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組織の成長と個人の幸福を両立させるキャリア面談
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みきてぃ / きたはら (mkitahara)
August 27, 2025
Business
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組織の成長と個人の幸福を両立させるキャリア面談
2025-08-27 人事の隠れ家「スナックJINJI」 #2 presented byひつじんじ
https://peatix.com/event/4495582
みきてぃ / きたはら (mkitahara)
August 27, 2025
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Transcript
組織の成⻑と個⼈の幸福を両⽴させるキャリア⾯談 2025-08-27 ⼈事の隠れ家「スナックJINJI」 #2 presented byひつじんじ みきてぃ / きたはら (mkitahara)
名前 • みきてぃ / きたはら (mkitahara) :@mikity01985 出⾝ • 静岡県
- 埼⽟県 - 千葉県 ⾃⼰紹介 職能 • エンジニアリングマネージャー / テックリード / Androidアプリ開発 / プロダクトマネージャー 職歴 • FinTech会社 (2023/07〜 ) ◦ モバイルアプリチームのエンジニアリングマネージャーを中⼼にいろいろ ◦ 2024/10 より新規事業のテックリード(Next.js、Spring Boot) を中⼼にいろいろ ◦ 新規事業にまつわるプロジェクトマネジメント、ピープルマネジメント、採⽤、広報⾒習い --------------------------------- • SES会社 (3年9ヶ⽉) → 開発受託会社 2社 (1年、1年9ヶ⽉) → EdTech会社 (5年9ヶ⽉) → 現職 ◦ 2011/04 に 新卒未経験でIT業界へ。研修でAndroidアプリ開発に出会う ◦ 受託企業はそれぞれ10名以下。なんでも⾃分でやらざるをえない環境 を経験 ◦ EdTechでは出向‧業務委託のみ 30名程度の会社から 社員200⼈超えの組織の成⻑を経験 ◦ Androidアプリ開発を中⼼にサーバーサイド(PHP Ruby on Rails)、CRE、 PO、チーム責任者を経験 2
なぜ、キャリアを考える必要があるのか? 今回のテーマ 3
組織と個⼈の成⻑を阻む「現状維持」という罠 4 • 組織の視点: ◦ VUCAという不安定な時代において、組織は常に変⾰を求められている。 ◦ グレイナーの5段階企業成⻑モデル[^1] のように、組織が次の成⻑フェーズへ進む際に、 フェーズが変わっても同じような仕事をやっていても評価がされにくい。
◦ この危機を乗り越え、持続的な成⻑を遂げるためには、従業員⼀⼈ひとりが変化に適応し、 新たな役割を担うことが不可⽋である。 • 個⼈の視点: ◦ 多くの⼈は、確証バイアス[^2] や希望的観測バイアス[^3] といった認知の罠に陥りがち。 ◦ これらのバイアスは、⾃⾝の現状を客観視することを妨げ、「このままで良いだろう」という 過度な楽観主義に繋がり、結果として⾃⾝の市場価値が低下していることに気づきにくい。 [^1]: グレイナーの5段階企業成⻑モデル(Greiner's Five Phases of Growth Model): 組織が成⻑する際に、規模や複雑性に応じて5つの段階(創造、指導、権限委譲、協働、連携) をたどり、各段階の終わりで「リーダーシップの危機」「⾃律性の危機」といった特有の危機に直⾯するとする理論。 [^2]: 確証バイアス(Confirmation Bias): ⾃分の仮説や信念を裏付ける情報ばかりを無意識的に集め、反証する情報を無視したり軽視したりする傾向。 [^3]: 希望的観測バイアス(Optimism Bias): ⾃分にとって好ましい出来事が起こる可能性を過⼤評価し、不都合な出来事が起こる可能性を過⼩評価する傾向。
図にしてみると 5 ⾃⾝の能⼒ 経済‧組織 の成⻑度 この時点では 評価されていても... この時点では 評価されなくなる... ご⾃⾝の経験や能⼒から
⾒える範囲 周りが期待している範囲 • 周りも成⻑しており、ある時点で評価されていても、とある時点では評価されなくなった • ⾃分の枠の中に閉じこもっていると、「なぜ評価されないのか?」がわからなくなる • 今の時代、同じ⼿法で解ける課題‧問題はなかなか存在しない (クネビンフレームワーク)
課題感:「5年後にどうなりたいか?」という問いが機能しない? 6 従来のキャリア⾯談でよく聞かれる「5年後にどうなりたいか?」という問いは、 以下の理由から有効に機能しなかった。 • 未来の不確実性: ◦ 未来を予測することが困難な現代において、5年後の具体的なビジョンを描くことが極めて困難。 • 偶発性の重要性:
◦ 計画的偶発性理論[^4]によると、キャリアの約8割は予期せぬ出来事によって形成される。 ◦ ゴールを意図的に決めず、予想外のことも受け⼊れて想定外のチャンスをものにする ◦ 完璧な計画を⽴てることは、そもそも現実的ではない。 [^4]: 計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory): キャリアの80%は予期せぬ出来事や偶然によって決まるとする理論。重要なのは、偶然を計画的に引き起こすための⾏動(好奇 ⼼、柔軟性、楽観性、冒険⼼、柔軟性)であると提唱している。 キャリア⾯談の⽬的は「将来を予測する」ことではなく、 「今をどう活かすか」に焦点を当てる。 問い⽅を変え、今⽇からできることに落とし込むアプローチが必要だった。
チーム責任者として⾏った⾯談アプローチ 7
こんな感じでやってます 8 【STEP 1〜3】キャリアの⽅向性を⾒つける: • STEP 1:未来の⽣活から逆算させる • STEP 2:「未来の職務経歴書」を作る
• STEP 3:理想と現状のギャップを特定する 【STEP 4〜6】⽇々の業務と成⻑を繋げる: • STEP 4:⽇々の業務から「課題」を⾒つける • STEP 5:キャリアを「組織と個⼈の資産」にする • STEP 6:偶然を「必然のキャリア」に変える
【STEP 1〜3】キャリアの⽅向性を⾒つける 9
【STEP 1】未来の⽣活から逆算させる (年に1〜2回、キックオフ⾯談) 10 何をやるか: • メンバーに、仕事から離れた場所にある「理想の⽣活」を具体的に想像してもらう。 問いかけ: • 「もしお⾦や時間に制約がなかったら、どんな⽣活をしたいですか?」
• 「どんな趣味に没頭し、どんな⼈間関係を築きたいですか?」 ⽬的: • メンバーの本質的な価値観を探り、仕事と⼈⽣を結びつける思考を促す。 成果物例: • 「理想のライフスタイル」シート ◦ どこで働くか? (リモート、オフィスなど)、どんな住環境か? (都⼼、郊外など) どんな趣味に時間を使っているか?、どんな⼈間関係を築いているか?
【STEP 2】「未来の職務経歴書」を作る (年1〜2回、思いついたとき) 11 何をやるか: • 理想の⽣活に必要な年収を逆算し、それを達成した「未来の⾃分」の経歴書を作成する。 問いかけ: • 「その年収を得るために、どんな役割やスキルが求められると思いますか?」
⽬的: • ぼんやりとした⽬標ではなく、具体的なゴールを設定し、⾏動へのハードルを下げる。 成果物例: • 「未来の職務経歴書」 ◦ ⾃社、他社問わずに⾃⼰実現が達成できるであろう理想の経歴書 • 「キャリア‧ロードマップ」 ◦ ⽬標年収: XXX万円、⽬標とする役割、必要なスキル‧経験
【STEP 3】理想と現状のギャップを特定する (年1〜2回、思いついたとき) 12 何をやるか: • 「未来の職務経歴書」と現在の職務経歴書を⾒⽐べ、何が⾜りないか明確にする。 問いかけ: • 「そのギャップを埋めるスキルは、今のチームで獲得できそうでしょうか?」
⽬的: • 達成したい⽬標に対し、現状の⾃分の「現在地」を客観視する。 成果物例: • 「ギャップ分析」シート ◦ ギャップとなっている 経験や能⼒を⾔語化する ◦ ギャップとなっている能⼒を⾝につけるための業務や⾏動を⾔語化する
【STEP 4〜6】⽇々の業務と成⻑を繋げる 13
【STEP 4】⽇々の業務から「課題」を⾒つける (1on1 など) 14 何をやるか: • ⽇々の業務に潜む課題を、キャリアの成⻑機会として捉える。 問いかけ: ◦
「今の仕事で、もっと効率的にできると思うことは何ですか?」 ◦ 「その課題を解決すれば、『未来の職務経歴書』に何が書けそうですか?」 ⽬的: ◦ すべての業務を「キャリア構築のための学び」へと意識を変える。 成果物例: • 「⽇常業務の課題発⾒」ワークシート 現在の業務: [ ] 「もっとこうなったらいいのに」と思うこと: [ ] この課題を解決すれば、どんな能⼒が⾝につきそうか: [ ]
【STEP 5】キャリアを「組織と個⼈の資産」にする (課題など対応後のふりかえり) 15 何をやるか: • 課題解決を通じて得た経験を、再現可能な 「⾃分の能⼒」として確⽴し、 さらにそれをチームや組織の「資産」へと昇華させることを促す。 問いかけ:
• 「今回の課題解決で⾝についた能⼒は、新しいプロジェクトや別の課題でも応⽤できそうですか?」 • 「あなたの成功プロセスを、他の⼈が再現できるように⾔語化‧仕組み化するとしたら、どうします か?」 ⽬的: • 個⼈の視点: ◦ 課題解決を単発の経験で終わらせず、普遍的なスキル(再現可能な状態)へと 昇華させることを⽀援します。これにより、メンバーのキャリアにおける「再現性」と 「市場価値」を⾼めます。 • 組織の視点: ◦ 個⼈のノウハウをチームで共有し、組織全体のパフォーマンスを向上させる 「学び続ける⽂化」を醸成します。
【STEP 6】偶然を「必然のキャリア」に変える (1on1、未知の経験を体験したあと) 16 何をやるか: • 新しいプロジェクトや⼈との出会いといった偶発的な出来事を、積極的にキャリアの糧とするように 促す。気づいてもらう。 問いかけ: •
「最近、予期せぬ出来事(新しいプロジェクト、異動、⼈との出会いなど)で、何か新しい気づきは ありましたか?」 • 「その気づきを活かせそうな、次に挑戦してみたいことは何でしょうか?」 ⽬的: • 完璧な計画に固執するのではなく、⽇々の変化や偶然から新たな道を⾒つけ出し、キャリアを常に更新 し続ける習慣を⾝につける。これにより、予測不能な時代を⽣き抜く「しなやかさ」を獲得する。
「キャリアの伴⾛者」として提供するもの 17
キャリアの伴⾛者としての3つの能⼒: 1. 「問いかける」技術 18 1. 「問いかける」技術 メンバー⾃⾝に気づきを促すための対話を意識する。 ⼀⽅的にアドバイスをするのではなく、メンバーの内⾯にある答えを引き出すことを⽬指す。 • 具体的な問いかけの例:
◦ 過去の成功体験から強みを探る: ▪ 「これまでで⼀番楽しかった仕事は何ですか?その時、どんなことを考えていましたか?」 ◦ ⽇々の業務から課題を引き出す: ▪ 「今の業務で、もっとこうなったらいいのに、と思うことは何ですか?」 ◦ 未来への好奇⼼を刺激する: ▪ 「もし、どんな仕事も⾃由に選べるとしたら、何をしたいですか?」
キャリアの伴⾛者としての3つの能⼒:2. 「機会を提供する」姿勢 19 2. 「機会を提供する」姿勢 メンバーが⾃ら成⻑するための具体的な⾏動を⽀援する。 これは、新しい挑戦や経験を通じて、スキルや視野を広げる機会を意図的に創出する。 • 具体的な⾏動の例: ◦
⼩さな挑戦を任せる: ▪ 普段の業務に、少しだけ難易度の⾼いタスク (例:新しいツールの導⼊調査、社内向け勉強会の企画)を加えてもらう。 ◦ 他部署との接点を作る: ▪ メンバーの関⼼がある部署の会議にオブザーバーとして参加させたり、 キーパーソンを紹介したりする。 ◦ 社内外の学びを促す: ▪ メンバーが興味を持ったセミナーや研修への参加を積極的に⽀援し、 その学びをチームで共有する場を設ける。
キャリアの伴⾛者としての3つの能⼒:3. 「変化を称賛する」⽂化 20 3. 「変化を称賛する」⽂化 メンバーの⾏動や成⻑を正しく評価し、モチベーションを維持する。 これにより、挑戦することへの不安を軽減し、前向きな姿勢を育む。 • 具体的な⾏動の例: ◦
「成果」ではなく「⾏動」を称賛する: ▪ 結果が出なくても、「新しいやり⽅に挑戦してくれてありがとう」のように、 そのプロセスや努⼒を評価する。 ◦ 具体的な⾔葉で伝える: ▪ 「頑張ったね」ではなく、「あの時、◦◦という課題に対して、 △△という⽅法で解決してくれたことが素晴らしかった」のように、具体的に伝える。 ◦ ⼩さな変化に気づく: ▪ メンバーのささいな成⻑(例:以前より発⾔が増えた、⾃主的に情報収集を始めた) を⾒つけ、それを⾔葉にして伝えることで、⾃⼰肯定感を⾼めてもらう。
まとめ 21
「5年後のキャリアプラン」から、「今⽇からできるキャリア設計」へ 22 • 従来の「5年後」という漠然とした問いかけが、 メンバーを⽴ち⽌まらせてしまう原因のひとつだった。 • これからは、「今⽇からできること」に焦点を当て、 具体的なイメージができるように問いかけ、 また、⽇々の業務をキャリアの糧とするよう共創する。 •
あなたの問いかけと⾏動⼀つひとつが、 メンバーのキャリア設計の第⼀歩となる。
ご静聴ありがとうございました 23