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Masa Masujima
October 12, 2022
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Explaining Japan's Web3 strategy
Masa Masujima
October 12, 2022
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Transcript
Copyright © 2022 Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.
- 0 - ©2022 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved Oct 2022 森・濱⽥松本法律事務所 パートナー弁護⼠/弁理⼠ 増 島 雅 和 進化するWeb3の世界と国家戦略 〜ルール形成に向けたアプローチ〜
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- 1 - ビジネスと環境とルールの関係から、真に⽴てるべき「問い」を発⾒する アナログ ルール/規範 アナログ環境/アーキテクチャ アナログ ビジネス アナログ ルール/規範 アナログ環境/アーキテクチャ Web2 (プラットフォーム) ︖ デジタル環境/アーキテクチャ Web3/ メタバース ⽇本政府は、この構図の制度課題にここ5年ほど取り組んできた Society 5.0 デジタルプラットフォーム規制 ガバナンスイノベーション TrustedWeb構想 デジタル規制改⾰ しかし、これまでの取組みはあくまでフィジカル社会を前提にサイバーとの融合(CPS)によってフィジカル社会に価値をもたらすため の取組みとして展開されてきた これに対しWeb3/メタバースは、社会そのものをサイバー空間に展開することで⼟地/場所から完全に開放されたところに価値を もたらそうとしている点が、これまでのアジェンダセッティングと根本的に異なる 「国⼟によって規定され、国⼟を起点としてしか権⼒(ルール形成⼒)を⾏使できない国家が、Web3/メタバースのアーキテクチャからいかに価値を エクストラクトし、国家の競争⼒につなげることができるか」が真に問われるべき問い 「Web3/メタバースが⽣む富」をいかに⽇本がキャプチャするか、そのためにはルールがどうあるべきなのか
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- 2 - ⽴てるべきは「⼤戦略」、個別ルールの改正の積み上げは⼤戦略の実現に資するように ⾏わなければ環境変化から⽣じる富をキャプチャできない 国富の実現 (Make Japan Great Again) ⽬標・ゴール アウトプット1︓ナラティブ 戦略の構造︓⽬標を実現するために、獲得したいものを獲得することができるように⾃らのアウトプットをデザインする • ⼩⼝で調達可能な起業環境 • Web3関連技術の開発・起業の促進 • NFTやDAOを⽤いたコンテンツ産業と地域活性化 • 国内外の多様な⼈材の活⽤ etc. アウトプット2︓ルール • トークンの会計・税制 • 暗号資産投資の法制 • AML/CFTルール • DID etc. 世の中に表に出ていく「⽬指す社会」の類の⾔説は、それ⾃体が⽬的なのではなく⼤戦略を実現するための戦略的なアウトプット (社会から⽀持を獲得するためのスローガン)に過ぎないことを、政策⽴案関係者共通の暗黙の了解としなければいけない。 (例) ・ EUによるプライバシー権を前⾯に据えたデータ保護政策は、データ流通に対する覇権獲得のためのナラティブとしてプライバシー権を活⽤して、その ナラティブと整合する形のルールを形成することでEU地域がデータ覇権をとる⼤戦略となっている。
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- 3 - Web3の経済的価値は、DAO(コミュニティ/ウォレット)とトークンが形づくる ネットワーク価値を体現 L1 blockchain L2 blockchain Tools Applications ガス代 ガス代 ガス代 DAO x token DAO x token DAO x token DAO x token ウォレット(=ID=コミュニティメンバー)をノードとして構成されるDAO(ネットワーク)が、共通の価値単位(トークン)を保有 トークン時価総額 = コミュニティメンバー(トークン保有者)が共通に信じている他のネットワーク(通貨ネットワーク、他の暗号 資産ネットワーク etc.)に対する当ネットワークの相対価値 トークンは、取引されることによって⼿数料が発⽣する Web3の国家戦略(富国戦略)の要諦は、国境を越えて資⾦が動く⾦融の国家戦略と同じ いかに多くの国⺠が⼝座(=ウォレット)を持つか︓ネットワーク規模 国⺠が持つ⼝座残⾼(=トークン残⾼)をいかに増やすか︓キャプチャしているネットワーク価値量(ストック) いかに多くのトランザクションを⽣み出すか︓取引が⽣み出す価値量(フロー) ※ 国家戦略が成り⽴つ前提として、「国⺠の」ウォレットであることが外部(=国家)から把握可能な状態であることが必要 Unhosted Walletにより事業者へのデータ集中を避けながらウォレットを把握するための仕組みの構築がカギ
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- 4 - グローバルWeb3の標準的なストラクチャ 開発者 DAO プロトコル開発 プロトコル移管 プロトコル対価 DAO トレジャリー 利⽤者 ネットワーク/プロトコル/サービス 利⽤対価 貢献者 DAOコミュニティマネジャー マーケター 初期ユーザ ガバナンス トークン その他暗号資産 等 外部者 ※ ネットワーク成⻑に貢献するコミュニティメ ンバーには、ガバナンストークンを報酬と して⽀払う ※ コミュニティ外からのサービス調達にはス テーブルコイン等の「外貨」で⽀払う ※ 開発者もネットワークへの 貢献者の⼀部としての⽴ ち位置をとる 交換所・取引所 • ネットワーク/プロトコル/サー ビス管理 • 財務管理 ※ トークン保有者による投票で 意思決定 ※ Web3は開発者がプロトコルを⽀配する(ことを通じてネットワーク全体を⽀配する)ことを防⽌するため、投資法⼈のストラクチャを援 ⽤し、開発者が開発したプロトコルをDAOに移転して、プロトコル(≒プロジェクト)の管理・展開をDAOメンバーに委ねる構成をとる。 ※ 投資法⼈ストラクチャと同様、DAOはtax efficient vehicleが想定される。⽇本では適切な税務選択が可能なビークルがないため、 DAOは海外に設定せざるを得ない。 ※ トークン発⾏体であるDAOについて税制特例を設けても、DAO⾃⾝はオフショアに設定されるため、税制改正の効果は限定的
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- 5 - DAOの特徴と法的構成を考える際の視点 DAOの特徴は、ネットワーク・プロトコル(≒コード)と、ネットワーク価値を表章するガバナンストークン管理(≒財務)の権限を、 ネットワーク・プロトコルの開発者による管理・⽀配から解放して、トークン保有者(≒ユーザ)の共同管理に移すことで、ユーザ ⾃⾝が⾃発的にネットワークの上にサービスを開発させるインセンティブを与え、ネットワークを拡⼤させる(≒ネットワーク価値を向 上させる)ことを可能にする点にある。 ネットワークのノードはウォレットにより構成されているので、「ネットワークの拡⼤」とはガバナンストークンを保有するウォレット数を増やすことを意味す る。 Web3においてウォレットアドレスはそれ⾃体がIDとなっているので、要はネットワークの価値はユーザ数を増やすことによって上昇するということを⾔っ ている。 ➡ DAOのガバナンスモデルの問題は、上記のネットワークの拡⼤モデルを達成するためにどのような仕組みをとるのが最も効率 的か、という問題 DAOとして運営するプロジェクトには、様々なものがある。 Investment DAO: Web3スタートアップに投資する投資クラブ Collector DAO︓ 共同してNFTを収集する収集家クラブ Social DAO︓ Web3コミュニティを共同運営 Cooperative DAO︓ アーティストやエンジニアなどが共同で他のDAOに対してサービス/成果物を提供する Charitable DAO︓ 共同で慈善活動を実施する アナログネイティブの世界には⽬的に応じて様々な事業体の法律構成(組合、株式会社、合同会社、社団法⼈etc.)がある のと同じ理由で、デジタルネイティブな世界にも⽬的に応じて様々なDAOの法律構成がある。
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- 6 - DAO事業体の法的構成 - ⽇本法のもとでどのように構成するのがよいか︖ a16zによるDAO事業体フローチャート a16zの分析では、以下のすべてにつきNOでない限り、⼀般論とし てDAOは⽶国法準拠で設⽴するのが戦略的に優れているとしてい る。 • DAOの構成員が⽶国内で完結している • DAOの活動が⽶国内で完結している • DAOがネットワーク・プロトコルに対する⽀配権を持っている • DAOがネットワークからの収益/財産に対する⽀配権を持っている ⽶国の事業体として選択するのは、事業体の⽬的や具体的な事実関係に もよるが、 unincorporated non-profit associationを推奨すると述べ ている。 ⽇本において代表者のいない権利能⼒なき社団によりDAOを構成した 場合の帰結 最⾼裁が判⽰する権利能⼒なき社団の4要件(最判 S39.10.15)を満たすようにDAOのConstitutionを開発すること は可能 財産はメンバーに総有的に帰属し、脱退時の払戻しは不要(最判 S32.11.14) 個々のメンバーの有限責任性が認められる(最判S48.10.9) 団体名義の財産登録は不可(最判S47.6.2)だが保有するのは デジタルアセットなので⼤きな影響はない 契約名義はメンバーのうち契約締結権限を委任された者 ➡ DAO外にいるフィジカル領域のプレイヤーとの契約締結を担当す る事業体(合同会社)を⽴てて、これをDAOのメンバーとする。 DAOメンバー間の紛争はDAO内にODRを設定して解決し、DAO の外のメンバーとの紛争は、固有必要的共同訴訟となりDAOの投 票で訴訟代理⼈を選定して対処する。 税法上は「⼈格のない社団等」として法⼈とみなされ課税される。
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- 7 - DAO事業体の法的構成 - どの範囲を事業体の活動範囲と定義するか DAOはもともと各プレイヤーが適切に動機づけられて活動することでネットワーク価値を拡⼤させるコンセプトなので、基本的に コントラクトで成⽴し、事業体は不要というコンセプト - コースの定理に基づく企業組織と契約の問題、契約をコードで実装することで取引費⽤が低減しているため企業組織は不要ではないかというの がDAOが投げかけている仮説ということ。 他⽅で現⾏法制度は、企業組織(≒中央集権化)に⼀定の法的効果を与えることで、経済活動を企業組織を通じて⾏うこ とを前提に組み⽴てられており、事業体としての法的効果をいずれかに⽤いないとフィジカル空間の経済活動とのアラインメントが できない (例) 納税単位、銀⾏⼝座などCeFiアカウントの開設、メンバーの有限責任性、物理資産・知的資産の所有登録制度 etc. ユーザに提供する機能の観点から、ガバナンストークンは以下の2つの⽬的から分散性を実現しようとしている。 財務機能(トークン経済)への分散性 プロトコルのコントロールへの分散性 両者を同じDAOで扱うか(fully wrapped)、異なるDAOで扱うか(サイロ型) fully wrapped structure ネットワーク拡散のため の配布 納税 サイロ型ストラクチャ 財務機能を権能なき社団として構成 プロトコル管理を権能なき社団/合同会社として構成
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- 8 - Web3サービスの展開に当たっての論点 Web3サービスのアカウント Web3サービスのアカウントIDはウォレットIDであり、ウォレットはユーザが⾃ら⽤意する(データがサービスプロバイダ(DAO) 側に蓄積しない) 通常はユーザがメタマスクなどのウォレットを接続するが、マスアドプションを進めるにあたっては交換業者と提携して、ウォレットを 持たないユーザは交換業者にてウォレットを開設してサービスと連携する動線を⽤意したい -> Web3サービスの提供者(DAO)が交換業者のウォレット開設の勧誘をすることが暗号資産交換業に当たるか︖ • 代理・媒介が交換業に当たるのは、暗号資産の売買・交換についてのみ。ウォレット開設の媒介は交換業に当たらない NFT購⼊のために必要な暗号資産の調達 Web3サービス上では、NFT(アイテム)購⼊のために暗号資産が必要だが、マスアドプションを進めるためには暗号資産の 購⼊までの動線もWeb3サービス内に⽤意する必要がある。 ユーザによる暗号資産の調達を助けるために交換業者と連携すると、暗号資産の売買の媒介⾏為をしたものとみなされ、交 換業登録が必要になる -> 暗号資産の売買の代理・媒介について、ウォレット提供して暗号資産そのものの売買や交換プラットフォームを展開する事業 者よりも軽く暗号資産交換業ライセンスを取る運⽤ができないか︖ • 暗号資産のP2Pは媒介として整理しているため、暗号資産の売買の媒介そのものを切り出して要件を軽くすることことは 難しい • ⾦商業者の仲介業ライセンスに相当するものを作る、⾦融サービス仲介業に取り込むことは⼀案 • 電代業のように、ウォレットへの暗号資産の移動に対する指図の伝達⾏為と整理してよければ、ライセンスなく実施可能 と整理することもできるか ⼊⼿した暗号資産の換価 Web3サービス内で獲得した暗号資産は、暗号資産交換所で売却・換価するため、マスアドプションを進めるためには暗号資 産の売却までの動線もWeb3サービス内に⽤意する必要があり、上記「NFT調達のために必要な暗号資産の調達」と同じ 論点が⽣じる。
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- 9 - デジタル規制改⾰の⽂脈で創造するWeb3のナラティブ 規制類型 ⽬視規制 実施監査 定期検査 書⾯掲⽰ 常駐専任 対⾯講習 往訪閲覧 検査・点検・監査 調査 巡視・⾒張 健全度や⻑さ、⾼さ等の 基準への適合性の判定を ⽬的とする規制 ⼟地や家屋等、実態や動向等 の明確化を⽬的とする規制 施設や建物等のインフラの 監視を⽬的とする規制 規制⽬的による類型化 フェーズ フェーズ1 ⽬視・実施監査規制の現状 フェーズ2 情報収集の遠隔化 ⼈による評価 フェーズ3 判断の精緻化・⾃動化 機械により完結 経時的に達成すべき フェーズの設計 ※ すべての規制類型につき、規制⽬的ごとに類型化する ※ 類型化された規制⽬的ごとに、達成すべきゴールを フェーズ分けして設定 • デジタル庁では現在、アナログ規制のデジタル化に向けて、 各省庁にフェーズを3つに分けて規制のデジタル化を進め るよう旗を振っている。 • フェーズ3は、規制の趣旨⽬的に⽴ち返って、規制 プロセスがの全体がデジタル完結することを求めるもの。 • Web3のルール形成は、デジタル規制改⾰におけるフェー ズ3を達成するためのルールを、ゼロベースで創造する実 験場として位置付けることができるのではないか。 • 進化の早いWeb3には、硬直的なルール形成はふさわし くなく、拙速なルール形成で市場⽀配のチャンスを 逃した暗号資産法制の失敗経験を活かしたアプローチ を検討する必要がある。 - アジャイルガバナンスのアプローチ - 法律以外の⽅法によるルール形成 - デジタル技術をフル活⽤したアーキテクチャルな規律の 導⼊ 等
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- 10 - 連絡先 弁護⼠ 増 島 雅 和 森・濱⽥松本法律事務所 tel. 03.5220.1812 email.
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