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エンジニアリング組織論への招待:第1章(プレゼン)

 エンジニアリング組織論への招待:第1章(プレゼン)

書籍執筆時にアウトラインを決めるために作成したプレゼンテーション。
第1章の分です。

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hirokidaichi

February 09, 2019
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  1. 思考のリファクタリング 廣木 大地

  2. おしながき 目次 エンジニアリングとは何か? 仕事と学力テストの違い 論理的思考の盲点 エンジニアに必要な考え方 経験主義と仮説思考 全体論とシステム思考 人間の不完全さ

  3.   エンジニアリングとは何か?

  4. エンジニアリングとは何か? エンジニアリングとは何か? エンジニアリングとは、日本語でいうと「工学」のこと である。 対比して物理学や数学といった「理学」という言葉 がある。 理学は「なぜそうなるのかを説明する」分野である。 工学は「役立つものをどう実現するか?」という分野 である。 エンジニアリングとは?

    「実現」に関する分野 工学 「説明」に関する分野 理学
  5. 「はじめ」と「終わり」を考えてみる エンジニアリングとは何か?  何かを実現する流れの「はじめ」を考えるの はむずかしいのですが、実現される前というの は得てして「曖昧」な状態です。  目的も曖昧であれば、どのように実現するの かも曖昧で、非常に不確実性の高い状態だと 言えます。 はじめは曖昧な状態  それに対して、何かが実現されたあとという

    のは、「はっきり」としています。  ソフトウェアであれば、プログラミング言語で 解釈のブレのない形で記述され、そのとおりに 動作しています。終わりには具体的で確実性 の高い状態だと言えます。 終わりには具体的な状態
  6. プロジェクトにおける不確実性コーン エンジニアリングとは何か? よくプロジェクトマネジメントでは、不確実性コーンと いう図が使われます。 プロジェクト初期においては曖昧で、不確実な範囲 が広く、この場合は納期が想定の4倍から1/4まで の幅があります。 プロジェクトが進むにつれて、徐々に不確実性が下 がっていき、いつごろには完成するのかがはっきり としてきます。

    このような不確実性が徐々にさがっていく様を表し た図が不確実性コーンです。 このようにものを実現するというのは、 不確実な状態から確実な状態に推移させていく 過程だと理解することができます。 不確実性コーン
  7. プロジェクトにおける不確実性コーン エンジニアリングとは何か? 時間 終了見込み時期の幅 4倍 2倍 1.5倍 1.25倍 1/1.25 1/1.5

    1/2 1/4 プロジェクト前半は終了時期に 大きな不確実性がある 後半になると不確実性が 減っている 社 長 部 長 課 長 社 員 曖昧な構想 曖昧な方策 具体的な方策 具体的な行動 不 確 実 性
  8. 組織構造における不確実性の流れ エンジニアリングとは何か? 曖昧な構想 曖昧な方策 具体的な方策 具体的な行動 会社という組織構造においては、上位に行けばいく ほど、曖昧な状態のものを指示したり、提示する必 要が出てきます。逆に現場に行くほど、指示や行動 が具体的になってきます。

    会社という組織を通じて、何かを実現するために、 より曖昧な状態から具体的な状態に変化させるとい うことを行なっています。 より曖昧な指示が可能な組織ほど、具体化能力の 高い組織だということになります。 そのことを「権限が委譲されている」組織だというこ とができます。 企業組織とは、つまるところ不確実なものを確実な ものに変化させる処理装置だと言えます。 社長 部長 課長 社員
  9. 権限と情報処理能力 エンジニアリングとは何か? 具体的で細かい指示が必要な組織というの は、仕事を具体化する処理を上司に依存した 組織と言い換えることができます。結果的に、 情報処理能力は上司に依存していきます。こ のような状態をマイクロマネジメントと言いま す。 それに対して、目標の共有や権限の委譲など を通じて、抽象的な指示が機能する組織という

    のは情報処理能力が高い組織と言い換えるこ とができます。このような状態を「自己組織化し た」チームと表現されることがあります。 具体的で細かい指示をする組織 抽象的で自由度のある指示をする組織
  10. 組織とシステムの関係性:コンウェイの法則 エンジニアリングとは何か? コンウェイの法則 システムを設計する組織は、その情報伝達の構 造をまねた設計を生み出してしまう。 メルヴィンコンウェイ 「実現」するための装置 組織 組織によって実現された「仕組み」 システム

  11. 組織とシステムの関係性:コンウェイの法則の実証 エンジニアリングとは何か? 組織階層の深さ 関わっている組織の数 退職者の数 関係者の地理的距離 コードの複雑さ コードの変更量 依存関係の複雑さ テストカバレッジ

    MSRのプレゼン :http://www.slideshare.net/tom.zimmermann/empirical-software-engineering-at-microsoft-research
  12. 不確実性と情報の関係 エンジニアリングとは何か? 情報が少ない 情報量というのは、確率の偏りによって決まります。 上のような例では、株式の購入をするか売却をする かが決まりません。偏りのない状態は情報量が低 いといえます。 情報が多い 逆に8割の確率で株が上がるというのは、情報量が 多いです。この情報から、株式を購入した方が期待

    値が高いと判断できるからです。情報とは、不確実 性の低い状態と言い換えできます あしたは、株が 50%の確率であがって、 50%の確率で下がるよ あしたは、株が 80%の確率であがって、 20%の確率で下がるよ
  13. 不確実な状態から確実な状態になった差分が情報 エンジニアリングとは何か? 情報 乱雑な状態=エントロピーが高い 秩序立った状態=エントロピーが低い 「情報を生み出すこと」が知的労働

  14. 情報を生み出すには? エンジニアリングとは何か? 不確実性を下げていく工程 ソフトウェアを作る際、ある程度はっきりとした要求があ る方が、簡単に作ることができます。それは、当たり前 で、要求に不確実性が低いからです。つまるところそれ は、不確実性の削減を「要求を作る人」に委ねているか らです。 確かな要求があれば、不確実性の高い現実から一時 的に目を背けることができます。ところが、現実のソフト

    ウェア開発を取り巻く状況は不確実性に溢れていま す。 より高い情報処理能力を持つ、エンジニアになるには、 あるいはエンジニア組織を作るには「いかにして不確 実性を下げるか」という思考様式を取り入れる必要が あります。 それを中学高校などで行なっていた学力テストとの差 を示す形で紹介します。
  15.   仕事と学力テストの違い

  16. どちらも頭を使って問題を解決するが何が違うのか 仕事と学力テストの違い 仕事の問題解決 学力テストの問題解決

  17. 仕事と学力テストの3つの違い 仕事と学力テストの違い 仕事と学力テストの違い 学力テストは1人で行いますが、仕事は複数人で行 います。関係性は、思考を複雑に混乱させます 学力テストは一人で行い、他の人がいない 学力テストの問題には、答えを出すのに必要な情 報が書かれていることが期待されます。 答えを出すのに必要な情報がすでにある 仕事上の問題は、正解を定めるところから始めま

    す。正解は1つではないという点が違います 答えが1つになるよう問題が限定されている
  18. 仕事と学力テストの3つの違いと思考様式:論理的思考の盲点 仕事と学力テストの違い 仕事は複数人で行う  立場の違う複数人によって、問題解決を目指して 仕事を行います。その結果、コミュニケーションコス トが発生します。  それだけでなく、どんな人でも自分の立場を攻撃 されたと感じれば、防御的になったり、怒りを覚えた りします。  また、様々な人間の認知能力の限界や、自分で

    ない人の情報を全て手に入れることが不可能であ るという現実があります。このことから、事実を正し く認識することが難しくなります。  そのため、仕事での問題解決を行うために必要な 論理的思考力は、制限されてしまいます。  どんなに自分が正論だと思っていることも、その 人自身の世界の中で認識できる範囲の中で正論に 過ぎず、正解ではないということです。 仕事は複数人で行います。そのため、人間関係や 他人との共同作業をしていく上で、感情的になるこ とがままあります。これを乗り越えて、問題の正しく 認知する必要があります。
  19. 仕事と学力テストの3つの違いと思考様式:経験主義と仮説思考 仕事と学力テストの違い 答えを出すのに必要な情報を手に入れる 問題を解くの必要な情報が、目の前にないのであ れば、それを入手しなければ問題は解決できませ ん。 情報を入手するために、行動を起こして問題解決を 行う考え方を経験主義と言います。 また、限定された情報であっても、その情報から全 体像を想定し、それを確かめることで少ない情報か

    ら問題解決に向かう思考様式を仮説思考と言いま す。 この2つがなければ、行動が止まってしまったり、答 えに近づくことが難しくなってしまいます。 仕事では、その場にある情報だけでなく必要な情報 を得るために行動することができます。それによっ て問題を明晰化する必要があります。
  20. 仕事と学力テストの3つの違いと思考様式:システム思考 仕事と学力テストの違い 正解を設定しなければいけない 仕事において、正解が常に用意されているわけで はありません。 そのため、何が正解なのかを自ら設定することが重 要になります。 学力テストのように限定された範囲では正解を1つ にすることができますが、仕事においては、全体像 を見極めて、正解を設定する必要があります。

    より「広い視野」で問題を捉えるためにシステム思 考という思考様式が必要不可欠です。 仕事においては、正解は1つではありません。時間 と資源の制約の中で、より正解に近づく一手を打続 けることが重要です。
  21. 問題を正しく明晰に記述できた時、その問題は解けている 仕事と学力テストの違い 仕事の問題を学力テストの問題に変換 もし、仕事上の問題や悩みが解けないとき、それは 以上の3つの思考方法を身につけられていないた め、あるいは一時的にできない状態にあるために、 問題が複雑になってしまっているのだと考えられま す。 「仕事の問題」を「学力テストの問題」に書き換えら れるのであれば、多くの社会人は学生時代に培っ

    た十分な知的能力がありますので、解決できるは ずです。 にもかかわらず、「問題が解けない」のであれば、そ れは「問題が正しく明晰に記述できていない」と考え ると何をすべきがが見えてくるはずです。 変換 仕事の問題 学力テストの 問題 解きにくい 解きやすい
  22. 現代アメリカの思想的教養 仕事と学力テストの違い 3つの思考 学力テストと仕事の違いを構成する3つの思考様 式:論理的思考の盲点、経験主義と仮説思考、シス テム思考は、近現代のアメリカの思想的潮流と密 接に関わっています。 アメリカはソフトウェア産業の中心地です。さまざま な手法や理論が日本にも輸入されて来ますが、そ の背後には、現代アメリカの思想的教養というべき

    ものが見え隠れしています。 これらを理解することで、よりクリアにソフトウェアエ ンジニアリングを巡る言説を体得することができま す。 論理的思考の盲点 経験主義と仮説思考 システム思考
  23.   論理的思考の盲点

  24. 論理的思考と2つの前提 論理的思考の盲点 論理的思考 論理的思考とは、前提条件から演繹し、結論を導く 思考です。 ということは、結論が正しくあるためには2つの前提 が隠れていることがわかります。 前提 結論 演繹

    前提を正しく捉えられること 正しく演繹できること
  25. 人間が2つの前提を正しく運用するためには? 論理的思考の盲点 前提を正しく捉えられる 正しく演繹できる 事実を正しく認知できる 事実を正しく認知することは難しいです。なぜなら、 人の認知は歪んでしまうからです。どんな人間であ れ、正しく事実を認知することはできないため、い つ、どのように歪むのか知る必要があります。 感情に囚われず判断することができる

    ある前提からスタートしても、人はすばやく結論へと 思考を進めてしまいます。この時に発生しているの は、論理的思考というよりも感情による短絡が発生 します。それを排除して、演繹しなければ正しく問題 を解決できません。
  26. 非論理的に考えないこと = 論理的に考えること 論理的思考の盲点 論理的思考 「論理的に考える」ことに注目すると見えなくなりが ちですが、論理的に考えるには、 「非論理的に考えてしまう」瞬間を知ることが重要で す。 考える

    論理的に 考える 論理的に 考える 非論理的 に考える エンジニアは論理的に考えることが得意だと一般 には思われています。それは、論理的な不整合が あるとプログラムが動作しないから、論理的な思考 を進めることが得意だという類推です。 これは一面的には正しいです。一方で、論理的思 考能力は、多くの人が持ち得ており、巷のロジカル シンキング講座も、どのように論理的に考えるかと いうことばかりが注目されています。 ですが、「自分や人はいつ非論理的になるのか」を 知らない人は、論理的思考力が限定されてしまう 環境でワークすることができません。
  27. 人は正しく、事実を認知できない。 事実 事実はありのまま、ただあるだけです。 たとえば、「雨が降った」は事実です。雨が降った ことがよいとか悪いとか、苛だたしいといった判 断はなく、「雨が降った」という出来事があっただ けです。 論理的思考の盲点 認知 事実を見て、人が頭の中で認識することを「認

    知」と言います。 雨が降ったのであれば、憂鬱な思いがしたり、 いらだったりと嫌なイメージを受け取る人も多い でしょう。
  28. ベーコンの4つのイドラ 論理的思考の盲点 伝統や権威を無批判に受け入れて、誤った考えで あっても信じてしまうことから生じる偏見。 例:偉い人の言っていることは正しいだろうと思うこ と。 個々を取り巻く環境から、外の世界を知らずに一般 的なことだと決めつけて理解することから生じる偏 見。 例:自分がそうだから、他の人もそうだと思う

    例:自分の家では目玉焼きにマヨネーズだからみん なそうだ。   人間が本来持っている性質から生じる錯覚や偏見。 例:遠くにあるものが小さく見える 例:暗い場所ではものがはっきりと見えない。 言葉の不適切な使用から生じる誤解や偏見。噂話が あったときに、ありえないことを本当のことだと思い込 むことで生じる。 例:噂話やデマを信じてしまう。 種族のイドラ 洞窟のイドラ 市場のイドラ 劇場のイドラ
  29. 認知の歪み 論理的思考の盲点 ゼロイチ思考 一般化のしすぎ すべき思考 物事をゼロかイチ(すべて)かで 考えてしまう。物事にはグラデー ションがあり、バランスが重要。し かし、人は物事を白か黒かで判 断してしまう。

    実際には、二、三回あっただけの 出来事に対して、「常に」「いつ も」というように問題を一般化して 捉えて決めつけてしまう。 ルールなど関わることに対して、 「〜すべき」とばかり考えてしまう 認知のバイアス。本来はあなた 自身が「〜したい」と思ったことを すればいい。 自己関連付け 選択的注目 レッテル貼り どんな出来事も「悪いのは自分」 だと直接関係のないことまで責任 を感じて、自分を責めてしまう。 一度、そうだと思うと、そのような 情報だけが目に入ってしまい、自 説を強化してしまう。 実際には、そういった情報ばかり 探してしまっている。 あいつは「営業」だから、とかあい つは「エンジニア」だからというよ うにレッテルを貼って、物事を判 断する。
  30. 扁桃体をコントロールする 論理的思考の盲点 恐怖・悲しみ・危機 怒り 人間の脳は、なにか自分や仲間が脅かされる であるとか、ぞんざいに扱われたと感じると、恐 怖と感情を司る扁桃体が発火します。これに よって、人間は自分自身を守るために、「怒り」 を発生させ、相手に対する攻撃と防御を無意識 に起こそうとします。

    動物の脳である扁桃体は、危機や恐怖が先 立っています。それが「悲しみ」であれば原初 的な感情なのですが、知的能力を司る脳が防 衛・退避を起こそうとすると怒りに変わります。 怒っている人はよく喋るのは、知的な能力を 使っているからです。
  31. 自分のアイデンティティの範囲を知る 論理的思考の盲点 アイデンティティの範囲が広い アイデンティティの範囲が狭い 人は、自分自身のアイデンティティだと思ってい る範囲を攻撃されると怒りを感じます。つまり、 怒りを感じた時、それはあなたの大事なものが 何かを教えているわけです。 自分自身の範囲が狭い人は、怒りを感じにく いです。それが攻撃だと思わないから、恐怖

    を覚えないのです。尊大な人ほど怒りやすい のはそういう理由です。 家族 仕事内容 同僚 趣味の時間 物事の進め方 宗教 使う言語 他人の行動 家族 仕事内容 同僚 趣味の時間 物事の進め方 宗教 使う言語 他人の行動 攻撃 された!
  32. 認知的不協和 論理的思考の盲点 タバコを吸う人の認知 タバコを嫌いな人の認知 タバコを吸う人は、タバコが体に悪いということ は認知しています。しかし、自分自身がタバコを 吸うという行動をとっていて、矛盾してしまいま す。その整合性が取れない状態から、「タバコは 体に悪くない」「他の原因で死ぬ人の方が多い」 など別の情報を選択的にと取り入れ、不整合を

    避けます。 逆にタバコを嫌いな人は、タバコの匂いがしただ けで健康に悪いと思ったり、必要以上にタバコを 吸う人を責め立てたりします。このように自分の 感情や行動の矛盾(不協和)を解決するため に、認知自体を歪めることを認知的不協和の理 論と言います。
  33. 問題解決より、問題認知の方が難しい 論理的思考の盲点 問題解決 お膳立ての整った形での問題解決は、簡単にで きるはずです。問題が難しいと感じるのは、それ が他人のことは決して完全には知り得ないとい う事実から生まれます。それを無視して、狭い認 知範囲で問題を解決できると思うのは思い上が りです。 問題認知

    難しいのは、問題を正しく認知することです。。人 は自分が間違っているかもしれないことを無意 識に避けてしまい、正しい情報を認知できませ ん。自分は間違っているかもしれないが、それに 早く気付くほうがいいと思考のパターンを変える 必要があります。
  34.   経験主義と仮説思考

  35. 3枚のトランプのうち、ハートのエースはどれか? 経験主義と仮説思考 裏面に裏返された3枚のカードがある。そのうち、1枚はハートのエースであとは別のカー ドである。このとき、ハートのエースがどれであるのか、どのようにしたら見つけ出すことが できるだろうか。

  36. わからないのであれば、「調べてみる」しかない 経験主義と仮説思考 理性主義 近世以前のヨーロッパの哲学的態度。知識は、 人間の理性の中に存在するという考え方。何か の法則や原則から出発して、演繹的に世の中を 捉える考え方。論理的思考の盲点として説明し たように、前提が間違っていたのであれば、結 論も間違ってしまう。 経験主義

    経験主義は、近世のイギリスで花開いた哲学的 態度。知識の源泉を「経験」に求める。実験を 行ったり、行動を行うことで、知識を積み上げて いく。近代科学的な思考態度は、ここから生まれ た。エンジニアにとっては、スクラムの3つの価値 として、「経験主義」があげられている
  37. わからないことを行動を行って徐々に突き止めていく 経験主義と仮説思考 理性主義的な問題解決 経験主義的な問題解決 わからなかったの で、もう一度考えて みよう! わからなかったの で、次に何をしたら わかるのか考えよ

    う。 理性主義的な問題解決では、 「わからなかった」という事実から、次の行動へ の一手が浮かび上がってきません。 なので、もう一度同じことを繰り返して、何かミス がなかったかと考えるしかなく、袋小路に陥って しまいます。 一方で、経験主義的な問題解決では、 「わからなかった」あるいは「正解ではなかった」 ということが重大なヒントになり、次の行動を生 み出します。
  38. 「答え」ではなく「答えに近づくための一手」をとる 「答え」を考える 「次の一手」を考える もし、答えに至るための情報が全て揃っていて、 問題に取り組んでいるのであれば、答えを求め て考えることに意味があります。 しかし、学力テストと違って、答えに至るために 必要な情報が目の前にないことの方が多いの です。 にもかかわらず答えを探すと、大抵もんもんと考

    え込むだけで、問題は解決できません。 それに対して、全ての情報が揃っていないの だから、より問題をはっきりさせるためにはど のような「次の一手」を打てばいいのか考える のであれば、思い悩むことが少なくなります。 なぜなら、今わからないということ自体が、次 の一手への重大なヒントだからです。 一発で正解に至る必要はない。 正解に近づいていけばよい。 経験主義と仮説思考
  39. 不確実性をコントロールする夏休みの宿題理論 経験主義と仮説思考 不確実性の高い宿題 不確実性の低い宿題 自由研究や苦手な教科の宿題のように、どのく らいでおわるか読みづらいものは、不確実性の 高い宿題と言えます。時間が読みづらいもの は、やってみるとどのくらいで終わるのか見えて 来ます。実際に行動を取ることで、スケジュール の精度があがるのです。

    逆に、不確実性の低い宿題。たとえば、得意教 科のドリルなどを先に手がける場合、不確実性 の高い宿題だけが手元に残ります。量は少なく なっているのに、不確実性は高いままなので、 いつまでに終わるのか読みにくく、夏休みを楽し む時間が減ってしまいます。
  40. パーキンソンの法則 経験主義と仮説思考 パーキンソンの法則 仕事の量は、完成のために与えられた時間をす べて満たすまで膨張する シリルパーキンソン “ 100% 70% 70%

    100% 時間 クオリティ 不確実なものから 明らかにするやりかた 確実なものから 進めていくやりかた
  41. コントロールできるものとできないもの 経験主義と仮説思考 コントロールできるもの コントロールできないもの コントロールできないものを制御しようとすると、 問題は解決されず、悩みになる。 自分の行動 他人の内心 自分のいる場所 世の中

    自分の考え方 自然環境や物理法則
  42. 観測できるもの/できないもの 経験主義と仮説思考 観測できるもの 観測できないもの 観測できないものは、修正したこともわからない。 まだ、観測できるものをしてなければするしかない 自分の行動 他人の内心 他人の行動 未来

    測定可能なすべてのこと 測定不能なすべてのこと
  43. あなたができることは、「観測できコントロールできる」ことの範疇の中にある 経験主義と仮説思考 観測でき、 コントロールできる 観測できないが コントロールできる 観測できないし、 コントロールできない 観測できるが、 コントロールできない。

    観測できるが、コントロール できないものは、 「コントロールできるもの」を つかって、間接的に制御する しかない。
  44. 仮説思考とは何か? 演繹法 帰納法 仮説法 仮説を元に、事例から結論を導き出す思 考。「論理的に」というときに、多くは演繹 法のことを指している。 帰納法は、ケースと結果の組み合わせの リストから、このような仮説があるのでは ないかと推論する思考法。確証性の原理

    や、自然の斉一性原理によって支えられ る。 わずかな痕跡から、それを説明可能とす る大胆な思考展開・モデル化を行い、それ を検証するための行動につなげる思考様 式。 経験主義と仮説思考 ルール 事象 結論 人間は皆死ぬ。 ソクラテスは人間であ る。 ソクラテスは死ぬ。 事象 結論 このカラスは黒い。 あのカラスも黒い。 すべてのカラスは黒 い。 事象 事象 結論 二つの大陸の海岸線 は似ている 大陸は移動したので はないか 2つの海岸線が1つで ある証拠を探そう 仮説
  45. PDCAサイクル W・エドワーズ・デミング (1900-1990) PDCAサイクルは別名、デミングホ イールとも呼ばれる PDCAサイクル/デミングホイール  仮説をたて、それを検証し、問題点に対して対 応するというサイクル。  広く流通している語であるが、多くの場合正しく PDCAを回すことができていない。

    経験主義と仮説思考 現在ある情報から、改善のための仮説を立 て行動計画を決める。 PLAN:仮説を立て、行動計画を決める DO:実行する CHECK:検証と反省を行う それを実行する。 仮説が正しいのか検証し、反省を行う。 ACTION:検証結果に基づき行動する 検証結果から、次の仮説構築・行動を行う。
  46. データ駆動な意思決定の誤解 経験主義と仮説思考 データから決定的に導かれる データから仮説を立てる データ駆動な意思決定について、多く誤解があ る。十分なデータが存在すればそこから、次にと るべき正しい行動がわかるとする考え方だ。実 際は、常にデータは不完全である。 なので、数少ないデータから大胆に顧客のイン サイトや仮説を推論し、それが正しいのかという

    不確実性を検証するための行動をとるというの がデータによる意思決定である。 データ 次にとるべき正しい行動 データ データ データ データ データ データ分析 データ データ データ データ データ データ 大胆なモデル化と 検証手段 それを確かめるための行動
  47. 遅延した意思決定:リアルオプション戦略と意思決定 経験主義と仮説思考 遅延しない意思決定 不確実性が大きい段階で、大きな予算をつけて 大きなプロジェクトを走らせると、失敗した場合 にその投資の全てが失敗になってしまいます。 これではチャレンジングな決定をし難くなってし まいます 遅延した意思決定 株の購入権をオプションと言います。株が上

    がったらその時の値段で買い、下がっていれば 買いません。これをプロジェクトの投資判断で行 う手法をリアルオプション戦略と言います。 MVP
  48. 遅延した意思決定:オプションとは後出しジャンケンできるための価格 経験主義と仮説思考 遅延しない意思決定 具体的な数字で見てみると、 1000万円かけて、 売上が1800万となるプロジェクトにおいて、期待 値は、うまくいった場合の利益 800万とうまくいか なかった場合の損を含めて考えると、 -100万の期

    待値となります。 遅延した意思決定 オプションを100万で購入しうまくいくかいかない かがわかった場合では、損金が 100万円。利益 は700万円となり、期待値は +300万円となりま す。うまくオプションを作ることで安全にチャレン ジできるようになります。 50% 50% 投資1000万円 売上1800万円 売上0万円 +800万円 -1000万円 期待値 = 800*0.5 -1000 * 0.5 = -100万円 50% オプション 100万円 1800万円 0万円 +700万円 -100万円 期待値 = 700*0.5 -100 * 0.5 = 300万円 50% 追加投資 1000万円
  49. 遅延した意思決定:リアルオプション戦略とLEAN STARTUP 経験主義と仮説思考 LEAN STARTUP LEAN STARTUPでは、新規事業において、小 さな単位での仮説検証の重要性が説かれてい ます。これは不確実性が高いほどに仮説検証 の予算を多くつけても割りにあうというリアルオ

    プションの理論に基づいています。 不確実性が高いプロジェクトには、 仮説が検証できるまで大きな投資をしない という判断を行 います。 最小限の仮説検証が可能な、 MVP( Minimum Valuable Product)を作り、それを市場投入し、仮説が検証されれ ば、追加で大きな投資をします。検証されなければ、新た な仮説をつくり、再度検証を行います。 仮説の検証の仕方は、ペーパープロトタイプでもユー ザーヒアリングでもテストマーケティングでもよく、重要なこ とは、意思決定を遅延させるための「権利」を獲得するア イデアを作ることです。 仮説思考と不確実性の取り扱いは、現代で必須スキルの 1つになります。
  50. 問題解決より、問題の明晰化の方が難しい 経験主義と仮説思考 問題解決 必要十分な情報が揃っている状態で問題を解 決することはそれほど難しいことではありませ ん。現在であれば、コンピュータを使って適切な い意思決定を行うことができるでしょう。しかし、 社会で取り組む問題の多くは、情報が不完全な 状態から始まります。 問題の明晰化

    そのため、問題解決よりも先に「どのような問題 なのか」をはっきりとさせる経験主義の考え方と 仮説思考が重要になってきます。そして、そのた めの行動を適切にとるという動的な態度というの がプラグマティズムと呼ばれています。これは、 アメリカ社会の基礎的な哲学の一つとなっていま す。
  51. 全体論とシステム思考  

  52. システムという言葉の意味 全体論とシステム思考 要素還元的思考(要素に注目) 全体を要素に分解して、設計主義的に問題を記述 するやり方です。ロジカルシンキングにおけるロジッ クツリーなどはそれにあたります。 全体 部分 部分 全体論的思考(関係性に注目)

    全体論的思考は、関係性に注目します。要素だけ を見てもわからない性質たとえば、害獣を駆除した ら、有益な植物もいなくなったなど。 システム論はこのような関係性の学問です。
  53. 3つのU 全体論とシステム思考 あるひとから見た形 別の人から見た形 側面から見た形

  54. ビジネス施策とシステム 全体論とシステム思考 施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。 すると500万円の売上増になった。 施策B : 50万円の原資でキャンペーンを打った。 すると10%の継続利用ユーザーが増加した

    施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善し た。すると1%退会率が減少した。 とあるアプリについての施策 5万人ユーザー、退会率もともと 5%、1ユーザあた り売上100円のとき どの施策がもっとも資産価値を増大させたか。
  55. ビジネス施策とシステム:コストと売り上げの次元 全体論とシステム思考 施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。 すると500万円の売上増になった。 施策B : 50万円の原資でキャンペーンを打った。 すると10%の継続利用ユーザーが増加した

    施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善し た。すると1%退会率が減少した。 売上500万円 - コスト50万円 = 利益450万円 売上(5万人*10%*100円) - コスト50万円 = 売上(50万円) - コスト50万円 = 利益0円 売上(5万人*1%*100円) - コスト50万円 = 売上(5万円) - コスト(50万円) = 利益▲45万円
  56. ビジネス施策とシステム 全体論とシステム思考 資産 = ストック = バランスシート 利益 = フロー

    = P/L ビジネスモデル 微分 微分 積分 積分 ビジネスは「資産に関する関数」 ビジネスを記述する関係性は、資産に関する時間 的なシステムになる。利益というのは、単位時間の 資産の差分なので、資産から見ると微分にあたる。 顧客資産を将来的に産み出しうる利益の総額とす ると、上記の式で概算できる。 g(t) g’(t) g’’(t) 顧客資産を概算する式 総ライフタイムバリュー = ユーザー数 * ARPU * (1/退会率)
  57. ビジネス施策とシステム 全体論とシステム思考 資産 = ストック = バランスシート 利益 = フロー

    = P/L ビジネスモデル 微分 微分 積分 積分 ビジネスは「資産に関する関数」 g(t) g’(t) g’’(t) ビジネスのフィードバックサイクル 資産 利益 ビジネス モデル
  58. ビジネス施策とシステム 全体論とシステム思考 拡張のフィードバック 抑制のフィードバック 原因 結果 原因 結果 時間 結果

    時間 結果
  59. ビジネス施策とシステム 全体論とシステム思考 とあるアプリについての施策 5万人ユーザー、退会率もともと 5%、1ユーザあた り売上100円のとき どの施策がもっとも資産価値を増大させたか。 総ライフタイムバリュー = ユーザー数

    * ARPU * (1/退会率) 施策を打つ前の顧客資産価値は、 5万人 * 100円 * 1/0.05 = 1億円 となる。 施策ごとにどれだけ増えたか考えて見る。
  60. ビジネス施策とシステム:顧客資産の次元 全体論とシステム思考 施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打った。 すると500万円の売上増になった。 施策B : 50万円の原資でキャンペーンを打った。 すると10%の継続利用ユーザーが増加した

    施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改善し た。すると1%退会率が減少した。 施策後の価値 - 施策前の価値 = 0円 施策後の価値 - 施策前の価値 = 5.5万人 * 100円 * 1/0.05 - 1億円 = 1,000万円 施策後の価値 - 施策前の価値 = 5万人 * 100円 * 1/0.04 - 1億円 = 2,500万円
  61. 役割によって「システム」の一部しか認識できなくなる。 全体論とシステム思考 利益の次元で見た良い施策 売上利益の次元で、日々ビジネスを捉えている営 業マンにとっては、施策 Aの価値が高いように見え ている。 資産の次元で見た良い施策 資産の次元で、サービスに価値提供をしている CS

    部門、デザイン、開発のメンバーにとっては、施策 C の価値が高いように見えている。 施策A : 50万円の原資でキャンペーンを打っ た。すると500万円の売上増になった。 施策C : 50万円の原資で不満の多い機能を改 善した。すると1%退会率が減少した。
  62. 認知範囲と力学 全体論とシステム思考 認知範囲と視野の広さ システムと力学(ダイナミクス) 役割や能力によって、合理性を判断するための認 知の範囲が異なる。正しく認識できる範囲の広さを 「視野の広さ」「視座の高さ」などと表現することがあ る。限定された範囲の合理性では本当の問題を解 決できない。 様々な問題を「個人」の問題に捉えると、解決は難

    しい。問題の根源は、個人ではなくで個人間の相互 作用=関係性にある。 個人 個人
  63. 問題解決より、問題発見の方が難しい 全体論とシステム思考 問題解決 与えられた問題を与えられた範囲で解決できる のであれば、それは比較的簡単なことです。し かし、世の中は複雑な相互関係を持っていま す。たとえば、害獣が現れたのであれば駆除す ればよいという解決は簡単です。しかし、それに よって益獣までも根絶してしまう可能性がありま す。

    問題の発見 それに対して、人々や社会の複雑な相互関係の 中の関連性に注目し、その関連性の中で重要な 一手を打つというのが、ビジネスでは必要な考え になってきます。それがシステム思考という考え 方です。非連続的な成長を目指す ITでは、線形 的な世界観で物事を捉えては本質を見失ってし まいます。
  64. 人間の不完全さ

  65. 3つの思考は人間の不完全さを受け入れる思考 人間の不完全さ 論理的思考の盲点 経験主義と仮説思考 システム思考 3つの思考は、ただ思索にふけることによって問題の解決 にはつながらないということを教えてくれました。人間は不 完全であるので、常に理性的に考えることができるわけで はありません。感情的になってしまい、冷静な判断をする ことができないのです。

    また、「わからないもの」「不確実なもの」を無意識に避け てしまいます。間違いや不安に直面したくないからです。 正解ではなく次の行動を探す、経験主義と仮説思考が重 要になります。 多くの問題は誰かがわるいのではなく、関係性の中で作 られています。システム思考は、人ではなく関係性に原因 を求めます。
  66. 人間の不完全さを加速させるもの 何かを指示する人と、何かの指示を受ける人には 常に情報の非対称性があります。 片方が知っていて、もう片方が知らない。この状態 があると、それぞれにとっての最適な解決策が異な ります。 情報の非対称性 限定合理性 また、人間の認知能力には限界があります。全ての 情報を全ての人が適切に処理できるわけではあり

    ませんし、同じように認知するわけではありません。 また、ある人にとっての個人的に最適な戦略が、全 体にとって最適になるとは限りません。このような性 質を限定合理性と言います。 人間の不完全さ
  67. 流行り物でなく、「真理」を見つける重要性 まとめ エンジニアリングは「実現」の科学です。 「実現」には生身の人間が関わるものです。 人間の弱さ、不完全さの上にのみ、バグと呼べるものは存在します。 何か全ての問題を解決してくれる「銀の弾丸」は存在しません。 必要なのは: • 人間(そして自分)の弱さ・不完全さを知ること •

    目に見えるだけの範囲で思考を止めずに行動すること • 弱さ・不完全さを開示し分かち合うこと 流行り物を追いかけて時間を浪費するのではなく、自ら考え、 何をすべきかを問い続けることが重要なことです。