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AI時代に事業成長を支えるCTOとは
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ツルオカ - Hideki Tsuruoka
November 12, 2025
Technology
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11
AI時代に事業成長を支えるCTOとは
2025.11.12 NTTドコモグループ合同開催のNext CTO Summitにて登壇
ツルオカ - Hideki Tsuruoka
November 12, 2025
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Transcript
NTT DOCOMO, INC. 経営企画部 事業開発室 UpdatedAt 2025.11.12 hands / 鶴岡
秀樹 AI時代に事業成⻑を⽀えるCTOとは ─ 10⼈ユニコーンを実現する⽅法を考える Next CTO Summit
2 鶴岡 秀樹 • ドコモ経企、技術部隊「hands」にて開発・⽀援・育成 • ⼦会社含むdocomo STARTUP事業の技術⽀援を10件以上 • Flutter活⽤でドコモ新規事業のローンチ、他部研修講師
• Zenn執筆(2.2K Likes)、OSS、イベント登壇・運営、技術顧問 など • Perfume が好き(P.T.A. 2012年~) / 2児の⽗ @h_tsuruo htsuruo ツルオカ ヒデキ
ドコモ内外の多くの新規事業、⼦会社、スタートアップに伴⾛する⽴場 わたしの⽴場 4 CTO CTO CTO CTO
10⼈ユニコーン AIを使った少数精鋭部隊で巨額の利益を⽣み出す ※ユニコーン: 評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業
実際、社員50⼈以下で評価額10億ドル超のAIユニコーン企業が10社以上存在する※ 10⼈ユニコーンの時代 6 ※Business Insider調べ、2025年5⽉ ref. https://newspicks.com/news/9828628/body/
AIエディタのCursorはわずか12ヶ⽉で年間経常収益1億ドルを達成 開発元のAnysphere社は設⽴からわずか3年でARRが5億ドルを突破 史上最も急成⻑したソフトウェアスタートアップ 7
8 なぜ、Cursorは急成⻑できたのか?
9 AI
10 10⼈ユニコーンの再現性は どこにあるのか?
11 AIネイティブなUXの根本的な構築 戦略的な技術とビジネスモデル • 既存プラットフォーム活⽤(Code OSSのFork) • 最先端モデルのセレクトショップ戦 略 超⾼速な開発と実験の⽂化
創業者の圧倒的な才能 市場の参⼊タイミング CAD設計⽀援からAIコーディングへ のピボットを成功させた判断の速さ • 「クイックに価値の⾼いもの を出せる」は正義 • 政治のない意思決定 • IDEの再設計(単なる⾃動補完を超 えた機能) • コア機能による価値提供 (Codebase Index) • 全員MIT出⾝の技術専⾨家 • 4⼈の技術専⾨家が揃う 効果的な市場浸透と収益化戦略 • PLG戦略: マーケティング費 ⽤をほとんど使わずに、年間 収益1億ドルを達成 • 「作業の⾼速化」と「専⾨知 識の⺠主化」
12 AIネイティブなUXの根本的な構築 戦略的な技術とビジネスモデル • 既存プラットフォーム活⽤(Code OSSのFork) • 最先端モデルのセレクトショップ戦 略 超⾼速な開発と実験の⽂化
創業者の圧倒的な才能 市場の参⼊タイミング CAD設計⽀援からAIコーディングへ のピボットを成功させた判断の速さ • 「クイックに価値の⾼いもの を出せる」は正義 • 政治のない意思決定 • IDEの再設計(単なる⾃動補完を超 えた機能) • コア機能による価値提供 (Codebase Index) • 全員MIT出⾝の技術専⾨家 • 4⼈の技術専⾨家が揃う 効果的な市場浸透と収益化戦略 • PLG戦略: マーケティング費 ⽤をほとんど使わずに、年間 収益1億ドルを達成 • 「作業の⾼速化」と「専⾨知 識の⺠主化」
13 10⼈ユニコーンの鍵 ≒ CTO
─ 本⽇お話すること ─ (必ずしもCTOではなくとも、AIネイティブな組織の在り⽅について考えるきっかけになれば) 『10⼈ユニコーン』の要素を分解し、 再現性⾼いチームにするために、 みなさんがCTOとして何をするべきか
10⼈ユニコーン AIを使った少数精鋭部隊で巨額の利益を⽣み出す
AIを使った少数精鋭部隊で巨額の利益を⽣み出す 10⼈ユニコーン
•1⼈の⼈間をエンパワーして10x分の働きをする •AIを1⼈従業員として捉えてチームを作る 10⼈ユニコーン
•従来では実現できなかった顧客体験を提供する •業界構造を拡張し新しいマーケットを創造する 10⼈ユニコーン
顧客価値のためのAI 組織効率のためのAI • 1⼈の⼈間をエンパワーして10x分の働きをする • AIを1⼈従業員として捉えてチームを作る • 業界構造を拡張し新しいマーケットを創造する • 従来では実現できなかった顧客体験を提供する
10⼈ユニコーン
組織効率AI 顧客価値AI 10⼈ユニコーン 従来の労働集約型スタート アップ 例)2020年以前の、典型的なSaaS スタートアップ 10⼈で⿊字化する、 堅実なスモールビジネス
例)Copilotでコーディングは⾼速だ が、プロダクトは平凡 最先端の研究や技術を持つ スケールしない技術機関 例)研究室発スピンアウト ⾼ ⾼ ※例はあくまでイメージですべてが該当するわけではありません
21 これが最低ライン、 ⾮AI-nativeがリスクになっていく時代
22 AI-nativeなプロダクトを AI-nativeな組織で⽣み出す
顧客価値のためのAI 組織効率のためのAI ─新しいUX、マーケット創造─ Part.1
いまでは、⾮エンジニアでもAI EditorとしてCursorに課⾦し利⽤している⼈が急増 AIにより業界構造を拡張されたマーケット 24 Coding Editor AI Editor
そんな簡単な話ではないが、理論上TAMのキャップが外れるのでチャンスが広がる マーケットが開拓されればユニコーンに近づく 25 Coding Editor AI Editor
Coding Agent AIによりこれまで限界とされていた顧客体験の天井を突き破ることも可能に マーケット拡⼤は結果論、本質は顧客体験の創造 26 AI-Assisted Coding Programming ⼈間とAIのコーディング業務(書く)の割合の変遷 •
AI • Human
これまでできなかったことが、できるようになっている。 LLM進化による限界突破速度の加速 27 LLMの変遷からその多様性が伺えるが、特にAIエージェントを実⽤化させた 価格競争化、思考モード, ロングコンテキスト, マルチモーダル辺りがブレイクスルーだと思っている
コンテキスト整備、MCPプロトコル、外部世界との接続の簡易化などに伴い AIエージェントが実⽤化しユーザー体験も変容 AIエージェントの実⽤化とインタフェースの変容 28 ChatGPT Atlas / Google AI mode
インタフェースはGUIからNLI(⾃然⾔語)へ
顧客価値のためのAIを意識する⾏動として CTOとしてやるべきこと(顧客価値のために) 29 AIによる業界構造の変化を検知する アンテナを⽴て戦略を⽴てる AIにより顧客体験がどう根本的に変わるのかを 予測し市場検証する ‣ 顧客は⾃社プロダクトで何を成し遂げたいのか、⼿段ではなく⽬ 的思考の設計がより重要に
‣ 例: 経費精算SaaSで、レシート撮影すら不要にし決済履歴から AIが⾃動で起票・申請するようなUX ‣ 技術に最も詳しいボードメンバーとしてCEOに提⾔できる役割 ‣ 例: Cloudflare → LLMクローラーによる著作権保護のためク ロールの度に⽀払いを請求するPay Per Crawl 1 2
AIはあくまで⼿段であり⽬的ではない AI組み込みの陥りがちな罠 30 とりあえず「AI」を回避する それは本当に「AI Native」なUXか? それは「AI」であるべきか? ‣ 競合がリリースしたからというような、技術を⼿段の⽬的化にしないこと ‣
AIでしか実現不可能な新しい顧客体験(UX)を通じて事業価値を創出することが⽬的 1 2 3 ‣ 既存の機能にAIを後付けするのではなく、AI技術を前提とした全く新しいユーザー体験を設計できているか ‣ 複雑なLLMを導⼊するよりも、シンプルな条件分岐やワークフローで実装したほうが早いケースもある ‣ HRや法務処理など100%正確性が求められるケースでは安易なエージェント導⼊は危険(ドメインの⾒極め)
組織効率のためのAI 顧客価値のためのAI ─能⼒拡張、AIエージェント、トイル削減─ Part.2
AIによる能⼒拡張は、⼤きく2つに分類できる 得意分野の加速 と 異分野への越境 32 異分野への越境 得意分野の加速 Engineering Engineering Design
Design×Engineering AIによる能⼒拡張
AIで100%品質に近づくのは困難だが70%の合格ラインまでは早い 越境のチャンスは無数に 33 異分野への越境 得意分野の加速 できる→”もっと"できる できない→”できる” 80% 99% 0%
70% 元々バリューを発揮していた領域で AIに100%品質を求めることは難しい 経理や法務のバックオフィスなど 元々できなかった領域の合格ラインは到達しやすい
34 プロダクト開発だけではなく、 バックオフィスなど 経営の⽴場で解決していく
越境コストをゼロにし経営課題を解決していくことが、10⼈ユニコーンを⽬指す組織効率化の鍵 経営課題への適⽤ 35 例)バックオフィス効率化のためにSaaSを導⼊するのと同じように、⾃社業務ワークフローを再定義できる ref. DeNAのAI Workforce戦略より引⽤
⼈間の⾏う業務は断⽚的ではなく、連続的なことが⼤半 業務ワークフローを再定義 36 業務A 業務B 業務C 従来の業務(例: 契約申請) 業務A 業務B
業務C 例)契約書レビューAI Step1: AIで置き換え(効果は限定的) 業務A 業務D(⼈間ではできなかったこと) Step2:業務フロー全体を再定義 例)契約書レビュー、ガバナンスチェック、セ キュリティチェック、過去の申請から類似ケー スの抽出を申請から承認まで1⽇でこなす 稟議の例: 『⼈間が請求書を確認してハンコを押す』というフローを⾃動化するのではなく、 『そもそも⼈間は異常値だけ⾒ればいい』というプロセスに変える。
⾝近な業務効率化の⼤半はWorkflowで解決できることが多い AI⽂脈におけるWorkflowとAgent 37 LLMとツールが事前定義されたコードのパス を通じて調整されるシステム LLMが独⾃のプロセスとツールの使⽤を動的に 指⽰し、タスクの達成⽅法を制御するシステム Workflow Agent https://www.anthropic.com/engineering/building-effective-agents
プラットフォームは何でも良いが、Google製品はバックオフィス業務として頭⼀つ抜いている気がする Google Workspaceの例 38 Workflow型 Google Workspace Flows Agent Designer
※2025年11⽉時点アルファ版 Forms経由の問い合わせを追跡、Geminiで分析、返信⽂をGmailでドラフ ト作成までのプロセスを⾃動化・効率化 →⼈間はメールドラフトをチェックするだけ ref. https://www.youtube.com/watch?v=fBmHNeDXYu8 ※2025年11⽉時点プレビュー版 1. 市場調査エージェント: トレンドを特定し、競合分析を実⾏ 2.メディア⽣成エージェント: ブランドガイドラインを元に、クリエイティブ⽣成 3.コミュニケーションエージェント: チームへのコミュニケーションを起草・配布 4.在庫エージェント: 製品の在庫を確認・調整 “今年のハロウィンキャンペーンの計画”タスクを4つのAgentに委譲し実⾏ Agent型 ref. https://www.youtube.com/watch?v=EKZJrHjZ6Ag
根本的には従業員を増やしてスループット上げるという考え⽅は変わらないが、固定費削減 AIを1⼈の従業員としてマネジメントする 39 ref. https://www.amazon.co.jp/dp/429607122X AI、LLMは、企業にとって 「もの知りでタフで賢い、けれど⾃社 の知識はない新⼊社員」のような存在 “ ‣
コンテキストを正確に与えないと暴⾛する ‣ 24時間365⽇稼働できる ‣ 体調不良もなく退職リスクもない ref. https://jp.weforum.org/stories/2025/10/digital-labour-ethics-who-s- accountable-for-the-ai-workforce-ja/
AIが読めるようにデータを整えることが、CTOの重要な技術戦略 AI従業員が快適に働くためのコンテキスト整備 40 AIエージェントのためのコンテキストエンジニアリング Context Overflowしないように、データの鮮度管理と構造化が⼤事 DeNA AI Workspaceにおけるデータ構成とコンテキスト補完の構成
経費精算SaaSの新機能のプレスリリースを作る 例 41 Sources Agents MCP プレスリリース(3案) CLI 機能リリースノートを取得 会社ガイドラインを取得
リリースノート作成・レビュー等 並列実⾏ (3x)
Press Release ExpenseFlow v3.0.0 Vision Transformer 99.8% 3 2025 11
12 ExpenseFlow SaaS ExpenseFlow v3.0.0 OCR Vision Transformer AI 99.8% 3 50 Vision Transformer (ViT-L/16) OCR 0.8 A 2.4 3 2025 7 n=500 68% 16 ExpenseFlow AI 2025 11 12 ExpenseFlow ExpenseFlow AI AI AI AI : - - - - with Context without Context
AI-nativeな⾏動・戦略・⽂化で組織効率を図る CTOとしてやるべきこと(組織効率のために) 43 ‣ AIを「新⼊社員」として迎え⼊れるための環境整備 1 2 経営課題を解くために、迷わず「越境」して業務を再定義する AIエージェントが⾃⾛できる「コンテキスト」を設計する ‣
導⼊のROIを細かく議論する前に、まずはトップ(CTO)が使い倒して背中を⾒せる 3 トップダウンのキーパーソンとして「AIが当たり前」の⽂化を作る ‣ WorkflowとAgentでエンジニアリング、デザイン、ビジネスの境界線を溶かす Mindset / ߦಈ Architecture / ઓུ Culture / จԽ
※他、運や参⼊タイミングなど数多の変数もあり 10⼈ユニコーンの再現性 = (AIによる顧客価値)×(AIによる組織効率)
45 AI-nativeなプロダクトを AI-nativeな組織で⽣み出す
AI-nativeなプロダクトを AI-nativeな組織で⽣み出す 技術に精通したトップダウンの中⼼として、 その⽂化を、先頭に⽴ち引っ張っていく
47 組織⽂化としての AI-native CTO単独での AI-native
AI時代に事業成⻑を⽀えるCTOとは 経営の⽴場でAI-nativeな事業戦略を⽴て、 技術の⽴場でAI-nativeな仕組み・⽂化をつくる⼈