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Vibe codingで作る、“忠実度の高い” プロトタイプのススメ

Avatar for Kaku Maeda Kaku Maeda
October 07, 2025

Vibe codingで作る、“忠実度の高い” プロトタイプのススメ

2025/10/08(水)開催、「LLM Night~AI時代のプロダクトディスカバリー」に使用した登壇資料です。
https://yojo.connpass.com/event/368985/

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Kaku Maeda

October 07, 2025
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  1. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 2 ⾃⼰紹介 前⽥ 拡(まえだ

    かく) PharmaX株式会社 YOJOカンパニー プロダクト&マーケティング責任者 / PdM 新卒Gunosyで広告営業‧広告運⽤、 エン‧ジャパンで転職サイトのPdMを担当した後、 現職PharmaXでtoCヘルスケアプロダクトのPdM、 AIエージェントの開発‧設計、プロンプトエンジニアリング、 Vibe codingでプロトタイプ開発などに従事。 #開発未経験 #PdM経験3年弱 @kakumaeda
  2. 3 (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 医療アドバイザーに体調 のことをいつでも気軽に相 談できる

    相談型医療体験 30種類以上の漢方薬からあ なたに合ったものを月毎に 提案 パーソナライズ漢方薬 定期的に漢方をお届けし、 一人ひとりに寄り添うかか りつけ医療を提供 継続的なかかりつけ 一生涯にわたって寄り添うかかりつけ漢方薬局「 YOJO」
  3. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 8 世の中の変化 国内事例 •

    DeNA — https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2507/04/news070.html
  4. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 9 世の中の変化 海外事例 •

    Google: ライティング優先の⽂化からビルディング優先の⽂化へと移⾏ • Shopify: PdMの⾯接にコーディングセクションを追加 • Lovable: PM組織もPRDもない「Just build it.」の⽂化 — Product Leader at Google - Gemini. — Opendoor CEO, 元Shopify COO — Lovable - Growth
  5. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 10 なぜ今、この変化が起きているのか? 🔧 従来の制約

    • “忠実度の⾼い”プロトタイプ作成は コストが⾼かった • 特にエンジニアの⼯数が必要 • このコスト構造は数⼗年変わってい なかった • その中でFigmaがここ数年、主要な ツールであった 🚀 AI時代の変化 • Lovable、Bolt、V0、Figma Make などの登場によりコストと便益のバ ランスが変わった • 特にライブデータプロトタイプの コストが劇的に引き下がった ◦ 従来のFigmaで作成していた ユーザープロトタイプより ⾼速‧安価な場合も —『The Purpose of Prototypes』:https://www.svpg.com/the-purpose-of-prototypes/
  6. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 12 プロダクトディスカバリーの⽬的 製品発⾒は⼀般的に、価値、ユーザビリティー、実現可能性、 事業実現性に関するリスクに取り組むことである。

    “ ” — マーティ‧ケーガン『INSPIRED』p.193, p.197 製品発⾒の⽬標は、できる限り迅速に、コストをかけずに アイデアの妥当性を⽴証することである。 “ ”
  7. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 13 プロダクトディスカバリーの⽬的 プロダクトディスカバリー =

    4つの重要なリスクに対処する ⚠ 4つのリスク • 価値のリスク (顧客はこれを買ったり、これを使うことを選 んでくれるだろうか?) • ユーザビリティのリスク (ユーザーはこれの使い⽅がわかるだろうか) • 実現可能性のリスク (私たちはこれを作れるだろうか?) • 事業実現性のリスク (このソリューションは私たちのビジネスに貢 献するだろうか?) 👥 チーム責任分担 プロダクトマネージャー 価値 + 事業実現性のリスク 製品の結果に対する全体的な説明責任 プロダクトデザイナー ユーザビリティのリスク 製品エクスペリエンスに対する全体的な責任 プロダクトリードエンジニア 実現可能性のリスク 製品の提供に対する全体的な責任 — マーティ‧ケーガン『INSPIRED』p.194
  8. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 15 プロトタイプの⽬的 プロトタイプの最上位の⽬的は、成功するプロダクトを発⾒す ることである。

    では、成功するプロダクトを発⾒するということは、実際には 何を意味するのか? それは、解決する価値のある問題を特定し、構築する価値のあ るソリューションを⾒つけ出すことを意味する。 “ ” The highest order use of a prototype is to help you discover a successful product. So what does it actually mean to discover a successful product? It means that you have identified a problem worth solving (the easy part), and then you have managed to *discover a solution worth building *(the hard part). —『The Purpose of Prototypes』:https://www.svpg.com/the-purpose-of-prototypes/
  9. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 16 構築する価値のあるソリューションを⾒つけ出すことは難し い、、、 製品開発の取り組みの⼤半は、需要のせいではなく、

    ⼈々に切り替えてもらうのに⼗分なソリューションを 思い付かないために失敗する “ ” The vast majority of product efforts fail not because of demand, but because they can’t come up with a solution good enough to get people to switch. —『Discovery ‒ Problem vs. Solution』:https://www.svpg.com/discovery-problem-vs-solution/
  10. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 17 プロトタイプの種類 ① 実現性プロトタイプ

    ⽬的: 技術的実装可能性の検証 特徴: 機能限定‧コード中⼼、UI最⼩限 ② 低忠実度ユーザープロトタイプ ⽬的: アイデアの早期検証、初期探索、コン セプト検証 特徴: スケッチ、ワイヤーフレーム ③ ⾼忠実度ユーザープロトタイプ ⽬的: ユーザビリティ‧ユーザー体験の検証 特徴: 本番に近い⾒た⽬と動作 データは⾮常にリアルだが、現実ではない ④ ライブデータプロトタイプ ⭐ ⽬的: 実データでのKPI影響検証、定量的価値 検証 特徴: 実装コスト⾼いが、結果の信頼性も⾼い —『Flavors of Prototypes』:https://www.svpg.com/flavors-of-prototypes/
  11. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 18 「忠実度」の3つの側⾯ 👁 視覚的忠実度

    プロトタイプの⾒た⽬や⼿触りがどれだけリアルか。 ⚡ 動作の忠実度 インタラクションや動作がどれだけリアルであるか 📊 データの忠実度 プロトタイプに表⽰されるデータが実際のデータか(=ライブデータ)、 それとも過去のデータや作り物のデータか。 —『The Purpose of Prototypes』:https://www.svpg.com/the-purpose-of-prototypes/ → では、実際にどの程度の忠実度のプロトタイプを作れば良いのか?
  12. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 19 重要なのは、「必要⼗分な忠実度」は対処しようとしているリ スクによって変わる、という点です。 たとえば、実現可能性を確認するために必要な忠実度は、ユー

    ザビリティを検証するためのそれと⼤きく異なります。価値を測 るための忠実度も別ですし、事業の実現性をテストする場合、 どのステークホルダーに⾒せるかによって必要な忠実度は変わ ります。 “ ” The key to understand is that “just enough fidelity” depends on the particular risk we are addressing. “Just enough fidelity” for feasibility is very different for usability, which is different for value, and when testing viability, the fidelity needed may be different depending on which stakeholder you’re testing with. —『The Purpose of Prototypes』:https://www.svpg.com/the-purpose-of-prototypes/ プロトタイプはどの程度リアル(忠実)である必要があるか?
  13. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 20 ⾼忠実度ユーザープロトタイプの⼤きな⽋点は、製品が実際に売れるか どうかなど、何かを証明するのに役⽴たないことです。 ユーザビリティをテストしたり、提案された製品を主要なステークホル

    ダーに伝えたり、迅速な学習に役⽴ったりすることはありますが、多く の⼈が失敗に陥るのは、美しいユーザープロトタイプを作成し、それを 10⼈か15⼈の前に出して「気に⼊った」と⾔ってもらい、それで勝利宣 ⾔をしてしまうことです。 “ ” The big disadvantage of a high-fidelity user prototype is that it’s not good for proving anything ‒ like whether r not your product will actually sell. It is good for testing out usability, and it’s great for communicating the proposed product to key stakeholders, and it’s great for rapid learning. Where a lot of people go sideways is when they create a beautiful user prototype, and put it in front of 10 or 15 people that say they love it, and then they declare victory. 対処しようとしているリスクを⾒誤ると、、、 —『Flavors of Prototypes』:https://www.svpg.com/flavors-of-prototypes/
  14. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 21 ここまでのまとめ • 製品発⾒は⼀般的に、価値、ユーザビリティー、実現可能性、事業実現性に関するリスクに

    取り組むことである。 • 製品発⾒の⽬標は、できる限り迅速に、コストをかけずにアイデアの妥当性を⽴証すること • ライブデータプロトタイプの劇的なコスト削減 • プロトタイプの最上位の⽬的は、成功するプロダクトを発⾒することである。 ◦ 解決する価値のある問題を特定し、構築する価値のあるソリューションを⾒つけ出すこと 💡 AI時代のプロダクトディスカバリーは、   素早くライブデータプロトタイプを作ることが、   価値のあるソリューションを⾒つけるために   重要なのではないか?
  15. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 24 ⾃社でのライブデータプロトタイプ作成例 構成: •

    Cloud Run: backend(Node/Express, Firestore Admin, Gemini呼び出し, REST API) • Cloud Run: frontend(Vite ビルド成果を静的配信、API は backend を呼び出す) • データベース: Firestore • シークレット: Secret Manager(GEMINI_API_KEY) • 通信: フロント → バックエンド(HTTPS, CORS 制限) → Gemini API / Firestore 実際はこんな感じの構成のプロトタイプを作りました󰱢
  16. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 25 実際に作ってみて感じた「メリット」 ① より具体的で正確なフィードバックが得られる

    ② ステークホルダーとの合意形成がラクになった ③ ドキュメント作成の効率化につながる
  17. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 26 実際に作ってみて感じた「メリット」 ① より具体的で正確なフィードバックが得られる

    • ⾼忠実度ユーザープロトタイプでも⼀定検証できるが、ライブデータプロト タイプがあると定量、定性含めよりユーザーのリアルなフィードバックが得 られる • 特にテクノロジー製品においては、 a)顧客は何が可能かを知らないことが多い、そして b)顧客は製品を⾒て初めて⾃分が何を欲しかったのかに気づくことが多い ◦ 現状toCプロダクトにおいて、AIを⽤いたソリューションの価値を経験 をしているユーザーはまだ少ない ◦ 実際の動きが分かるプロトタイプを作るとその価値が正しく伝わる
  18. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 27 実際に作ってみて感じた「メリット」 ② ステークホルダーとの合意形成がラクになった

    • ユーザー体験が分かる忠実度のプロトタイプがあると、話がはやい ◦ 特にプロダクト開発組織に属していないステークホルダーとの コミュニケーションにおいて有⽤ (もちろんエンジニアとのコミュニケーションでも) 多くの場合、プロトタイプにはもう1つのメリットがある。 エンジニアはもちろん、もっと⼤きな組織にも、何をビルドする必要があるのか を伝えることができるのだ。これは、しばしば仕様書としてのプロトタイプと呼 ばれる。 — マーティ‧ケーガン『INSPIRED』p.265 “ ”
  19. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 28 実際に作ってみて感じた「メリット」 ③ ドキュメント作成の効率化につながる

    • プロトタイプの検証終えて、MVP作成にむけて要件定義書‧PRD作成 する際に、実際のコードから⾃然⾔語へLLMで変換すればいいので、 ラクではやい ◦ 前提として弊社では、仕様駆動開発(Spec driven development)に取り組 んでいる — https://github.blog/ai-and-ml/generative-ai/spec-driven-development-with-ai-get-started-with-a-new-open-source-toolkit/
  20. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 29 実際に作ってみて感じた「デメリット」 ① まだ時間とコストはそれなりにかかる

    ② フィードバックが細かい部分に集中し、本質的な議論が疎かになる可能性
  21. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 30 実際に作ってみて感じた「デメリット」 ① まだ時間とコストはそれなりにかかる

    • 作成コストが劇的に下がったとはいえ、まだそれなりに時間はかかる ◦ 他の業務と並⾏してライブデータプロトタイプ作成したが、 1週間くらいかかった • ステークホルダーとの認識を揃え、適切なサイズの要件にする努⼒は必要 ◦ 4つのリスクの内、どのリスクに対する検証なのかを明確にする ◦ ときには作らないという意思決定も⼤事 ◦ 前提としてプロトタイプは、「学ぶための構築」であると理解する ▪ 「製品の発⾒は学ぶために構築する、製品の提供は稼ぐために構築する」
  22. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 31 実際に作ってみて感じた「デメリット」 ② フィードバックが細かい部分に集中し、本質的な議論が疎かになる可能性

    • はやく作れてしまうが故に「How」の細かい話になりがち ◦ ステークホルダーとユーザ、どちらからのフィードバックにおいても • そもそも、その「How」で「誰」の「どんな課題を解決するのか」を間違っていた ら意味がないので注意する
  23. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 32 メリデメ踏まえて今後の話 ① プロトタイプ作成に対する、時間とコストはより縮⼩していくのでは?

    ② 今後もPdMがプロトタイプを作り続けるのか? エンジニア、デザイナーがやった⽅がいいのか?
  24. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 33 メリデメ踏まえて今後の話 ① プロトタイプ作成に対する、時間とコストはより縮⼩していくのでは?

    • 現状はまだそれなりに時間かかる • ただモデル性能の向上、コーディングエージェント、AIプロトタイプツールの進 化は必ず進むので、1,2年後に作成コストが今より半分になることは普通にありえ る • 並列に数個のプロトタイプを作り、検証を⾼速で並列的に進めていくような世界 になるのでは? (いまでも頑張ればできる)
  25. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 34 メリデメ踏まえて今後の話 ② 今後もPdMがプロトタイプを作り続けるのか?

    エンジニア、デザイナーがやった⽅がいいのか? • Lovableの例(PM組織‧PRDなし、エンジニアがプロトタイプ作る)は、事業ドメイ ンに寄る影響が⼤きそう ◦ エンジニアが1次情報を保有 ◦ エンジニアの⽅がドメイン知識が豊富 ◦ 当然技術的制約等を理解 →エンジニアがプロトタイプから作る⽅が効率的  では他の⼀般的なプロダクトも同様か??
  26. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 35 PdMがプロトタイプを作ることについて • ⼀般的なプロダクトの場合、多くのPdMは、

    ◦ 顧客からの1次情報を最も多く持っている ◦ ドメイン固有の知識を有している ◦ プロダクト開発の素養を持っている → 結局プロトタイプ作る際、   コーディングエージェントやプロトタイプツールに   上記コンテキストを渡していく必要があるため   PdMが適任の場合は多そう   (顧客のことを最も理解し、1次情報を持つ⼈が作るべき、    そのため、ドメインやプロダクトによって最適な⼈は違う    もちろん、どのくらいの忠実度にしたいかにもよる)
  27. (C)PharmaX Inc. 2025 All Rights Reserve 36 まとめ • “忠実度の⾼い”(特にライブデータ)プロトタイプを作ることによ

    るメリットは⼤きい • 多くのプロダクトにおいて、PdMがプロトタイプを作ることは有⽤ • その場合結局PdMに求められるのは、顧客のことを最も理解し、 1次情報を取得すること • そのコンテキストを適切に各種ツールに渡すことも⼤事 • そして最終的にできる限り迅速に、コストをかけずに アイデアの妥当性を⽴証し、構築する価値のあるソリューションを ⾒つけ出していく