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エンジニアリング価値を黒字化する バリューベース戦略を用いた 技術戦略策定の道のり

Kazuki Maeda
February 26, 2025

エンジニアリング価値を黒字化する バリューベース戦略を用いた 技術戦略策定の道のり

https://2025.emconf.jp/
での登壇資料

Kazuki Maeda

February 26, 2025
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  1. エ ン ジ ニ ア リ ン グ 価 値

    を 黒 字 化 す る バ リ ュ ー ベ ー ス 戦 略 を 用 い た 技 術 戦 略 策 定 の 道 の り K a z u k i M a e d a ( k z k _ m a e d a ) 2025.02.27
  2. ⓒ 2025 atama plus Inc. 4 ピープル マネジメント テクノロジー マネジメント

    プロジェクト マネジメント プロダクト マネジメント
  3. ⓒ 2025 atama plus Inc. 5 ピープル マネジメント テクノロジー マネジメント

    プロジェクト マネジメント プロダクト マネジメント 今日は主に ここの話 今日は主に ここの話
  4. ⓒ 2025 atama plus Inc. 技術戦略に対する見え方の違い • 経営指標(売上、利益、CAC、LTVなど)に対して、エンジニアの活動がその まま直結できるケースが少ない(直結させられる構造化が難しい) •

    経営陣の技術的感度によっては、「なんでその技術課題に投資が必要なの?」 という理解を得るのに苦労するケースもある 13 経営戦略と技術戦略
  5. ⓒ 2025 atama plus Inc. ボトムアップで技術課題を解く難しさ • エンジニア目線のみで単発の技術課題にフォーカスすると、経営戦略とのアラ インメントができず、全体最適とならないケースもある •

    また、大きくリソース(人・金・時間)を投下しないといけないような技術課 題をボトムアップ活動だけで解いていくのは難しい • リソース(人・金・時間)投下判断は、本質的には経営課題 • 大体の会社で技術課題は山積している。どれから手をつけるか・・ 15 経営戦略と技術戦略
  6. ⓒ 2025 atama plus Inc. アジェンダ 1. バリューベース戦略という考え方 2. バリューベース戦略と技術戦略

    3. 技術戦略と経営戦略 4. 実際に技術戦略を策定・実行した事例 21
  7. ⓒ 2025 atama plus Inc. アジェンダ 1. バリューベース戦略という考え方 2. バリューベース戦略と技術戦略

    3. 技術戦略と経営戦略 4. 実際に技術戦略を策定・実行した事例 22
  8. ⓒ 2025 atama plus Inc. バリューベース戦略とは • バリューベース戦略は、Harvard Business School

    で提唱・研究されている戦略フレームワークのひとつ • 「それは顧客、従業員、サプライヤーの誰に価値 を生むのか?」という問いがベース • 経営戦略の分野で、競争優位や価格戦略、 サプライチェーン最適化などに応用されている 23 バリューベース戦略という考え方
  9. ⓒ 2025 atama plus Inc. バリューベース戦略の基本概念 • バリューベース戦略では、価値を以下のように定義する • WTP(Willing

    to Pay) : ユーザーが払ってもいい最大金額 • WTS(Willing to Sell) : 組織が提供してもいい最低ライン • Value = WTP – WTS • WTP/WTSは実際の価格やコストを指すものではない • WTPとWTSの間で価格やコストをスライドさせて マージンを最大化する 24 バリューベース戦略という考え方
  10. ⓒ 2025 atama plus Inc. バリューベース戦略の具体事例 • Kindle(Amazon):WTPの向上 • 製品中心主義のSonyなどが電子書籍のデバイス品質向上を目指す一方

    AmazonはKindleに3G回線接続を無料で提供し、WTPを爆発的に高めた • 勤務時間の固定化(GAP):WTSの低下 • パートタイマーのシフト変動を小さくする工夫を取り入れることで 待遇レベルを変えずに従業員満足度を高め、WTSの低下を実現した 25 バリューベース戦略という考え方
  11. ⓒ 2025 atama plus Inc. 二重の優位性とシステム思考 • 単一の施策でWTP向上/WTS削減を同時に実現し、価値を飛躍させる戦略 • 例)Tommy

    Hilfiger Adaptive • 施策:バリアフリーなファッションラインの開発 • WTP:従来得られていなかった顧客層の獲得 • WTS:社会性の高い活動でプレゼンスや 従業員エンゲージメント向上 26 バリューベース戦略という考え方
  12. ⓒ 2025 atama plus Inc. アジェンダ 1. バリューベース戦略という考え方 2. バリューベース戦略と技術戦略

    3. 技術戦略と経営戦略 4. 実際に技術戦略を策定・実行した事例 30
  13. ⓒ 2025 atama plus Inc. エンジニアリングによって成し遂げたいものは? • 究極的には、「価値=アウトカムの追求」が目標 • エンジニアリングのアウトカムを、次のように捉える

    36 バリューベース戦略と技術戦略 事業貢献につながる価値 開発・組織にかかるコスト エンジニアリングの アウトカム
  14. ⓒ 2025 atama plus Inc. 損益計算書(P/L)のように見ることもできる • この考え方は、P/Lの「売上 – 原価

    = 利益」の構造にも近い • 正しいバランスで活動できていると、利益 = Value が出せている状態 40 バリューベース戦略と技術戦略 WTP (売上) WTS (原価) Value (利益)
  15. ⓒ 2025 atama plus Inc. 個々の技術課題を全体感で捉える 45 バリューベース戦略と技術戦略 プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト
  16. ⓒ 2025 atama plus Inc. 全ての技術課題を一意にマッピングすべきか? 51 バリューベース戦略と技術戦略 • 個々の技術課題は綺麗にバーリューベースの構造にマッピングできるのか?

    • 例:アーキテクチャ改善に関する課題はどこに位置させることができる? • WTP:価値提供速度の向上 • WTS:開発コストの削減 • いくつかの技術課題は、複数の箇所にマッピングできそうに見える
  17. ⓒ 2025 atama plus Inc. 二重の優位性 52 バリューベース戦略と技術戦略 • WTPの向上とWTSの低下の両方を狙う戦略

    • システム思考的に考えると、多くの課題は 有機的に接続関係を持つ • 何かの課題を解くと、副次的に別の課題に 効果があるという関係性を明らかにして、 WTP/WTSの両方に効く施策を特定する
  18. ⓒ 2025 atama plus Inc. アジェンダ 1. バリューベース戦略という考え方 2. バリューベース戦略と技術戦略

    3. 技術戦略と経営戦略 4. 実際に技術戦略を策定・実行した事例 55
  19. ⓒ 2025 atama plus Inc. 経営戦略に基づく技術戦略の例 1. 経営戦略: 新規顧客を大幅に増やしたい →

    技術戦略: ユーザーフロー改善(WTP向上) 2. 経営戦略: 既存ユーザーのアップセルを重視 → 技術戦略: 分析基盤整備で顧客行動を可視化(WTP向上) 3. 経営戦略: コスト最適化で利益率を上げたい → 技術戦略: インフラコストの最適化(WTS低下) 59 経営戦略と技術戦略
  20. ⓒ 2025 atama plus Inc. 経営戦略から技術戦略を立てる 60 経営戦略と技術戦略 プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト
  21. ⓒ 2025 atama plus Inc. 技術課題を経営戦略に昇華する 64 経営戦略と技術戦略 • バリューベース戦略で構造化した技術課題を、経営の言葉に翻訳する

    • 例:アーキテクチャの複雑性が開発のボトルネックになっている アーキテクチャ刷新を行い、開発しやすい状態にしたい アーキテクチャ刷新により開発にかかるコストを削減し(WTS) 事業の多面展開速度を向上する(WTP) • 価値を生み出すためにWTP/WTSにどのように影響するものなのかを、構造の中 で言語化する際に利用できるツール
  22. ⓒ 2025 atama plus Inc. 技術課題を経営戦略に昇華する 65 経営戦略と技術戦略 プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト
  23. ⓒ 2025 atama plus Inc. 技術課題をすべて解くべきか? 68 経営戦略と技術戦略 • “どの火を燃えたままにしていいかを見極め、

    放っておけば会社が倒れてしまう火に集中する” (BLITZ SCALING) • 技術課題は至る所にある。すべてを理想的に綺麗 にすることはできない • これを整理するにもバリューベース戦略は有効で あると考える
  24. ⓒ 2025 atama plus Inc. 「今は解かない」課題を明確にする 69 経営戦略と技術戦略 • 個々の技術課題をマッピングした上で、サービス特性や経営背景と照らし合わ

    せ、劣後させる技術課題を特定(意思決定)する • 例: • ユースケース的に高いパフォーマンスは求められない → パフォーマンス改善に関する課題を劣後させる • 資金調達によりキャッシュは余裕がある。それよりシェアを取りたい → 基盤コスト削減に関する課題を劣後させる
  25. ⓒ 2025 atama plus Inc. 「今は解かない」課題を明確にする 70 経営戦略と技術戦略 プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト
  26. ⓒ 2025 atama plus Inc. 「今解くべき課題」を意思決定する 71 経営戦略と技術戦略 • 多くの技術課題を以下の3つの視点で整理し、「今解くべき課題」がどれかを

    意思決定する • 経営課題を解決するための技術課題 • 現場の技術課題から経営課題に昇華させた課題 • 今は解かない、と劣後させた課題 • 一つに絞る必要はないが、リソースや他の開発施策とのバランスで「今解くべ き課題」を絞り込む、意思決定する
  27. ⓒ 2025 atama plus Inc. 「今解くべき課題」を特定する 72 経営戦略と技術戦略 プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト
  28. ⓒ 2025 atama plus Inc. アジェンダ 1. バリューベース戦略という考え方 2. バリューベース戦略と技術戦略

    3. 技術戦略と経営戦略 4. 実際に技術戦略を策定・実行した事例 73
  29. ⓒ 2025 atama plus Inc. バリューベース戦略に基づき、さらなる戦略を立てる 84 実際に技術戦略を策定・実行した事例 • ここから

    • 経営戦略とアラインしているもの • 技術課題として顕在化しているもの • 「二重の優位性」効果がありそうなもの • を選定し、バリューベース戦略のストーリーの中で実行する戦略を決める
  30. ⓒ 2025 atama plus Inc. バリューベース戦略の基本概念 • バリューベース戦略では、価値を以下のように定義する • WTP(Willing

    to Pay) : ユーザーが払ってもいい最大金額 • WTS(Willing to Sell) : 組織が提供してもいい最低ライン • Value = WTP – WTS • WTP/WTSは実際の価格やコストを指すものではない • WTPとWTSの間で価格やコストをスライドさせて マージンを最大化する 87 まとめ
  31. ⓒ 2025 atama plus Inc. 個々の技術課題をバリューベース戦略の全体感で捉える 89 まとめ プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト
  32. ⓒ 2025 atama plus Inc. 経営課題と技術課題を双方でアラインし、今解くべき課題を特定する 90 まとめ プロダクト進化 WTS

    Value WTP 品質向上 価値提供速度向上 開発コスト 運用コスト 組織開発コスト 経営課題の解 決 技術課題の昇 華 劣後課題の 意思決定