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PTMFを使って自分の物語を考えてみる / Scrum Fest Osaka 2023

PTMFを使って自分の物語を考えてみる / Scrum Fest Osaka 2023

bonbon0605

July 02, 2023
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Transcript

  1. 1 KDDI Agile Development Center Corporation ⾃⼰紹介 • 名前︓⼩笠原晋也 •

    仕事ではアジャイルコーチをやっています • スクラムフェス三河実⾏委員、DevOpsDays Tokyo実⾏委員 スクフェス⼤阪は2020から毎年参加しています。 今年は初めて現地にも来ていますので、是⾮お声がけください。 (KDDIアジャイル開発センターは積極採⽤中です)
  2. 2 KDDI Agile Development Center Corporation これまでに話した内容の紹介 • ⾃⼰調整学習(スクラムフェス⼤阪2020) ◦

    https://speakerdeck.com/bonbon0605/scrum-fest-osaka-2020 • フロー理論(スクラムフェス⼤阪2021) ◦ https://speakerdeck.com/bonbon0605/scrum-fest-osaka-2021 • 意思決定理論(スクラムフェス仙台2022) ◦ https://speakerdeck.com/bonbon0605/will-and-decision-making これまでいくつかの理論をベースにした話をしてきましたが、共通したテーマのようなものがありました。 「他⼈が決めたものではなくて、⾃分で決めたり⾃分に合ったものを⾃分で選んでいくことの⼤切さ」です。 (これは、2016年のXP祭りで⽜尾さんがお話されていた内容に影響を受けています。)
  3. 3 KDDI Agile Development Center Corporation 今回PTMFを紹介する理由 『⼈間は,外からの圧⼒を受ける対象というより, むしろ⼈⽣の中での積極的な主体であり,決定される存在であると同時 に,決定していく存在でもあります。⼈間という主体として,私たちは出会う現実に順応するのと同時に,現実を変えてい

    こうともします。私たちはそうしたことを,意味をつくり,深く考え,経験から学ぶという能⼒を通して,⾏っているので す。』 M・ボイル/L・ジョンストン(2023)『精神科診断に代わるアプローチ PTMF ⼼理的苦悩をとらえるパワー・脅威・意味のフレームワーク』(⽯原孝⼆・⽩⽊孝⼆・辻井弘美・⻄村秋⽣・松 本葉⼦訳)北⼤路書房 pp.140 • PTMFは⾃分のナラティブ(物語)をつくるためのフレームワーク • スペシャリストが近くにいなくても実践できることを⽬指した⼿法 これまで話していたテーマと親和性がありそうで、かつ、実践に役⽴ちそうな内容だという印象を持ちました。 ただ、私はPTMFにもメンタルヘルスに関する知識も全くありませんでした。 今回は興味があったので、ちょっと試しにやってみた、という内容になります。
  4. 5 KDDI Agile Development Center Corporation 参考書籍、参考⽂献、ウェブサイト 書籍 M・ボイル/L・ジョンストン(2023)『精神科診断に代わるアプローチ PTMF

    ⼼理的苦悩をとらえるパワー・脅威・意味のフレームワーク』 (⽯原孝⼆・⽩⽊孝⼆・辻井弘美・⻄村秋⽣・松本葉⼦訳)北⼤路書房 https://www.kitaohji.com/book/b620327.html PTMFウェブサイト https://www.bps.org.uk/member-networks/division-clinical-psychology/power-threat-meaning-framework メイン⽂書 https://www.bps.org.uk/guideline/power-threat-meaning-framework-full-version 概要 https://www.bps.org.uk/guideline/power-threat-meaning-framework-overview-version
  5. 9 KDDI Agile Development Center Corporation PTMFによって感情的な苦悩の意味と起源を理解する • 「どんなことがあなたに起きましたか︖」(パワーは⼈⽣にどのように作⽤しているのか)︓P •

    「その出来事はあなたにどのような影響を及ぼしましたか︖」(そのことは、どのような脅威をもたらしているのか)︓T • 「あなたはそのことをどのように理解しましたか︖」(そうした状況と経験の意味はどのようなものなのか)︓M • 「⽣き延びるために、何をする必要がありましたか︖」(どのように脅威へ反応しているのか) • 「あなたの強み(ストレングス)は何ですか︖」(パワーリソース(⼒を与えてくれるものや⼈)と、どのようなつながりをもっているか) そしてこれら全てを統合するために • 「あなたのストーリーを教えてください」
  6. 10 KDDI Agile Development Center Corporation PTMFテンプレート(⽇本語版)の紹介 M・ボイル/L・ジョンストン(2023)『精神科診断に代わるアプローチ PTMF ⼼理的苦悩をとらえるパワー・脅威・意味のフレームワーク』(⽯原孝⼆・⽩⽊孝⼆・辻井弘美・⻄村秋⽣・松本葉⼦訳)北⼤路書房

    pp.220を参考に作成 事態をよくするものと悪くするもの 私のストーリー ⾝体の反応、脅威への反応とその機能 ストレングス、パワーリソース パワーの影響 中⼼的な脅威 意味と⾔説
  7. 12 KDDI Agile Development Center Corporation パワーの影響 • ⼩学校1年⽣のときの図画⼯作の授業で描いた絵に対して「ふざけた絵を描いたのは誰だ」と⾔われた ◦

    図画⼯作が嫌いになって、1年⽣の間は何も出さずに画⽤紙を机の中にいれっぱなしにしていた • ⼩学校2年⽣のときに、1限〜5限まで図画⼯作の⽇があった ◦ 昼休みになんとなく戻りたくなくなって校庭で1⼈遊び続けていた ◦ 担任が呼びに来たが、戻るふりをしてまた逃げた ◦ その⽇の夜に担任と学年主任が緊急家庭訪問に来た • ⼩学校3年⽣のときに、クラス委員に⽴候補したが、⾃分に誰も投票してくれなかった • ⼩学校3年⽣のときに、⾳楽会でクラスを代表して前に出て歌う⼈を決めることがあり、そのときにはほぼ全員が⾃ 分に投票した
  8. 13 KDDI Agile Development Center Corporation 中⼼的な脅威 • 不安(⾃信がない) ◦

    ⾃分は問題児で、油断すると⼈とズレてしまう(空気が読めない) ◦ 変なことをすると恥ずかしい(屈辱を味わうことになる) • 成果へのプレッシャー ◦ 成果を出したときは認められるが、成果を出せないときは認められない
  9. 14 KDDI Agile Development Center Corporation 意味と⾔説 • 恥ずかしい(変なこと)ことをしたくない •

    ちゃんとやれると良いことがある • ⾃分がちゃんとやるには、頑張って考えたり計画したりすることが必要だ ◦ よく分かっていないと変な⾏動をする可能性が⾼い ◦ ⼈を観察したり、状況を把握することが重要
  10. 15 KDDI Agile Development Center Corporation 事態をよくするものと悪くするもの 事態をよくするもの • よく知っている環境(どう振舞えば良いのか分かっている環境)

    • ⾃分が⾏ったことが好評で⾃信をつける 事態を悪くするもの • 初めての環境(どう振舞えば良いのか分かっていない環境) • 変なことをしてしまった場合
  11. 16 KDDI Agile Development Center Corporation ⾝体の反応、脅威への反応とその機能 • 恥ずかしいと怒る(特に⼩学校低学年の頃は、頻繁に癇癪を起こしたり、ケンカしたりしていた) •

    ⾃意識過剰になる ◦ 過敏に⾺⿅にされていると感じる(些細な⾔い⽅が気になったり) ◦ ⾃分の⼀挙⼿⼀投⾜が気になる • 何かをやるなら、ちゃんとやろうとする
  12. 17 KDDI Agile Development Center Corporation ストレングス、パワーリソース • それなりに学業優秀であったこと(客観的な指標で評価されることで⾃信を持ちやすくなった) ◦

    ⼩学校から中学・⾼校と成⻑するに連れて⽣きやすくなった • これまでの経験や実績 ◦ それなりの年数⽣きられたし、それなりに評価してくれる⼈がいたり、実績を積めたことによる⾃信 • 家族、友⼈からの評価 • 仕事での評価 • コミュニティ活動での経験、実績
  13. 18 KDDI Agile Development Center Corporation 私のストーリー ⼩さい頃から絵が苦⼿だ。⼩学校1年⽣のときに担任がクラスの前で「こんなふざけた絵を描いたのは誰ですか」と⾔っ て⾃分の絵を掲げていた。それから図画⼯作の授業が嫌いになった。それ以降、授業中は何もしないで時が過ぎるのを 待っていた。⽩紙の画⽤紙に何も描けずに、机の中にずっとしまっていた。

    ⼩学校2年⽣になっても図画⼯作が嫌いだった。ある⽇、1限から5限が全て図画⼯作という地獄のような⽇があった。 午前中は何とか耐えたが、昼休みに校庭で遊んだのが楽しかったので、その後に教室に戻るのが嫌になってしまって、 そのまま1⼈で校庭で遊んでいた。気付いた担任が迎えに来たので教室に戻ることになったが、担任が靴を履き替えてい る隙に、また逃げて校庭に戻った。その⽇の夜、学年主任と担任による緊急の家庭訪問があった。 ⼩学校3年⽣のときに、学級委員に⽴候補したときには、誰も⾃分に票を⼊れてくれなかった。 こんな調⼦だったので、⾃分は問題児で好かれていないという⾃覚があった。すぐに何か変なことをしてしまって、そ れを指摘されると顔を真っ⾚にして癇癪を起こして暴れていた。⼈に何かを⾔われてケンカになることも頻繁にあった。 しかし、そんな私でも認められる出来事があった。⼩学校3年⽣のとき、⾳楽会でクラスを代表して歌う⼈を選ぶために、 1⼈ずつ歌った後に、投票を⾏った。そこでクラスの⼤半が私に票を⼊れた。 ちゃんとした成果を出せば、評価されるのだということを知った。
  14. 19 KDDI Agile Development Center Corporation 私のストーリー ⾊んなことをちゃんとやりたい、と思うようになった。ちゃんとやるためには、ちゃんと考えようと思って何をするに も⾃分なりの理屈や計画を考えるようになっていった。 これにある程度効果があったのか、成⻑するにつれて、少しずつ⾃信が持てるようになっていった。特に、中学・⾼校

    以降は、学校⽣活の中⼼は学業になり、成績が良いことが⾃信にも繋がった。ただそれでも、不安な気持ちはどこかに 残っていて、うまくいかないと不機嫌になったり、周囲と衝突したりすることは多かった。そうした衝突の後には劣等 感が蘇り、気持ちとして落ち込むことも多かった。 不安を完全に解消することは難しいが、⼈⽣を⽣きる中で、⾊んな経験や実績を積めたことが改善に繋がっている。⼀ 緒に時間を過ごした家族や友⼈の存在、仕事やコミュニティ活動を通じての成果や評価など、これまでの⼈⽣で積み上 げてきた実績が、⾃分の安⼼材料になっている。⾃分を肯定できる理由になっている。 ただ、まだ「ちゃんとやりたい」とは思っている。変なことをして恥ずかしい思いをしたくない、とも思っている。で も最近は、何かあっても⾃分はそんなものだと認められる余裕も育ってきている気がする。
  15. 20 KDDI Agile Development Center Corporation やったみた感想 • ⾃分のための物語だという実感はすごく持てた。癒やしを得られた。⼼に沁みた。 •

    整理する観点があることによって、普段よりも考えを深掘りしやすかったし、気付きもあった • 観点を出し終えて満⾜しかけたが、最後に物語にまとめるところでも気付きがあった • フレームワークの使い⽅として合っているのか不安になったが、PTMF⾃体がそこまで厳密なものではないので、気 楽に実施できた(歌とかでも良いらしい) • パワーや脅威について、サンプルは深刻な内容が多く、どんな内容を選ぶのか決めるのが難しかった • いろんな⼈の物語を聴いてみたい(やってみて話しても良いという⽅は是⾮お声がけください)