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途上国における”金融教育”のイノベーションと可能性~金融包摂とSDGsビジネスの具体的アクション~

 途上国における”金融教育”のイノベーションと可能性~金融包摂とSDGsビジネスの具体的アクション~

途上国における金融教育の検討資料となります。

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KI Strategy

May 18, 2017
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  1. 【みなさんの自己紹介の前に】 今井健太郎(いまいけんたろう) 埼玉県深谷市生まれ。 早稲田大学 政治経済学部 国際政治経済学科卒 ・専門は国際金融と開発経済 ・第54回全日本大学囲碁選手権で全国制覇 野村総合研究所 金融ITイノベーション本部

    ・保険業界を中心とした調査・研究 ・内部統制やリスクマネジメントに関わるコンサルティング ・ファンドラップ販売に関わるフロントシステム企画、営業 等 株式会社KI Strategy、代表取締役 ・ソーシャル・インパクト・アクト 編集長 ・インサイト・テック・ポータル発起人 項目 内容 会社名 株式会社KI Strategy 所在地 〒108‐0014 東京都港区芝5丁目27番3号B-102 ホームページ https://www.kistrategy.co.jp/ 事業内容 中小企業の社会的インパクト最大化を専門と したコンサルファーム ・中小企業のビジネスを通じた社会貢献支援 ・経営戦略×SDGs​~継続的な革新支援~ ・マッチング支援コミュニティー・勉強会 ・途上国BOPビジネス企画・支援 等 代表取締役 今井健太郎 代表取締役社長プロフィール 2
  2. 要旨:途上国向け金融教育 【背景】 • 金融、資本市場は、短期的にはリーマンショックなどで落ち込みを経験しながらも、 中長期的には拡大の一途を辿ってきた。 – その一方で、未だに金融サービスへアクセス出来ない層が、途上国を中心に存在しており、ファイナ ンシャルインクルージョン(金融包摂)はホットな領域。 – また、モバイルマネーやマイクロファイナンスの普及で、金融アクセスは急拡大しており、そこに歪

    みも生まれてきている。 【求められる”金融教育”のイノベーション】 • 金融サービスの拡大や、適切な活用の為には、根底をなす、金融リテラシーを育む、 「金融教育」のイノベーションが強く求められている。 • 所属や大学の垣根を越えて、有志連合による、SDGsビジネスとしての「金融教 育」の可能性について模索していく。 4
  3. 【背景】 資本市場・金融マーケット規模は約250兆ドルですが。。 • リーマンショックなどで落ち込みを見せたものの金融市場マーケットは拡大の一途 を辿る 23 26 35 42 46

    50 54 54 57 60 62 2 3 5 9 11 13 14 14 13 13 13 3 3 5 7 7 8 8 9 10 11 11 8 11 19 30 35 39 42 42 41 42 42 9 14 18 29 30 32 35 39 43 46 47 11 18 37 47 56 64 36 48 54 47 50 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 0 50 100 150 200 250 貸出 証券化商品 社債 金融債 国債 株式 金融市場マーケット(一兆ドル) McKinsey Global Institute “Financial Globalization: Retreat or reset?”に基づきKI Strategyが作成 5
  4. 金融包摂(今回のメイン) 金融市場内の動き 全体:約250兆ドル 【背景】 金融市場の動きは大きく三分類に分けて整理できる • 途上国の金融教育というと、金融市場内の裾野を広げるファイナンシャルインク ルージョンがメインスコープ 金融市場の裾野を広げる動き 社会的株式市場、

    ビットコインなど マイクロファイナンス、 マイクロインシュアランス、 インパクト投資など 新しい市場 を作る動き SRI(社会的責任投資)、 ESG (環境・社会・企業統治)投資、 SDGs投資など 6
  5. 【背景】 「金融未アクセス層の存在」と「アクセス急拡大の歪み」 • アフリカの金融アクセスは1/3程度 • 未アクセス人口は世界では約20億人 • 新規口座開設7億人!! • 特にアジア・アフリカ途上国で急拡大

    ※両図 World Bank ”The Global Findex Database 2014” に基づきKI Strategyが作成 口座普及率(%) ▪:65~89 ▪:40~64 ▪:20~39 □:それ以下かデータなし 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 成人口座普及率(%) 2011 2014 7
  6. 【金融アクセス拡大(金融包摂)に向けた取り組み】 フィンテック領域としてのファイナンシャルインクルージョンも • それぞれのセクターごとに、既存プレイヤーだけでなく金融アクセスの拡大を目指 したフィンテックベンチャーが参入 • 例)BOP層だけでなく、マイクロファイナンスと商業銀行の間にいる顧客領域「ミッシングミドル」を目指す 企業も 0 5

    10 15 20 25 30 35 40 企業数 軸ラベル 企業規模と企業数の分布(イメージ) 先進国 途上国 Micro Middle Large Micro Middle Large ※Harvard entrepreneurial-finance-lab-research-initiative ”The Missing Middle” に基づきKI Strategyが作成 マイクロファイナンス インシュアランス等 インパクト投資、 半慈善投資等 既存金融機関、 商業銀行等 8
  7. 【金融アクセス拡大(金融包摂)に向けた取り組み】 日本の既存の金融機関が途上国向けの金融商品を企画するケースも • 損保ジャパンと国際協力銀行とタイでの「天候インデックス保険・天候デリバティ ブ」の企画 – 例)気温や天候の変化による、農業収入の下落に対する補填 • 東京海上グループとIFFCO社(農業共同組合組織保有)でのインドにおけるマイク ロインシュアランスや農業保険の企画

    ※ – 例)肥料に付帯した年間1ルピー(約2円)で加入できる傷害保険 – 例)年間100ルピー(約200円)で加入できる財産保険 – 例)RSBYは加入者は登録時に一世帯30ルピー(約50円)の登録料、けがや病気等の医療サービス受診時、 一世帯5人を限度に年間3万ルピー(約5万円)までの保険金が保険会社から支払い • 何をもって「成功」とするかは別ですが。。仮に破格の金融商品があっても、その 普及には、金融サービスの意義や留意点の啓蒙・教育活動は一つのハードル – 教育水準と金融の購入には正の相関があるよう – 日本が預金から投資にお金が流れないのは何故か?一つの仮説として「金融教育」がないから? ※” http://www.tokiomarinehd.com/sustainability/theme1/productservice01/poverty.html” の公開情報に基づきKISTが作成 9
  8. 【金融アクセス急拡大に伴う歪み】 マイクロファイナンス機関の高金利問題など • 平均20~40%、アフリカでは金利40%!は“普通”という現状 • 債務不履行の増加など、逆に貧困を助長しているという穿った批判も(ただ個別例によっては 確かにMF機関側が酷いケースも) 0 10 20

    30 40 50 60 マイクロファイナンス機関の金利水準幅(%) ※”Microcredit interest rates and their determinants” に基づきKI Strategyが作成 高くならざるを得ないという言い分も分かりますが 【オペレーションコスト】 • 特にデューデリジェンスコスト(貸倒も含め) • 例)FirstAccsess(モバイル行動履歴から与信情報分 析)などの取り組み 【物価・為替リスク 】 • ハイパーインフレーションなどの物価、為替変動リスク • 例) MFX(現地通貨で取引のリスク軽減)などの取り 組み 【政策変更などカントリーリスク】 • トップの変更による政策変更など 【金融商品やサービスの教育コスト】 • 金融商品の活用の意義と留意点の適切な理解と行動変容 • などなど 10
  9. @2017 LifeDrumLab Co., inc All Rights Reserved 【結論仮説】 SDGs時代における、途上国での適切な金融教育が求められている 【企業(金融機関)の観点】

    • 将来の商品購入者の獲得、企業の社会的責任、宣伝・ブランド、途上国進出の足掛かり、 説明コストの削減、人材獲得の際の参考情報として 【金融アクセスを望む人の観点】 • 金融を適切に「活用」する能力の獲得機会、選択肢の拡大、リスクテイキングやマネジ メントの手段として – 職業訓練やクレジットスコアとの連動などの可能性も 【国の観点】 • 社会保障費の削減、教育レベルの向上、広義のリスクマネジメントとして – 教育は最もコストベネフィットパフォーマンスが高い投資領域だとする研究結果も 【大学・研究者の観点 】 • 研究領域の発掘、他プレイヤーとのコラボレーションの機会として 11
  10. 【補足】 実は既存金融機関や国が主導し「金融教育」は実施されてきた 【ナレッジとして】 • 今まで情報の蓄積から「座学や講義」などの金融教育ではあまり効果はないのではない か?という研究も – ※実際使われている、コンテンツや日本の初等教育で導入が検討されている「金融教育用テキスト」を持参し ました、これでは。。確かになのか? •

    誰向けの、何の目的のものかの重要性 – 例)マイクロファイナンス契約やローン組み込み時に実施される「金融教育」は効果が高いなどの分析結果も – 例)その教育自体が持続可能性の推進に貢献できればベスト、短期的利益と中長期的利益の認識と行動変容な ど • コンテンツだけではなくインセンティブ設計の重要性 – 例)職業訓練の一環として、クレジットスコアとの連動などなど • 「金融教育」における“イノベーション”が求められている 12
  11. 【補足】 日本の国際NGOの活動領域で最も多いのが「教育分野」 • 途上国を中心に、教育領域での活動が最も実施されている一方で、こと「金融教 育」となると、そもそも教える人が。。という声も – ただし、受験教育などでの一定の成果やナレッジなどは「金融教育」にも応用可能性はある 510 119 37

    35 26 18 4 アジア アフリカ 中東 中南米 欧州 太平洋 北米 活動地域(数) ※「NGOデータビック2016」に基づき、KI Strategyが作成 27.2 19.9 15 12.9 9 6 5.8 教育・職業訓練 環境 農業・漁業・開発 保健・医療 飢餓・災害 平和・政治 経済 人権 その他 活動領域(%) 13
  12. 【進め方】 SDGsビジネスとして有志連携での“具体的アクション”の実施 【有志連携での具体的アクション】 • 国際機関、大学教授、財団、コンサル、シンクタンク、金融機関、事業会社、弁護 士、学生、プロボノなど、所属や学校などの垣根を越えた、有志連合でのSDGsビ ジネスの具体的な活動を実施 • 適切に外部のNGOや企業、団体、大学等と連携を実施 【継続性】

    • 継続性の観点から完全ボランティア化での運営は想定しない – いかに「金融教育」から生まれる経済的・社会的利益をステークホルダーと認識しあい、その利益を どう分配すべきかを真剣に議論する – ただし、初期の時点では例えば、コンテンツメイキングのみを行うなど、大きな目標を掲げつつも、 現実的な具体的ステップを積み重ねていきたい 14
  13. 【ディスカッション】 • 「誰に」「何を」「どうやって」「なにをゴールに」金融教育を実施すべきか? 【進め方・検討事項】 まず、最低限として決めていかねばならない事項 分類 内容 ターゲット ・農業従事者、小規模事業者、学生、主婦など ・ニーズ(含潜在的)、リテラシーレベル、ターゲットへのアクセス手段など

    ・所在地、アフリカ(のどこ)、アジア(のどこ)など インセンティブ ・クレジットスコアとの連携、職業斡旋機関との連携など コンテンツ ・映像、フリーペーパー、テキスト、ゲーム、アプリ、ツールなど 持続モデル ・ビジネスモデル、スポンサーや協力者など 体制 ・運営体制や実施体制など 15