レジリエンス・エンジニアリングを利用した Fun / Done / Learn の振り返り方を提案します。
レジリエンス・エンジニアリングの考え方を取り入れることで「うまくいくこと」が増えるように振り返ることができます。
日経IDチーム - Satoshi OkamiFun / Done / Learn 1.5レジリエンス・エンジニアリングで振り返るレトロスペクティブ
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今日のテーマレジリエンスエンジニアリング(Safety-II)の観点で振り返り、うまくいっていることから教訓を得て、継続的にうまくいくようにしよう!2※ Safety-I は、従来型の安全管理方法。「うまくいかないこと、悪い方向へ行くこと」ができるだけ少なくなるようにすること。
レジリエンスエンジニアリング(Safety-II)とは3複雑適応系において物事が日々うまく行われているのは、さまざまな要因により変動する環境に合わせて、人々が仕事のやり方をうまく調整し、柔軟に対応しているからである。レジリエンス・エンジニアリングは、このような複雑なシステムが、状況に合わせて限られたリソース(マンパワー、モノ、時間、情報ど)の中で柔軟に応答できているメカニズムを解明し、またそのレジリエンス特性(柔軟性や適応力)を利用して、「うまくいくこと」を増やそうとするものである。レジリエンス・エンジニアリング理論の医療安全への適用可能性についてp55 中島和江
Safety-IとSafety-IIの違い4どんなインシデントが、なぜ起こったのか?を明らかにする事後対応で、再発防止の方法論失敗を減らすのが目的従って、KPTやポストモーテムと相性がよい従来の安全管理方法 (Safety-I) レジリエンスエンジニアリング (Safety-II)どんなパターンが、どのように発生しているか?を分析してプラクティスを抽出する事前対応で、未然防止の方法論うまくいくことを増やすのが目的従って、ポジティブな振り返り手法のFun/Done/Learnと相性がよい
Fun / Done / Learn を Safety-II で考える5
Doneできた要因からプラクティスの抽出6Done できた要因は何だったか?何がよかったのか?ex) サポートしてくれたとか、モブプロ・ペアプロのお陰だった、レビューが早かったから、など● いつもはサポートが遅いのか?● 遅いなら早くするためにはどうしたらよいか?● レビューの早さを維持する方法はないか?のように、チームへの質問を繰り返して、良い状態を維持するためのプラクティスを抽出する
Fun | Learn を Done に変えてスプリントゴールスクラムチームは、ゴールを達成し、お互いにサポートすることを確約する。7● タスクに関することなら Done できなかった要因は何か?● サポートが遅かったからか?● そもそもフォローしてもらえなかったからか?● スプリントタスクの粒度が見積もりより大きかったことがわかった、などスクラム公式ガイド:スクラムの価値基準 Ken Schwaber & Jeff Sutherland理由が、サポートが遅かったなら、迅速なサポートはどうしたら実現できそうか? スプリントタスクが大きかったなら、タスク分解して、スプリントゴールの再設定をPOと交渉すべきだった、など
Fun を維持してパフォーマンスに転化させる8ものすごく集中して何かをやっているとき、自分の存在は、一時的に横に置かれる(フロー状態)のです。 チャレンジ度もスキルも普通より高いときにフローに入ります。ただし、自分が本当にしたいことをやっているとき です。TED ミハイ・チクセントミハイ: フローについてモチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか人が何をコントロールしたいと感じるのかは、本当に人それぞれです。ですから、自律のなかで一番重要な側面は、誰にとっても同じではないと思います。 人によってそれぞれ異なる欲求がある ので、雇用主にとってもっとも有効な戦略は、 従業員一人ひとりにとって何が大切なのかを理解する ことではないでしょうか人は自分の好きなことに取り組んでいるときにこそ最高の仕事をする 、ということをFacebookは心得ているからだ。社員が毎日楽しく心踊らせて出社できる可能性を最大限に高めるための選択肢を、彼ら自身に与えているのだ。ユニコーン企業のひみつ p69 4章 トライブでスケールさせるどこに Fun の要素があったのか?Fun の状態を維持するためにできることはないか?チームメンバーや担当システムは変化する。レジリエンスエンジニアリングで、柔軟に変化に対応する。Fun要素はチームメンバーのモチベーションを向上させる。メンバーのチームに対するエンゲージメントが向上する。 なぜならば、Funは、このチームに居たい理由になるから。
Learn をモチベアップとプロダクトアップデートに9ものすごく集中して何かをやっているとき、自分の存在は、一時的に横に置かれる(フロー状態)のです。 チャレンジ度もスキルも普通より高いときにフローに入ります。 ただし、自分が本当にしたいことをやっているときです。TED ミハイ・チクセントミハイ: フローについてLearn要素はチームメンバーのスキルアップや生産性向上に転化できる。新しい技術の導入などの学びをメンバーのスキルアップとシステムアップデートに還元できる。・良いDeveloperはこうしたことにきちんと目を光らせており、より良いソリューションがあるならばその適用を同時に検討する。・例えば、以下のような提案をリファインメントの際に行う「最近出た〇〇という技術を適用すれば、今後も同様の開発が必要になったときに簡単に追加できそうですよ。今やりませんか?」・これらの振る舞いにより、プロダクトはレガシーになることなく、常に進化し続けることができる。良いScrum Developer についてふりかえってみた
全体最適化のシステム思考も忘れずに10これまでのような個別のインシデントへの対症療法では、問題が解決しないどころか、かえって物事を複雑にする可能性があります。例えば、病棟への薬剤の搬送回数を増やすとか、調剤や搬送状況が電子カルテ上で分かるなどといった、モグラたたきではないシステム全体から見た改善策が求められるわけです。そうすれば、現場も仕事がやりやすくなり、安全性も向上するはずです。システムの中のつながりを理解し全体最適化を図る、つまりシステム思考が必要なのです。看護管理 Vol.29 No.12 2019年 12月号チームやシステムは、様々なチームやシステムと連携している(独立していない)ので、ときには、他のチームやシステムを改善した方が、無駄な仕事の削減や物事が簡略化する可能性がある。 システム思考も忘れずに
Fun / Done | Fun / Done / Learn を目指して振り返る11開発者チームの存在意義は、スプリントゴールすること。Fun 要素は、メンバーのエンゲージメントを向上させる。Learn 要素は、メンバーのスキルアップだけではない。改善すべき問題点の知見が含まれる。継続的なプロダクトアップデートや、より機能するチーム作りに役立つ。スプリントを重ねる度に、スプリントタスクの Fun / Done や Done/ Learn、Fun / Done / Learn が増えるように振り返ると良いのではないでしょうか?
参考文献[1] Safety-IからSafety-IIへ ―レジリエンス工学入門― Erik Hollnagel[2] 看護管理 Vol.29 No.12 2019年 12月号[3] レジリエンス・エンジニアリング理論の医療安全への適用可能性について12
仲間募集“日経は、競争でなく協力して楽しく仕事したい仲間を募集しています。インフレが加速する世界で、ベアによる安定昇給を提供しています。日経は社員に安心と安定を提供しています。一緒に働きませんか?”13Hack The Nikkei / JOBS
発表者紹介14慎重エンジニア。2019年7月、日本経済新聞社に入社。日経IDチーム 所属。趣味は怪文書の投稿。時折、「イノベーションする組織」などの怪文書を会社Slackの片隅に投稿する。XP祭り2021は「スケーラブルなチームの作り方」を発表。「組織の流動性の高め方」や「組織の流動性と企業の競争優位性の相関関係」の研究が好き。好きな言葉は、いつも心に白装束 。