2022.10.1 XP祭り2022 Dトラック 15:25-15:45
Proposal https://confengine.com/conferences/xp2022/proposal/16890
1おいしいドッグフードの食べ方株式会社ナビタイムジャパン 小田中2022.10.1 XP祭り2022
View Slide
小田中 育生 (おだなか いくお)(株)ナビタイムジャパンVP of EngineeringACTS(研究開発) ルートグループ責任者経路探索の研究開発部門責任者としてMaaS時代にフィットしたマルチモーダル経路探索の開発を推進、移動体験のアップデートにコミットメント。VPoEとしてはいきいきとした組織づくりを目指し、アジャイル開発の導入推進・支援などに取り組んでいる。猫派。著書「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」インプレス2
Learning Outcome3• ドッグフーディングの効能• 進んでドッグフーディングしたくなるマインドセットの作り方
ドッグフード、食べてますか?
ドッグフーディング5“ドッグフーディングは、特にソフトウェア開発業界で広く採用されているプラクティスです。これは、ドッグフードを販売している企業が「自社で製造しているドッグフードを食べる」ように、製品を提供する会社が、最初に自分たち自身で、エンドユーザーと同じように製品を使用してテストすることです。”JetBrainsにおけるソフトウェア開発:ドッグフーディング (https://www.jetbrains.com/ja-jp/lp/dogfooding/ )より引用
ユーザーの声をプロダクトに反映するための様々な情報源6ユーザーボイスユーザーログドッグフードプロダクトバックログ
毎日ドッグフードを食べる私たち7首都高走ってたら渋滞にハマる手前で避けてくれた助かった!いつも使ってるバスが経路にでなかった。どうやったら出るかな
私たちは自社サービスを知りすぎている8いつも使ってるバスが経路にでなかった。どうやったら出るかなそれは設定の仕方がよくないからだよ設定で「バスを使う」はONになってる?あと、徒歩が「せかせか」になってるとバスを使った経路が所要時間的に有利になりづらいから徒歩速度の設定を変えて再探索するといいんじゃないかな
十分なユーザー数を抱えているならドッグフード以外の選択肢がある9ユーザーボイスユーザーログドッグフードプロダクトバックログ
私たちは、いつドッグフードを食べるべきなのか10ユーザーボイスユーザーログドッグフードプロダクトバックログ
11ドッグフーディングから生まれた「散歩ルート」をベースに考えてみる
12歩きたい歩数で「いい感じ」に歩けるルートを教えてくれる機能「行って帰ってくる」ルートではなく、いい感じに回遊できるルートリトライすると違う経路を出してくれる
13コロナ禍に我々を襲った「運動不足」通勤がなくなった運動もなくなった食欲はなくならない頼む…!!自社サービス!!
14運動不足を解消したくて自社サービスをドッグフーディング!
15既存の機能をドッグフーディングし散歩ルートのアイデアが誕生• もともとあった「あと○○歩あるくルート」機能• 指定した歩数だけ歩ける地点をいくつか提示し、ユーザーが選択するとそこまでの経路を探索する機能• 改めて使うことで湧き上がる要望• 別にどこかの地点に行きたいわけじゃない、行きと帰りは違う道を通りたい、毎回違うルートを出して欲しい、だって飽きるもの・・・
自社のサービスを知っているがゆえにモリモリの機能で考えてしまう16音声案内あったほうがいいよねリルート(※道を外れたら再探索する機能)は?いろんな優先条件(※最短、最安といった経路探索の条件設定)に対応したいよね
17実現可能性も必要性も明らかになっていないのにアイデアばかりが膨らむ「A地点からB地点への最短経路」ではない最適解を求めない経路探索。果たして実現できるのか?ぐるっと回って帰ってくる経路を出すだけのシンプルな機能。果たして必要な機能なのか?
18ユーザーストーリーマッピングで最小限に絞り・・・
19そこからは小さく作って小さく試して…の繰り返し。
20最初の試作は、ゆきてかえりし物語マッドマックスだ行きと帰りが一緒の道だと飽きそう
21レビューを繰り返し、質は向上わりとよさそう自分が散歩するときに使うルートに似てます
22スプリントレビューでは判断がつかないことが増えてきたヒゲをなんとかしたいうーん別にそんなに気にならないけど…ところで、このルートは歩きやすいのかな
23判断つかないから、実際のユースケースでドッグフーディング!
24実際に使ってみて、報告を共有するメンバーが出現
25実地で使ったからこそわかることをフィードバックしてくれた実際に歩いてみたらいいかんじの運動になった歩きながらルートを外れるのは普通にやる。リルートされると鬱陶しいかもヒゲは、改めて歩いてみて絶対イヤだと思った駅前とかは人類が多い
26他のメンバーも次々とドッグフードを食す実家に帰ったついでに使ってみました家のまわりで実際に歩いてみました
27多様な視点でドッグフードを食べることでUX、性能、様々なフィードバックを得た歩いたら褒めてほしい履歴があるといいなポイントとか欲しいレスポンスもっとはやくならない?経路はこんなもんでよさそう車通りは避けたい
28新しいアイデアの着想元として実際の使用感を体感する手段として多様な観点から改善案を探る方法としてドッグフーディングの有効性を実感
29そして4月に無事リリースを迎え・・・
30リリース後もつづくドッグフーディング
31なんでみんな、ドッグフードを食べるのだろうか
32自社サービスを普段から使う習慣自分が作っているものがいいものか確かめたくなる気持ちドッグフーディングを後押ししたもの
33自社サービスを普段から使う習慣自分が作っているものがいいものか確かめたくなる気持ち今回は自然発生的にメンバーがドッグフードを食べ始めた。再現性をもたらすには?
34ユーザーストーリーマッピング自分が作っているものがいいものか確かめたくなる気持ち世の中をどう変えたいかを自分たちの言葉で明らかにするとよさそう今回はユーザーストーリーマッピングがその役割を担った
35では、ドッグフーディングは万能か?
36ドッグフーディングでわからなかったこと上限歩数まで設定している人が意外なほど多い上限10000歩周辺で検索している人
37開発したチームの中では「1万歩を超えた設定をする人はほとんどいないだろう」という見立てだった
38その後、上限は20,000歩まで引き上げ• 自分たちでは「そんなに歩くことないよねー」と話していた• いざ20,000歩の経路を見ると、やっぱり「こんなに歩かないよねー」という感想になる• でも、実際にそれを必要としているユーザーがいる• ユーザーボイスやログはそれを教えてくれる
ドッグフードはおいしい。プロダクトを開発する意思決定に役立つ。39ユーザーボイスユーザーログドッグフードプロダクトバックログ
万能ではない。軌道に乗り、ログがとれるようになったらログも参照するべし40ユーザーボイスユーザーログドッグフードプロダクトバックログ
41まとめ
42• プロダクトをよりよい形へ導くための方法としてドッグフーディングがある• 新しいアイデアを創出するとき、机上のレビューではわからないことを学習したいとき、ドッグフードを食べるとよい• 1人ではなく多くの人がドッグフードを食べることで多様な視点を獲得できる• 普段からドッグフードを食べる習慣をつける、自分の手でよりよいものにしたいという主体性を育むことが大切• 決して万能選手ではない。ユーザーボイス、ログといった客観的な情報と主観的なドッグフーディングをうまく組み合わせていこう
43THANKS!