックループ(動的平衡を保とうとする力)• 自己強化型フィードバックループ(成長が更なる成長を引き起こす力)• 情報の流れ(誰がその情報にアクセスできているか)• ルール(インセンティブ、罰、制約)• 自己組織化(システム構造を自発的に変化させる力)• 目標(システムが成長する目的)• パラダイム(価値観)ー ドネラ・H・メドウズ. 世界はシステムで動く - いま起きていることの本質をつかむ考え方より一部抜粋
(参考)免疫マップを作る• システム内の人の「裏の目標」や「強力な固定観念」を知ると、レバレッジポイントが見つかりやすくなる(かもしれない)ー ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー. なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践より引用
レバレッジポイントを叩く
いろいろやってみる• 単一のレバレッジポイントだけ叩いても効果が出ることは少ない• 小さい影響ではシステム全体への変化が起こらない可能性がある例:ユーザーの場合• 部分の限定的な検証ではなく、大胆な仮説検証をしてみる→これまでの前提を無視した検証をしてみるのも一手かも例:組織の場合• 一人で変革に取り組むのではなく、キーパーソンを巻き込む→キーパーソンにシステム構造を理解してもらい、足並みを揃えて一斉に叩く
変化が発生するまで諦めない• 対症療法と異なり、複雑なシステムほど変化が見えるまで時間がかかる• 一時的にパフォーマンスが落ちたり混乱が起こったりする可能性がある例:ユーザーの場合• プロダクトの大幅な機能変更による既存ライトユーザーからの反発→長期的に見たらヘビーユーザーのLTVが上がるため我慢が必要例:組織の場合• つよつよ人材を採用してもすぐに効果は出ない→この人がフルにパフォーマンスを発揮でき、組織に浸透するまでサポートする
サマリ• プロダクトマネージャーは常に複雑系と対峙している• 自分の打ち手が対症療法になっていないか、根本原因を見極められているか、常に自問しよう• 適切な打ち手を選択するべく、複雑系の構造と力学を「システム思考」で捉えよう• システムの中にいる人に「なぜ?」と聞くのではなく、観察と事実確認によってシステムを理解しよう
参考
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