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息苦しい目標設定に、さよならを。 〜挑戦するチームへ導く「成長観点」と「給与観点」の使い分け〜

息苦しい目標設定に、さよならを。 〜挑戦するチームへ導く「成長観点」と「給与観点」の使い分け〜

2025-06-17 D-Plus Tokyo #15 チームの成果へ導く!目標設定と評価のTips共有会
https://d-plus.connpass.com/event/356620/

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Transcript

  1. 名前 • みきてぃ / きたはら (mkitahara) :@mikity01985 出⾝ • 静岡県

    - 埼⽟県 - 千葉県 ⾃⼰紹介 職能 • エンジニアリングマネージャー / テックリード / Androidアプリ開発 / プロダクトマネージャー 職歴 • FinTech会社 (2023/07〜 ) ◦ モバイルアプリチームのエンジニアリングマネージャーを中⼼にいろいろ ◦ 2024/10 より新規事業のテックリード(Next.js、Spring Boot) を中⼼にいろいろ ◦ 新規事業にまつわるプロジェクトマネジメント、ピープルマネジメント、採⽤、広報 もちょいちょい --------------------------------- • SES会社 (3年9ヶ⽉) → 開発受託会社 2社 (1年、1年9ヶ⽉) → EdTech会社 (5年9ヶ⽉) → 現職 ◦ 2011/04 に 新卒未経験でIT業界へ。研修でAndroidアプリ開発に出会う ◦ 受託企業はそれぞれ10名以下。なんでも⾃分でやらざるをえない環境 を経験 ◦ EdTechでは出向‧業務委託のみ 30名程度の会社から 社員200⼈超えの組織の成⻑を経験 ◦ Androidアプリ開発を中⼼にサーバーサイド(PHP Ruby on Rails)、CRE、 PO、チーム責任者を経験 名前とアイコン 変えました! 2
  2. 「⽬標設定」と「評価」を難しくする3つのズレ 9 ねじれ①:⽬的のズレ • プロダクトの短期⽬標(事業成果)と、職能部⾨の中⻑期⽬標(専⾨性向上)が⼀致しない • 結果...... ◦ メンバーは「プロダクトの成功」と「⾃分の専⾨的成⻑」のどちらを優先すれば評価されるのか 板挟みになる

    ねじれ②:評価者のズレ • ⽇々の業務を⾒る⼈(PdMなど)と、専⾨性を⾒る⼈(職能マネージャー)が異なる。 • 結果...... ◦ それぞれが⾒える範囲で評価するため、総合的な貢献が正しく評価されにくく、 評価に納得感が得られにくい
  3. 「⽬標設定」と「評価」を難しくする3つのズレ 10 ねじれ①:⽬的のズレ • プロダクトの短期⽬標(事業成果)と、職能部⾨の中⻑期⽬標(専⾨性向上)が⼀致しない • 結果...... ◦ メンバーは「プロダクトの成功」と「⾃分の専⾨的成⻑」のどちらを優先すれば評価されるのか 板挟みになる

    ねじれ②:評価者のズレ • ⽇々の業務を⾒る⼈(PdMなど)と、専⾨性を⾒る⼈(職能マネージャー)が異なる • 結果...... ◦ それぞれが⾒える範囲で評価するため、総合的な貢献が正しく評価されにくく、 評価に納得感が得られにくい ねじれ③:時間軸のズレ • 短期で変動するプロダクトのフェーズと、中⻑期で継続性が求められる個⼈のグレードが⼀致しない • 結果...... ◦ プロダクトの状況によって、グレードを上げるための挑戦的な経験を積む機会が奪われること がある
  4. ⽬標設定を分解して考えてみる 12 ⾏動⽬標 (アクション) 成果⽬標 (アウトカム) 状態⽬標 (⽬指す状態) 組織‧チームやプロダクトが 最終的に実現したい「理想の状態」や「ありたい姿」

    状態⽬標に近づいているかを測るための 客観的で測定可能な「成果」 成果⽬標を達成するために、⾃分たちが 直接コントロールできる具体的な「⾏動」 組織‧チームやプロダクトの観点でみると......
  5. ⽬標設定を分解して考えてみる 14 ⾏動⽬標 (アクション) 成果⽬標 (アウトカム) 状態⽬標 (⽬指す状態) 個⼈がコントロール‧アプローチできるのは「⾏動⽬標」であるが...... 組織‧チームやプロダクトの成⻑に貢献してくれているが、

    個⼈のレベルに対して当たり前にできることは評価されないのでは? プロダクトに貢献してくれて本当にありがたい...... でも、個⼈にとって当たり前にできそうだから評価できない みんなつらい......
  6. 悲しい話を⽣まないためにできること 16 組織⽬標 プロダクト⽬標 チーム⽬標 個⼈⽬標 これまでは 組織⽬標‧プロダクト⽬標、個⼈⽬標へ落とし込むフローを実施してきました 課題 •

    やらされ感と主体性の⽋如 • 変化への弱さと柔軟性の⽋如 • イノベーションの阻害:設定された⽬標の「範囲内」で動くことが最適解となってしまう • ⽬標の劣化‧形骸化
  7. 悲しい話を⽣まないためにできること 17 組織⽬標 プロダクト⽬標 個⼈⽬標 まず個⼈⽬標を中⼼に考えてみること からはじめました ⾏動⽬標 (アクション) 成果⽬標

    (アウトカム) 状態⽬標 (⽬指す状態) ⼀旦、組織やプロダクトの⽬標は脇に置き、 個⼈の視座‧視野‧視点での⽬標を⽴てる チーム⽬標
  8. 悲しい話を⽣まないためにできること 18 組織⽬標 プロダクト⽬標 個⼈⽬標 出した⽬標を、 個⼈成⻑に繋がりそうな⽬標と事業貢献になりそうな⽬標に分けます チーム⽬標 事業貢献 ⾏動⽬標

    (アクション) 事業貢献 成果⽬標 (アウトカム) 事業貢献 状態⽬標 (⽬指す状態) 個⼈成⻑ ⾏動⽬標 (アクション) 個⼈成⻑ 成果⽬標 (アウトカム) 個⼈成⻑ 状態⽬標 (⽬指す状態)
  9. 悲しい話を⽣まないためにできること 19 組織⽬標 プロダクト⽬標 個⼈⽬標 個⼈の成⻑観点は、マネージャーと1on1で徹底的に対話‧議論します 給与査定に関係ないことを伝え、⼼理的安全性を保ちます チーム⽬標 19 事業貢献

    ⾏動⽬標 (アクション) 事業貢献 成果⽬標 (アウトカム) 事業貢献 状態⽬標 (⽬指す状態) 個⼈成⻑ ⾏動⽬標 (アクション) 個⼈成⻑ 成果⽬標 (アウトカム) 個⼈成⻑ 状態⽬標 (⽬指す状態) チームや組織⽬標に紐づかないもの → 真に達成したい⽬標である可能性
  10. 悲しい話を⽣まないためにできること 20 組織⽬標 プロダクト⽬標 個⼈⽬標 個⼈の事業貢献観点(給与観点)は、リーダーとともにアピールポイントを創ります 個⼈の成⻑が、どのように組織‧チーム、プロダクトに貢献するかを紐づけます チーム⽬標 ⾏動⽬標 (アクション)

    成果⽬標 (アウトカム) 状態⽬標 (⽬指す状態) 事業貢献 ⾏動⽬標 (アクション) 事業貢献 成果⽬標 (アウトカム) 事業貢献 状態⽬標 (⽬指す状態) 個⼈成⻑ ⾏動⽬標 (アクション) 個⼈成⻑ 成果⽬標 (アウトカム) 個⼈成⻑ 状態⽬標 (⽬指す状態)
  11. 結果 22 ▪ 意識づいたこと • 主体性と当事者意識の向上 ◦ 「会社から与えられた仕事」から「⾃分のキャリアと会社の未来を接続させるプロジェクト」へ • ⽬標設定の質の向上と視野の拡⼤

    ◦ ⾃分は何で貢献できるか?を考えるために、これまで以上に会社の戦略やチームの課題を 理解しようと⾒てくれるようになった。 • マネージャーとの対話の深化 ◦ 1on1が「進捗確認」の場から、メンバーが⾃⾝のプランを持ってくるため、対話はより双⽅向で 建設的になった
  12. 結果 〜問題点〜 23 ▪ 発⽣した問題 • ⽬標の「サイロ化」と「戦略とのズレ」 ◦ メンバーそれぞれの興味関⼼に基づいた⽬標が乱⽴し、チームや組織全体の戦略と合致しない ◦

    「個⼈のやりたいこと」が優先されてしまう。 (今、組織として本当にやるべき「重要だが地味な仕事」の優先度が下がってしまう) • メンバー間の「⽬標設定スキル」の格差 ◦ ⾔語化の苦⼿なメンバーは「何を⽬標にすればいいか分からない」とかえって負担を感じる • マネージャーの負荷増⼤ ◦ 多様な個⼈⽬標を理解し、組織⽬標とすり合わせるコストが増えます。 ◦ マネージャーには、メンバーのキャリアプランと会社の戦略を繋ぐ、 「コーチング能⼒」や「翻訳能⼒」が求められる マネージャーは結局負荷が掛かりますwww ですが、ポジティブな負荷なので以前と⽐べてとても気持ちが良いです!!
  13. まとめ 25 • ⽬標設定と評価が難しい原因は、「3つのズレ」(⽬的‧認識‧時間軸)にあると考えて います • ⽬標設定の向きをトップダウンから「個⼈主体」に切り替えたところ、メンバーの 「⾃分ごと化」が進み、⾃発的に事業貢献を考えるようになりました • 「成⻑観点」の対話(1on1など)では、⼼理的安全性を最優先とし、給与評価とは完全

    に切り離して実施します • 「事業貢献観点」の⾯談(評価⾯談など)は、その期の貢献を⼀緒に⾔語化し、組織への アピールポイントを整理する「協⼒の場」と位置づけています • マネージャーの負荷は⼀時的に増えるかもしれません。しかし、それはメンバーが 主体的に事業貢献まで考えるようになるための、喜ばしい「ポジティブな負荷」です 個⼈を起点にした⽬標設定は、本⼈の成⻑を効果的に促します。 そして、その成⻑がモチベーションを⾼め、会社の⽬標と適切に紐づけることで 事業への貢献にも繋がります。