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アニメの聖地における地域歴史資料の活用と公開、普及施策 /gumma-wu-rf-2021

アニメの聖地における地域歴史資料の活用と公開、普及施策 /gumma-wu-rf-2021

群馬県立女子大学
第6期群馬学センターリサーチフェロー研究会発表資料

Code for History

November 27, 2021
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Transcript

  1. アニメの聖地における地域歴史資料の
    活用と公開、普及施策
    大塚 恒平 – Code for History
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  2. 目次
    • 活動の目的
    • 今年度成果
    • 課題
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  3. 活動の目的
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  4. 問題意識 4
    • 館林には50年前の有志によって調査された、市内石造物の準悉皆調査があった
    • 石造物の種別、年代、サイズなどだけでなく、刻銘なども判読された貴重なデータ
    • 反面、写真や正確な位置などはなく、現況との突合せは不可能な状況
    • デジタル化もされておらず、統計/集計操作などもできない
    • このままでは死に体のデータとなってしまう

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  5. データの引継ぎと永続化施策 5
    • 石造物の刻銘は、中世近世から現代への、石メディアを用いたメッセージタ
    イムカプセル
    • 50年前の悉皆調査は、それを未来へ繋げていくための、印刷物という新メディア
    での中継ぎ
    • デジタルという新しいメディアへの引継ぎを進めるとともに、永続化するための
    施策も視野に入れなければならない
    • 永続化 = データとして残ることと、更新も続けられていくこと
    • 更新が続けられていくためには、著作権で守られていると後進が引き継いで更新し
    ていく際の妨げになる => 誰でも更新できるようにするためのオープンデータ化
    • データとして長期残すために => オープンデータ、オープンソースのプラット
    フォームであるgithubを用いる => 北極の海の底でデータを1000年残すプロジェク
    トなどにも取り組んでいる

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  6. データの活用と更新の仕組み確立 6
    • 単にデジタル化、永続化し、更新可能にしておくだけでは死蔵されて
    しまう
    • 活用され、気付かれ、更新される経路を構築する必要
    • 活用:
    • 人気のアニメ聖地巡礼マップなども含めた、一般市民に利用されるコンテンツ
    の中で展開し、文化財とそのデータの存在を市民に認知してもらう
    • 更新:
    • 非技術者でも更新作業を容易にする作業手順の確立
    • 更新作業そのものは担当しない者でも、報告のみで更新に参加できる仕組みを
    確立

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  7. 今年度成果
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  8. 数値的成果 8
    項目 リサーチフェロー取組前 (2021/5) リサーチフェロー取組後 (2021/11)
    (ぐんま史料ネットご協力後)
    参照元本 1冊 (羽附、赤生田の石仏) 9冊
    (石仏本5冊、双書、市史、市誌、広報館林)
    データ化
    POI数
    149 POIs 1786 POIs
    (板碑 270 POIs、名寄せ未完)
    現地確認済 58 POIs (52 %) 412 POIs (23 %)
    前年比+354 POIs、うち自力調査 225 POIs
    ぐんま史料ネットから 121 POIs
    市民投稿から 8 POIs
    画像数 111 枚 (POIあたり平均1.9枚) 665 枚 (POIあたり平均1.6枚)
    新規発見 0 POIs 22 POIs
    ※ POI: Point of Interests、個別の地物そのもののこと

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  9. データ構造設計の成果 9
    属性名 型 説明
    fid 数値 ID
    name 文字列 名称
    type 文字列 種別
    era 文字列 和暦
    year 文字列 年
    area 文字列 地域
    oaza 文字列 大字
    koaza 文字列 小字
    detail_place 文字列 詳細場所
    reference_memo 文字列 参照本情報
    folklore 文字列 言い伝え
    history 文字列 歴史
    survey_memo 文字列 調査情報
    surveyed 文字列 調査日
    confirmed Boolean 現況調査済み
    primary_image 数値 優先画像ID
    height 数値 総高
    statue_height 数値 像高
    width 数値 幅
    depth 数値 厚さ
    shape 文字列 形状
    material 文字列 材質
    inscription 文字列 刻銘
    color 文字列 色
    contradiction 文字列 データの矛盾
    need_action 文字列 要対応
    status 文字列 状況
    longitude 数値 経度
    latitude 数値 緯度
    pois 属性名 型 説明
    fid 数値 ID
    poi 数値 石造物ID
    path 文字列 画像パス
    shooting_date 文字列 撮影日
    shooter 文字列 撮影者
    description 文字列 説明
    note 文字列 ノート
    mid_thumbnail 文字列 中サイズサムネイル
    small_thumbnail 文字列 小サイズサムネイル
    属性名 型 説明
    fid 数値 ID
    book 数値 書籍ID
    poi 文字列 石造物ID
    description 文字列 説明
    note 文字列 ノート
    pages 文字列 参照ページ
    属性名 型 説明
    fid 数値 ID
    name 数値 書籍名
    editor 文字列 著者
    published_at 文字列 出版年
    reference_type 文字列 参照タイプ
    images
    refs books

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  10. データの実例 10
    属性名 データ
    fid 1371
    name 長竹十九夜供養塔
    type 道標,月待塔,如意輪観音像
    era 天保12年
    year 1841
    area 赤羽
    oaza 羽附旭町
    koaza 長竹
    detail_place 長竹集会所前
    reference_memo 浮刻の如意輪観音像あり 兼道標 …
    folklore
    history
    survey_memo
    surveyed 2021/11/04
    confirmed ✅
    primary_image 492
    height 122
    statue_height
    width 43
    depth 42.5
    shape 柱型
    material 石造
    inscription (台1右)向 東 いゝの加し こが …
    color
    contradiction 赤生田・羽附の石仏で重複記載 …
    need_action
    status
    longitude 139.5751485
    latitude 36.2312582
    pois 属性名 データ
    fid 491
    poi 1371
    path ./images/1371/FDPuzGiaMAAfBdd.jpg
    shooting_date 2019-02-02 00:00:00
    shooter Takashi KOIKE
    description 長竹十九夜供養塔
    note
    mid_thumbnail ./mid_thumbs/1371/FDPuzGiaMAAfBdd.jpg
    small_thumbnail ./small_thumbs/1371/FDPuzGiaMAAfBdd.jpg
    属性名 データ
    fid 924
    book 8
    poi 1371
    description
    note
    pages 773
    属性名 データ
    fid 8
    name 館林市誌 歴史編
    editor 館林市誌編集委員会編
    published_at 1969
    reference_type page
    images
    refs books

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  11. 自力調査手順と成果 11
    • 調査手順
    • 参照元本からデータ化
    • 名称、雑所在地、サイズ、種別、年代、刻銘、記載ページなどをデータ化
    • 雑所在地に仮位置を与えて位置情報データ化
    • 仮位置の基準になるのは寺社など施設名、大字名、所有者名と50年前の住宅地
    図の対応付けなど
    • 仮位置を頼りに現地調査、現況や正確な位置、写真を取得
    • データの対応付けは仮位置、年代、サイズ、刻銘などから総合判断
    • 机上作業で取材結果をデータに反映(位置の正確化、写真追加等)し完了
    • 成果
    • 今年度中に225 POIsを調査、データ化まで完了
    (調査のみでデータ化未完のものもあるが未集計)

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  12. ぐんま史料ネットとの連携成果 12
    • ぐんま史料ネット(館林市宮田様、井坂様)の協力でデータ化できた8冊
    の参照元本分の石造物データと、館林地区の121 POIsの現地調査を
    マージ
    • 課題:最初の1回の統合はこのやり方で可能だが、更新をこの形で管理
    することはできない、どの部分が更新されたかを検知、自動更新でき
    ないため
    C4Hの既存調査データ
    ぐんま史料ネットデータ
    フォーマット
    変換プログラム
    統合データ
    属性
    見直し
    名寄せ
    最終統合データ

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  13. 活用成果 13
    • 古地図街歩きサイト「ぷらっと館林」で、石造物調査成果を展開
    • 「ぷらっと館林」は館林市を対象にした古地図、文化財地図、アニメ聖地巡礼地図
    などを用いた街歩きサイト
    • ぐんま史料ネットから提供を受けた館林
    地区(旧館林町域)の石造物に絞って展開
    • ある程度地域的にまとまった調査が館林と
    赤羽地区にしかないため
    • ぷらっと館林自身が館林地区の地図を
    中心にしているため
    • 成果の検証などは十分にできていない、
    検証方法含め要検討 => 街歩きワーク
    ショップ、アンケート実施など?
    • このサイトから更新などもできるように
    要対応

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  14. 更新のしくみ成果 (1)
    非技術者とも連携できる環境構築 14
    • ぐんま史料ネットなどと継続して協力していただくための施策
    • 非技術者が直接GeoJSONをQGISで編集できればよいが、難しい
    • 最終的な統合データをCSVにしてみたが、WindowsのQGISでうまく扱えない
    • 最終的な手法: 最終統合データをGeoJSON、Excel双方で作り解決
    C4Hの更新
    ぐんま史料ネットの更新
    変換
    中間データ
    変換
    変換
    両データ形式に出力
    フォーマット
    変換プログラム
    変化内容は
    GeoJSONで検知

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  15. 更新のしくみ成果 (2)
    成果確認&一般市民のTwitter投稿サイト 15
    https://code4history.dev/TatebayashiStones/
    • 成果を地図上に表示して確認
    • 市民が調査した結果はTwitterを通じ
    て投稿可能に (反映は手作業)

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  16. 市民の報告成果 16
    https://code4history.dev/TatebayashiStones/
    • 実際に市民からの報
    告を反映した例 =>
    今期は 8 POIs
    • 課題1: 市民への周知
    徹底とワークショッ
    プ開催など => ぐん
    ま史料ネットを通じ
    た協力の依頼など
    • 課題2: 反映の半自動
    化 => 現状は報告の
    検知含め手作業のみ

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  17. 課題
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  18. 市民報告による更新スキームの拡充 18
    • 市民報告による更新の仕組みは準備されたが、活用されていない
    • 現在は仕組みだけで、わかりやすい説明書などは準備されていない
    • ぐんま史料ネット宮田氏の協力も得て、説明書なども準備する予定
    • 街歩きワークショップなどで、操作方法の説明の場などを設け、協力を誘

    • データ整備プロジェクトサイトだけでなく、ぷらっと館林からも直接報告
    可能なように改良
    • より多くの報告に対応できるよう、報告対応の半自動化
    • 現在は報告の有無の確認、データへの取り込み含め全部手動
    • 非構造化データのため取り込みの自動化は難しいが、報告の有無確認だけ
    でも自動化し、多くの報告があっても対応可能な体制を整備

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  19. 参照元本に存在しない石造物への対応 19
    • 参照元本の準悉皆調査から漏れた石造物にどのように対応するか
    • 基本的に写真と位置を確認する準備しかしていないため、
    サイズなどの基本情報も取得する準備はしていない
    • 刻銘なども読み取る能力に欠けており、
    拓本を採る準備も能力もない
    • 種別すら判定困難な場合も
    • 写真と場所だけの新規データに収集の意味はあるか?
    • オープンデータで、未来まで継続して更新される=成長するデータであるため、後
    進による補完を考慮すれば意義はあると考えられる
    • 三界萬霊塔などにはどう対応するか?
    • 統計などにも利用できる悉皆調査にするには
    調査が必要ではないか?
    • 調査の許可を得るなどハードルが高い、
    調査がもっと市民権を得てから対応を考慮する

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  20. 近代、現代石造物への対応 20
    • 近現代石造物の対応はどうするか?
    • 参照元本によっては、近現代の石造物も収集の対象としている
    • 元本が採用しているものは基本的に調査対象とする
    • 参照元本に採用されていない、新規発見の近現代石造物は
    どうするか?
    • 現状はひとまず採集対象としていない
    • しかし、近現代も後世から見れば過去の事物
    • 学術的価値があるか否かは後世の視点に任せ、ひとまず
    収拾すべきではないか
    • 判断保留中

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  21. 3次元形状データへの対応 21
    • iPhone12でのLiDAR機能搭載、その他にもハンディレーザスキャナが普及
    • 3D形状データの取得が容易に、デジタル時代に対応した新規データとして3D形
    状データ整備が可能になった
    • 課題、問題:
    • 解像度はそれほど高くない、3D形状を記録して刻銘の
    拓本代わりになるほどの精度はない
    => 拓本目的ならばひかり拓本の方が有用?
    • 閲覧手段も限られている、Web等で簡易に見る仕組みは
    まだ構築が難しい?結果、あまり見られないデータとなる
    • 写真などに比較して、整備に時間がかかる
    • 現状の結論:
    • その他のデータを網羅的に整備することを優先
    • 全データを整備した後に余力があれば追加で整備、その頃までに解像度なども改善
    されていることを期待

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  22. End
    User: kochizufan
    Github pages: https://code4history.dev/
    E-mail: [email protected]
    Slide: https://speakerdeck.com/kochizufan/gumma-wu-rf-2021 22

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