群馬県立女子大学 第6期群馬学センターリサーチフェロー研究会発表資料
アニメの聖地における地域歴史資料の活用と公開、普及施策大塚 恒平 – Code for History1
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目次• 活動の目的• 今年度成果• 課題2
活動の目的3
問題意識 4• 館林には50年前の有志によって調査された、市内石造物の準悉皆調査があった• 石造物の種別、年代、サイズなどだけでなく、刻銘なども判読された貴重なデータ• 反面、写真や正確な位置などはなく、現況との突合せは不可能な状況• デジタル化もされておらず、統計/集計操作などもできない• このままでは死に体のデータとなってしまう
データの引継ぎと永続化施策 5• 石造物の刻銘は、中世近世から現代への、石メディアを用いたメッセージタイムカプセル• 50年前の悉皆調査は、それを未来へ繋げていくための、印刷物という新メディアでの中継ぎ• デジタルという新しいメディアへの引継ぎを進めるとともに、永続化するための施策も視野に入れなければならない• 永続化 = データとして残ることと、更新も続けられていくこと• 更新が続けられていくためには、著作権で守られていると後進が引き継いで更新していく際の妨げになる => 誰でも更新できるようにするためのオープンデータ化• データとして長期残すために => オープンデータ、オープンソースのプラットフォームであるgithubを用いる => 北極の海の底でデータを1000年残すプロジェクトなどにも取り組んでいる
データの活用と更新の仕組み確立 6• 単にデジタル化、永続化し、更新可能にしておくだけでは死蔵されてしまう• 活用され、気付かれ、更新される経路を構築する必要• 活用:• 人気のアニメ聖地巡礼マップなども含めた、一般市民に利用されるコンテンツの中で展開し、文化財とそのデータの存在を市民に認知してもらう• 更新:• 非技術者でも更新作業を容易にする作業手順の確立• 更新作業そのものは担当しない者でも、報告のみで更新に参加できる仕組みを確立
今年度成果7
数値的成果 8項目 リサーチフェロー取組前 (2021/5) リサーチフェロー取組後 (2021/11)(ぐんま史料ネットご協力後)参照元本 1冊 (羽附、赤生田の石仏) 9冊(石仏本5冊、双書、市史、市誌、広報館林)データ化POI数149 POIs 1786 POIs(板碑 270 POIs、名寄せ未完)現地確認済 58 POIs (52 %) 412 POIs (23 %)前年比+354 POIs、うち自力調査 225 POIsぐんま史料ネットから 121 POIs市民投稿から 8 POIs画像数 111 枚 (POIあたり平均1.9枚) 665 枚 (POIあたり平均1.6枚)新規発見 0 POIs 22 POIs※ POI: Point of Interests、個別の地物そのもののこと
データ構造設計の成果 9属性名 型 説明fid 数値 IDname 文字列 名称type 文字列 種別era 文字列 和暦year 文字列 年area 文字列 地域oaza 文字列 大字koaza 文字列 小字detail_place 文字列 詳細場所reference_memo 文字列 参照本情報folklore 文字列 言い伝えhistory 文字列 歴史survey_memo 文字列 調査情報surveyed 文字列 調査日confirmed Boolean 現況調査済みprimary_image 数値 優先画像IDheight 数値 総高statue_height 数値 像高width 数値 幅depth 数値 厚さshape 文字列 形状material 文字列 材質inscription 文字列 刻銘color 文字列 色contradiction 文字列 データの矛盾need_action 文字列 要対応status 文字列 状況longitude 数値 経度latitude 数値 緯度pois 属性名 型 説明fid 数値 IDpoi 数値 石造物IDpath 文字列 画像パスshooting_date 文字列 撮影日shooter 文字列 撮影者description 文字列 説明note 文字列 ノートmid_thumbnail 文字列 中サイズサムネイルsmall_thumbnail 文字列 小サイズサムネイル属性名 型 説明fid 数値 IDbook 数値 書籍IDpoi 文字列 石造物IDdescription 文字列 説明note 文字列 ノートpages 文字列 参照ページ属性名 型 説明fid 数値 IDname 数値 書籍名editor 文字列 著者published_at 文字列 出版年reference_type 文字列 参照タイプimagesrefs books
データの実例 10属性名 データfid 1371name 長竹十九夜供養塔type 道標,月待塔,如意輪観音像era 天保12年year 1841area 赤羽oaza 羽附旭町koaza 長竹detail_place 長竹集会所前reference_memo 浮刻の如意輪観音像あり 兼道標 …folklorehistorysurvey_memosurveyed 2021/11/04confirmed ✅primary_image 492height 122statue_heightwidth 43depth 42.5shape 柱型material 石造inscription (台1右)向 東 いゝの加し こが …colorcontradiction 赤生田・羽附の石仏で重複記載 …need_actionstatuslongitude 139.5751485latitude 36.2312582pois 属性名 データfid 491poi 1371path ./images/1371/FDPuzGiaMAAfBdd.jpgshooting_date 2019-02-02 00:00:00shooter Takashi KOIKEdescription 長竹十九夜供養塔notemid_thumbnail ./mid_thumbs/1371/FDPuzGiaMAAfBdd.jpgsmall_thumbnail ./small_thumbs/1371/FDPuzGiaMAAfBdd.jpg属性名 データfid 924book 8poi 1371descriptionnotepages 773属性名 データfid 8name 館林市誌 歴史編editor 館林市誌編集委員会編published_at 1969reference_type pageimagesrefs books
自力調査手順と成果 11• 調査手順• 参照元本からデータ化• 名称、雑所在地、サイズ、種別、年代、刻銘、記載ページなどをデータ化• 雑所在地に仮位置を与えて位置情報データ化• 仮位置の基準になるのは寺社など施設名、大字名、所有者名と50年前の住宅地図の対応付けなど• 仮位置を頼りに現地調査、現況や正確な位置、写真を取得• データの対応付けは仮位置、年代、サイズ、刻銘などから総合判断• 机上作業で取材結果をデータに反映(位置の正確化、写真追加等)し完了• 成果• 今年度中に225 POIsを調査、データ化まで完了(調査のみでデータ化未完のものもあるが未集計)
ぐんま史料ネットとの連携成果 12• ぐんま史料ネット(館林市宮田様、井坂様)の協力でデータ化できた8冊の参照元本分の石造物データと、館林地区の121 POIsの現地調査をマージ• 課題:最初の1回の統合はこのやり方で可能だが、更新をこの形で管理することはできない、どの部分が更新されたかを検知、自動更新できないためC4Hの既存調査データぐんま史料ネットデータフォーマット変換プログラム統合データ属性見直し名寄せ最終統合データ
活用成果 13• 古地図街歩きサイト「ぷらっと館林」で、石造物調査成果を展開• 「ぷらっと館林」は館林市を対象にした古地図、文化財地図、アニメ聖地巡礼地図などを用いた街歩きサイト• ぐんま史料ネットから提供を受けた館林地区(旧館林町域)の石造物に絞って展開• ある程度地域的にまとまった調査が館林と赤羽地区にしかないため• ぷらっと館林自身が館林地区の地図を中心にしているため• 成果の検証などは十分にできていない、検証方法含め要検討 => 街歩きワークショップ、アンケート実施など?• このサイトから更新などもできるように要対応
更新のしくみ成果 (1)非技術者とも連携できる環境構築 14• ぐんま史料ネットなどと継続して協力していただくための施策• 非技術者が直接GeoJSONをQGISで編集できればよいが、難しい• 最終的な統合データをCSVにしてみたが、WindowsのQGISでうまく扱えない• 最終的な手法: 最終統合データをGeoJSON、Excel双方で作り解決C4Hの更新ぐんま史料ネットの更新変換中間データ変換変換両データ形式に出力フォーマット変換プログラム変化内容はGeoJSONで検知
更新のしくみ成果 (2)成果確認&一般市民のTwitter投稿サイト 15https://code4history.dev/TatebayashiStones/• 成果を地図上に表示して確認• 市民が調査した結果はTwitterを通じて投稿可能に (反映は手作業)
市民の報告成果 16https://code4history.dev/TatebayashiStones/• 実際に市民からの報告を反映した例 =>今期は 8 POIs• 課題1: 市民への周知徹底とワークショップ開催など => ぐんま史料ネットを通じた協力の依頼など• 課題2: 反映の半自動化 => 現状は報告の検知含め手作業のみ
課題17
市民報告による更新スキームの拡充 18• 市民報告による更新の仕組みは準備されたが、活用されていない• 現在は仕組みだけで、わかりやすい説明書などは準備されていない• ぐんま史料ネット宮田氏の協力も得て、説明書なども準備する予定• 街歩きワークショップなどで、操作方法の説明の場などを設け、協力を誘発• データ整備プロジェクトサイトだけでなく、ぷらっと館林からも直接報告可能なように改良• より多くの報告に対応できるよう、報告対応の半自動化• 現在は報告の有無の確認、データへの取り込み含め全部手動• 非構造化データのため取り込みの自動化は難しいが、報告の有無確認だけでも自動化し、多くの報告があっても対応可能な体制を整備
参照元本に存在しない石造物への対応 19• 参照元本の準悉皆調査から漏れた石造物にどのように対応するか• 基本的に写真と位置を確認する準備しかしていないため、サイズなどの基本情報も取得する準備はしていない• 刻銘なども読み取る能力に欠けており、拓本を採る準備も能力もない• 種別すら判定困難な場合も• 写真と場所だけの新規データに収集の意味はあるか?• オープンデータで、未来まで継続して更新される=成長するデータであるため、後進による補完を考慮すれば意義はあると考えられる• 三界萬霊塔などにはどう対応するか?• 統計などにも利用できる悉皆調査にするには調査が必要ではないか?• 調査の許可を得るなどハードルが高い、調査がもっと市民権を得てから対応を考慮する
近代、現代石造物への対応 20• 近現代石造物の対応はどうするか?• 参照元本によっては、近現代の石造物も収集の対象としている• 元本が採用しているものは基本的に調査対象とする• 参照元本に採用されていない、新規発見の近現代石造物はどうするか?• 現状はひとまず採集対象としていない• しかし、近現代も後世から見れば過去の事物• 学術的価値があるか否かは後世の視点に任せ、ひとまず収拾すべきではないか• 判断保留中
3次元形状データへの対応 21• iPhone12でのLiDAR機能搭載、その他にもハンディレーザスキャナが普及• 3D形状データの取得が容易に、デジタル時代に対応した新規データとして3D形状データ整備が可能になった• 課題、問題:• 解像度はそれほど高くない、3D形状を記録して刻銘の拓本代わりになるほどの精度はない=> 拓本目的ならばひかり拓本の方が有用?• 閲覧手段も限られている、Web等で簡易に見る仕組みはまだ構築が難しい?結果、あまり見られないデータとなる• 写真などに比較して、整備に時間がかかる• 現状の結論:• その他のデータを網羅的に整備することを優先• 全データを整備した後に余力があれば追加で整備、その頃までに解像度なども改善されていることを期待
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