書籍執筆時にアウトラインを決めるために作成したプレゼンテーション。 第1章の分です。
思考のリファクタリング廣木 大地
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おしながき目次エンジニアリングとは何か?仕事と学力テストの違い論理的思考の盲点エンジニアに必要な考え方経験主義と仮説思考全体論とシステム思考人間の不完全さ
エンジニアリングとは何か?
エンジニアリングとは何か?エンジニアリングとは何か?エンジニアリングとは、日本語でいうと「工学」のことである。対比して物理学や数学といった「理学」という言葉がある。理学は「なぜそうなるのかを説明する」分野である。工学は「役立つものをどう実現するか?」という分野である。エンジニアリングとは?「実現」に関する分野工学「説明」に関する分野理学
「はじめ」と「終わり」を考えてみるエンジニアリングとは何か? 何かを実現する流れの「はじめ」を考えるのはむずかしいのですが、実現される前というのは得てして「曖昧」な状態です。 目的も曖昧であれば、どのように実現するのかも曖昧で、非常に不確実性の高い状態だと言えます。はじめは曖昧な状態 それに対して、何かが実現されたあとというのは、「はっきり」としています。 ソフトウェアであれば、プログラミング言語で解釈のブレのない形で記述され、そのとおりに動作しています。終わりには具体的で確実性の高い状態だと言えます。終わりには具体的な状態
プロジェクトにおける不確実性コーンエンジニアリングとは何か?よくプロジェクトマネジメントでは、不確実性コーンという図が使われます。プロジェクト初期においては曖昧で、不確実な範囲が広く、この場合は納期が想定の4倍から1/4までの幅があります。プロジェクトが進むにつれて、徐々に不確実性が下がっていき、いつごろには完成するのかがはっきりとしてきます。このような不確実性が徐々にさがっていく様を表した図が不確実性コーンです。このようにものを実現するというのは、不確実な状態から確実な状態に推移させていく過程だと理解することができます。不確実性コーン
プロジェクトにおける不確実性コーンエンジニアリングとは何か?時間終了見込み時期の幅4倍2倍1.5倍1.25倍1/1.251/1.51/21/4プロジェクト前半は終了時期に大きな不確実性がある後半になると不確実性が減っている社長部長課長社員曖昧な構想曖昧な方策具体的な方策具体的な行動不確実性
組織構造における不確実性の流れエンジニアリングとは何か?曖昧な構想曖昧な方策具体的な方策具体的な行動会社という組織構造においては、上位に行けばいくほど、曖昧な状態のものを指示したり、提示する必要が出てきます。逆に現場に行くほど、指示や行動が具体的になってきます。会社という組織を通じて、何かを実現するために、より曖昧な状態から具体的な状態に変化させるということを行なっています。より曖昧な指示が可能な組織ほど、具体化能力の高い組織だということになります。そのことを「権限が委譲されている」組織だということができます。企業組織とは、つまるところ不確実なものを確実なものに変化させる処理装置だと言えます。社長部長課長社員
権限と情報処理能力エンジニアリングとは何か?具体的で細かい指示が必要な組織というのは、仕事を具体化する処理を上司に依存した組織と言い換えることができます。結果的に、情報処理能力は上司に依存していきます。このような状態をマイクロマネジメントと言います。それに対して、目標の共有や権限の委譲などを通じて、抽象的な指示が機能する組織というのは情報処理能力が高い組織と言い換えることができます。このような状態を「自己組織化した」チームと表現されることがあります。具体的で細かい指示をする組織 抽象的で自由度のある指示をする組織
組織とシステムの関係性:コンウェイの法則エンジニアリングとは何か?コンウェイの法則システムを設計する組織は、その情報伝達の構造をまねた設計を生み出してしまう。メルヴィンコンウェイ「実現」するための装置組織組織によって実現された「仕組み」システム“
組織とシステムの関係性:コンウェイの法則の実証エンジニアリングとは何か?組織階層の深さ関わっている組織の数退職者の数関係者の地理的距離コードの複雑さコードの変更量依存関係の複雑さテストカバレッジMSRのプレゼン :http://www.slideshare.net/tom.zimmermann/empirical-software-engineering-at-microsoft-research
不確実性と情報の関係エンジニアリングとは何か?情報が少ない情報量というのは、確率の偏りによって決まります。上のような例では、株式の購入をするか売却をするかが決まりません。偏りのない状態は情報量が低いといえます。情報が多い逆に8割の確率で株が上がるというのは、情報量が多いです。この情報から、株式を購入した方が期待値が高いと判断できるからです。情報とは、不確実性の低い状態と言い換えできますあしたは、株が50%の確率であがって、50%の確率で下がるよあしたは、株が80%の確率であがって、20%の確率で下がるよ
不確実な状態から確実な状態になった差分が情報エンジニアリングとは何か?情報乱雑な状態=エントロピーが高い 秩序立った状態=エントロピーが低い「情報を生み出すこと」が知的労働
情報を生み出すには?エンジニアリングとは何か?不確実性を下げていく工程 ソフトウェアを作る際、ある程度はっきりとした要求がある方が、簡単に作ることができます。それは、当たり前で、要求に不確実性が低いからです。つまるところそれは、不確実性の削減を「要求を作る人」に委ねているからです。確かな要求があれば、不確実性の高い現実から一時的に目を背けることができます。ところが、現実のソフトウェア開発を取り巻く状況は不確実性に溢れています。より高い情報処理能力を持つ、エンジニアになるには、あるいはエンジニア組織を作るには「いかにして不確実性を下げるか」という思考様式を取り入れる必要があります。それを中学高校などで行なっていた学力テストとの差を示す形で紹介します。
仕事と学力テストの違い
どちらも頭を使って問題を解決するが何が違うのか仕事と学力テストの違い仕事の問題解決 学力テストの問題解決
仕事と学力テストの3つの違い仕事と学力テストの違い仕事と学力テストの違い学力テストは1人で行いますが、仕事は複数人で行います。関係性は、思考を複雑に混乱させます学力テストは一人で行い、他の人がいない学力テストの問題には、答えを出すのに必要な情報が書かれていることが期待されます。答えを出すのに必要な情報がすでにある仕事上の問題は、正解を定めるところから始めます。正解は1つではないという点が違います答えが1つになるよう問題が限定されている
仕事と学力テストの3つの違いと思考様式:論理的思考の盲点仕事と学力テストの違い仕事は複数人で行う 立場の違う複数人によって、問題解決を目指して仕事を行います。その結果、コミュニケーションコストが発生します。 それだけでなく、どんな人でも自分の立場を攻撃されたと感じれば、防御的になったり、怒りを覚えたりします。 また、様々な人間の認知能力の限界や、自分でない人の情報を全て手に入れることが不可能であるという現実があります。このことから、事実を正しく認識することが難しくなります。 そのため、仕事での問題解決を行うために必要な論理的思考力は、制限されてしまいます。 どんなに自分が正論だと思っていることも、その人自身の世界の中で認識できる範囲の中で正論に過ぎず、正解ではないということです。仕事は複数人で行います。そのため、人間関係や他人との共同作業をしていく上で、感情的になることがままあります。これを乗り越えて、問題の正しく認知する必要があります。
仕事と学力テストの3つの違いと思考様式:経験主義と仮説思考仕事と学力テストの違い答えを出すのに必要な情報を手に入れる 問題を解くの必要な情報が、目の前にないのであれば、それを入手しなければ問題は解決できません。情報を入手するために、行動を起こして問題解決を行う考え方を経験主義と言います。また、限定された情報であっても、その情報から全体像を想定し、それを確かめることで少ない情報から問題解決に向かう思考様式を仮説思考と言います。この2つがなければ、行動が止まってしまったり、答えに近づくことが難しくなってしまいます。仕事では、その場にある情報だけでなく必要な情報を得るために行動することができます。それによって問題を明晰化する必要があります。
仕事と学力テストの3つの違いと思考様式:システム思考仕事と学力テストの違い正解を設定しなければいけない 仕事において、正解が常に用意されているわけではありません。そのため、何が正解なのかを自ら設定することが重要になります。学力テストのように限定された範囲では正解を1つにすることができますが、仕事においては、全体像を見極めて、正解を設定する必要があります。より「広い視野」で問題を捉えるためにシステム思考という思考様式が必要不可欠です。仕事においては、正解は1つではありません。時間と資源の制約の中で、より正解に近づく一手を打続けることが重要です。
問題を正しく明晰に記述できた時、その問題は解けている仕事と学力テストの違い仕事の問題を学力テストの問題に変換 もし、仕事上の問題や悩みが解けないとき、それは以上の3つの思考方法を身につけられていないため、あるいは一時的にできない状態にあるために、問題が複雑になってしまっているのだと考えられます。「仕事の問題」を「学力テストの問題」に書き換えられるのであれば、多くの社会人は学生時代に培った十分な知的能力がありますので、解決できるはずです。にもかかわらず、「問題が解けない」のであれば、それは「問題が正しく明晰に記述できていない」と考えると何をすべきがが見えてくるはずです。変換仕事の問題 学力テストの問題解きにくい 解きやすい
現代アメリカの思想的教養仕事と学力テストの違い3つの思考学力テストと仕事の違いを構成する3つの思考様式:論理的思考の盲点、経験主義と仮説思考、システム思考は、近現代のアメリカの思想的潮流と密接に関わっています。アメリカはソフトウェア産業の中心地です。さまざまな手法や理論が日本にも輸入されて来ますが、その背後には、現代アメリカの思想的教養というべきものが見え隠れしています。これらを理解することで、よりクリアにソフトウェアエンジニアリングを巡る言説を体得することができます。論理的思考の盲点経験主義と仮説思考システム思考
論理的思考の盲点
論理的思考と2つの前提論理的思考の盲点論理的思考論理的思考とは、前提条件から演繹し、結論を導く思考です。ということは、結論が正しくあるためには2つの前提が隠れていることがわかります。前提結論演繹前提を正しく捉えられること正しく演繹できること
人間が2つの前提を正しく運用するためには?論理的思考の盲点前提を正しく捉えられる正しく演繹できる事実を正しく認知できる事実を正しく認知することは難しいです。なぜなら、人の認知は歪んでしまうからです。どんな人間であれ、正しく事実を認知することはできないため、いつ、どのように歪むのか知る必要があります。感情に囚われず判断することができるある前提からスタートしても、人はすばやく結論へと思考を進めてしまいます。この時に発生しているのは、論理的思考というよりも感情による短絡が発生します。それを排除して、演繹しなければ正しく問題を解決できません。
非論理的に考えないこと = 論理的に考えること論理的思考の盲点論理的思考「論理的に考える」ことに注目すると見えなくなりがちですが、論理的に考えるには、「非論理的に考えてしまう」瞬間を知ることが重要です。考える論理的に考える論理的に考える非論理的に考えるエンジニアは論理的に考えることが得意だと一般には思われています。それは、論理的な不整合があるとプログラムが動作しないから、論理的な思考を進めることが得意だという類推です。これは一面的には正しいです。一方で、論理的思考能力は、多くの人が持ち得ており、巷のロジカルシンキング講座も、どのように論理的に考えるかということばかりが注目されています。ですが、「自分や人はいつ非論理的になるのか」を知らない人は、論理的思考力が限定されてしまう環境でワークすることができません。
人は正しく、事実を認知できない。事実事実はありのまま、ただあるだけです。たとえば、「雨が降った」は事実です。雨が降ったことがよいとか悪いとか、苛だたしいといった判断はなく、「雨が降った」という出来事があっただけです。論理的思考の盲点認知事実を見て、人が頭の中で認識することを「認知」と言います。雨が降ったのであれば、憂鬱な思いがしたり、いらだったりと嫌なイメージを受け取る人も多いでしょう。
ベーコンの4つのイドラ論理的思考の盲点伝統や権威を無批判に受け入れて、誤った考えであっても信じてしまうことから生じる偏見。例:偉い人の言っていることは正しいだろうと思うこと。個々を取り巻く環境から、外の世界を知らずに一般的なことだと決めつけて理解することから生じる偏見。例:自分がそうだから、他の人もそうだと思う例:自分の家では目玉焼きにマヨネーズだからみんなそうだ。 人間が本来持っている性質から生じる錯覚や偏見。例:遠くにあるものが小さく見える例:暗い場所ではものがはっきりと見えない。言葉の不適切な使用から生じる誤解や偏見。噂話があったときに、ありえないことを本当のことだと思い込むことで生じる。例:噂話やデマを信じてしまう。種族のイドラ 洞窟のイドラ市場のイドラ 劇場のイドラ
認知の歪み論理的思考の盲点ゼロイチ思考 一般化のしすぎ すべき思考物事をゼロかイチ(すべて)かで考えてしまう。物事にはグラデーションがあり、バランスが重要。しかし、人は物事を白か黒かで判断してしまう。実際には、二、三回あっただけの出来事に対して、「常に」「いつも」というように問題を一般化して捉えて決めつけてしまう。ルールなど関わることに対して、「〜すべき」とばかり考えてしまう認知のバイアス。本来はあなた自身が「〜したい」と思ったことをすればいい。自己関連付け 選択的注目 レッテル貼りどんな出来事も「悪いのは自分」だと直接関係のないことまで責任を感じて、自分を責めてしまう。一度、そうだと思うと、そのような情報だけが目に入ってしまい、自説を強化してしまう。実際には、そういった情報ばかり探してしまっている。あいつは「営業」だから、とかあいつは「エンジニア」だからというようにレッテルを貼って、物事を判断する。
扁桃体をコントロールする論理的思考の盲点恐怖・悲しみ・危機 怒り人間の脳は、なにか自分や仲間が脅かされるであるとか、ぞんざいに扱われたと感じると、恐怖と感情を司る扁桃体が発火します。これによって、人間は自分自身を守るために、「怒り」を発生させ、相手に対する攻撃と防御を無意識に起こそうとします。動物の脳である扁桃体は、危機や恐怖が先立っています。それが「悲しみ」であれば原初的な感情なのですが、知的能力を司る脳が防衛・退避を起こそうとすると怒りに変わります。怒っている人はよく喋るのは、知的な能力を使っているからです。
自分のアイデンティティの範囲を知る論理的思考の盲点アイデンティティの範囲が広い アイデンティティの範囲が狭い人は、自分自身のアイデンティティだと思っている範囲を攻撃されると怒りを感じます。つまり、怒りを感じた時、それはあなたの大事なものが何かを教えているわけです。自分自身の範囲が狭い人は、怒りを感じにくいです。それが攻撃だと思わないから、恐怖を覚えないのです。尊大な人ほど怒りやすいのはそういう理由です。家族仕事内容同僚趣味の時間物事の進め方宗教使う言語他人の行動家族仕事内容同僚趣味の時間物事の進め方宗教使う言語他人の行動攻撃された!
認知的不協和論理的思考の盲点タバコを吸う人の認知 タバコを嫌いな人の認知タバコを吸う人は、タバコが体に悪いということは認知しています。しかし、自分自身がタバコを吸うという行動をとっていて、矛盾してしまいます。その整合性が取れない状態から、「タバコは体に悪くない」「他の原因で死ぬ人の方が多い」など別の情報を選択的にと取り入れ、不整合を避けます。逆にタバコを嫌いな人は、タバコの匂いがしただけで健康に悪いと思ったり、必要以上にタバコを吸う人を責め立てたりします。このように自分の感情や行動の矛盾(不協和)を解決するために、認知自体を歪めることを認知的不協和の理論と言います。
問題解決より、問題認知の方が難しい論理的思考の盲点問題解決お膳立ての整った形での問題解決は、簡単にできるはずです。問題が難しいと感じるのは、それが他人のことは決して完全には知り得ないという事実から生まれます。それを無視して、狭い認知範囲で問題を解決できると思うのは思い上がりです。問題認知難しいのは、問題を正しく認知することです。。人は自分が間違っているかもしれないことを無意識に避けてしまい、正しい情報を認知できません。自分は間違っているかもしれないが、それに早く気付くほうがいいと思考のパターンを変える必要があります。
経験主義と仮説思考
3枚のトランプのうち、ハートのエースはどれか?経験主義と仮説思考裏面に裏返された3枚のカードがある。そのうち、1枚はハートのエースであとは別のカードである。このとき、ハートのエースがどれであるのか、どのようにしたら見つけ出すことができるだろうか。
わからないのであれば、「調べてみる」しかない経験主義と仮説思考理性主義近世以前のヨーロッパの哲学的態度。知識は、人間の理性の中に存在するという考え方。何かの法則や原則から出発して、演繹的に世の中を捉える考え方。論理的思考の盲点として説明したように、前提が間違っていたのであれば、結論も間違ってしまう。経験主義経験主義は、近世のイギリスで花開いた哲学的態度。知識の源泉を「経験」に求める。実験を行ったり、行動を行うことで、知識を積み上げていく。近代科学的な思考態度は、ここから生まれた。エンジニアにとっては、スクラムの3つの価値として、「経験主義」があげられている
わからないことを行動を行って徐々に突き止めていく経験主義と仮説思考理性主義的な問題解決 経験主義的な問題解決わからなかったので、もう一度考えてみよう!わからなかったので、次に何をしたらわかるのか考えよう。理性主義的な問題解決では、「わからなかった」という事実から、次の行動への一手が浮かび上がってきません。なので、もう一度同じことを繰り返して、何かミスがなかったかと考えるしかなく、袋小路に陥ってしまいます。一方で、経験主義的な問題解決では、「わからなかった」あるいは「正解ではなかった」ということが重大なヒントになり、次の行動を生み出します。
「答え」ではなく「答えに近づくための一手」をとる「答え」を考える 「次の一手」を考えるもし、答えに至るための情報が全て揃っていて、問題に取り組んでいるのであれば、答えを求めて考えることに意味があります。しかし、学力テストと違って、答えに至るために必要な情報が目の前にないことの方が多いのです。にもかかわらず答えを探すと、大抵もんもんと考え込むだけで、問題は解決できません。それに対して、全ての情報が揃っていないのだから、より問題をはっきりさせるためにはどのような「次の一手」を打てばいいのか考えるのであれば、思い悩むことが少なくなります。なぜなら、今わからないということ自体が、次の一手への重大なヒントだからです。一発で正解に至る必要はない。正解に近づいていけばよい。経験主義と仮説思考
不確実性をコントロールする夏休みの宿題理論経験主義と仮説思考不確実性の高い宿題 不確実性の低い宿題自由研究や苦手な教科の宿題のように、どのくらいでおわるか読みづらいものは、不確実性の高い宿題と言えます。時間が読みづらいものは、やってみるとどのくらいで終わるのか見えて来ます。実際に行動を取ることで、スケジュールの精度があがるのです。逆に、不確実性の低い宿題。たとえば、得意教科のドリルなどを先に手がける場合、不確実性の高い宿題だけが手元に残ります。量は少なくなっているのに、不確実性は高いままなので、いつまでに終わるのか読みにくく、夏休みを楽しむ時間が減ってしまいます。
パーキンソンの法則経験主義と仮説思考パーキンソンの法則仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張するシリルパーキンソン“100%70%70% 100%時間クオリティ 不確実なものから明らかにするやりかた確実なものから進めていくやりかた
コントロールできるものとできないもの経験主義と仮説思考コントロールできるもの コントロールできないものコントロールできないものを制御しようとすると、問題は解決されず、悩みになる。自分の行動 他人の内心自分のいる場所 世の中自分の考え方 自然環境や物理法則
観測できるもの/できないもの経験主義と仮説思考観測できるもの 観測できないもの観測できないものは、修正したこともわからない。まだ、観測できるものをしてなければするしかない自分の行動 他人の内心他人の行動 未来測定可能なすべてのこと 測定不能なすべてのこと
あなたができることは、「観測できコントロールできる」ことの範疇の中にある経験主義と仮説思考観測でき、コントロールできる観測できないがコントロールできる観測できないし、コントロールできない観測できるが、コントロールできない。観測できるが、コントロールできないものは、「コントロールできるもの」をつかって、間接的に制御するしかない。
仮説思考とは何か?演繹法 帰納法 仮説法仮説を元に、事例から結論を導き出す思考。「論理的に」というときに、多くは演繹法のことを指している。帰納法は、ケースと結果の組み合わせのリストから、このような仮説があるのではないかと推論する思考法。確証性の原理や、自然の斉一性原理によって支えられる。わずかな痕跡から、それを説明可能とする大胆な思考展開・モデル化を行い、それを検証するための行動につなげる思考様式。経験主義と仮説思考ルール事象結論人間は皆死ぬ。ソクラテスは人間である。ソクラテスは死ぬ。事象結論このカラスは黒い。あのカラスも黒い。すべてのカラスは黒い。事象事象結論二つの大陸の海岸線は似ている大陸は移動したのではないか2つの海岸線が1つである証拠を探そう仮説
PDCAサイクルW・エドワーズ・デミング(1900-1990) PDCAサイクルは別名、デミングホイールとも呼ばれるPDCAサイクル/デミングホイール 仮説をたて、それを検証し、問題点に対して対応するというサイクル。 広く流通している語であるが、多くの場合正しくPDCAを回すことができていない。経験主義と仮説思考現在ある情報から、改善のための仮説を立て行動計画を決める。PLAN:仮説を立て、行動計画を決めるDO:実行するCHECK:検証と反省を行うそれを実行する。仮説が正しいのか検証し、反省を行う。ACTION:検証結果に基づき行動する検証結果から、次の仮説構築・行動を行う。
データ駆動な意思決定の誤解経験主義と仮説思考データから決定的に導かれる データから仮説を立てるデータ駆動な意思決定について、多く誤解がある。十分なデータが存在すればそこから、次にとるべき正しい行動がわかるとする考え方だ。実際は、常にデータは不完全である。なので、数少ないデータから大胆に顧客のインサイトや仮説を推論し、それが正しいのかという不確実性を検証するための行動をとるというのがデータによる意思決定である。データ次にとるべき正しい行動データデータデータデータデータデータ分析データデータデータデータデータデータ大胆なモデル化と検証手段それを確かめるための行動
遅延した意思決定:リアルオプション戦略と意思決定経験主義と仮説思考遅延しない意思決定不確実性が大きい段階で、大きな予算をつけて大きなプロジェクトを走らせると、失敗した場合にその投資の全てが失敗になってしまいます。これではチャレンジングな決定をし難くなってしまいます遅延した意思決定株の購入権をオプションと言います。株が上がったらその時の値段で買い、下がっていれば買いません。これをプロジェクトの投資判断で行う手法をリアルオプション戦略と言います。MVP
遅延した意思決定:オプションとは後出しジャンケンできるための価格経験主義と仮説思考遅延しない意思決定具体的な数字で見てみると、 1000万円かけて、売上が1800万となるプロジェクトにおいて、期待値は、うまくいった場合の利益 800万とうまくいかなかった場合の損を含めて考えると、 -100万の期待値となります。遅延した意思決定オプションを100万で購入しうまくいくかいかないかがわかった場合では、損金が 100万円。利益は700万円となり、期待値は +300万円となります。うまくオプションを作ることで安全にチャレンジできるようになります。50%50%投資1000万円売上1800万円売上0万円+800万円-1000万円期待値 = 800*0.5 -1000 * 0.5 = -100万円50%オプション100万円1800万円0万円+700万円-100万円期待値 = 700*0.5 -100 * 0.5 = 300万円50% 追加投資1000万円
遅延した意思決定:リアルオプション戦略とLEAN STARTUP経験主義と仮説思考LEAN STARTUPLEAN STARTUPでは、新規事業において、小さな単位での仮説検証の重要性が説かれています。これは不確実性が高いほどに仮説検証の予算を多くつけても割りにあうというリアルオプションの理論に基づいています。不確実性が高いプロジェクトには、仮説が検証できるまで大きな投資をしない という判断を行います。最小限の仮説検証が可能な、 MVP( Minimum ValuableProduct)を作り、それを市場投入し、仮説が検証されれば、追加で大きな投資をします。検証されなければ、新たな仮説をつくり、再度検証を行います。仮説の検証の仕方は、ペーパープロトタイプでもユーザーヒアリングでもテストマーケティングでもよく、重要なことは、意思決定を遅延させるための「権利」を獲得するアイデアを作ることです。仮説思考と不確実性の取り扱いは、現代で必須スキルの1つになります。
問題解決より、問題の明晰化の方が難しい経験主義と仮説思考問題解決必要十分な情報が揃っている状態で問題を解決することはそれほど難しいことではありません。現在であれば、コンピュータを使って適切ない意思決定を行うことができるでしょう。しかし、社会で取り組む問題の多くは、情報が不完全な状態から始まります。問題の明晰化そのため、問題解決よりも先に「どのような問題なのか」をはっきりとさせる経験主義の考え方と仮説思考が重要になってきます。そして、そのための行動を適切にとるという動的な態度というのがプラグマティズムと呼ばれています。これは、アメリカ社会の基礎的な哲学の一つとなっています。
全体論とシステム思考
システムという言葉の意味全体論とシステム思考要素還元的思考(要素に注目)全体を要素に分解して、設計主義的に問題を記述するやり方です。ロジカルシンキングにおけるロジックツリーなどはそれにあたります。全体部分 部分全体論的思考(関係性に注目)全体論的思考は、関係性に注目します。要素だけを見てもわからない性質たとえば、害獣を駆除したら、有益な植物もいなくなったなど。システム論はこのような関係性の学問です。
3つのU全体論とシステム思考あるひとから見た形 別の人から見た形 側面から見た形
ビジネス施策とシステム全体論とシステム思考施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると500万円の売上増になった。施策B : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると10%の継続利用ユーザーが増加した施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善した。すると1%退会率が減少した。とあるアプリについての施策5万人ユーザー、退会率もともと 5%、1ユーザあたり売上100円のときどの施策がもっとも資産価値を増大させたか。
ビジネス施策とシステム:コストと売り上げの次元全体論とシステム思考施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると500万円の売上増になった。施策B : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると10%の継続利用ユーザーが増加した施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善した。すると1%退会率が減少した。売上500万円 - コスト50万円= 利益450万円売上(5万人*10%*100円) - コスト50万円= 売上(50万円) - コスト50万円= 利益0円売上(5万人*1%*100円) - コスト50万円= 売上(5万円) - コスト(50万円)= 利益▲45万円
ビジネス施策とシステム全体論とシステム思考資産 = ストック = バランスシート利益 = フロー = P/Lビジネスモデル微分微分積分積分ビジネスは「資産に関する関数」ビジネスを記述する関係性は、資産に関する時間的なシステムになる。利益というのは、単位時間の資産の差分なので、資産から見ると微分にあたる。顧客資産を将来的に産み出しうる利益の総額とすると、上記の式で概算できる。g(t)g’(t)g’’(t)顧客資産を概算する式総ライフタイムバリュー= ユーザー数 * ARPU * (1/退会率)
ビジネス施策とシステム全体論とシステム思考資産 = ストック = バランスシート利益 = フロー = P/Lビジネスモデル微分微分積分積分ビジネスは「資産に関する関数」g(t)g’(t)g’’(t)ビジネスのフィードバックサイクル資産利益ビジネスモデル
ビジネス施策とシステム全体論とシステム思考拡張のフィードバック 抑制のフィードバック原因 結果 原因 結果時間結果時間結果
ビジネス施策とシステム全体論とシステム思考とあるアプリについての施策5万人ユーザー、退会率もともと 5%、1ユーザあたり売上100円のときどの施策がもっとも資産価値を増大させたか。総ライフタイムバリュー= ユーザー数 * ARPU * (1/退会率)施策を打つ前の顧客資産価値は、5万人 * 100円 * 1/0.05 = 1億円となる。施策ごとにどれだけ増えたか考えて見る。
ビジネス施策とシステム:顧客資産の次元全体論とシステム思考施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると500万円の売上増になった。施策B : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると10%の継続利用ユーザーが増加した施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善した。すると1%退会率が減少した。施策後の価値 - 施策前の価値= 0円施策後の価値 - 施策前の価値= 5.5万人 * 100円 * 1/0.05 - 1億円= 1,000万円施策後の価値 - 施策前の価値= 5万人 * 100円 * 1/0.04 - 1億円= 2,500万円
役割によって「システム」の一部しか認識できなくなる。全体論とシステム思考利益の次元で見た良い施策売上利益の次元で、日々ビジネスを捉えている営業マンにとっては、施策 Aの価値が高いように見えている。資産の次元で見た良い施策資産の次元で、サービスに価値提供をしている CS部門、デザイン、開発のメンバーにとっては、施策 Cの価値が高いように見えている。施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。すると500万円の売上増になった。施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善した。すると1%退会率が減少した。
認知範囲と力学全体論とシステム思考認知範囲と視野の広さ システムと力学(ダイナミクス)役割や能力によって、合理性を判断するための認知の範囲が異なる。正しく認識できる範囲の広さを「視野の広さ」「視座の高さ」などと表現することがある。限定された範囲の合理性では本当の問題を解決できない。様々な問題を「個人」の問題に捉えると、解決は難しい。問題の根源は、個人ではなくで個人間の相互作用=関係性にある。個人 個人
問題解決より、問題発見の方が難しい全体論とシステム思考問題解決与えられた問題を与えられた範囲で解決できるのであれば、それは比較的簡単なことです。しかし、世の中は複雑な相互関係を持っています。たとえば、害獣が現れたのであれば駆除すればよいという解決は簡単です。しかし、それによって益獣までも根絶してしまう可能性があります。問題の発見それに対して、人々や社会の複雑な相互関係の中の関連性に注目し、その関連性の中で重要な一手を打つというのが、ビジネスでは必要な考えになってきます。それがシステム思考という考え方です。非連続的な成長を目指す ITでは、線形的な世界観で物事を捉えては本質を見失ってしまいます。
人間の不完全さ
3つの思考は人間の不完全さを受け入れる思考人間の不完全さ論理的思考の盲点経験主義と仮説思考システム思考3つの思考は、ただ思索にふけることによって問題の解決にはつながらないということを教えてくれました。人間は不完全であるので、常に理性的に考えることができるわけではありません。感情的になってしまい、冷静な判断をすることができないのです。また、「わからないもの」「不確実なもの」を無意識に避けてしまいます。間違いや不安に直面したくないからです。正解ではなく次の行動を探す、経験主義と仮説思考が重要になります。多くの問題は誰かがわるいのではなく、関係性の中で作られています。システム思考は、人ではなく関係性に原因を求めます。
人間の不完全さを加速させるもの何かを指示する人と、何かの指示を受ける人には常に情報の非対称性があります。片方が知っていて、もう片方が知らない。この状態があると、それぞれにとっての最適な解決策が異なります。情報の非対称性 限定合理性また、人間の認知能力には限界があります。全ての情報を全ての人が適切に処理できるわけではありませんし、同じように認知するわけではありません。また、ある人にとっての個人的に最適な戦略が、全体にとって最適になるとは限りません。このような性質を限定合理性と言います。人間の不完全さ
流行り物でなく、「真理」を見つける重要性まとめエンジニアリングは「実現」の科学です。「実現」には生身の人間が関わるものです。人間の弱さ、不完全さの上にのみ、バグと呼べるものは存在します。何か全ての問題を解決してくれる「銀の弾丸」は存在しません。必要なのは:● 人間(そして自分)の弱さ・不完全さを知ること● 目に見えるだけの範囲で思考を止めずに行動すること● 弱さ・不完全さを開示し分かち合うこと流行り物を追いかけて時間を浪費するのではなく、自ら考え、何をすべきかを問い続けることが重要なことです。