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企業は「持続可能な開発目標(SDGs)」をいかに企業戦略に活用することができるのか?

KI Strategy
December 05, 2017

 企業は「持続可能な開発目標(SDGs)」をいかに企業戦略に活用することができるのか?

企業価値とSDGsとの関係などを、金融の側面から紹介します。

KI Strategy

December 05, 2017
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  1. 弊社紹介/代表取締役プロフィール 今井健太郎(いまいけんたろう) 埼玉県深谷市生まれ。 早稲田大学 政治経済学部 国際政治経済学科卒 ・専門は国際金融と開発経済 ・第54回全日本大学囲碁選手権で全国制覇 野村総合研究所 ・保険業界を中心とした調査・研究

    ・内部統制やリスクマネジメントに関わるコンサルティング ・ファンドラップ販売に関わるフロントシステム企画、営業 等 株式会社KI Strategy、代表取締役 項目 内容 会社名 株式会社KI Strategy 所在地 〒108‐0014 東京都港区芝5丁目27番3号B102 ホームページ https://www.kistrategy.co.jp/ 設立 2016年 事業内容 中小企業の社会的インパクト最大化を専門 としたコンサルファーム ・中小企業のビジネスを通じた社会貢献支 援 ・経営戦略×SDGs​〜継続的な革新支援〜 ・マッチング支援コミュニティー・勉強会 ・途上国BOPビジネス企画・支援 等 代表取締役 今井健太郎 代表取締役社長プロフィール 2
  2. 本日お話しする内容 【企業経営における金融という側面からのSDGs】 • 企業経営における人・モノ・カネ・情報における金融(カネ)の側面からのSDGs – 経済的リターンだけでなく、社会的インパクトも重視する投資家はどのような情報に注目している のか? – ~SRI(社会的責任投資)、ESG(環境・社会・企業統治)投資、そしてSDGs投資の流れの整理~ 【企業価値とSDGsの関係性】

    • 企業によるSDGsの取り組みは企業価値向上につながるのか? – 弊社、企業、団体のSDGsの活用事例について定点観測を行っています。 – 投資家はSDGsによる投資先企業の選別を強めていますが、日本において、企業、団体のSDGsの活用は 始まったばかり、活用方法について模索している状況、またSDGsを活用することの合理的な根拠も希 薄な状況 • SDGsは企業価値を向上させるのか?その為の具体的なアクションとは? 5
  3. 【企業経営におけるSDGs 】 SDGsと企業経営〜今回は金融の視点から〜 • 単に押し付けられるものではなく、企業の抱える課題などに対し、SDGsを「機 会」や「チャンス」として捉え「活用」することが求められる 企業経営 人 カネ 情報

    モノ ・優秀な人材が獲得できない ・離職率、モチベーション 等 ・ブランド力がない ・コモデティー化 等 ・IR・コーポレート・CSR部間のコミュニケーション ・資金調達(資金提供社側の動きが分からない) ・投資機関とのコミュニケーション ・ESG投資はG投資? 等 ・次なる経営戦略の判断材料がない ・異業種とのコラボやナレッジ共有不足 等 今回のメインスコープ 6
  4. 【企業経営における金融という側面からのSDGs 】 まずは全体像、資本市場・金融マーケット規模は約250兆ドル • リーマンショックなどで落ち込みを見せたものの金融市場マーケットは拡大の一 途を辿る 23 26 35 42

    46 50 54 54 57 60 62 2 3 5 9 11 13 14 14 13 13 13 3 3 5 7 7 8 8 9 10 11 11 8 11 19 30 35 39 42 42 41 42 42 9 14 18 29 30 32 35 39 43 46 47 11 18 37 47 56 64 36 48 54 47 50 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 0 50 100 150 200 250 貸出 証券化商品 社債 金融債 国債 株式 金融市場マーケット(一兆ドル) McKinsey Global Institute “Financial Globalization: Retreat or reset?”に基づきKI Strategyが作成 7
  5. 補足説明(金融包摂) 金融市場内の動き 全体:約250兆ドル 【企業経営における金融という側面からのSDGs 】 金融市場の動きは大きく三分類に分けて整理できる • 金融市場内の動きの中で「金銭的リターン(財務情報)」以外の価値をも考慮し た投資が今回のメインスコープ 金融市場の裾野を広げる動き

    社会的株式市場、 ビットコインなど マイクロファイナンス、 マイクロインシュアランス、 インパクト投資など 新しい市場 を作る動き SRI(社会的責任投資)、 ESG (環境・社会・企業統治)投資、 SDGs投資など 今回のメインスコープ 8
  6. • アフリカの金融アクセスは1/3程度 • 未アクセス人口は世界では約20億人 • 新規口座開設7億人!! • 特にアジア・アフリカ途上国で急拡大 ※両図 World

    Bank ”The Global Findex Database 2014” に基づきKI Strategyが作成 口座普及率(%) ▪:65~89 ▪:40~64 ▪:20~39 □:それ以下かデータなし 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 成人口座普及率(%) 2011 2014 【補足:金融市場の裾野を広げる動き】 「金融未アクセス層の存在」と「アクセス急拡大」が起きている 10
  7. • それぞれのセクターごとに、既存プレイヤーだけでなく金融アクセスの拡大を目 指したフィンテックベンチャーが参入 • 例)BOP層だけでなく、マイクロファイナンスと商業銀行の間にいる顧客領域「ミッシングミドル」を目指 す企業も 0 5 10 15

    20 25 30 35 40 企業数 軸ラベル 企業規模と企業数の分布(イメージ) 先進国 途上国 Micro Middle Large Micro Middle Large ※Harvard entrepreneurial-finance-lab-research-initiative ”The Missing Middle” に基づきKI Strategyが作成 マイクロファイナンス インシュアランス等 インパクト投資、 半慈善投資等 既存金融機関、 商業銀行等 【補足:金融市場の裾野を広げる動き】 ファイナンシャル・インクルージョンとして様々な取組みが実施 11
  8. 【金融市場内の動き 】 SRIもESGも始まりは宗教的・倫理的動向から進化してきた 1920~ • 第一世代SRI(社会的責任投資) • たばこ、アルコールなどキリスト教の教義からの「ネガティブスクリーニング」 1960~ •

    第二世代SRI • 社会運動の一つとしての株主行動(エンゲージメント) 1990~ • ESG投資(第三世代SRI) • 「ポジティブスクリーニング」、「インテグレーション」 2008~ • インパクト投資(経済的リターンと社会的リターンを意図した投資) • リーマンショックのアンチテーゼ?「神の見えざる手」から、「神の見えざる心」 2015~ • SDGs投資? • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対する企業の貢献に対する金融からの動向 13
  9. 【全体像:SRIの市場規模 】 2014年時点でSRI・ESG投資の市場規模は約21兆ドル 2012 2014 0 50000 100000 150000 200000

    250000 欧州 米国 カナダ オセアニア アジア SRI・ESG市場マーケット(億ドル) ※Global Sustainable Investment Alliance ”2014 Sustainable Investment Review” に基づきKI Strategyが作成 14
  10. 【金融市場内の動き 】 金融市場における神学論争と投資に関するコンセンサス 【神学論争に近い】 • 金融市場は予測可能であり、最適な投資理論に基づく、短期・集中投資が最良の投資 戦略 – リスク分析の先鋭化、回帰分析や将来推計の先鋭化など •

    金融市場は予測不能であり、最適なポートフォリオに基づく、長期・分散投資が最良 の投資戦略 – ポートフォリオ構築、アロケーションの最適化など 【投資に関する“現代の”コンセンサス】 • 投資は、「経済的な影響」となんらかしらの「社会的な影響」を及ぼす。 • 投資によって及ぼされた社会的な影響は、経済的なパフォーマンスにも影響を及ぼす。 【中核的なテーマ】 • 全体最適として、いかにして投資のポジティブなインパクトを最大化し、経済的リ ターンも最大化すべきか? 15
  11. 【金融市場内の動き 】 SRIの反省からESG時代に求められる情報開示とは? 【SRI(社会的責任投資)の興隆から批判へ】 • 社会に対して責任を負った投資を行うことは重要だが、投資リターンが少なくていいか どうかは投資家が判断することで、運用機関が決めることではない – 運用成績の悪さの単なる隠れ蓑などの批判の先鋭化 【ESG投資】

    • ポジティブスクリーニング – 「ESGの観点から企業を抽出」と「財務・業績情報から企業を抽出」し銘柄選出 • インテグレーション – 企業のESGの取り組みが、企業の業績・ブランド価値など、広義の企業価値に繋がっているかを分析し銘柄 選出 【求められる情報開示】 • 単に“いいこと”を行っているという情報ではなく、それがどう企業価値や本業に繋がっ ているかという観点の情報開示がより重要に。 • 「企業の社会的責任」ではなく、いわゆる「本業による社会的課題の解決力」 16
  12. 【補足:金融市場内の動き 】 SRIやESG投資家は社内のレポートを見てるのか? 【社会的投資ファーラムの社会的投資アナリストネットワーク(SIRAN)】 • 投資判断の際に「企業の発行する報告書を第1に参照する」 • また、そこから読み取れない、もしくは更に知りたい情報は「質問票や直接ヒア リング等の手法を行う」としている •

    投資家は企業が発行するレポートを見ています、ただ、実際にESG投資などにつ いて質問されるのはG(ガバナンス)の部分だけというIR担当者の声も – 世界最大の機関投資家である、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)などの活動なども注目され ますが – ES部分の取り組みと、投資対効果に対するエビデンスの絶対的不足なども一因 17
  13. 【金融市場内の動き】 投資家はESGからSDGsへ関心をよせるように 16% 10% 34% 40% 投資先のSDGsのパフォーマンスをトラッキングしますか? はい、すべての投資先 はい、いくつかの投資先 いいえ、ただ近い将来実

    施します いいえ、いまは検討してい ません • インパクトを重視する投資家は約6割が投資先のSDGsに対するパフォーマンスの トラッキングを実施もしくは、実施を予定している状況 • 先進国にも関連する目標に対するトラッキングも調査対象に ※Global Impact Investing Network(GIIN) ”Annual Impact Investor Survey 2017” に基づきKI Strategyが作成 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 どの目標をトラッキングしますか? SDGs 目標 19
  14. 【ポジティブ・インパクト・ファイナンス原則(PPIF)】 【金融市場内の動き】 既存、ガリバー金融機関もSDGsに対する投資を続々表明 • 5年で50億米ドル程度 20 • SDGs関連債券2億ドル(15年と 20年債) •

    約600億ドル • SDGsの達成に向け、金融機関が積極的な投融 資を実施する際の原則 • 計19社が参画、金融資産総額は6.6兆米ドル • 途上国の金融機関も参画している点がポイント 他 他 【目標・コミットメント実施】
  15. 【SDGsの活用事例 】 弊社:企業におけるSDGsの活用事例の定点観測を行っています 【SDGs Insight】 • ナレッジや洞察の共有を目的 とし、企業、団体のSDGsの 活用事例を調査 •

    企業や団体の公開情報や、個 別の問い合わせ状況などの ファクトベースの情報調査 • 日本企業のSDGsの活用は始 まったばかり 21
  16. 【SDGs株価調査】 日本企業を対象としたSDGs株価調査を実施 【SDGs株価インデックスとは】 • 企業によるSDGsの取り組みの促進と、投資家の資金の提供先の選定基準の一つと なることを目的とした、企業価値とSDGsを結びつけた指標(インデックス) 【SDGs株価調査の背景】 • 投資家もSDGsという観点による投資先企業の選別を強めているが、基準となる指 標は少ない

    • 企業もなんらかしらのSDGsに関する具体的活動を模索しているが、そのメリット などを合理的に説明するための指標は少ない 【SDGs Indexの特徴】 • 日本企業の上場企業が対象 • ファクトベースの対象選別と、インテグレーションによる銘柄特定 23
  17. • ファクトベースの対象選別と、インテグレーションによるインデックス開発 【SDGs株価調査】 SDGs株価調査の実施プロセス ファクトベースの 企業抽出 • 企業によるSDGsに対するコミットメントや取り組みなどの調査 • ファクトベースで50企業の特定

    SDGs Index 評価基準の作成 • 投資対効果、企業の基盤・持続性(企業の社会的課題の解決力) • 企業によるSDGsの活用度合(D-CAM等) 企業抽出と 指標作成 • 基準に照らした、25企業の選抜 • 指標の作成 24